元勇者提督 作:無し
宿毛湾泊地
提督 倉持海斗
「…ふぁ…あ……あ?」
「お疲れ様です、司令官」
「朝潮…恥ずかしいところ見られちゃったな」
「お疲れでしょうから、仕方ありませんよ」
「それでも大口開けて欠伸してる姿は見られたくなかったかなぁ…何か報告?」
「少し違いますね…海軍本部から手紙が届いておりましたので…勝手なことをするのは良くないと思ったのですが念のため先に検閲しました…あまり良い内容とは言い難いですが…」
「……わかった」
海軍本部からか…疲れるなぁ…
「そこに書いてある通り、直接の出頭命令です…」
「………」
行きたくは、ないなぁ…
「…司令官」
「何?」
「朝潮を同行させていただけないでしょうか、昨日赤城さんが大怪我をしたのはご存知ですよね」
…知ってる、車に轢かれたと言っていたし、あまり聞くなと本人に拒絶されたから深くは追及しなかったが…
「あれは…本部の連中にやられたのでは?」
「…どういう事?」
「赤城さんは定期的に問題ないレベルの情報を本部に流している筈です、しかし結局の所向こうの欲しい情報はひとつもない…苛立ちが募っていてもおかしくはない…かと思いますが」
…確かに、一理ある…
赤城は自分が言い出したこととはいえ本部とのバランスを取ろうとして無理をしていたのかもしれない
赤城は責任感が強い、自分が古参であることから力を求める気持ちも、みんなを守りたい気持ちも強い
「……赤城には黙っておいてね、知られるのはまずいから」
「そうですね、おそらく確かめようとしてるとわかれば止める筈ですから…まあ、私の推測が正しい場合だけでしょうが」
…しかし、このタイミングに…呼び出しか
何の目的があって呼び出すんだろう…回復アイテムについても伏せなければならない…上手くやる必要があるな…
「朝潮、何で呼び出されたと思う?」
「書類に記載がなかった点から持って行かなければいけない物ではない…そして昨日の赤城さんの怪我…さて……あ…」
「何か思いついた?」
「いえ、お恥ずかしながらすっかり忘れていたのですが…此方を」
「……解体…申請書…?」
頭を殴られたみたいな衝撃が走る
「イムヤさんからです」
「え、ちょっと待って、これはどういう意味?」
「そのままです、解体申請書にサインをして欲しいと」
「…いや、これは…」
とてもサインできる物ではない…
これを許可するのは…絶対に嫌だ…
「……あの、早く書類を書いてもらわないと困るのですが…」
「…ごめん、これは受理できない…」
「…あ、えっと…司令官、私の伝え方がまずかったのですが…そういう意味じゃなくて…」
横須賀鎮守府
駆逐艦 朝潮
「………」
「お待ちしておりました、倉持さん、どうぞ此方に」
「……曙…」
「私は東雲です、それ以外の名で呼ばないでください」
なんとも…にべもないという奴ですか
もう完治してるとはいえ一応包帯ぐるぐる巻きで車椅子の相手に対してよくもまぁ…
「話には聞いてましたが随分性格が変わりましたね」
「真実を知れば、貴方もそうなりますよ」
「興味ありませんね、前の自信のある貴方は好意的に捉えてましたが、今の貴方にも、貴方のいう真実にも」
「そうですか」
…雰囲気な変わっただけじゃないな…
確か危険な碑文を発現したと言ってたけど…これはそういう変化じゃない
下手に仕掛けるのもやめるべき…
『…ア"ァ"ァ"…』
出番はまだです、私の中でじっとしててください
「こんな姿で申し訳ありません」
「構わん、倉持海斗、君を呼んだ理由だが」
コイツが元帥…
というか、自分がそんな姿にしたくせに…アオボノさんなら掴みかかってたでしょうか…
「君のところにいる潜水艦伊168を回収したいと思ってな」
「…イムヤを?」
「もともと実験的な配備だった、こちらの方で回収し実験に回す」
…司令官の前で、仲間を殺すと直接言う訳ですか…随分と随分な人ですね
「実験と言うのは」
「さあなぁ…どんな実験だろうか、私は知らん」
「………」
「そういう事なのでこちらの書類に目を通してサインしてください、異動と実験の承認に関する書類です」
承認するという事は…司令官が殺すという事と同義
とことんストレスを与えるつもりか…
「実験の承認の必要の是非を問います」
