元勇者提督 作:無し
番外 姉の矜持
駆逐艦 山雲
「え?あの…」
「お帰りなさい、大潮」
なぜ私をその名で呼び、抱きしめるのかはわからない
私にはその名の記憶はない、捨てた記憶なのだから
「…私は…山雲でー…」
「貴方が自分を山雲だと言い続けるなら、私はあなたをそれ以上に大潮と呼びましょう」
「…えー…っとぉ〜…」
「何故、あなたは私と再びあった時、山雲と名乗ったのですか?」
何故…
わからない、でも、大潮はもう居たからではないのだろうか?
私自身、よくわからないのだ
「あなたは、私の妹です、永遠にそれは変わりません、たとえこれが艦としての記憶でも、あなたにとって私が同じ此処のドッグで生まれただけの他人でも、私にとっては妹です」
「…その」
「嫌ですか?嫌と言われても退くつもりは有りませんが」
嫌なわけではない、この暖かさにどうしようもなく胸がこそばゆい
まだ私にはこの感覚は刺激が強すぎて、なんと答えればいいのか、どうすればいいのかがわからない
「では、山雲と呼びましょうか?」
山雲、大潮、同じだ
なんと呼ばれても同じだ
…同じなはずだ…
「…やっぱり大潮の方がいいんでしょう?」
駄目だ、そう呼ばれては、私が揺らぐ
「……うん」
なら私はなんでそう答えたんだろう…
大潮と呼んでほしい、と肯定したのだろう
「その緑のカチューシャ、よく似合っています、とても悲しい事に、貴女が山雲に成ったことは間違いようのない事実です、でも私は貴女をいくらでも、好きなだけ大潮と呼べます」
「……うん…」
「…誰も貴女を責めたりしません、私達は姉妹で、大切な仲間です」
それはそうだろう
だけど大潮はなんで言うんだろう
「…貴女は優しい子ですから、良く知ってます、大潮の事が気になることもわかっています」
やはり、姉には敵わないものなのか
「大丈夫、そんなに気になるなら直接聞きましょう?あの子も優しい子です」
司令官を殺そうとしましたが、と笑顔でいう姉の顔は少し怖かった
「大潮…と、大潮ですか?」
「ええ、大潮、貴女はこの子を貴女と同じ名前で呼ぶことに抵抗はありますか?」
「全く!!だけど連携を取るときに少し不便なのかなって気になります」
そう言われればそうだった
「…大潮」
「はい?」
「はい!」
「成る程、これは不便かもしれません…アオボノさんの様にニックネームとして山雲と呼ぶのはどうですか?」
「…ニックネーム…?」
「いいですねぇ!大潮が山雲って呼ばれちゃいましょうか!?」
…本当にこの大潮は、優しい子だ
きっと本音は嫌なんだろう、自分の名前を明け渡すんだから
「……いいえ〜、私が山雲で結構ですー、本当に山雲に成ってますし〜」
だから私は負けない
「……大潮…?」
「ねぇ、大潮さん?」
「は、はい?」
「…何か私に負い目でもあるの?」
「え、え!?」
「ほらほら、一応生まれたのは私の方が先なんだから…お姉ちゃん、には隠し事は良くないですよ〜」
私だって、姉として振る舞うんだ
「あ、あのー…」
「そんなに言い難いんですか?大潮の殺意を語って司令官を殺そうとした事」
「あらぁ〜、司令さんに手を出しちゃダメ、よぉ〜」
「それは荒潮っぽいと思います!!」
「だからお仕置き、山雲の攻撃〜、どうかしら〜?」
「わぁぁ!?なんとか生還してみせます!」
「…デコピンなのにすごい音が…」
「うふふ〜」