元勇者提督 作:無し
宿毛湾泊地
重雷装巡洋艦 北上
長い間、私は記憶を失ってしまった影響でいろんなことを失い、経験し、間違え…
まあ、色々あったけど、とりあえず声と記憶だけは戻ってきた、心も戻ってきた…
だけど私の心は折れそうだった
自分の体のことは自分が1番よくわかる
1人で歩けない体も、艤装を装備できない体も…変わらない
そして…瑞鳳の記憶を手に入れた
何を想っていたのか、どうしてこんな結末を選んだのかも…よくわかった…バカだと思う…あたしの事は気にしなくてよかったのに
いつも通り杖をつき、ゆっくりと歩く
目指す場所は一つ
この真実を最初に伝える相手は決めていた
私の心は真っ暗で、でもその暗闇の中でいつも手を引いてくれる人
「あれ?北上…どうしたの?」
…なんでだろ、安心しちゃった
力が抜けるなぁ…床に座り込むとか行儀悪いし誰かに見られたくないんだけどなぁ…立つ気しないや
「わ、大丈夫?疲れた?」
小さな事でもすぐに近寄ってきて、手を差し伸べてくれるんだ
その手が届く限り
「…北上?」
伸ばしてくれた手を掴む
引き寄せてやろうと思ったけど…それすらもできないほどに今の私の力は弱かった
大人しく立ち上がり、そのまま寄りかかる
「…なんて言うかさ…色々迷ったんだけど…」
「声が…もしかして記憶も…?」
「…うん…やっぱ……ありがとね、色々と」
「……僕も、君になんて言えば良いかわからなかったけど…北上はやっぱり、どんな時も北上だね」
「…どう言う意味?それ」
「安心したって言ってるんだよ」
「……そっか」
……AIDAも、艤装もない私に何ができるかわからないけど
とにかく、頑張るしかない…いや、受け入れてくれるのかを心配するべき?今更か
「提督…あたし…記憶と声は戻ったけど」
「まだ戦えない…って事だよね、歩き方はいつも通りだったからなんとなくわかってた…北上にもできる事はたくさんあるよ」
「……提督もやっぱり提督だね」
「…どういう意味?」
「安心したって言ってるんだよ」
「…そっか」
「ごほん、あーあー、マイクテスマイクテス」
…良いムードの時になんで邪魔するかなぁ…駆逐艦
「ごめん、漣、どうかした?」
「…そーいうあま〜いのは部屋でやってくださいな…執務室に入り浸るアテクシも悪いんですけどねー」
「ごめんごめん、拗ねないで」
漣の目がキッツいなぁ〜…
「……何ニヤついてるんですかぁ?北上サマぁ…!」
「え?…うわ、マジだ…微笑ましかったから?」
いや、多分優越感に浸ってただけだけど
「ムッキー!!……はぁ…まあ…私も色々迷惑かけちゃってるので何も言えないんですけどね…」
「ん?なんかあったの?」
「…曙が来てたんだ」
「……その曙って…あのヤベーイ方?」
「ヤバいかは置いておいて、横須賀に行った方の曙だよ」
「……なるほどねぇ…良いでしょう!このハイパー北上様が曙を元に戻すお手伝いをしてあげましょう!」
「……いや、戦えないって言ってたやないですか姐さん」
「てかザミーはなんばしよったとね」
「訛るな訛るな…私もあんまり正確に覚えてるわけじゃないんですが…その…やっぱボーノは洗脳されてます、そうじゃなきゃあんな事するわけない」
「何されたの」
「首締め上げて気絶させられました…ほら…痕が…」
…漣に曙が手をあげるのは…信じたくない気持ちもあるけど…
「……痛かったね…」
「…あの程度序ノ口にもなりませんぜ……あの迷いない感じ、いくらボーノでも…絶対にまともな状態じゃない」
「……序の口じゃない…って、私が離島にいた時に何かあったの?」
「ありましたけど、今はボーノの事です、暁ちゃん達を生体実験に使われるかもしれないと言いながら連れ去ろうとしてました」
