元勇者提督 作:無し
給糧艦 間宮
「……はぁ…いつみても、涙が出てきそうになりますね…」
離島鎮守府に移籍してからずっと思っていた
みんな極めすぎている…と
私が前居たところでは一航戦ペアは毎食誰よりも大量にご飯を食べていたし、駆逐艦はもっと少食なことがほとんどだった
これはある日の記録
「ねぇねぇ間宮さん」
「なんですか?島風ちゃん」
「今日の定食のお造りってどんな食べ物なの?」
あー、建造されたばかりだからあんまり分かってないのかしら
「お刺身とも言うんですけど、生魚の切り身です、ほら、お寿司に乗ってるお魚みたいな…」
「…お寿司って…あのお寿司?」
…えーと?
「どうかしましたか?」
「…お寿司と何が違うの…?」
「うーん、あ、これ、これですよ、これがお造りです」
現物をみせる
鯵、鱚、鰤の三種はみんなで獲った物、それに冷凍のマグロを加えた四種のお造りにあしらいは大根と人参
我ながら完璧な出来栄え…!
「……え?これってこのまま食べるの?」
…すごく不満そうな顔してる…!?
「しょ、醤油はつけますよ…?」
何がダメなのか全くわからない…!
「………なんでお寿司じゃないの?」
「…お寿司の方がよかったですか…?」
「ご飯があるからお寿司の方がお腹いっぱいになるし…」
「…っ…ぅっ…」
「間宮さん、なんで泣いてるの…?あ、私がわがまま言ったから…?ご、ごめんなさい!」
「…違うんですよ…毎食お腹いっぱい食べられるようにもっと工夫しますからね…!」
その日のお造り定食はもう少し豪華になりました
「うーん、あの時は本当に…環境を呪いましたね…提督さんはしっかりやってた…らしいですけど…あ、でもあの時はまだ明石さん任せか…」
毎食しっかり食べていたものの、電気の供給や貯蔵量が安定しないせいで日によっては何も食べることがないなんてこともあり得る環境だったから…
みんなの食事を預かるものとしては…すごく情けない気持ちになったなぁ…
「…あ、これ……」
嘆願書…潮さんと朧さんをキッチンに入れないで欲しいという…
「え、なんですかそれは」
「海鮮丼です!」
「パフェです!」
「「合わせて海鮮パフェ丼です!」」
「…お米の上に海産物…の上に、生クリームと…チョコソースと…フルーツ……?」
「チョコソースは醤油モチーフです!」
「フルーツと生魚も合うと思うんです!」
「………え、あの…」
おかしい、こんな食べ物を冒涜するようなも……え?実は美味しいのかな…
「食べますか?」
「………ええい!ままよ!」
端で切り身を掴み、口に運ぶ
生クリームと米とソースがかかっていたのには目を瞑る
「……不協和音…」
一つ一つはまともなのに、まとまらない…
「うん、甘くて美味しいね!」
「やっぱり海鮮丼は美味しいなぁ……」
あ、うん……2人とも舌がおかしいんですね…
え?でももしかしたら私がおかしいのかな
「……ちょっと気持ち悪くなってきた…」
「……思い出したら…うぇっ…」
慌てて日記を閉じる
「…あ、発注表……ん?今回のは香辛料が少ないな……あ、一航戦のお二人の発注がまだだ…確認しないと」
「あ、いたいた、赤城さん、加賀さん、香辛料のことなんですけど……」
「あ、ちょうどよかったです」
「私達も出向こうと思ってましたから」
「そうなんですか?じゃあ早速、今回はどのくらい頼みます?」
「……いえ、その…」
「私達、これを機にすっぱり辛いものを絶とうと思って」
「へー、そうだったんですか……えっ…えぇぇぇぇぇ!?」
「…予想はしてましたけど、やっぱりこうなりますか」
「応援してくださると嬉しいのですが」
「え、あ、はい!もちろん!!お二人の食事は見てるこちらとしても身体が不安になる物ばかりでしたので…」
「……ご心配をおかけしました」
「……今更だけど、私達かなり思い切りましたね」
