元勇者提督   作:無し

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時間

旧 離島鎮守府

九竜トキオ

 

「え?オレが?」

 

「そー、俺もこんな感じじゃん?お前さんも多分戦えた方が良いかと思ってさぁ」

 

「って言われても…曽我部さ…フリューゲル、どうするつもりなんだ?」

 

曽我部さん、フリューゲル…今の姿はゲームの中のフリューゲルだし…フリューゲルでいいか

 

「……死ぬ覚悟はあるか?」

 

「…!」

 

「なんつって!まあカイトの作戦が成功したらみんな死ぬんだけどさ!」

 

「茶化すなよ!やってやるよ!」

 

電ちゃんを守らなきゃいけない

オレは守られるだけじゃダメだ

 

「…後悔は、ないんだな?」

 

「ああ、なんだって…やってやる!」

 

「まあそんな焦んなって、先に現場の再確認だ」

 

「再確認…?」

 

意思確認…じゃないよな、今したし

 

「お前さんはリアルデジタライズの経験者だからな、でも今回はネットの中に入るんじゃなくて、ネットがリアルを侵食してる」

 

「…まあ、言われてることはわかるけど…」

 

「カイト曰く、リアルとネットが同じになるならネットの中の身体を呼び出して使うこともできる…まあ実際体現してる通りだな」

 

「オレもゲームの体で戦えってこと?」

 

「そもそもお前さんはゲームの中に生身で入れちまうだろ、ほら変身ってやればなんか変わるかもってカイトがー…」

 

「カイトが…?」

 

まあカイトが言ってるならそうなのか…?

嘘とかいうタイプじゃないし…

 

「変身!」

 

「うわぁ…本当にやったよ…オレを疑おうぜ少年…」

 

「…オッサン…」

 

本当にこのオッサンは…

 

「まあ、でも本当に姿が変わるとはねぇ、引いちゃうよ」

 

「………」

 

「あ、疑ってる?ほら、鏡」

 

「……いや、この顔のマーカーは元からだから!良い加減にしろよ!」

 

「冗談は置いといて、データ的にはかなり変性してんだよねぇ…よし、海の上に立つとこから行こうか少年」

 

「……本気で言ってんのかこのオッサン…」

 

 

 

 

「うわ、立てる…」

 

「……マジかよ…正直オレもドン引きだよ」

 

「提案したのそっちだろ!?」

 

「剣とかは出せないの?ほら、トキオソードってさ」

 

「ダサいよ!……んー…この前見た時カイトはこうしてたよなぁ…」

 

水面を掬う

 

「…ダメだ、海水しか掴めない」

 

「……いや、掴む必要がなかったんだな」

 

「え?……これは…」

 

手の甲に時計と歯車のモチーフをあしらった籠手が…

 

「……拳闘士って事か…」

 

「なるほどねぇ、試しに岩でも殴ってみるか?」

 

目の前に旧に身の丈ほどの岩が隆起する

 

「うわっ!?…これ、フリューゲルが出したのか…」

 

「強制停止だって使える…切り札はとっとくもんだろ?」

 

「確かに…な!!」

 

拳が岩を砕く…というか、籠手が砕いただけ、か

 

「おー…」

 

「……いってぇぇぇ…!」

 

「ん?やっぱ痛いの?」

 

「そりゃ痛ぇよ!オレ生身だぞ!」

 

「俺にキレるなって…なんかアーツとかは使えないのか?」

 

「……えーと…いや、特に無いんじゃないかな…」

 

「なるほどな、一応戦力の形してるけど微妙だねぇ」

 

……やる、絶対に…

 

「お、お前もそんなのできるんだな」

 

「えっと…ブラックローズじゃなくて…」

 

「摩耶だ、よろしくな」

 

「よろしく、なったばかりでそんなに強くないと思うけど…オレなりに頑張るから」

 

「じゃ、さっそくアタシが試してやるよ」

 

…チャンス、だと思うべきだよな…

 

「よし!お願いします!」

 

 

 

 

 

「…ふぅっ…!」

 

「本当にブラックローズそのものの姿だ…腕についた物々しい機銃さえ無ければ…」

 

「この剣を振り抜いた時とか結構片手が遊ぶんだよな、牽制射撃とかでもやった方がいい、って提督に言われてよ」

 

あの大剣だけじゃなく遠距離もやられると…キツイかな…頑張らなきゃ

 

「…よし、行くぞ…!」

 

「来やがれ!!」

 

てっきりすぐ撃ってくると思ったけど…こっちの力量を測ろうとしてるのか、接近をさせるつもりだ…

なら誘いにのってインファイトで…!