「……最悪だねぇ…でもなんで漣が首絞められる事になるのさ」
「…ボーノは…自分の提督はご主人様じゃなくて元帥だって言って…それ聞いた時に私もちょっとムキになって…言い合いになったんですけど…侮辱だって」
「……それだけ?それだけの理由で漣を殺そうとしたの…?」
「だからマトモじゃないんですよ…でも、多分ボーノにとっての執着の対象が本当に変わったんじゃないかって気がして…」
……成る程、漣は曙が元帥を本気で好きになったと…
「ねぇ、ご主人様…確認なんですけど……」
「何?」
「……本っ当に確認なんですけど…ボーノの事どう思ってます?」
「どうって…仲間だよ…?」
…いきなり何を…
「モノとか…力とか…思ってませんか…?」
「思ってない」
「本当に?」
「本当だよ、いきなりどうしたの?」
……本当にいきなりどうしたんだコイツ
「…よし、よし!私は信じやすぜご主人様!」
「…んー…?」
困ったようにこっちを見る提督に笑顔で首を振る
漣はこういう奴だって
「…ご主人様、漣はボーノの記憶を見ました」
「記憶を…?」
何言ってんだコイツ
「あ!北上サマ何言ってんだコイツって目でみんのやめなし!本当に見たんだもん!」
「…漣、詳しく話して」
「よーし!kwskされたから言いますよ!ボーノは元帥とご主人様の会話を聞いてました、その中でご主人様はボーノをモノだ、力だって言ってました」
「…頭でも打った?」
「北上サマは黙ってな!本当に見たんだもん!」
「……漣、詳しく内容を覚えてる?」
「えっと…元帥に君にとって東雲はモノか、って聞かれて…ご主人様はモノだ、力でしかないって…答えてました」
「……そうか…」
「…何?本当に思い当たる節があるの?」
ノックと同時に朧が入ってくる
「あ、ボーロ、どしたの、今重要な話してるんだけど…」
「うん、聞いてた…全部聞こえてた」
「立ち聞きとは趣味が悪いねぇ」
「北上さん、ちょっと黙っててください」
あり?私の扱い雑になってない?
「提督、私もその記憶は見ました」
「…ボーロも…?」
「朧……君も同じ内容を?」
「はい、でも私は提督は悪くないって知ってます、私は提督の記憶も一緒に見ましたから」
さっきから記憶記憶って…
「提督は元帥にこう問われた… 随分と、腕輪に対して関心がないように見えるな、君にとってあれはモノかね」
「そう、そうだよ…やっぱりそこだ…」
「腕輪…?」
「あの場の音声を録音、編集して曙に聴かせた奴がいます…そして、それが原因で曙はそれを信じ込んだ……でも、その前に…提督、一回だけ歯を食いしばってください」
「……わかった」
「朧、何する……」
朧は迷いなく提督を殴りつけた
「は?何やって…朧!!」
「ボーロが狂ったぁぁ!?」
「……提督、私達だけ助かっても意味ないんですよ…曙もずっと助けを求めてた…」
「……そうだろうね、後悔しても遅いけど…」
「北上さん、私を殴ってください、提督を殴った私を、杖で殴っても、踏みつけてもなんでも良いですから…」
………
「嫌だ、もっと苦しんでなよ……そんでもって、曙に直接叩かれれば?提督を殴った朧じゃなくて…曙を助けられなかった朧が殴られたいんだから」
「……そうですね…提督、曙は…死にたくはなかったはずです、曙はずっと苦しんでました、短い時間の記憶が永遠に感じられる程に、私は助けられなかった、提督も助けられなかった…曙が聞いた会話は勘違いだったとしても…勘違いして仕方ない事なんです」
「僕は曙が悪いだなんて欠片も思ってない、取り戻すよ」
「…じゃあ、元に戻った曙に2人で叩かれましょう」
…提督叩かれてばっかじゃない…?