「黙りなさい、駆逐艦朝潮」
「………」
曙さんとの睨み合う必要ないですね
「お答え頂けないという事でしょうか」
「そうだ、倉持君、さっさとしたまえ」
「…それが、つい昨日、依願で解体に…」
「……何?」
「今日報告書が上がる筈です」
「………チッ」
随分とイラついてるようで、良い土産話ができました、帰ったら報告しましょう
「…本当に解体したのですか?」
「ええ、報告書も上がりますが」
「………そうですか」
相変わらずこういう所でキレる人だ…
長引かせたら不味い気がします
「しかし、勝手に解体されたか、預けたのはこちらだが…何ともなぁ?」
…手遅れか…それとも役職なりに頭が回るのでしょうか
「………」
「何か?」
「いいえ」
何も口に出してないのにあの睨みっぷり…
心でも読めるのかって感じですね…それを抜きにしても…本当に心酔してるように見える…
もし本当にそうなら何があんな風に変えたのか…
「確認を取らずに解体した事については申し訳ありません、本人がどうしても、と強く願い出たものですから…」
「………君の泊地の運営手腕には些か疑問を抱く」
……不味い
「あの、先日泊地を改めたばかりではありませんか、その際何も問題の報告はなかったのではないですか?」
「ああ、なかったとも…だが、自主的に解体を強く願い出るとはなぁ…どうなんだね?」
フォローし切れない…
別に見られて困るものはないだろうが…司令官の動きの制限と例のオリジンに対して何かを感じ取られることがあっては不味い
「自分の手腕には問題があるかも知れません、何せ軍学校すら出ていませんから」
「そうだったな、君に任せきりではあったが他に適任があるやも知れん」
…司令官、何のつもりかしら…
「そうですね、その折にはNABあたりにでも転職しようかと」
「………ほう?ツテがあるのかね」
「不思議な縁があるもので…」
「……詳しく聞きたいものだな」
「プライベートな話ですから、あまり…」
「…………」
…そういえば海軍は事実上CC社の傘下、NABとCC社はこの間のパーティーで銃撃戦もあったとか…
「…泊地の運営などについてはまたの機会に詳しく話し合う必要がありそうだ、君の進退についても…」
「おや、てっきり自分はクビかと」
「…とんでもない、以前の殲滅戦における貴艦隊の活躍は未だ評価に値する」
「光栄です」
ペースを上手くこっちのものにしたみたいですね…
よかった…
「…………」
『…………』
…動くつもりはないのに、そんなに殺意を丸出しにされては…こちらも反応してしまいますね…まだ出てこないで欲しいのですが…
横浜 中華街
「上手く乗り切りましたね」
「…まあ、前もって考えてたんだよ、もし僕が辞めさせられたら…それまでなのかなって…向こうは僕がオリジンを持ってると思ってる…それを利用すれば良いんじゃないかなって」
もう横須賀を出たし、ゆっくりと落ち着ける…
司令官の乗る車椅子をゆっくり押す…
「……不安じゃないですか?車椅子を押されてるの」
「なんで?」
「……下手したら…私が司令官の命を奪うことになる、と思うと…怖くて」
でも、同時に幸せな時間でもあるのは確かだ
「うーん…そう言われれば少し不安かもね」
「………」
「だけど朝潮は気配りが上手いから、あんまり心配はしてないかな」
「…そうですか」
少し安心…
「おんやぁ〜?こりゃあ勇者サマじゃないですか、また妙なとこで会いますね」
「曽我部さん、その節はどうも」
「いえいえ…ん?」
「初めまして、駆逐艦朝潮です、司令官の命を救っていただいたとのことで…その節は大変ありがとうございました」
「…前の子とは違うけど…倉持さんも好きものですねぇ…英雄色を好むってヤーツ?」
「やめてくださいよ…」
結構軽い人ですね…
「あ、せっかく中華街にいるんですし、もし良ければ昼飯なんかどうです?旨い店があるらしいんですよ」
「そうですね、是非…行こう朝潮」
「…はい」
何というか悠長な人ですね
「いやー、で、俺はそいつに言ってやったわけですよ、シュウマイのマイはオシマイのマイなんだって、おかずじゃなくて締めの一品としてデザートの様に食べるべきなんだってね」
「…はぁ…」
全く中身がない…!
