元勇者提督   作:無し

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努力

呉鎮守府 

駆逐艦 電

 

「…本当にありがとうございます」

 

「いや、構わねぇ……だが不味いな…相手はどこまで読んでるんだ?狙撃手が居たってことは移動先を完全に読まれてる事になる」

 

「……」

 

私達は一時的に呉鎮守府にて匿われる事になりました

お蔭で、トキオさんは一命を取り留める事ができた…

 

「…あまり長居はするつもりは無いのです…」

 

「…逃げ続けるのか」

 

「……私は、仇とかのために一人で戦えるほど馬鹿にはなれないのです…私が生きていれば、誰かを必ず巻き込む、誰かが不幸になる…それは、わかってるのです…」

 

「……」

 

「それでも…私は、生きたいのです…電は、人間じゃないけど…この命が作り物だったとしても…誰もそばにいてくれなくても…ただ、それでも…電は、それでも生きたいのです…!」

 

「……そうか…しかし…街中で撃ちやがるか…流石にもうニュースになっちまってる、病院に連れて行けねぇって言うからウチで治療したにしても…まあ、お前らは海軍と警察の両方から追われてる訳だな…後者は命を奪うことはしないだろうが」

 

「…警察に保護を求めることも、一応考えてるのです…いまはトキオさんを…」

 

「…ああ、わかった」

 

トキオさんは死ななかった…つまり、運命が変わった…

 

私が、あの時独りよがりな行動をした結果、トキオさんは撃たれると言う予定通りの結末に辿り着いた…でも、その後の運命を変える事ができた…

 

私に勇気があれば…私が頑張れば運命は変えられるんだ

 

 

 

 

 

提督 三崎亮

 

「クソ、面倒な事になっちまったな…で、どうだ?」

 

「…どうって…見た通りだけど…」

 

「……お前の事はよく知らねぇけど、ガッツあるじゃねぇか」

 

医務室のベッドを一つ貸してやるくらいには気に入った

 

「しかし、ウチはそこそこデカイ施設だ、お前の事はすぐバレちまう…長居はさせてやれねぇぞ、今はたまたま保護した一般人って事で誤魔化しが効くけどな…」

 

「…オレは、カイトのところを目指すつもり…です」

 

「…宿毛湾か…あっちもキツイだろうが…」

 

 

 

 

九竜トキオ

 

「……免許は?」

 

「え、いや、ないけど…あ、です」

 

「無理に敬語にしなくていい、車を貸してやろうかとも思ったがな…まあ、仕方ねぇな…ただ、気になるのは広島で待っていた点だな、俺たちを頼るとわかってたのなら追撃がねぇのが不自然だし、宿毛湾に行くことを呼んでたのなら別の駅で待ち伏せするはずだ」

 

「……確かに…」

 

「あの電は、何者だ?」

 

「…オレの口からは…」

 

「……そうか、やっぱなんかあるんだな…まあ、深くは突っ込むつもりはねぇが…お前、相当危険な位置にいることは自覚しておけよ」

 

「…もう身を持って…」

 

「わり、そうだったな」

 

「………オレはこれからどうすれば…」

 

「カイトに会いに行くんだろ?それにしても無策な気はするがな」

 

「………なら、どうすれば…」

 

「お前はどうしたいんだよ」

 

オレはどうしたい…?

ただ、命を狙われている子を助けただけだ

それの何が悪い、その事に躊躇いも無ければ…後悔なんて絶対にない

 

「オレは…もう既に決めてる、電ちゃんを守るって」

 

「…ま、今はお前の方が守られてる訳だがな」

 

「う…」

 

痛いところをつかれたな

 

「…そういや、お前…リアルデジタライズできるんだってな」

 

「できるっていうか…する事自体は誰でもできる…ただ、ネットの世界に長居すると認知外依存症っていう病気が発症するんだ」

 

「依存症…?ゲームがやめられなくなるか」

 

「いや、簡潔にいうとだんだんと自我が崩壊していって末期にはデータが変質し、拡散消滅してしまう…」

 

「そこでダブルウェアか」

 

「いや、確かにオレはネットとリアル両方に存在できる…だけど…それも永遠じゃない…」

 

「…そうか……待てよ…そうか、そういう事なのか…?」

 

「え、何?」

 

「……来い!」

 

「え?ちょっ!えぇぇ!?」

 

オレはハセヲに連れられて海の方へと連れて行かれてしまった

 

 

 

 

「なぁ、俺のことはどこまで知ってる」

 