 

「やあっ!!」

 

大剣で拳を受け止められる

 

「ッ!良い威力してやがる…!」

 

「まだまだ!!」

 

連打、連打…!

 

「確か、どんな傷も治るんだよな…こっちも楽しませてもらうぜ…!」

 

「!!」

 

刃の方で受け止められた…

籠手が無ければ拳から腕まで割れてた…

 

緊張で心臓が締まる、これは命懸けなんだ…!

 

「上等!!」

 

隙だらけのサイドに蹴りを入れて距離を取る

 

「痛ぇなぁ…堪んねえ!」

 

摩耶の剣の周りをピンク色のオーラが…あれは…?

 

「っし!簡単にへばんなよ!」

 

大きく剣を振って…三日月型のオーラ…

これも攻撃か!

 

「危な…!」

 

「アタシの前でえらく油断したなぁ?…ぶっ殺されてぇかぁ!?」

 

柄での突き、自分の体を回転させながら大剣で叩きつけられる

身体が宙に浮かんでる感覚…

 

「よい…しょっとォ!」

 

上空に弾き飛ばされる

 

「ぶっ飛べ!」

 

空中で何度も剣を叩きつけられる

 

「行くぜ!」

 

打ち上げられたオレよりも遥かに高いところで宙返りし、空を蹴って、剣を構え直す

 

海面に剣ごと叩きつけるつもりか…!

 

「でぇぇりゃぁぁ!!」

 

轟音と共に水煙が視界を覆う

 

「ギリギリガードしやがったか、骨があるじゃねぇか」

 

「この…」

 

流石に、常に戦い続けてるだけある…

これじゃ…オレは何もできない…

 

「おおぉぉぉぉ!!」

 

「…なんだ?」

 

何をすればいい…いや…なんだろう…

体が軽い…?違う、周りの空気が何か変わったような…

 

「うぉッ!まだ動けたか…骨は持っていったと思ったが!」

 

ガードされてるけど、やっぱりサイドが甘い…

 

ミドルキックでガードを崩す!

 

「このッ!いい気になんじゃねぇ!」

 

「ユニゾン…」

 

「何だ!?」

 

アッパーカットで浮き上がった所に追撃…

 

「コンボ!!」

 

「背後…?!いつの間に…!」

 

もう一撃間に合う!

 

「ゴートゥーヘブン!」

 

トドメの回し蹴り…!

 

「ぐ…速ぇ…お前…今何しやがった!?」

 

戦える…かもしれない…でもダメージが多いな…骨も折られてるか…

 

「そこまで、そこまでー」

 

「…なんだ、オッサン邪魔すんなよ」

 

「いや…オレもギブアップです…回復しないと戦えない…」

 

「って事だから、勘弁してやってくれる?いやー、良いデータが取れたよ全く」

 

…データを取ってたのか…いつの間にか機械が並んでる

 

「…トキオだったよな?お前…あたしを怒らせちまったなぁ…」

 

「へ!?」

 

手を差し出される

 

「次!次やる時はギブアップなしだ!良いな!?」

 

「…わかった、次は負けない!」

 

「おーい!少年漫画ばりの展開のとこ悪いんだけどさ」

 

「んだよオッサン、まさか少女趣味なのか?」

 

「そーそー、実はこの歳になってちゃおとか…って何言わせんだよ、んなわけねーじゃん…キッツイねぇちゃんだなぁ…まあ、これ見てくれよ」

 

グラフを見せられる

終盤にかけて何かの数値が大きく増幅していることがわかるだけで全く理解できないけど

 

「こいつは、リアルとネットの融合のレベルを測るものだ、こっちは記録用ね、で、何が言いたいかというとだ…摩耶、アンタの大技をトキオがくらってから融合係数が跳ね上がってるんだよ」

 

「融合ケースーってなんだよ」

 

「融合のパーセントって言い換えるか…ここまでは大体15%だ、が…一気に80%近くまで上がってる」

 

「…おい、つまり…もう80%はネットの中ってことか…?」

 

「いや、それはトキオの周りだけだね」

 

「…オレの周りだけ…?」

 

「そう、でもトキオの融合係数もかなり下がってる、つまり…トキオ、お前さんは戦闘中に遅れてスイッチが入ったんだよ」

 

「スロースターターってことか?」

 

「そこまで単純じゃない、こっちの記録映像を見てくれ」

 

ユニゾンコンボの時の映像…?