何ですかこのくだらない話を延々と聞かされる拷問は…!
「ちなみに俺はシュウマイはコーヒーと意外と合う派なんですけど、だからって毎朝そうやって食べろって言われたらそれはそれで嫌になりますよねぇ…!」
「…まずシュウマイとコーヒーを一緒に食べる文化に驚きなんですけれど…」
「人の好みは千差万別だからね」
司令官も笑顔が引き攣ってますし…というかあんな顔の司令官なかなか見れませんよ、司令官をこんな表情にするなんて頭のネジが足りてないんじゃないでしょうか…
「あ、そういえば…シュウマイに乗ってるグリーンピースって…虫か何かの卵に見えませんか?……見えない?あ、そぉ?」
…もう無視して食事してたいんですけど、一応司令官のお知り合いですしね…
不敬な態度は司令官に恥をかかせる事になります…
「…あの、曽我部さん?」
「あ、もしかしてシュウマイお嫌いでしたか?」
「…いや、そういうわけじゃ…」
「ならよかった」
………天敵ね…
横須賀鎮守府
駆逐艦 東雲
「へぇ?良いんですか?」
「ええ、構いません、許可も出ていますし、何なら殺しても構いませんよ」
「東雲さんのお楽しみでは?」
「私はあまり興味がありませんから、ですが今回中のチャンスです、万が一逃したら次のチャンスはありませんからね」
「わかってますよ、敷波〜?」
「2人がかりでやるんですか?私の時の様に」
「念には念を、つまらない横槍は嫌いなので」
「ちゃんと例の黒いやつに見せかけてくださいね」
「勿論、敷波〜、お仕事行きますよ〜?」
…私の心とケリをつけなきゃいけない
「あらぁ〜、いいご身分ですよね、あそこ美味しいんですよ」
「……あまり食事に興味はありません」
発信気をつけておいてよかった、追うのが実に簡単だ
「いつも同じもの食べてますからねぇ…よく飽きないですね」
「食事は補給です、補給とはすなわち必要なものさえ摂取できれば良い…」
「……ま、良いですけど…あれ?なんか余計な虫もついてますよ?」
「………あれは…」
確か曽我部隆二とか言う学者だったか医者だったか…
「知り合いですか?」
「…いえ、以前から連んでるのは見かけましたし殺して構いません」
「わぁ、嬉しい」
…路地に入れ、そうすればお前たちは終わりだ…
そう、そのまま…
「じゃ、お仕事と行きますかぁ〜…後でごねないでくださいよ?」
「………わかっています」
…やめて、心がざわつくのも、ものすごく気分が悪いのも…全部気の所為だから…
駆逐艦 綾波
「…アッハッ…!」
1人は車椅子に乗ってる重症者、1人はそこそこの練度の駆逐艦、1人は素性不明の一般人
どれをとっても楽しめる…急にオモチャが落ちてきたみたい…
息を殺して近づき、1人仕留めて…ぐちゃぐちゃにしちゃおう…1人は持って帰りたいなぁ…
敷波にも手伝わせればいいかな…嫌がるだろうけど敷波もオモチャは好きだし…
「…朝潮、待って、誰かいる」
「わかっています」
気づかれた?私はちゃんと隠れてたのに…
「何者ですか、大人しく出てきなさい!」
うるさいなぁ…これじゃ人に見られるかも知れないし…
良いや、先に殺しちゃお
「子供…?」
「曽我部さん、恐らく相手は艦娘です、早く逃げてください」
「……いや、ちょっと厳しそうだな…銃とか持ってません?」
あの男も勘がいいのか、敷波の方に視線を送ってるし…気づいてるかも知れない
「………」
「私達をどうしたいか知りませんけど…やめておいた方が身のためですよ」
あーあーあー、出たよ出た
ちょっと調子乗った駆逐艦って特に私嫌いなんですよね
走って距離を詰める
蹴りを叩き込めばコイツは一瞬で地に崩れ落ちる
「……仕方ないですよね?司令官」
「構わないよ」
「…っ…?」
駆逐艦の右胸から右上にかけてが蒼い炎に包まれて…
人体発火現象…じゃないか、コイツも変な力を…
『ア"ア"ァ"ァ"……』
ゾンビ…?つぎはぎの人形の化け物…
……不味い、これとやりあうのは不味い…
「…っ!」
「先にやろうとしたのは貴方なんですからね、もう遅いですよ」
『ア"ァ"ッ!!』
一瞬で背後を取られて…!?