「えっと…The・Worldリビジョン2最強のPKK、死の恐怖ハセヲで、志乃を助けるためにトライエッジを追っかけてたけど実は」

 

「やめろ、もういい、お前が9割以上知ってることはわかった」

 

「なら良かったけど…」

 

「…じゃあコイツも知ってるな…!?」

 

ハセヲの体に紋様が浮かび上がる

 

「紋様…待てよ、此処って現実だよな…え?スケィスを現実で使えるのか…?」

 

「碑文も知ってるか…じゃあ当然、AIDAもわかるよな」

 

「…勿論、わかる…それで?」

 

「見せた方が早え…Helen!!スケェェェェィス!』

 

…現実でスケィスを見る事になるなんて全く思ってなかった…しかも、AIDAのオマケ付き

 

『実験に付き合ってもらうぜ』

 

「え?実験って…何を…」

 

音を立てて世界が作り変わる

 

『やっぱりお前は居る訳か…碑文使い以外はこの空間を作った奴が狙わない限り本来存在しないはずだが…お前は違う…つまり、此処は疑似的にネットの中なのか?』

 

「あ、あのー?」

 

『次だな、色々試すが構わねぇよな?』

 

「え?オレの意思はどこ?」

 

『別に殺しゃしねぇよ、例えばお前…ゲームの中にいた時ケガはどうやって治してた?』

 

「そりゃ、回復アイテムを…」

 

『…待ってろ、ゲームのデータを持ってくる』

 

「え?本気?」

 

『当たり前だろ、一発で治るかもしれねぇんだ』

 

確かにこの怪我が治ればありがたいし…それに越したことはないけど…

 

『ほら、回復アイテムの癒しの水だ…こんな形してるんだな』

 

液体の入った瓶を渡される

 

「やっぱりゲームの視点と違う形なの?」

 

『まあな、とりあえず使ってみろ』

 

「…飲むの?それともかけるの?」

 

『幾らでも用意してやる、両方試せ』

 

「えぇ…オレモルモットじゃないよ!?」

 

『いいからやれ、死にはしないだろ、回復アイテムなんだしよ』

 

恐る恐る飲む

 

「…水だ」

 

『名前も水だしな』

 

「……回復してるのかな…痛みは、引いた気がしなくもないけど…」

 

『次だ』

 

「…え、これかけるの…?沁みそうなんだけど…」

 

目が怖い…

 

「冷たっ!あ、でも…お、おお!?おぉぉぉ!?き、傷が無くなってる!痛くない!」

 

『マジかよ…』

 

「すごい!凄いよ!」

 

『…これ、解いたら傷が復活するかもな』

 

「えっ」

 

『ネットの中でだけのことならよ、リアルの体は治癒されて…待て、すごくややこしいな…お前の体は現実のもので…俺の体も現実のものだよな…これは俺もリアルデジタライズしてるのか?』

 

「…確かにややこしい…これ、どうなるんだろう」

 

『とりあえず一度現実に戻してみるか』

 

周りの情景が元に戻る

 

『どうだ?」

 

「…傷は、消えたままだ…動いても痛くないな…」

 

「…つまり、本当に治るのか?俺も試すべきか…?」

 

「あのー、質問なんだけど、回復アイテムなんてどうやって取り出したの?」

 

「んなもんスケィスでハッキングしてサーバーから掻っ攫ったに決まってんだろ」

 

万能だなぁ…

 

「スケィスがあればなんでもできる…って事?」

 

「いや、俺のゲームのデータから吐き出しただけだからな、普通ならこうはいかねぇ、元々俺のデータとスケィスは繋がってたんだ…あー…ややっこしいな…」

 

「要するに…ハセヲのキャラと、現実のハセヲのパイプ役がスケィスって事でいい?」

 

「…それでいいか、そのパイプを通して回復アイテムを取り出した…まあ、できるかはわからなかったから今初めて試したんだが…これなら色々悪用できるな」

 

「…うっわぁ…悪い顔…」

 

凶悪犯と見紛う程の悪人面だ…

 

「よし、次はどれを…」

 

「提督、佐世保から問い合わせが来てますよ」

 

「大井か、なんの問い合わせだ」

 

「回りくどい言い方でしたが…神通がまた暴れてるのではないか、と」

 

「は?」

 

 

 

 

 

 

 

佐世保鎮守府

提督 渡会一詞

 

「…瑞鶴…問い合わせはしたが、間違い無いのか?」

 

