元勇者提督   作:無し

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闘争の始まり

鎮守府遠洋

 

雷巡北上

 

「全員展開して、複縦陣から単横陣、敵影に警戒」

 

座標的にいえば、ここで戦闘があった

ここにカイトがいた、なぜそこまできたかといえば、ただの気まぐれ

敵がおらず、特に消耗もしていない

なので進めるだけ進んでみただけ

 

「…なにかある?」

 

「…いる」

 

「いるね、それも大量に」

 

発見こそ遅れたがイ級のなりそこないのような、魚に近いようなものが浮いている

 

「…なにこれ」

 

「イ級じゃないの?」

 

「とりあえず、仕留めていきますか」

 

抵抗する力もないようで、倒すことは容易だった

そして進めば進むだけ、いる、弾が足りないと感じるほどに

中にはイ級そのものもいれば、魚とのキメラまでいた

 

そしてその先に一つの置物が鎮座していた

 

「…水晶?」

 

「待って、全体停止…近づけない」

 

心臓が鳴る

進めない、プレッシャー、冷や汗が吹き出す

 

「…引くよ、不味いのが…いる」

 

「……何が?どこにも何も見当たらないけど」

 

そう、ここにはいないはず

だけどみられてる

どこから…?

 

「なんだろうこれ…この感じ…とにかく、すごく嫌な感じがする、再編成してから来よう」

 

 

 

『…ア゛ア゛ァ゛…』

 

 

 

帰路は、とても恐ろしい道のりになった

新型の空母の敵が現れたのだ

 

「もうすぐ日が暮れるから仕留めきれないなら夜戦に持ち込む、やれそうならやるよー」

 

「北上さん!前方から爆撃機がきてます!」

 

「ルートから外れてるから大丈夫、朧と曙Aは左右から道を塞ぐよう雷撃して、私と残りで真正面から詰めるよ、それじゃあ散開」

 

単縦陣が崩れる

 

「曙Bは私の横に来て、漣はそっちにつきなー」

 

「Bってなによ…」

 

「わかり辛いからね、はい、砲撃開始ー」

 

複縦陣で前方はつめる

 

「敵進路確認、東、朧、引きなー、そっち向いてる、岩陰とかに行っちゃダメだからね、待ち伏せされてるかもだし」

 

『はい!』

 

朧が速度を落として進路を変更している間にこちらから雷撃を仕掛ける

 

「曙Bー、速力落として私たちの後ろについて、単縦陣からの同航にするよ」

 

「了解!」

 

曙が速力を落としたことで雷撃の道が開く

 

「さて、20門まずは行きますかね…それっと」

 

砲は打ち切っているが、魚雷なら十分に仕留め切れる持ち合わせがある

 

「朧、下がって来ながら砲雷撃、進路を潰して、曙Aは後ろから攻める、相手の進路を潰してるからスピードは出ない、蛇行しながら来て、雷撃の恐れがある」

 

『『了解』』

 

「第二射用意、全員行っちゃってー」

 

『敵雷撃!9時の方向!備えます…被弾しました!」

 

「朧はさっさと引きなー…こりゃ伏兵アリだね、甲標的出したし、全員集合して撤退戦に持ち込むよー」

 

「敵!追撃に来てます!」

 

「数の変動ある?曙Aの方から何が見える?」

 

『人形艦が複数…あの砲のサイズ…重巡以上よ…!』

 

「あー、出て来ちゃったかー…全速で逃げて、雷撃は気にしなくて良いから、潮ー、弾残してるよね、貸して」

 

「はい!魚雷もありますけど…」

 

「潮が曙と敵の道を遮るように撃ちなー、こりゃ日が暮れるとこっちが不味いね、回り込むように帰るしかないかなぁ…」

 

「朧合流しました!」

 

「朧は曙Bと漣の間に入って、複縦陣を再構築、如何しようかなぁ…例のパワーは私は出せないしなぁ…というかあのすごいのは?」

 

「…試したんですけど出ませんでした」

 

「私も…」

 

「ま、そうじゃなきゃ終わってるはずだよねぇ…あれ?ぼのAは?」

 

『略すな!!西から合流するわ!」

 