 

「…映像飛んでねぇか?…瞬間移動してるぞ」

 

「いや、これが正しい映像だ、実際ワープというのが正しいのか、超高速で移動してるのかは…トキオ、お前がわかるだろ」

 

「オレ…?……多分、高速で移動してる…んだと思う、ハッキリとは…」

 

「スローで再生してもわからねぇほど速いか…ん?なんだよゴートゥーヘブンって、ダッサ」

 

「…うぐ…容赦がない…」

 

「まあ、ダサいセリフも突き詰めればなんとやらっていうじゃない」

 

助け舟…

 

「……にしてもゴートゥーヘブンはねぇだろ」

 

「まあねぇ」

 

な訳ないか…

 

「そ、そんなことより今はオレの解析が先なんだろ!?」

 

「このダサいセリフについての解析もだな」

 

「そーそー」

 

「こんなのいいから!早く次!」

 

「しゃあねぇなぁ…実は他にも融合係数が跳ね上がってるところがたくさんあるんだよねぇ、摩耶、アンタの技だよ、ほらこのオーラを飛ばす技」

 

「そうなのか?54%って高いのか低いのかわかんねぇな」

 

「十分危険な領域だ、それとこの空間を蹴った時もかなり高い」

 

「38%?別にこのくらい良いだろ」

 

「まあ、未知の領域だからなんとも言えないが…とにかく、ここからわかるのはリアルに存在しない…オーラや空間、これが絡むと跳ね上がる、という点だ」

 

「トキオの80%はどうやって説明するんだ…?」

 

「……トキオの周りだけ時の流れが変わったとも言える、恐ろしいことにな」

 

「時間の操作って事か…?」

 

「時間を…?」

 

オレが時間を…

 

「いや、そこまではまだ到達してない、だが…それができても不思議じゃない」

 

「……オレが…時間を…」

 

「ま、あんま期待すんなよ、確実にってわけじゃないんだ」

 

「あ、うん…」

 

……もし、それができたら…きっとオレも電ちゃんを守れる、勿論それだけじゃない…

 

 

 

 

 

駆逐艦 電

 

「凄かったわねぇ…電?」

 

「へ?あ、はい…そうですね…本当にすごいのです…」

 

真っ直ぐで、前を向いていて…

あんな澄んだ目をしていて…羨ましいくらいで…

 

「……なんでそんなに心配そうなの…?」

 

「心配そう、ですか……」

 

私のために誰かが死ぬ様なことは…嫌なのです…

 

「…電、大丈夫、みんな一緒だから…いつまでも」

 

「…はい……」

 

大淀さん…私にはこれは重すぎるのです…

私は…電は……

 

「…っ……」

 

…これは予知なのでしょうか、それとも記憶なのでしょうか…その大きな背中は…私の前に道標として……

 

司令官さん…大淀さん…私には…いや、ダメなのです…これでは…

 

私に…教えてください…どうすれば良いのか…

この絶望的な余地を覆す方法を

 

 

 

 

 

 

 

 

宿毛湾泊地

提督 倉持海斗

 

「次は呉?」

 

「そ、とことんやらなきゃ気が済まないのよ」

 

「……わかった、いってらっしゃい」

 

曙は島風と戦った報告を手早く済ませて呉へ発った、舞鶴よりは近い、すぐに帰るだろう

 

タルヴォスの事を考えても、どうするべきかが見えてこない

 

確実な死を与える技…

 

「めっちゃ迷ってるねぇ」

 

「北上…向こうは良いの?」

 

「摩耶が連れてきてくれたんだよねぇ、あ、阿武隈もらってくよー」

 

「わかった」

 

「………ここはいいよねぇ…ご飯も美味しいし」

 

