元勇者提督 作:無し
佐世保鎮守府
軽巡洋艦 龍田
「え?お出かけ…?別に良いけれど、どうして私を誘うのかしら〜…」
いきなり秋雲ちゃんに誘われるなんてビックリしちゃった〜
「ほら、龍田さんも…頑張りすぎじゃないかなって思って…その、瑞鶴さんも声かけたんだけど…」
「…瑞鶴はダメだったのね〜」
「私が抜けたら誰がここを守るのかって…龍田さんもダメ…?」
…そんな目で見ないで欲しい…
断り辛いわ〜…
「…何処まで行くの〜?」
「陽炎と不知火が本州にいいお店があって、帰ってくるのに半日かからないって…明日、どうですか?」
…半日…か、許可は取っておけばいいし…何かあってもすぐに帰れる…はず
「ま、許可が出たら構わないわぁ〜」
「やった!ありがとうございます!」
「……なんでこんな事であんなに喜べるのかしら…」
…きっと、私と瑞鶴を心配してくれてるから…
たまたま私達が力を持ってしまってるから…
「そう思うとあんまり、良い気はしないわね…」
私よりも辛いのは瑞鶴のはずなのに…
そう言えば宿毛湾に行ってきたんだっけ
「あ、龍田」
噂をすれば影がさす…
「あらぁ〜?瑞鶴…元気そうね〜」
意外だけれど
「…うん…あはは…やっぱお姉ちゃんってすごいね、本当に元気もらっちゃった」
「…そう…良かったわぁ…」
本当に良かった…瑞鶴だけでも持ち直してくれて
私も持ち直すには良い機会かもしれない
「楽しんできて」
「…断られたコト、秋雲ちゃんが泣いてたわよ〜?」
ちょっとしたウソ
私は素直じゃないから
「え、ホント!?うわぁ…傷つけちゃったかなぁ…気をつけたつもりなのに…!秋雲どこ行ったの!?」
「ウ・ソ♪」
「…は……はぁぁ〜…焦ったぁー!なんで嘘ついてくれてんのよ!!」
…本当に元気になってる、本当に…嬉しくて、羨ましい
「美味しいもの食べてくるね〜♪」
「…はぁ…いってらっしゃい」
「いってきま〜す♪」
まだ気が早い、明日なんだから
宿毛湾泊地
軽巡洋艦 天龍
「…私ですか」
「ん、そう、天龍にはなんだかんだ色々気を遣わせちゃったしさぁ、どう?とりあえず後は長門も行くんだけど」
特に誰かと仲がいいつもりもなかったから、食事に誘ってもらえるなんて思わなかった…
「是非、ご一緒させてください」
親交を深めたい、願ってもないコトだ
「ん、後は阿武隈でも誘おっかなぁ…長門がまだ離島に来る前からの有名なお店らしいんだよね」
「…ハンバーガーチェーンとかそんなオチだったり…」
「……やだなぁ、そんな訳…いや、聞いとこよっと…」
…今更ながら、この状況下でそんなに悠長なことしていいんだろうか…
「え?別に良いと思うよ、楽しんできてね」
肝心の提督がこれじゃあ、仕方ないか
決戦が近い、とか言ってたのに…いや、なんの備えもしてない訳じゃないんだ、油断するとすぐ1人で抱え込むから…ちゃんと見てなきゃいけない
「提督、私たちが出かけてる間に戦いが始まったらどうするつもりですか?」
「みんなで戦うだけだよ、何も変わらない」
「……じゃあなんで私たちが出かけても良いんですか」
「時間がないからこそ…最後までにやりたい事をやっておいて欲しいからだよ」
………
「提督のやりたいことってなんですか?」
「…みんなでゲームをしたかったな…もっと、ずっと…」
「………」
提督は曙さんにお気に入りのネットゲームのディスクをプレゼントしたっていってた…
一緒にやりたかったんだろうなぁ…
「あ、そうだ天龍、有事の際はこっちからも連絡するけど、念のためこれもつけておいて」
「…リストバンド?」
「発信機みたいなものだから、何かあったらこれをちゃんと持っておいて」
「わかりました」
横須賀鎮守府
駆逐艦 東雲
「お前の仕事は舞鶴の全戦力の破壊、並びに徳岡純一郎の捕縛だ、聞きたいことがある」
「任務、了解致しました」
「我々も同行する、手は抜くな」
「はい」
私の明日がかかってる、誰が手を抜けるだろうか
「こちらの研究はもうすぐ完成する、派手にやれ」
「よろしくお願いしますねぇ?」
「…はい」
綾波か…いつの間に出てきた…
「あ、そんなに身構えないでくださいよ、お楽しみは後々ですから…ん〜、制御オンにしても体が反応するほど刻まれてるんですねぇ、素敵ですよぉ」
………
「さて、準備しましょうか」
「はい」
…なんだか気分が悪い
旧 離島鎮守府
軽巡洋艦 夕張
「よっしゃぁぁぁ!できったぁぁ!」
とうとう完成した!