「強襲された足柄さん曰く背後から急に襲われた…抵抗どころか振り返ることも敵わなかったって、攻撃は全て足技、蹴りだけでやられた上に…意識を失う前に一瞬だけ黒い姿を見た、って言ってた」

 

「……そうか、だが件の神通はまだ病床に居るという回答だった」

 

「それ本当なの?もしかしたら向こうが隠してるだけなんじゃ…」

 

「……考えたく無い可能性だ、庇ってるにしてもこれは問題として大きすぎる…」

 

今は瑞鳳達もまだ帰っていない、不知火は明日の到着…

 

「…襲撃された場所は陸地だったな」

 

「そう、発見時足柄さんは地面にめり込むように倒れてた…本当によく生きてたと思うけど…」

 

「全くだ…しかし…どうするか…」

 

「正直な話、狙いは私達じゃ無い気もするんだよね…わざわざ陸上で不意打ちしてきた訳だし…」

 

「…今後1人での外出を控えるように呼びかけてくれ、龍田にも忙しくなると伝えておけ」

 

「ねぇ、提督さん、ちょっと聞いて欲しいんだけどさ…」

 

「………何?なら何故そうしない」

 

「…秘策は伏せた方がいいよ、足柄さんは強いかもしれないけどね…もうワンランク上じゃ無いとダメ、勿論命の危険があるならそれは別だけど」

 

「………任せる」

 

「さんきゅ、あ、そうだ提督さん、不知火に迎えを出さない?」

 

「…そうだな、明日、龍田に行かせてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

呉鎮守府

軽巡洋艦 神通

 

「…脚技だけで甚振った…」

 

「身に覚えはないんだよね?」

 

「当たり前です…!私は許可なく外に出たりはしてません!」

 

黒い服に身を包み、わざわざ脚技だけで…

確実に私を意識したやり口…

 

提督の温情で私の行動は表に出さず処理をしてくれた…が、それが裏目に出た…

 

「私がそいつを処理します」

 

「ダメ、今動けば一発でアウトだよ…アリバイ作りに専念してて」

 

「………」

 

なんとも歯痒い…

 

 

 

 

 

舞鶴

提督 徳岡純一郎

 

「はぁ〜…結局…こんだけ遅くなっちまった……もう、別のやつが着任してたりすんのかねぇ…」

 

そうなると…帰る家がないって事だ…

 

「……考えたくは、ねぇなぁ…」

 

どこか、足が重い…

歩くたびにどんどん体が重くなる…そりゃそうだ、俺自身が今の状況に納得してねぇんだ、こんなもん持って帰って…俺はアイツら何をさせるつもりなんだ…

そもそも…俺は受け入れられるのか?

 

「はぁ…あ?」

 

…おかしい、何故こんなに背中が重いんだ?

背中に手を回す、何かいる

 

「ようやく気づいたっぽい?」

 

「夕立か…?お前、なんで…」

 

「何回呼びかけても気づきませんでしたから心配しましたよ」

 

「五月雨も居たのか…」

 

「…流石にひどくないですか…?」

 

「すまん…なんでわざわざ出迎えなんて…」

 

「帰ってくるのが遅いから当然っぽいー!がるるー!」

 

「噛み付くな!…そりゃ悪かったな……はぁ、杞憂だったかぁ…」

 

帰路に着く

寒空の中、ゆっくりと歩く、なんだこの景色を見た事か

 

 

 

 

「…がる?」

 

「……つけられてますね」

 

つけられてる…か

いつからだ?

 

「今鎮守府に連絡しました、多分誰かが来てくれると思いますけど…」

 

「でも、つけてる人も襲撃狙いならその前に来るんじゃないかしら?」

 

振り向く、中学生程の背丈で全身黒尽くめ…フードを深く被ってるせいで顔もわからんか…

 

「艦娘か…?」

 

「やるなら、来るっぽい」

 

夕立が前に立ち、指で挑発する

 

「………」

 

後ろに退がる…

やる気は無さそうか

 

「追うなよ、夕立」

 

「……了解」

 

その辺の命知らずな通り魔とか、そういう感じじゃない…

隙を見せたら殺されるんじゃないかって嫌な感じだ

 

「五月雨、とにかく数を集めるように連絡しろ」

 

「もうしてます、5分で来ます」

 

五月雨がそういった瞬間に黒尽くめの奴はこっちに向かって走って距離を詰めてきた

 

「速い!けど、負けないっぽい!」

 

 

 

 

駆逐艦 夕立

 

殴り主体の戦い方…?いや、牽制だけ…

狙いは蹴り…

 

大ぶりな蹴りを掴んで引きずり倒す…!