「そうだね、さて、仕事をしようか」
「…そういやさ、提督…アタシの仕事は?」
「今まで通り復旧…なんだけどだいぶん進んだんだよね?」
そう、離島鎮守府は2日もあれば完全に機能させられる…
発電機とガソリンも手に入った、通信装置は通常のものは全て廃棄、回線をうまく偽装して察知されるようなものは無い
危険な可能性があるモノ全て廃棄した
「なら戦闘訓練の教導をしてあげてよ、君が1番適任だから」
「…砲撃すらできないのに…?」
「でも経験は君の中にある」
「自分で積まなきゃ意味ないよ、ま、いいけどさ」
…頑張るしかないか
私は、強くなる…もう一度、最初から
私は……絶対に強くなって、またみんなのために戦う
AIDAも何もないけど…私も欲張りなんだからさ、瑞鳳に負けず劣らず…
「……確かに受け取ったよ」
私の背負うものは…重すぎるかもしれないね
佐世保鎮守府
提督 渡会一詞
「………」
全体の士気は限りなく低い
瑞鳳の死が、そしてあの同士討ちが原因だ
皆お互いが信じられなくなっている
「ごめんなさい、助けられなくて」
…高岡さんのとこの弥生、か…結果として犠牲者は1人で済んだ、敵の特性を聞く限り…それは奇跡的な話だろう…責める事もできない
そう言えば…瑞鳳の最後を看取ったと言っていた
「……瑞鳳は何か言ってただろうか」
「…北上…って人に…あとはお願いしますって」
「北上…?北上か……」
つまるところ…あの北上だろう
「……そうか、ご苦労だった…」
「……それでは…失礼します」
あとはこっちの問題、か
瑞鶴にとっては特に重かったらしい
私と瑞鳳では力の差がありすぎた、と言っていた
碑文の力と言うものは俺にはわからないが、瑞鳳の代わりを果たすという目標ができたと同時にその重みが瑞鶴を支配している
当分、戦わせるわけにはいかない
「……チッ…」
管理職の経験はあるが…何もできない立場というのは…歯痒い
ベイクトンホテル ペントハウススイート
ヴェロニカ・ベイン
「あら、珍しい客人ね、あなたが直接出向くなんて、海軍元帥サマ?」
「ははは、茶化さないでいただきたい、あなたのやってる事は調べがついてる」
「お互い様ね」
「私は世界の崩壊に全くの無関心ですが…この資料を見てほしいと思いましてね」
「…再誕…腕輪のレプリカ…AIDA…成る程?日本の海軍さんはユーモラスなのね」
「あなたの作る新世界の最後の関門となるのも…私自身の人生を楽しむ事につながるのではないかと思いまして」
「…あなたがコルベニクを?」
「最強の碑文、不死の力、その為に…あなたの技術を流用する」
「……成る程、アテはあるのかしら」
「手元にコルベニクの碑文使いが有る、コレを喰らう」
「なら話は簡単ね、裏切りが無ければ」
「此方の目的も、其方の目的も両者世界を支配する事、永遠の生…」
「正確には私は楽しみたいのよ、天才の存在が何を産むのか」
「それで結構、此方の目的は果たされる」
「オリジンの流用は?」
「簡単だ、支配下に置きさえすれば」
「早くセグメントを手に入れないとこのゲームの敗者は私達になるわ」
「逆を言えばオリジンを手にすればこの電子世界と化した現実は完全な支配下となる、永劫なる時の完全な勝利者となる、人は死ぬからこそ醜い、故に永遠を創造することができない」
「創造には破壊がつきものだけれど」
「それを支配できるのが神」
「発想の転換ね」
「人は死ぬからこそ醜い、だが、死を超越すれば神となる…究極の存在となれる」
「神が2人存在する事については?」
「日本には八百万という言葉がある、それに気に食わなければその時に潰し合えば良い事」
「あら、過激ね」
「お互い様だ」
「…人は死ぬことで完成する、素敵な発想だわ」
横須賀鎮守府
駆逐艦 東雲
「………」
手に、感触が残っている
気持ち悪い、拭いたい
今すぐに手を拭って、掻きむしって
なんでもいい、この感覚を消し去りたい
だというのに指先一つ動かない
私が首を締めたのはだれか、よく思い出せ
アレは…アレは……
仕方ないことなんだ、仕方なかった…
でも、気持ち悪い…
なんで私は…なんで……
わからない、わからない…
碑文の出力も落ちていた、だって、たった1人を殺せない…
それになんで、あの車の中から2人も消えた
どうやって…?
「…………」
表情ひとつ変わらない
体の部位が何も動かせない…
チップの中にあるのは…私の意識の方なんじゃないのか…そんな考えが頭をよぎる、どんどん不安になっていく、恐怖を感じていく
もしそうなら、私は…
私は誰なの…永遠に1人で…孤独で…
旧 離島鎮守府
工作艦 明石
「だから、これはまだ試作段階で…作動したからいいものの…なんでそんな事したんですか!」
「うーん…でも、使わなかったら漣達は助けられなかったんだ」
まぁたこの提督は言い訳して!