「…あ、いた、待って…上空の艦載機は…あ…これ不味い…弾着確認射撃だ、曙Bと朧を先頭にしてそのまま突っ切って、私と曙Aは別ルートで合流する、とりあえず鎮守府に向かう事、それから緊急信号を出して援軍をもらって」

 

とりあえずこの子達だけでも返さないと不味い

 

「りょ、了解!」

 

「んじゃ、またね…曙A聞こえたね、何か質問は?」

 

『ないわよ!進路は!?』

 

「北、北上さまだからね」

 

『言ってる場合か!』

 

「…ま、お利口さんならわかってるよね」

 

来た、ギリギリ抜けられる

 

『大丈夫!?姿見えなくなったけど』

 

至近弾、しかも口径が大きすぎて…吹っ飛んじゃった

 

「大丈夫大丈夫、そのまま進みなー、速力落とさないでね、置いてくよ」

 

『背中見えないんだけど!ほんとに置いてくなー!!!』

 

曙の背が見えた、あのままなら妨害さえなければ帰れる、はず

 

「…よし、やるか」

 

そろそろ日が沈む

灯火が消える

 

「どこぞのニンジャじゃないけど…夜の方が良いのかもね、私」

 

再び動き出す

 

「北上さまの北上スペシャル味わいなー」

 

放てるだけの魚雷を放ち、甲標的を再び沈める

 

「手が足りないなら、倍の速さで動くだけって誰が言ってたっけ…ああ、多摩姉ぇだ、おっとりしてんのになぁ」

 

さて

 

「さて、ハイパー北上さまとやり合おうってバカはどこだー」

 

黄昏に向かう

前方の戦艦と空母に向かう

 

「………」

 

水上機がそばを通る

見る事もしない、距離を測られてる

 

そしてさらに上から敵機複数

 

「上に対処する装備積んでないんだって」

 

主砲を持ち上げ、放つ

敵機には当たらなかったが、思わぬ大爆発が起き、敵機は散る

 

「うっそ、あっちの弾と当たったの?…これは幸運の女神様がついててくれてるのかなぁ…じゃあ生きて帰るまで面倒見てもらうかぁ」

 

笑ってしまうほどの幸運だったが、2度起きないことは理解している

あと僅かな時が経てば敵は艦載機を使えない

 

「ならまずはそっちだよねー」

 

第一陣の魚雷が爆発する

 

「敵艦に着弾を確認、さて、足がない以上…逃がさないよ」

 

甲標的の妖精から発射の通信が来る

 

「よーし、戻っといで」

 

間も無く爆発

 

「敵戦艦大破確認、砲も撃たなくなった…次」

 

焦った、焦ったから気づかなかった

自分が伏兵ありと判断した理由である雷撃の跡

 

「…え…」

 

まさか雷巡が雷撃されるとは思っていなかった

 

 

 

 

 

 

 

「…やっちまったねぇ…」

 

真っ白な世界…だったら良かったのに

深い青に包まれた世界、これが深海なのかあの世なのかは知らないけど

 

「やな感じだなぁ」

 

「そうかもね」

 

「…へぇ、こんなとこにいたんだ、提督」

 

「僕は君たちの中にいる、ちゃんと君たちを見てるから」

 

「…そっか、で?何?私の中から何を覗いてたの?やーん」

 

「北上が負けそうになった瞬間かな」

 

「…負けてないよ」

 

「うん、まだ負けじゃない」

 

「…もう一回、もう一瞬戦える…」

 

「大丈夫、見てるから」

 

「…はー…じゃあダメ提督にいいとこ見せるかー」

 

 

 

 

気づけば再び空中に体が放り出されていた

このまま海面に衝突した瞬間、もう力は入らないだろう

だから

 

「まだやるよ…!」

 

足をつく、踏ん張る

雷撃して来た敵を見て、そして砲塔を確認する

 

「…よし」

 

次の標的に目を向け、進み始める

カチリと音がしたと思えば砲塔が火を吹き

 

「まず1つ、今日の北上さんは凄いよ、なんでかって?なんでだろうねぇ」

 

パリン…パリン…と音がなる

 