「それでも、きっと良いことですよ、私は来た当初は本当に驚きましたから……真っ白だったり真っ赤だったり……」
「塩ばかりというのは飽きますからね」
「……人の体なら死んでいた自信があります」
「でも、お二人ともよその空母の方に比べて少食だったのは辛いものを食べてたからなんですよね?」
「それも違うと思いますよ、私達は艤装への補給が大量に必要なので、それを自分もこれだけ食べなきゃいけない…と勘違いして、よその空母は大量に食べるんだと思います」
「私達が街に出て普通のものを食べた時も、あまり多くは食べませんでしたから」
「……なるほど、これは学会に出したら賞が取れそうな…」
「……どんな賞ですか…」
「間宮さ〜ん」
「あ、漣さん、お仕事終わりですか?」
「ん、今帰ったところですぜ、って訳でさー、お腹ペコリンヌ!なんかアモーレ!」
「アモーレは愛って意味だったはずデース」
「ノンノンノン、フランス語だともっとって意味で何か頂戴って使い方するんですぜ?それでも元EU加盟国の戦艦ですかい!?」
「もう栄光ある孤立したデース、というか私は日本艦でありたいデース…三枚舌はノーネ…」
「それよりご飯っ!ご飯っ!」
「うーん…今出せるものは…お寿司とかなら軽く作れますよ、あんまり派手な奴じゃなくて申し訳ないですけど」
「……寿司ですと…?」
「……何か?」
「サザビー!私アレが食べてみたいネー!」
「さっすがゴウチャン!行きましょうぜ!マイロードを!」
「え?え?」
「間宮さん!戦前のお寿司食べたいです!」
「デース!」
「……戦前の…お寿司?ああ、そういうことですか…晩御飯食べられなくなりますよ?」
「動き続ければどうという事はないッ!」
「もうペコペコネー!」
「……じゃあ、作りますね…巨大なお寿司」
「やったぁ!」
「うーん、なんでお寿司が今のサイズかってさぁ……そりゃ美味しく食べられるからだよね」
「これが江戸前握りスシ…デスカー…普段食べてるやつの5倍はありマース」
「戦前は2.3個でお腹いっぱいになるくらい大きかったらしいですからね……しかもあんまり質も良くなくて安い物ばかり使ってたから今とは違ってファストフードとして親しまれてたとか」
「それは知ってるんですよぉ…だから気になったのに……これじゃバルジが気になっちマイマイマイっチング!」
「運動頑張って〜」
「鬼!悪魔!間宮!」
「まさか日本海軍で間宮を鬼や悪魔と同列視する人が出るとは思わなかったデース……」
「あ、間宮さーん、サンドイッチかおにぎりお願いします」
……来た…私の宿敵…明石さん
「はぁい!喜んで!!」
「うん、それで…こうなるんですよ」
「あ、なるほどねぇ…」
「ここはどうなんでしょうか」
大抵提督や他の方を連れてきて話しながら食べる明石さん
この人を夢中にさせるサンドイッチかおにぎりを私は作る!!
「今日はおにぎりですよー」
「あ、これあさりの佃煮だね、美味しいよ」
「ホントですね〜…あ、提督、此処なんですけど…」
……提督はしっかり感想を言ってくれるけど、明石さんは食事の時以外の軽食はあんまり無関心だなぁ…というか明石さんのやつはおかかだし…
私の心に火をつけたのは…明石さんですからね!
「はい、今日はサンドイッチです!」
「ありがとうございます……あ、これ、此処を繋ぐと動きますよ」
[ありがとうございます、美味しいです]
……北上さんも無感情にプラカードだけ向けてくるのかぁ…しかもまだ食べてないし…
せっかく良いタマゴサンドとフルーツサンドがあるのに…あ、そっちは茹で卵を潰した方のふわふわなやつ…
「!」
あ、思ったより北上さんは表情豊かなんだ
「!!!」
しかもタマゴサンドはだし巻き派かぁ…凄い勢いで食べてるし、本当に美味しそうに食べてるなぁ…これはやる気が出る!