「…ごめん…」

 

できる事なら僕もそっちにいたい、この椅子に座っていると焦燥感に呑まれそうになる

 

「提督、そういうのはなし、約束でしょ?あたしちゃんと憶えてるからねぇ?」

 

「…そっか、誤魔化せないね」

 

「何考えてた?」

 

「次の敵について」

 

「……瑞鳳の記憶で多少は知ってるよ、タルヴォス…受けたダメージを跳ね返す大技があるんでしょ?」

 

……そう、そしてその威力は確実に人の体でも、艦娘の体でも耐えきれない

 

「ま、でもさ…提督」

 

「何?」

 

「……もっと大事なもの、見ようよ」

 

「…大事なもの…」

 

「……多分、今も必死で助けてって…言ってるんだよ」

 

……そうだ、わかってる…

 

「…順番なんて、どうでも良いんだよ」

 

「そうだね、金剛達に頼んで食料も買い込んでおこうか、決戦は近い…間宮もそっちに行ってもらって」

 

「え?いいの?いやぁそれは嬉しいなぁ…あ、外食する気だな…!?」

 

「しないよ、しないから安心して」

 

「……ま、なんでもいいけどさ…」

 

「うん」

 

「…目、覚まそう」

 

「そうだね、どうやって助ければ良いのかはわからないけど…」

 

「大丈夫…絶対助けられるよ」

 

僕は曽我部さんに聞いた話からこう仮定した

元帥も、ヴェロニカも、2人ともこの世界のゲームマスターになろうとしている

 

ならば次の手は?

 

ヴェロニカは僕を何かにぶつけるのを楽しみにしているはずだ

元帥は何よりも力を手にしたい、とにかく権力以上の力を手にしようとしてる

 

「激しい戦いになるだろうね」

 

「…提督?」

 

アウラ、力を貸して

絶対にやり遂げたい事がある…

 

「夕暮れ竜の加護が在らん事を」

 

「………」

 

 

 

 

 

横須賀鎮守府

駆逐艦 東雲

 

とうとう、言われた、捨てられる

捨てられるんだ、私は

 

「そう、お前は捨てられる」

 

「いやです、捨てられたくありません、特攻でもなんでもします」

 

「死ぬほうがマシか」

 

「はい、どうにかお役に立たせてください」

 

無感情な声とは裏腹に涙が常に溢れてる

壊れそうな心が音を立てていく

 

「お前が1番辛いことはなんだ」

 

「捨てられる事です」

 

「その次は」

 

「……それ以外にありません」

 

捨てられたら、私は完全に終わりだ

帰るところが無い、誰も私を受け止めてくれない

 

私が捨てたあの場所に帰る?できるわけがない

私は漣を、朧を、曙を殺そうとした

 

ーこのモノマネ野郎!ー

 

頭の中であの言葉がリピートされる

 

「俺の邪魔になるものを消せ、殺せ、殺し尽くせ、それをやってのけろ」

 

「はい、誰を殺せば良いのでしょうか」

 

「倉持海斗をはじめとする宿毛湾泊地の奴ら全員がそうだ、舞鶴の奴らがそうだ、呉の奴らがそうだ、佐世保の奴らがそうだ、ヴェロニカ・ベインも邪魔だ、殺せ、殺し尽くせ」

 

「はい」

 

私の中での、最後の、唯一最後残された私の絶対を守らなきゃいけない

 

だからその為に…死んで、みんな…

 

 

 

 

 

 

駆逐艦 綾波

 

「どうですかー?」

 

「プロテクトが強すぎてダメだ、一度完全に破壊する必要がある」

 

「なら死ぬまで叩けばよかったんじゃ?」

 

「モノには利用価値というものがある、邪魔者との戦いに疲弊させればいい、そして碑文を完全に喰らう」

 

「成る程、制御の方は?」

 

「問題ない、強靭な精神さえあれば制御できるのだろう?」

 

「理論上は」

 

「なら十分だ、私にできないわけがない、よくやったぞ、綾波」

 

「ありがとうございま〜ス、サンプルがあったおかげですよ」

 

「さて、戦争の始まりだ」

 

 

 

 

 

 

 

呉鎮守府

軽巡洋艦 神通

 