 

「襲ってきた割には大した事ないのかしら?」

 

パンチが重くないから小柄な軽巡とかじゃない…

このレベルの打撃なら…来た!回し蹴り…!

 

「もらっ…」

 

受け止めたのに…なに…この威力…

 

「ゴホッ…がはっ…!」

 

「夕立!」

 

鉄の塊で殴られたみたいな衝撃…内臓にもダメージがあるかもしれない…

パンチもわざと手加減していたの…?

 

フードから覗く口元が笑っている…

こいつ…ヤバい…!

 

近づいてきた…やられる…!

 

「っ!」

 

銃声……え?コイツ…

 

「五月雨…お前、銃なんて撃てたのか…」

 

五月雨の撃った銃弾は脚に当たった、血が見える…けど、そうじゃなくて…金属音がした…?

確かに艦娘は頑丈、だけど弾丸が当たってそんな音がするわけがない

 

「射撃には自信がありますから…でも提督、銃なんか持ってちゃダメですよ…どこで拾ってきたんですか」

 

「っ……!!」

 

「ねぇ、何やってるの?」

 

弥生ちゃん…!?いつの間に…

予想より来るのが早いけど、これなら助かった…!

 

「弥生ちゃん…こいつ敵っぽい!」

 

「ぽい…?敵なの?」

 

「敵!てーきー!!……ぽ?」

 

え、なんでコイツ急にしゃがんで…

この音何…?ギチギチって…

 

「い!?」

 

「跳んだ!?」

 

「…流石に当たりませんね…あんな距離を飛べるなんて…本当に艦娘なんでしょうか」

 

「おい!夕立、大丈夫か!?」

 

…あの音はなんだったの…?それに…あんな跳躍出来るわけが…

 

じゃあさっきの奴はサイボーグ…?

だとしたらあの蹴りも説明がつくのかもしれない…でも、うーん…

 

「お、おい、夕立?」

 

「へ?あ、大丈夫っぽ…った…!いたたたぁ…!…やっぱダメっぽい〜、提督さんおんぶして〜」

 

折れてる…絶対折れてる…入居で治ればいいけど…

 

「ああ、急いで戻るか、弥生、他の連中は」

 

「…え?弥生、ドーナツ…買いに来てた、だけだよ…?売り切れてたけど」

 

「……そうか、なんか美味いもんでも奢るよ…悪いな、助かった」

 

「ん…嬉しい…です」

 

「提督ー!助けに来たよー!」

 

「…騒がしくなってきたな…」

 

提督さん、嬉しそう…

 

 

 

 

 

 

宿毛湾泊地

提督 倉持海斗

 

「あのー、長門、別に僕は松葉杖があれば十分だから…」

 

「…そういうわけには行かん」

 

残念ながらというか、分かってはいたけど長門は人のお願いを聞くようなタイプではなかった

あの後長門は私が車椅子の代わりになろう、などと言い出し椅子と襷で背負子のようなものを作り、僕の移動を手伝ってくれるようになった

 

「ここの奴らは、みんなお前を慕っている…お前と打ち解けん限り、過去の仲間とすら話せんのだ」

 

という事らしい

 

「そういえば…長門は明石と仲が悪いの?」

 

「……そう見えるか」

 

あからさまに明石が避けてるように見える

こういう場合、明石に聞いてもはぐらかすだろうし…

 

「昔、私の盾になって沈んだやつがたくさんいた…我々戦艦は頑丈だ、そんな事をしなくてもいい、何度もそう言った…だが上はそうは考えなかったんだ…」

 

「…それで?」

 

「…その時は、明石とは仲が良かった、色々な話をしていた…アイツも怪談とかで私を怖がらせて楽しんでいたさ…でも、ある日3人一度に沈んだ…流石にヤケになった…こんな事なら私が沈みたかった、そう言った」

 

「……それは、明石が怒りそうな事だね」

 

「…喧嘩した、その上…それが最後だった」

 

…タイミングが悪かったんだろう…きっと生きて帰ることができれば仲直りはできていたはずなのに

 

「…明石の怒りそうな事だ、と言ったな」

 

「うん、それがどうかした?」

 

「……その割には、ここの全員を怒らせるくらいには空気が読めないと聞いたぞ」

 

「…そうだね、僕はみんなを怒らせたり、困らせたりばかりだよ」

 