「うわっ…うるさっ…何、腕輪じゃないよね?」
「そっちはもうほんっっとうにダメ!でも見てよ明石!これ!」
「…何これ」
「前に暁ちゃん達が持って帰ってきた接続機あるじゃない!?あれよあれ!あれからダイレクトにミストを呼び出す機械!あ、ミストって言うのはこれのファイルに記録されてたから便宜上そう呼んでるだけで、データの濃度の事で〜」
「長い!要するにそのデータの濃度を高める機械でしょ?私もう作った後だから無意味!」
「へ?…いつの間に…」
せっかく提督から受注して作ったのになぁ…無駄かぁ
「ほら、これプロトタイプのリストバンド」
「……成る程」
出力は私の方が圧倒的に上、緊急避難とかの意味合いが強いかなぁ、それに…待って
「明石、これ提督に言われて作ったの?」
「そうだけど?」
…そうか、わかった、わざわざ私に作成を依頼したのは明石に止められるのを知っててなんだ…
どうしよう…明石に伝えるべきなんだけど…なんでこれが必要なの…?わからない、もしかしたら…本当に必要で、緊急事態なのかもしれない…
「プロトタイプって言ってたけど、完成品は?」
「提督に渡しちゃった、まあ、違いなんて殆どないけど」
………
「ごめん明石!ちょっと借りる!」
「え!?ちょっと!?」
これを連携させれば、多分…
提督なら悪用はしない、大丈夫、信じよう
「…できたぁ…!よし、これを組み込んで…形は手袋みたいだなぁ…ま、いいや…よし、報告しなきゃ」
メールを飛ばす
「あ、いたいた、夕張、何やって…それ何?」
「ん…明石、見てよこれ」
「…革手袋?」
あ、間違えた
「ごめん、これはカバー用のやつね、本体はこっち」
「…何かのチップ…?結構小型な…さっきのことと関係あるの?」
「そう、これを使えばいろんなデータが取れると思ってね」
革手袋で全体を包む
「…なんのデータ取るのかは知らないけど、それ、提督に渡すの?」
「一応ね」
「………」
明石が怪訝な顔で見てるけど、まあなんでも良いや、後で直接聞こう
「さて、腕輪作りに戻りますか!」
「…そう、だね…んー…」
宿毛湾泊地
「はい、約束のものです」
「ありがとう、助かるよ」
受け取ろうとしたタイミングで持ち上げる
「…夕張?」
「何に使うつもりですか?」
「……戦う為だよ」
「何のために」
「誰かを犠牲にしないため」
「仲間じゃないんですか?」
「仲間だから、傷ついてほしくない」
「私たちの気持ちもわかってますか?」
「わかってる、だから…渡して欲しい、どうしても不安なんだ」
「不安?」
「…曙を殺したのは僕だから、もう、誰もこの手から零さない」
……完全に、トラウマになってるなぁ…
自覚させたのが1番良くなかったんだろうけど
「…はい」
「……ありがとう」
もし渡さなければ、何をするかわからない…
同じ泡沫の時を過ごすと言うのなら、後悔のないように
「水の月と泡沫の勇者、かな」
「…僕は勇者じゃないよ、所詮ただの復讐者だ」
「自分でそう言うなら止めませんが…そのために誰かを巻き込むのはあなたの本懐じゃないでしょう…?」
「……人は過程だけを見てはくれない」
「……」