逃げられない…この…!
「制圧してください」
その一声とともに後ろから首を掴まれ、片手で持ち上げられる
どうすれば良い…どうすれば…敷波は…もう逃げてるか、それなら良い…じゃあどうすれば…
『………』
私を掴んでたツギハギのゾンビが私を投げ捨てる
「…やっぱり貴方の差金ですか、曙さん」
「東雲です、何の話でしょうか?それとも…私に刃を向けると?」
「……」
…助かった、足の内側にあるスプリングと人工筋肉を収縮させる
「……逃がさないでください」
生気の無い目が、凍る様な視線が刺さる
だけど構うものか…私の速さにはついてこれない
「……え…」
何?これ…私は飛んだのに…何でこの手が目の前に…
『ア"ア"ッ!』
弾き飛ばされ地面に叩きつけられる
痛覚が信号を送り続けてる…息が苦しい、咳き込むこともしてはならない…
帰ったら肺を作ろう、この出来損ないの私の身体じゃろくに動かない…
「…コレの身柄はこちらで預かりましょう」
「貴方には関係ないかと、それはこちらで身元をはっきりさせて該当する基地に問い合わせます」
「…私に刃向かうな、と言わなければ伝わりませんか?」
「いいえ、言ったところで伝わりません」
「………コルベニク…』
駆逐艦 東雲
『面倒ですね、あなたって…』
『ア"ア"ァ"ァ"…』
当然のようにこっちの世界にも割り込んできて…
『……何で、見てるんです』
「…なんでだろうね」
何でこの世界に存在できる…
「曙」
『…私をその名で呼ぶな、私の前から……消えろ!!』
『ア"ア"ァ"ァ"!!』
此方の攻撃を受け止めて、私の前に立ち塞がるか…
バケモノが…!
『邪魔をするな!!』
「トライエッジ、少し下がっててくれるかな」
…なぜ化け物を退げる
自分を守る盾を…
「…曙、話しをしたいんだけど…」
『それ以上口を開くな…!!私がこんなふうになったのは誰のせいだと思ってる…!』
「…僕のせい…なのは…」
…そうだ、お前のせいで…
私の暗い絶望はお前のせいで…!
『お前だけは、殺す…私のこの手で…!』
「………でも、それは今じゃない、はずだよ…」
そうだ、今の私の優先目標は綾波を連れて帰る事…
なぜコイツを連れて帰る…事を……?
『ッ…あ…』
思考が乱れる…チップが誤作動でも起こしたのか…?
この世界の行動にチップがついてこれてないのか…
「曙、少しだけ話しがしたいんだ」
私の中のオリジンが…コイツに反応して…
やっぱりコイツはオリジンを持ってる…
…落ち着け、冷静になれ……
私は、もう寒い世界には、慣れたんだ
「僕はあの時、君がもう死んでしまったと勘違いしていた…だからってあんな事を呟いてしまったのは許される事じゃないのはわかってるんだ」
『…間違ってないですよ、あの時に私はすでに2度死んでますから』
「………そう、か…ごめん」
『私は自身の能力で再誕した傀儡、貴方の所の駆逐艦曙はもう死にました』
「…でも、もう一度生まれた」
『…言葉の綾です…それに、私は貴方の元に還るつもりはありませんよ』
「………」
私は、もうコイツの元には戻らない
「…僕のところには戻らなくて良い…だから、みんなの事を…頼んだよ」
『………』
…コイツは何を…言っている…?
「またね、曙」
心に嫌なものが…ある…
駆逐艦 朝潮
「…消えた…?何処に…」
「離脱しただけだよ、ここで戦う意味はないしね」
「……いやぁ…勇者サマは随分と人気らしい」
「…嬉しい話ではありませんけどね」
…私には何が起こったかわかりませんでしたが…
『ア"ァ"…』
「…ありがとうございます」
何が起こったかをしっかり教えてくれる人が居るんですよ、司令官
絶対認めませんから、そんな事…
「それじゃあ俺もさっさと逃げちゃおうかな、倉持さん、また訪ねます」
「……お待ちしてます」
横須賀鎮守府
駆逐艦 東雲
「綾波さん、チップの数値に問題は」
「待ってくださいよ〜…今人工筋肉の調整で忙しいんですから」
「そんな事どうでも良いんです、早く私のチップを正常に戻してください」
「…はぁ……良いですけど…」
「………何処にも異変はないですねぇ…脳が腐ってるんじゃないですかねぇ」
「データだけでわかるものなんですか、一度取り出してメンテナンスされては」
「………もう一度制御下に戻すしかなさそうですね」
…あ、れ…?