…僕は無謀な事をするつもりはない

だけど、自分の命を賭して仲間を救えるのなら…躊躇わないと思う

 

「やはりお前の目は嫌いだ、人殺しの目をしている」

 

「背中合わせで見えないじゃないか」

 

「………」

 

これは、もう少し時間がかかるかな

 

 

 

 

 

戦艦 長門

 

「司令官、今良いでしょうか」

 

「朝潮、どうかした?」

 

「…可能でしたら、長門さんには外していただけると」

 

「…必要になれば呼んでくれ」

 

随分嫌われたものだ…わずかな時間しか立っていないというのに、自分の才能が恐ろしいな、全く……

 

ん?声は聞こえないがここからなら様子が見えるな…あの駆逐艦は随分と楽しそうに話している…嫌っている相手に向ける表情でない事くらいは…私でもわかる

 

ん?アレは…北上と…軽巡洋艦だな、確か阿武隈だったか?

そういえば北上は不幸な事故で声と記憶を失った、と言っていたな…1人では杖なしで歩くこともできないと…

 

聞いた時はあの人間に殴りかかろうと思ったが…

ん…?北上と朝潮の表情はよく似ている…だが、阿武隈の表情は不思議な感じだな…敵意ではないようだが…

 

「あら、長門さんじゃない」

 

「…暁だったな」

 

「どう?こっちは、やっていけそうかしら」

 

「私と面と向かって話してくれるのは君だけだ」

 

「…ま、私も複雑な気持ちだけど…今回は許してあげるわ、だって司令官は貴方のことを許してるんだもの」

 

「……わからんぞ、心の中でははらわたが煮え繰り返ってるかもしれん」

 

「…そんな事ないわ、優しいから」

 

また…優しい、か

 

「優しければ全て許すというものではないだろう?」

 

「…司令官は許しちゃうのよ、響の悪戯も、雷の行き過ぎた気遣いも、私のワガママもね」

 

「…それは君達だからだろう」

 

「そんな事ないわ、ここのみんなを平等に扱おうとしてる…必死にね」

 

扱おうと、してる…?

 

「特別な奴がいるのか…?」

 

「……みんな特別なのよ、仲間がやられたなら…絶対にそれを許せない…司令官はみんなの前でこそ平気な顔をしてるけど…きっと苦しむ気持ちも強くあるはず…誰よりも曙さんの事を気に病んでるわ」

 

「曙…?あの曙か?」

 

「…2人居たのよ」

 

居た…か

 

「沈んだ訳じゃなくて、横須賀に行ったの」

 

「栄転、というわけでは無いのか…?」

 

「……脳に、チップを埋め込まれて…意識を奪われたらしいの」

 

「な…」

 

やはり、人間は…

 

「…大好きな司令官の事を殺そうとしたらしいわ、司令官は…曙を傷つけたー、なって言ってたけど…誰よりも苦しんだのは司令官だと思うの」

 

「……私には、あの人間の苦しみも、その曙の苦しみも理解できない」

 

「……大好きな仲間に殺されそうになる苦しみと…愛する人を自分の手で殺めようとした苦しみ…私にもわからないわ、言葉にするのなんて…とっても簡単」

 

「……重いな、君の言葉は」

 

「…そんな事ない…軽くて軽くて…嫌になるわよ」

 

気づけば…あの人間の周りには色々な奴が居た

明石も、青葉も、翔鶴も、赤城も、加賀も、摩耶も…

 

「…君は行かなくていいのか?」

 

「え?」

 

「…あの男を見てる君の表情は…あそこにいるみんなの表情によく似ている…」

 

「……隠せないものね…それにしても意外だわ、長門さんもっと鈍いのかと思ってた」

 

「…私は鈍いさ、低速だしな」

 

「………あははっ!思ったより面白いことも言えるのね!…お言葉に甘えるわ、また夜に」

 

「あ、ああ?」

 

夜に何かあるのか?

 

 

 

 

「随分と楽しそうにしていたな」

 

「楽しいからね、みんなと話すのは」

 

「…そうか……」

 

「どうかした?」

 

「私と話してくれる奴はいないだろうからな」

 

「暁とは仲がいいみたいだけど…?」

 

「………見てたのか」

 

「たまたま見えただけだよ、それに長門もこっちを見てたじゃないか」

 

「……互い様、という事にしておこう」

 

「そうだね、悪いけどまだ仕事があるから執務室までお願いできる?」

 

「…ああ、幾らでも運ぼう、それが私の仕事なんだからな…」

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