「どんなものでも、結果が出なくては、誰もその過程に興味を持たない、努力してた…それで納得できるのは自分だけなんだ…だから僕はそうしなくちゃ、前に進めない」
「…それが良いと思えること、ですか」
「僕は、曙が必要不可欠だと思う、仲間として」
「碑文使いとしてではなく?」
「決して違う、再誕の力なら八相の方を倒して流用すれば良い、仲間として、必要だ」
「……そういうことでしたら、多少の寄り道もやむを得ない、と」
「そういうことだよ、今は誰も失わないこと、そして曙を取り返すことが僕の目的、その先に世界の再誕がある」
「………」
本当に、みんなが居ない世界を作るつもりなんだろうな…だから自分が悔いを残さないために…いや、違う…それだけじゃない
「そのために明石に腕輪を作らせてたんですか、居ない世界を作るために」
「…ごめん、忘れて欲しい」
…本当に…?
翌日
舞鶴鎮守府
駆逐艦 島風
「え、いや…私は出かけたくないんですけど…」
「ゲームゲームゲーム!体に悪いと思うにゃ!ほら、美味しいお店紹介するから行こ!」
…睦月ちゃんは我が強いなぁ…良いじゃん、この前の演習で疲れたんだから後2日はゲームしたい…できないけど
「もう白露達が先に席を取りに行ってるし早く行こ!」
「……何を食べに…?」
「parfait!!パフェof the パフェ!わかる!?この甘美な響き!」
「………おやすみなさい」
「はい、行きますよー」
「引き摺らないでぇぇ…」
「あ、見えてきた、あそこの…あれ?今日はガラガラ?」
「そうなの?」
「いつもはめちゃくちゃ長蛇の列ができてるんだけど…おやすみかな」
…帰れるかも…確かに睦月ちゃんが指した店はなんだか暗い感じの…
あれ?ここってこんなに人通り少なかったっけ…ここは繁華街で、普段から人や車で賑わってるはず…
車はあるけど…一つも動いてない、道路の真ん中で止まってたり…
おかしい、静かすぎる…
「……ねぇ、睦月ちゃん?」
…あれ?
「…睦月ちゃんが…いない…?」
背後に気配…!
安全が確認できてる前に走るしかない…
「あれ、振り返って攻撃してきてくれると思ったんですけどね…」
…話に聞いてた真っ黒な服を着たヤツ…と、曙さん…
「…睦月ちゃんはどこ…!」
「同じところに送ってあげますよ」
送る…って事は、ここには居ない…
あの一瞬でどこかに…?どうやって…
「こっちだけ見てて良いんですかねぇ?」
「ッ!」
背後…!
「……え…?何、ここ…」
振り返ったら、世界が違う…
街が燃えてる…
人が、死んでる…
阿鼻叫喚とか、そんな言葉がぴったりな…
「深海棲艦…?」
違うかもしれない、でも良く似てる、変な化け物がたくさんいる…そして、人が襲われてる…
「…た、戦わなきゃ……でも、私は…!」
現実では何もできない…
どうすれば…いや、私は…私が良いと思ったことをやる…
「やあぁぁぁッ!!」
化け物に掴みかかる
「この!この…!」
手も足も出るわけがない…簡単に振り払われる…
当然だ、勝てるはずもない…艤装も力もなければ私は無力…今、私が存在する意義が一つ壊されようとしている、無数にある意義の一つが、命が目の前で…
「やめろぉぉ!!」
…化け物を殴り飛ばした…?