「そんなの結果論でしょう!?それなら1人で行かせなきゃよかったじゃないですか!」
「それはそうなんだけど…僕のことを強く憎んでたし、僕が行くより漣に行かせた方がいいと思って…」
「…いや、だからって試験段階のそれを使う事は…」
「……ごめん、でもなんの保険もなしに漣を行かせたくなかったんだ」
「……提督、説明は覚えてますか」
「………使えば使うだけ、認知外依存症が進行する恐れがある」
「提督が危険に晒したのは自分の身だけじゃないんですよ」
今回あの空間に無理矢理入ったのはアオボノさんも、朧ちゃんも、漣ちゃんも…
「わかってる…」
……これで収穫がなければ本当に許せない事だ
「提督、いくらでも提督に文句を言う事はできるんです、でも……良い話もあるんですよ、これ、見てください」
「…データログ?」
「夕張と曽我部さん、ヘルバさん、この3人の専門家がいるんです、良い情報が手に入るかも」
夕張は大した事ないらしいけど
「…曙ちゃんのログを調べればきっと何かわかると思うんですよ、脳内にあるチップについて」
「……そっか…ありがとう、明石」
大丈夫、きっとなんとかできる…
「それと、月の樹を今日壊すらしいです…」
「……大規模な混乱が起きるね」
「それよりも問題なのが、腕輪のレプリカの作成がヘルバさんの預かり知らぬところでかなり進んでいたそうです、今後より注意するようにと」
「……レプリカか、どの程度のものか、によるね」
「…データを吹き飛ばせると良いんですけど」
「常に最悪の事態を想定しよう、それとこっちの進捗は?」
「私は専門外なので微妙ですが…だいぶん進んでいるみたいですよ、でもデータドレインの制御がとても難航してるみたいで」
「慎重に進めてもらって、焦る必要はないから」
「わかってます…あと…提督、このやりとりってネットでやった方が速くないですか?」
「そうかもね、でも暁達も気になるから」
…そうじゃなくて…
「提督、何度も言いますが…力の行使は自分の身を滅ぼすことを忘れないで下さい」
「わかってる……でも僕も頑張らなきゃ」
僕が、じゃないだけ…良しとしましょう…
「……みんなで頑張っていきましょうね」
「もちろんだよ」
呉鎮守府
提督 三崎亮
「…認知外依存症って…あの?」
『あ、知ってるんだ、なら良かった』
「……力を使いすぎると進行する、か…」
川内も俺も、結構な頻度でスケィスを使ってきた
如何なんだろうな
『一応、詳しいことがわかったから連絡した…発症してないならそれで良いんだけど』
「……わかった、助かる」
「って事だ、お前ら調子は如何だ」
「…私も神通も那珂も好調だよ、とりあえず」
「はい、私は特にそのような事は」
「頭痛いとかは特にないかなぁ…」
「球磨型も特に問題ないクマ」
「ニャ」
「そうですね、特に問題ないです」
「……姉さんの気性が荒いのはAIDAのせいなのかソレのせいなのか…」
「木曾?」
「……なんでもないです」
「通常運行か、まあ良いだろ…じゃあ解散だ、なんかあったら連絡しろ…」
「あいよ、那珂、出撃行くよ〜」
「わ、待ってよ!」
「提督、失礼します」
……1番落ち着いててしっかりしてそうな神通が1番ズボラなんだよな…見かけによらないというか
「クマ〜、訓練行くクマ」
「頑張るニャ」
「いや、多摩姉さんもだろ、行こうぜ」
「行ってらっしゃい」
「…なんで自然に残ってるんだよ、大井」
「え?」
「…え?なんか俺おかしなこと言ったか?お前今から出撃だろ」
「……行ってきます!!」
「お、おう…アイツも抜けてるとこあんのか?それとも……」
重雷装巡洋艦 大井
「ふぁ…ぁ…」
「何?眠いの?」
「……ちょっと資料整理が多くて」
川内さんを見ていると、情けなくなる
姉さんたちは気にすることじゃないっていうけど私にとっては怖い、何もできないような錯覚に陥る、自分にとって過ぎた力なのに私は何もないように感じてる
「…敵が出たよ!」
「AIDAも碑文もない戦いなんて久し振りな気がしますね…最近ずっと頼りきりでしたから」
「普通の深海棲艦なら簡単に倒せますね」
