元勇者提督 作:無し
駆逐艦 曙(青)
「…ずっとアンタが…」
仲間として、接していた
一緒に生きてきたのに…
「嫌いだった?お互い様よ」
「……」
応えられない、アンタの…アンタのことがどんなに大事でも
アタシにはそんな強さはない
「残念だが、お前はここの規律を乱しすぎだ」
古巣を蹴り出され
「……漣達のことを考えろ、お前がここから大人しく消えるなら、アイツらの安全を保証しよう」
呉に移って
「資料より礼儀正しいみたいだが、あんま前のことは気にすんな、個性だと思ってるから好きにすりゃいいぜ、クソガキ」
いきなりクソガキ呼ばわりされた
久しぶりに漣達と会った
「そっか、あいつら代わりの私がいるんだ」
アイツらの隣には別の私がいた
「口数少ないわねぇ…あんたほんとに私なの?」
最初っからいけ好かないやつで
「ベースに近いのはあんたかもね、私は提督にクソをつけたりしないし」
「へー?ハーン、喧嘩売ってるわけ?」
「好きに取ればいいじゃない」
喧嘩から始まったっけ
初戦は惨敗した…完膚なきまでに負けた
そして私は離島鎮守府に移った
曙が2人いた、AとBなんて北上には言われてたけど
いろんな事をした、いろんな話をした
クソ提督が突然消えた、意識不明の重体だと言われた
私達は其処から余裕がなくなって、どんどん追い詰められていった
ーごめん…君にしか、託せないー
腕輪を手に入れた
これには何度も振り回された
自分が強くなったと思い違いをした
髪が青くなったのもこの時で、そこからアオボノって言われた
戦いで朧が動けなくなった時、4人で遊びにも行った
みんなでご飯を食べたり、服を買ったりした
…アンタは聞こえてないって言ってたけど、やっぱり、あんたと私は、似てる
アンタがしてる努力の分だけ私も努力してきた、アンタみたいにデータに従うやり方じゃないけど、アンタみたいに効率的じゃないけど、がむしゃらにやらなきゃ不安だったから
裏切って横須賀に行くって知った時、すごく驚いた、許せなかった
だからムキになってアンタの気持ちを考えず、アンタを罵倒した…それについて、謝るつもりはない、お互い様だし…アンタが謝るなら謝ってあげても良いかな、なんて…
アンタの好みも、何もかも、知らない事だらけだけど…気持ちだけはよくわかった、クソ提督が好きなことも知ってた
だからあの時…
『貴方をあんなクソ提督から救ってあげるって言ってるのよ』
「…次、私の前で提督を馬鹿にしてみなさい……殺すわよ」
アンタは、私に止めて欲しいって言ってた、私はそう思ったから…戦わなきゃいけない、アンタにとってはどれだけ安っぽい理由かは知らないけどね…
「ねぇ、クソ提督、アンタはどう思ってんのよ」
「何のこと?」
「…曙の…事」
「………僕はこれも一つの形なんだと思う、だけど…認めたくないものは僕にもある」
「…よかったわ、何でも受け入れる脳死な奴じゃ無くて」
…アンタのことを大事に想ってくれる人は沢山いるの
「まあ、悪い子ではありませんからね、散々やられましたけど」
赤城に…
「…あたしを止めてくれたのには、感謝してるよね〜、結局聞かなかったけど」
「戻ってきてくれるなら…私的にはOKです!」
北上も阿武隈も…
「…私も、今の曙ちゃんは見てられないよ…」
「絶対元に戻しやしょうぜ!」
「…やるよ!」
潮、漣、朧…
ほら、こんなに居る…
だから…アンタのこと、もう一回みんなが受け入れてくれるから…
帰ってきてよ…!
仲直りしたい、もう一回、みんなで遊んでみたい…
「つまんない意地張ってるんじゃないわよ…!良い加減にしなさい!!」
「誰が意地を張ってるの?いつまで過去に縋りつくのよ、私はアンタらの仲間じゃないの、あんなクソ提督の元で働く気なんてないの」
「………言った筈よ…アンタにその言葉を言わせないって…次言ったらどうするかも、伝えた筈よ」
「実行できない以上脅しにもならないわ」
「…アタシは、あのゴレとの戦いでアンタに失望した…でも、それでも…アンタのことを信じてる奴がまだどれだけ居ると思ってんのよ…!」
「頼んだ覚えはないわ」
「頼まれなくても、アンタが仲間って事は何も変わらない!アンタを今ここで叩きのめして…アタシが目を覚まさせる…!」
「……ご自由に、やれるものならね…私の目は開いてる、どうやって目を覚まさせるか見ものだわ」
「楽しみにしてなさいよ…!」
絶対に…絶対に退かない、だってアタシはアンタが好きだから、大事な仲間だから、同じ名前で、同じ見た目で…アンタはアタシにとって替えの効かない大事な姉妹だから
駆逐艦 曙
「…ウザいのよ、その熱苦しい考え方…」
私の至上の喜びは一つ
私の存在意義も一つ
私が戦える理由も一つ
私が明日も生きたいと思える理由も一つ
他には要らない…はずだった
私のこの手で掴める物だけしか、私のこの手から消えない物だけしか
それがまやかしでも、それが仮初のものでも、真実には目を閉じ耳を塞げ、私が信じたい物だけを信じて…
私は最初からあなたの割を食う日々だった
着任したての時はあなたのせいで追い出されて…
提督に会って…
でも、腕輪はあなたが持つ必要だってなかったはず…
私が選ばれてもよかったはずなのに…
私はとことん弱かった、周りより弱いから…必死に必死に誰かの真似して、誰かの技を盗んで…誰かの為に戦えるように…
…なのに…モノマネ野郎…か
言ったのがあなたじゃなければ笑えたのかもしれない、自嘲でも、なんでも、流せたのに
提督だって…私の恋心は…見ないふりをしていた、伝えても受け止めたくないと言っていた…利用すると…
だから、私をすぐに死んだって見切りをつけて…
私が助けを求めても…来てくれなくて…
「曙」
消えろ、くだらない幻想
邪魔をするな、今更私の前に出てくるな
「曙!!良い加減にしなさいよ!」
私をその名で呼ぶな、お前がその名を使えば良い
「張り詰めた糸はすぐ切れますよ」
私は切れない、私は強いから、私はどんな期待にも応え続ける
「殺せ、早く殺せ、俺の為に」
そう、この指示だけを…
何故、私は泣いている…
「………」
お前は誰だ、何故私の内側にいる
「………」
やめろ、私は過去なんかに用はない…
私は…もう全部捨てた…のに……
「私は…私はここに居るんだ!!再誕しろ…コルベニク!!』
壊れた、全て壊れて…終わる
世界が終わる
私が求めた手を、私に差し伸べてくれた手をなんで私は振り払うの…?
ダメ、やめて…消えないで…私の前から、隣にいて…!
『消えろッ……!』