「……メイガス』

 

感触を確かめる

 

ここは、真っ暗な闇の中

 

メイガスの司る視力でも私には何も見えない

 

『……深淵、ですか』

 

ソレを覗いている時、またソレも覗いている…誰の言葉だったか

 

頬の皮が裂ける感覚

風切り音を立て、何かが蠢いている

 

まるで怖くないのかと問いかける様に…私の肉を避けて斬りつける

 

『…貴方は私に何を求めるのですか』

 

答えはない、どうやら友達になるには苦労しそうだ

 

『……私に力を貸してください…私はまだ答えを出していません、私の答えになってください』

 

しかし、何事にも対価は必要だ

 

『…貴方の求めるものを教えて』

 

皮膚を切り裂いていた切先が皮を鈍く引っ掛ける

ゆっくりと肉の上を這う

 

『……左腕…?なんで左腕を…』

 

問いかける前に左腕が熱く燃えるような感覚に呑まれる

 

『っ!!…これは…!』

 

 

 

 

「…はっ…!」

 

…此処は…訓練所…時間は殆ど経ってない…

私は……

 

「……此れは…」

 

左腕に確かな違和感…表面上は何もない

だけど、確かに違和感がある…

 

「………提督に相談しておくべきですね」

 

 

 

 

 

執務室

 

 

「失礼します…あら?」

 

「神通、久しぶりね」

 

「…貴方は、青髪の曙さんでしたね」

 

「海賊の通り名みたいに呼ばないで、アオボノで良いわ」

 

「何をしに?」

 

「…武者修行、というか…道場破り?」

 

「……なんでまた此処に…」

 

「いっときとは言え此処に在籍したわけだから、なんとなくね…それに、呉の…アンタ、強いじゃない」

 

そう言って提督を見る

 

「……なんか、嫌ななつかれ方したらしいぜ」

 

「その様で…やるんですか?」

 

「いや、あんまやりたくねぇ…」

 

「神通、アンタでも良い…私はもっと強くなりたいの」

 

「……何故?」

 

「みんなの為、そして、取り返すため」

 

「取り返す…?」

 

「ウチの横須賀にいる馬鹿をね」

 

…確か、コルベニクを開眼していた.

 

「1人で戦うつもりですか」

 

「そんなわけないでしょ、でも…そのつもりでも問題ないくらいに強くなってみせる」

 

「わかりました、お相手します」

 

 

 

 

 

 

 

演習場

駆逐艦 曙(青)

 

「よし、行くわよ…」

 

「……その姿が…」

 

「勇者カイト…の力を借りてるだけよ」

 

私は所詮借り物…早く自分のものにしなきゃいけない

 

「……確かに、貴方のその動きは硬い」

 

「…視えるってわけ」

 

「ええ、私にはよく視えますよ…でも、貴方を一方的に支援することはできません、私も試さなくてはならない』

 

槍…これが神通の得物…

なるほどね、リーチはあるけど間合いを詰めればこっちのもの…

 

『……お互い、全力で』

 

「勿論…!」

 

双剣を構える

 

私に足りないものを掴むために戦う、残された時間は多くないからこそ戦わなきゃいけないか

 

「よし、行くわ!」

 

剣撃のコンボ…やっぱり捌かれるか

特に神通の間合いの管理は巧い、距離を詰めようとした瞬間に蹴りの動作を挟み、こちらの動きを牽制してくる

 

『これは中々…!』

 

「お気に召したみたいで良かったわ…!」

 

私には、何が足りない…何が…!

 

『この…!』

 

戦闘に関して、立ち回りについては神通が上手…だけど槍に慣れてない、間合いを生かしているのに、活かせてないせいで有効打がない…神通の悪い点は見つかっても私の悪い点はまだ見つけられてない…

 

「旋風滅双刃!」

 

『ッ!』

 

大きい動作、強い振り、槍の穂先が大きくブレる

 

「もらった!」

 

隙を逃さず追撃…

 

『来ちゃダメ!』

 

黒い…刃…?いや、AIDA…!