「北上さん、聞いてます?」
[あ、ごめんなさい…もう一度お願いします]
明石さんはダメかぁ…
あ、今日も北上さんか…よし、だし巻きサンドを出そう!
「今日もサンドイッチですよー」
「ありがとうございます」
「……」
…?北上さんの反応が…
[ありがとうございます]
なんだか冷たい…!?
しかも、全然手を出さない…
「そうですね、此処はこれで……はい、そうしたいんですけど」
[この器具は?]
「扱いづらいですからねぇ…」
ま、全く食べる気配がない…なんで…?
「……ほとんど手をつけられず残されてしまった…なぜ…?昨日あんなに美味しそうに食べてたのに…あれ?」
[明日食べます、冷蔵庫に置いておいてください 北上]
「うーん…できれば出来立てを食べて欲しいけど…勿体無いし言う通りにしておこう…」
「あ、龍驤さん」
「おー、間宮やん、どないしたん?」
「……艦隊の相談室と名高い龍驤さんに聞きたいんですが!」
「……それは、阿武隈に聞いたから知っとるんやけど」
なんでも知ってるなこの人
「ちょっと何の気なしに体重計乗ったらしいんやわ」
「あ」
「……そう言う事やね、本人曰くサンドイッチを食べ過ぎた、とか」
「……なぁんだ…よかった……」
「ただでさえ動かれへんねんから、体重維持も難しいんやろな、神経質やとは思うけど」
「ですね…いやぁ、よかった……」
「ところで、コレ、対明石にどうや?」
「………た、タコ焼き器?」
「自分で焼く形式のタコ焼きなら集中せなあかん、どや?」
「……私の求めてるものじゃないですね…」
「……そうか…」
あ、今日は提督か……
「間宮さん、今日はおにぎりでお願いします」
「え?あ、はい!喜んで!」
おにぎりを指定してきた…
つまり今日はおにぎりの気分!絶対仕留める!
明太クリームチーズみたいな変化球から梅干しやシャケのようなストレートもバッチリ…!
「あ、これアサリだ、提督お好きでしたよね?」
「ありがとう、うん、美味しい」
……違う、これ好感度稼ぎに使われてるだけだ……
「もぉぉぉ!なんでこうなるの!」
「あれ?間宮、どうかした?」
「あ、提督……実は…」
「あー、明石はそういうところがあるからね……でも、それは僕が負担をかけちゃってるからだしなぁ…」
「いや、そういう事じゃなくて…」
「ううん、実際そうなんだ、僕も必死な時に何かを食べても味がわからないほど熱中してたりする事もある、明石は仕事中は軽食を挟んだとしてもその間もずっと全力で頑張ってるんだよ」
「……そうなんですか…」
「でも、明石は優しいから、話しかけてみたらどうかな?」
「……邪魔じゃないですか?」
「大丈夫だよ、優しいから」
「……わかりました!」
「お疲れ様です、今日は趣向を変えてクッキーとコーヒーにしてみました!」
「わ、ありがとうございます」
「へー…美味しそうじゃない」
「珍しい組み合わせですね?」
「……ああ、確かに、普段は北上さんか提督、夕張を連れ回してますからね、アオボノさんとっていうのはレアですね」
「召喚式の砲撃について研究してたのよ」
「成る程、じゃあお疲れですよね…コーヒー、お砂糖とミルクもありますけど」
「……じゃあ両方ください、ちょっと多めで」
「…なによ、ブラックは飲めないの?」
「違いますー!疲れてるから甘いのが良いんですー!」
「フンッ、お子ちゃまね……ヴッ…!」
「……ミルク、入れますか?」
「…遠慮しとくわ、熱かっただけだし?」
「へぇ〜?ホントですかねぇ〜?あ、このクッキー美味しい!」
「本当ですか!?頑張って作ったんですよ!!」
「うーん!コーヒーにも合うし、美味しいなぁ…!でも、アオボノさんにはこのマリアージュを味わう余裕があるんですかねぇ?」
「う、うっさいわね!!」
「あはは」
…本当に、話しかけてよかった…