「大丈夫!?また人が…どうなってるんだ…!」
黒いパーカーの男…?歯車の籠手…
「君!立てる!?」
「え…うん…」
「じゃあ早く逃げて!アレはオレがなんとかするから!」
そう言って化け物の方に向かっていく
…落ち着いて、私…
今何が起きてるかを把握するんだ…私は睦月ちゃん達を助けなきゃいけない、そしてたくさんの民間人も
「待って!私も連れてって!」
「連れてけって…待って、とりあえずこいつらを片付けてからだ!」
殴る蹴るでまさかこの化け物が倒せるとは思わなかった、少なくとも私は無理だったけど…この人はやってる…
そもそも艦娘ですらないのに…
となると、私の中で一つの解答が出てくる
「……お願い…!」
ここは、現実じゃないのかもしれない…と
手に力を込める、ギュッと、握り込む、あの姿を思い描いて、強く求める…
「……来た…!」
両手に重い感覚、それぞれの手に剣が握られている
「…よし…やるよ!」
双剣を振るい、敵を斬り裂く
「カイト…!?違う、髪が白い…キミは…」
カイト…やっぱり提督の知り合いって事だ!
「私島風!よろしくね!」
「え?…ああ、オレはトキオ、早くここを片付けよう!」
「わかった!」
「よし、あらかた片付いた…」
「…はぁ…終わった……」
ちゃんと魔法も使えた、これなら大丈夫
「……ここにいる人達はみんな巻き込まれただけなんだよな…」
「巻き込まれた…?」
そういえばこの人なんでここに居るんだろう
「あの、貴方は違うの?」
「トキオでいいよ、オレは…そうだな、調査、調査に来たんだよ」
「調査…」
「キミは艦娘なんだよね、カイトの知り合い?」
「うん、多分そのカイトは私の提督」
「じゃあ宿毛湾の?なんでこんなところに…」
「違うよ、今は舞鶴にいるの、ここだって舞鶴のはず…」
…でも、違う
「ここはネットの中だよ、作り出された世界…集団で強制的にリアルデジタライズさせるなんて…」
「リアルデジタライズ…?」
「…君たちは生身のまま、ネットに入れられたんだよ…わ、ちょっと待って…ああ、片付いたよ…そっちはどう……よし、わかった、早くみんなを外に…わかってるって!」
…通信してる?
「もうちょっと待ってて、すぐに現実に戻れるはずだよ」
「…コレって、誰が仕組んだことなの…?」
横須賀の海軍だけでできることなのかな
「オレはわからないけど……待てよ、ダメだ!おい!フリューゲル!!早く出ろよ…!」
「どうしたの…?」
「向こうの狙いがわかったんだ…クソ!つながらない…!」
急に目の前が真っ白になる
「わっ!?……戻った…の?」
戻った、現実だ…だけど、人は死んでる…街は、燃えてる…
トキオさんも居ない…
「……そんな…!」
そうだ、みんなは!?
「睦月ちゃん!どこ!?どこにいるの!!」
入ろうとしていたお店に向かう
居ない、誰も、何も
紛れもない現実で、私の友達がいない…
九竜トキオ
「間に合わなかった…!」
『どうしたんだよ、いきなり…』
「敵の狙いはヘルバの位置だ!この大規模なリアルデジタライズ騒ぎを鎮静化するためにヘルバを動かすのが狙いだ!」
『なに…?クソ、ヘルバ、そっちは』
『問題ないわ、元よりいくつもサーバーを中継してる、簡単には足を掴めない』
「だとしても時間の問題だ!そこから逃げて!」
『…言うことを聞いといたほうがいいと思うぜ』
『その様ね、私の予備のアジトの接続が切れたわ』
「もうヘルバのセキュリティを突破したのか…!」
『違うな…データドレインの痕跡がある、碑文の力で無理やりこじ開けてやがるか…!』
「……ヘルバ、逃げ切れたかな…」
『油断はできない、それだけは確かだ、それよりなんで向こうの狙いがわかった?』
「ヘルバの見つけてきた計画書、覚えてる?」
『ああ、計画書というかただの設計図だな、人をリアルデジタライズさせる装置の設計図』