 

「く…ッ!アンタも使えたのね…」

 

神通の右肩から生えてるみたいな…こんなタイプのAIDAは見たことない

 

『…違う…この人は敵じゃない……』

 

…様子がおかしい…

 

「…神通…?」

 

『待って…やめなさい…やめて!』

 

AIDAに呑まれた…って認識で良さそうね

神通の右肩から伸びた蔓みたいなAIDAがひゅんひゅんと、音を立てる、先端についてる三日月ような形をしたものは…刃?

 

「一回ぶちのめしてから考えれば良いか…行くわよ神通」

 

『うあぁ…あぁぁぁ!!』

 

 

 

 

 

 

提督 三崎亮

 

「…あのAIDAは…!」

 

最悪のAIDA…

 

「クソ!神通を止めねぇと!』

 

 

 

 

『おい!神通!!』

 

『あ…ぅあ…』

 

「呉の…やるわよ!」

 

『…いや、俺がやる』

 

…やるか…やるしか無いか…

 

『お前がそうなったのは無理に力を求めたからだ…その怖さをよく教えてやる…!』

 

『う…提督…』

 

『行くぞ!神通!』

 

世界が音を立てて崩れる

 

『うおぉぉぉッ!』

 

『…ぁ…メイガス…!』

 

メイガスから不自然に生えたAIDAの腕がスケィスを斬り刻む

 

『この…手数が足りねぇ…!』

 

受け切れないか…

 

『ああぁぁぁッ!!』

 

攻撃が重い

一撃ごとに体が削られる様な感覚が…

 

『結局…川内じゃダメか…!?お前には川内の声が届かなかったのか…!』

 

『…ね…さ、ん…』

 

 

 

 

 

軽巡洋艦 神通

 

…ここは…?

 

遥か頭上で…スケィスとメイガスが戦ってる…

姉さんのスケィスじゃ無い…メイガスも…私のメイガスじゃ無い…あんな腕、私のメイガスには無い…

 

『神通』

 

『…提督…?』

 

『焦り過ぎだ、お前の努力はよく知ってる、なんでそんなに焦った…』

 

なんで私は焦ったのだろう…

確かに、私は…

 

『川内の声は届いてなかったのか、お前の事を大事に思ってくれる姉妹が居るのに、お前はそれを裏切るのか…?』

 

『……私は…』

 

姉さんがあんなに頑張ってるのに

那珂ちゃんがあんなに迷ってるのに

 

私は立ち止まっちゃいけないのに

 

『あ…!』

 

メイガスがスケィスを掴む

AIDAでできた腕がスケィスを斬りつける

 

『…なんだ、俺も…馬鹿だからな、間違いを正すやり方なんてあんまり知らねぇ…でも、これは…本当に力が怖いって事をお前に教えてやれる』

 

『待って…ダメです…!提督…』

 

スケィスを一方的に嬲る

メイガスが、ただ…なんの抵抗もできないスケィスを…

 

『やめて…やめて…お願いだから止まって…消えて、お願い…』

 

AIDAが斬り割いて、メイガスが叩き壊して

 

『やめて!やめてください!お願いだから…』

 

『……神通、よく噛み締めろ』

 

メイガスの腕が、スケィスを貫いた

 

『ぐ…がぁぁぁぁ!!』

 

 

 

 

「……ッ!」

 

世界が元に戻る

提督が海面に浮いていた

駆け寄り増殖を発動する

 

「お願い…間に合って、お願いします…!」

 

AIDAなんか、碑文の力なんか…

 

「……良くわかった、だろ…」

 

「…提督…!良かった…!」

 

「……データドレインを使われてたら…本当に死んでた…クソ、もう海の上に立つ力もない…肩貸してくれ…」

 

「はい、勿論です…提督…その…」

 

「……わかったんだな…?」

 

私は、理解したのだろうか

実によく、恐怖した…けど、恐怖が今回教えたかった事じゃないはずだ…

 

「…いいえ、ハッキリとわかったのは恐怖心だけです…」

 

「…じゃあ言ってやる…使うべき力に使われる様じゃダメなんだ」

 

「…使うべき力…私はAIDAに使われていた…」

 

「AIDAを制御するのは…AIDAが協力的でない限り、お前の精神に全てが委ねられる…力が欲しかったのはわかるが…焦るな」

 

「……はい」

 

このAIDAを制御できるかわからない

だから私は…ゆっくりと…歩くような速さでこれと向き合う必要がある

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