またこの感覚だ
寒くて辛い…私の体を乗っ取られる感覚だ
「んー…壊れきってなかった?それとも戻りかけた…なんにせよ会わせたのが間違いみたいですねぇ…」
……そうか
会うだけでこうなるのか…
なら、次はもう殺さないと…
私が見捨てられないために
旧 離島鎮守府
重雷装巡洋艦 北上
「………」
「オーライオーライ!よし!そこです、北上さんもクレーンの扱いに慣れてきましたね」
[ありがとう]
…私も、ここでなら役に立てる
あの戦いの最後の時の様に、戦い以外の形でだけれど
「…北上さんも、よく笑う様になりましたね」
『--・-- --・ ・-・・ ・・ ・・-・・ ・・- 』
「いや、わざわざモールス信号にしなくても良いですから」
私が通信の際、声の代わりにモールス信号を使えばいいのではないか
そう提案したのは夕張さんだった
「何かあったらまた教えてください」
敬礼で返す
プラカードで幾つかの言葉を、細かい話はモールス信号
わかりやすい動作があればそっちで返答したり
私の生活は頼り続けるものだったけど、どんどんお互いの理解で支え合う形になりつつある
1人では生きていけない…
1人で戦っても、生き残れない…
「北上さん、お昼食べた?まだよね?」
暁に頷いて返す
「はい、おにぎりとお味噌汁、一緒に食べない?」
[電さんたちはいいんですか?]
「ええ、夜は一緒に食べるから」
今ここにいるのは僅か12人
だと言うのにここはもともと数十人で生活してもいいくらいの広さらしい
そして、その広い島の中で私は一度も1人になっていない
悪いことではない、寂しくないのだから
「今から食事?いいとこに来たわね」
「あら、アオボノさんじゃない、差し入れ?」
「そう言うこと、一緒に食べてもいい?」
「全然いいわよ!」
[私も大丈夫ですよ]
「そ、ありがと…今回は色々持ってきたから、夕食、楽しみにしてなさい」
「本当に?嬉しいわね、北上さん!」
修繕に忙しくてあんまりしっかりしたものは食べてないのが現状、美味しいものが食べられるのは楽しみだ
「……私達は、来たのが遅かったけど…赤城達の頃はもっと辛かったのよね」
たまに言われる、この離島鎮守府と呼ばれる場所の過去
貧しく、つらく、冷たいと言われる場所が…どうしてもこんなにあったかいのだろう
「…うん、やっぱりみんなで食べた方が美味しい…」
「……暁、なんかあったの?」
「………みんな寂しいのよ、急にこっちに来ちゃったから」
当然だ、私も会いたい
「…悪いけど…私の読みだと、しばらく無理よ」
「…何でかしら」
「……さっきね、朝潮から連絡があったのよ…クソ提督と横須賀に行ってたの」
横須賀に…?その時点で嫌な予感しかしない
「………多分、佐久間湾への警戒はより厳なものになる…下手すれば常駐の監視をつけられる可能性もある」
「…そんな……」
むしろ遅いくらいだ…
「だから、イムヤもこっちに連れてきちゃった」
「イムヤさんを?なんでまた…」
「……本部から来てるから、向こうの言いなりになりかねないのよ、本人の意思とは関係なくね…だから本人が解体を願い出た…と言う事にしたのよ」
「それで本当はここに…って事ね」
「そう……はぁ…ねぇ、私達って何なのかしら」
「…艦娘よ、それ以上も以下もないわ」
そう、私達は艦娘なんだ
そして…私は提督のために…
「……次クソ提督に会ったら一発殴ってやりなさい、本人としてはそのつもりはないらしいけど…バカやりそうらしいから」
「…大丈夫よ、司令官なら」
……何だろう、この不安感…
胸騒ぎは、何が理由なんだろう