ダンと音を立てて、踏みしめる

スカートのように滑るのが本来の動き方だが

そんなじれったいことをする気にはならない

打ち切った魚雷管をパージし、走る

 

「まだなんもしてなかったもんね、お返しするよ」

 

ゼロ距離

ここまで来てようやく意図がわかったのか防御姿勢をとる空母

それに腕をクロスし、ただ突撃

 

のしかかるようにして、砲塔を押し付ける

 

「…はぁ…悪いね、死ぬまで打つから」

 

宣言通り放って、装填放つ

 

ガラスの割れるような音が響く

 

「……はぁ…我ながら無茶苦茶だなぁ…あ、だめだ…今倒れたら沈む…せめて艤装つけないと…」

 

怪我自体は中破程度だが、艤装のほとんどを捨てたせいで浮くのは足だけ

このままでは確実に沈む

 

「…ま、いいか…見てた?ちゃんと…勝ったよ」

 

倒れる前に、戦艦にも一撃撃ち込む

また割れた音がした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ん?」

 

暖かい

 

「死んだら湯船に浸かってるもんなんだねぇ…これが本当の極楽…」

 

「馬鹿言ってんじゃないわよ、私と一緒に行くんじゃなかったの?」

 

「…言ったっけそんなこと」

 

もう構う気力もない、でもこのままだと不味いかな

すごくしつこいしうるさいんだよねこの子

 

「…はぁ…ったく」

 

お?ついてるな、今日は楽だ

 

「呉の方に連絡しといたから、アンタらの姉妹がまた無謀なことしたって」

 

「…え……」

 

心臓が凍るってこういうこと言うんだよ多分

ヤバいなぁ…また怒られるじゃん…曙一人よりずっと面倒…

 

「アタシ一人よりずっと面倒だって思ったでしょう?」

 

「…まあね」

 

「残念ながら二人よ」

 

「………げ…」

 

曙の影から曙…これは…

 

「さらにいうと私たちもいますぞ!」

 

「まあ、その…私は怒ってるとかより感謝してるので…」

 

「わ、わたしも…」

 

「………だから駆逐艦嫌いなんだよ…ぶくぶくぶくぶく」

 

決めた、今日は私の轟沈日だ

今決めた

 

「ついでに明石と赤城のフルコースも待ってるわよ」

 

既に決まってた、の間違いだったかな…

 

 

 

 

 

「……はぁ…疲れた、戦闘より疲れた…」

 

「自業自得です、でもよく帰って来ましたね」

 

「え?誰かが引っ張ってくれたんじゃないの?」

 

「いえ?聞いてる話だと艤装もないまま、ギリギリ港にしがみついてたと…」

 

「………やっば…記憶にない…」

 

最後の記憶は戦艦に砲弾を打ち込んだところまで

 

「……いや、違う…」

 

ーーあ…りが……ウ…ーー

 

「…調子悪いから今日はそのまま休むね、じゃね、明石」

 

「お大事に」

 

誰の声?知ってるのに…

 

「わかんないなぁ…誰の声だっけ」

 

ベッドに体を沈める

 

提督は見てたはずなのに

何も答えてくれない

また会おうとしたら…怒られるか

 

 

「………いや…わかる……」

 

そう、そうだった

寝てる暇なんてない

 

「…でも……まさか………そんな…」

 

海を目指す

 

「間に合え…間に合え…!」

 

港が見える

そして想像通り、遠くに3つの人影、港にあるのは私の艤装

 

「…そっか…まだ、か…」

 

もう遠くにいってしまった彼女たちにこの声は届くのだろうか

 

「…ありがとう」

 

ぽつりと一言呟いた

 

遠くの人影は手を振ったように見えた

 

「…次あえばまた敵かなぁ…?戻ってこれないならそうだよね、じゃあ、次も私がひねってやるかぁ…」

 

艤装を拾い、付け直す

甲標的もある

妖精に聞いてみる

 

「誰だった?」

 

予想通りの返しに私は満足した

 

「じゃ、また会おうね、長門、翔鶴、そして摩耶」

 

誰にも言えない、これだけは

 

言ってしまえばみんな躊躇う

 

だから、私の胸に秘める

 

そして、信じた

 

「私が救う」

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