「……これなら、あんまり危険な戦いはしなくて良いのかも」
「危険、か…実感ないですね」
実際にその身に降り掛からなくては…厄災は理解されない
本当に理解するのは自分で味わってから
「しかし、まだ冷えますね」
「…悠長だねぇ、大井は」
「貴方程じゃありませんよ、まだ冬服をしまえないのかと憂鬱なだけです」
「冬服が嫌い?」
「……別にそんな事は…あれ、そう言えば川内さん、普通は川内改二にはマフラーがつくんじゃないですか?」
「唐突だね、そもそもかなりカラーが違うんだから今更だよ」
「………一つ差し上げましょうか、艤装じゃないので耐久は無いですが、首元も多少マシになりますよ」
「んー…それもアリかもね、この装備が黒と赤だし…青とかある?」
「…青よりも赤色にした方がお似合いですよ」
「そっか、大井のセンスを信じてみよっかなぁ」
「…まさか貴方とファッションの話をする日が来るなんて思いませんでしたけどね」
「そうだねぇ…大井は私のこと嫌いだと思ってたよ」
チクリと心に刺さった気がした
「……自分でもわかりませんけど、思ったよりそうかもしれませんね…嫌いというよりは嫉妬、というべきかもしれませんけど」
「嫉妬?」
「川内さんと提督はより深いところで繋がっている…ってそんな風に見えて」
「…間違ってないよ、それはね…私と提督はスケィスが繋げてくれてる…でも、それもずっとじゃ無い気がする」
「……如何いう意味ですか」
「多分、私達はいつかわかたれる、そんな気がする、だからその分…今頑張らなきゃ」
分たれる…か
「折角、こんな話もしたんだし…今日は一緒に一杯やらない?」
「……夜が嫌いだったんじゃ無いんですか?」
「だった、じゃない、まだ嫌いだよ…でも大井は夜に呑まれないから…だって強いじゃん」
まだ、失う事はトラウマか…
「…お付き合いしましょう」
軽巡洋艦 神通
「……メイガス!』
「へぇ、銃剣が出てくると思ったんだけどな」
『多分、私のスタイルに合わせてくれてるんだと思います…姉さんは忍刀ですし…』
「だから槍…か」
『……どうですか、一合』
「…やめとく、お前が望んでるのは得物振り回すんじゃなくて殴り合いの喧嘩だろ」
『……酷い言われようですね…でも、間違ってはいません…もう一度、手合わせしたかったです』
「…那珂はどうだ?」
『焦りを隠せてませんね、出撃中も無言で話しかけても話つらそうにしています、…また敵方に身を置いてしまったことを気に病んでいるようです』
「両方AIDAに呑まれただけじゃねぇか、それにお前はAIDAも消えてない」
『………そうですね、しかし…不思議と暴走はしません』
「お前の心が強くなった証だ、碑文の力はお前の精神力に左右される」
『……私もAIDAを…』
「余計な事は考えるな、お前の重荷になるだけだ、より苦しくなるだけだ」
『……やはり、一度…手合わせしていただけませんか、同じAIDAと碑文を宿したものとして』
「……AIDAは味方とは限らない、誰かが言ってたぜ…危険な友人として互いに理解し合うことが必要だってな」
『危険な友人…そして…理解し合う…』
「……求めすぎだろ、お前は十分強いんだからな」
『……そうですか、わかりました』
「まあ、なんだ…守る為に頑張るなら手は貸してやる、焦るなよ、ゆっくりで良いんだ、歩くような速さでもな」
『…歩くような…速さ……』
「ああ、まあ、使える頃には遅いかもしれねぇけどな…でもお前はもう充分強いさ」
『………私は、瑞鳳さんとの再戦…正直な事を言うと勝てる気がしませんでした』
「…なんでだ?」
『あの人の一撃は…私には見えないほど速く、鋭く、重い…復讐するものの名を冠しているからでしょうが…カウンター主体のファイトスタイルは攻め気の強い私によく刺さります』
「なら戦い方を変えろ、悪いところがわかってるなら変えていけ、勝ちたいんだろ?」
『…もう亡くなった相手に勝つ事は…』
「…背中を追って、追い越せ」
『………追い越せるでしょうか』
「お前次第だ」
『………」
「お前の碑文は、誰よりも心の強いやつが持ってた…お前なら使いこなせる」
「…メイガス……私に力を貸してください」