「なんであんな簡単に見つかったのかなと思って…」
『簡単って言ってもヘルバにしか見つけられなかった』
「そこだよ、ヘルバにしかできないからヘルバを炙り出せたんだ」
『…なるほどな、ほとんど勘みたいなもんだが、結果正しいんだから仕方ないか…今からどうする?』
「……ヘルバを狙ってる奴を引き摺り出す!」
『できるのか…?』
「やってやるさ…」
軽巡洋艦 龍田
「うーん…甘いわねぇ…」
「でも美味しいじゃないですか、このパフェ」
「……案内してくれて悪いけど…秋雲、私たちの調べた店は向こうの通りらしいわよ」
「えっ…」
「秋雲の落ち度ですね、私たちは悪くありません」
「いや、いやー、たはは…おいしいからいいじゃん!ね!」
「そうよ〜?あんまり細かいことを気にしちゃダメだからね?」
……少し気が楽になったけど、やっぱりこの子達はまだ幼いような気がする、下手すれば私よりも先に着任した子だっているのに…
「……ん?…なんでしょう今の光」
「光?そんなもの見えた?」
「…気の所為か、気にしないでくださ…」
爆発音が響く、窓が割れ、地面が揺れる
「伏せて!」
「…治った…?」
「一体何が……」
…オフ、と言うわけにはいかなくなった…か
「呆気にとられてないで、早くいくわよ〜?民間人の被害を防がないと」
……緊張してる…?
動悸が激しい…何もかも捨てて逃げ出したい…
こんな気持ちになった事は、今までなかったのに
軽巡洋艦 神通
「…これ、カロリーがすごいことになってますけど…」
「那珂ちゃんはアイドルだからカロリーを超越してるんだよ?」
…だいぶんテンションが戻ってきたようですね…
アイスを掬って口に運ぶ、むせた
「ゴホッ!…これ…甘すぎませんか…!?」
「…むしろ足りないくらいなんだけど…」
「………」
本気で言ってるのだろう、私には甘すぎた…
「ん〜、あ、これも美味しい」
「…パフェの中にドーナツ…?」
「頭いいよねー、穴が空いてるからカロリーゼロだし」
「…???」
え、何を言ってるんでしょう、那珂ちゃんはそこまで馬鹿じゃないはず…
私の計算だと…これはいつもの倍はトレーニングしなくてはいけなくなりましたね…姉さんの作る料理のカロリーと計算して…
……呉まで走って帰るべきかもしれない…
「あ、ほら、神通姉さん、これ食べてよ」
「…ミント?好き嫌いはいけませんよ」
「おねがーい!ね?ね?」
「由良さんの真似をしてもダメで…」
爆発…?!
かなり近い…
「ねぇ、今の…」
「行きましょう!お代置いていきます!」
「あ、待って!!」
軽巡洋艦 天龍
「……おやすみでしたね」
「ま、そう言うこともあるよ、長門、落ち込まないで」
「…ああ…勇気を出してきてみたのに…」
「長門さん、人が怖いんでしたっけ…」
「……身長が高い女、というだけで人目につく、難儀な身に生まれたものだ」
「でもその身体でみんなを守ってきたんだから、もっと誇りに思いなって」
「あ、あれ?…違います、此処じゃなくてもう少し北のお店みたいですよ…?」
「え?うわホントだ、来たことないとこの地理は難しいねぇ…よーし、長門、行くよー」
「あ、ああ!」
「急に元気に…」
爆発音…
「な、なんだ!?」
「何が起きて…!」
「落ち着きなー…3人が頼りなんだからさぁ…」
北上さんは冷静だけど…私達はそんな余裕はなくて…
「ほら、早く行くよ」
「に、逃げないのか…!?」
「ダメです…私たちの仕事です、此処で逃げたら提督に示しがつきません」
…仕方ない…救助くらいならできるはず…
「…何…これ」
たくさん、死んでる…
「う…おぇぇ…」
「長門、しっかりして…吐いてる暇があったら戦う用意しないと死ぬよ」
「戦うって…何と…?」
「嫌な匂いがする…って言うかこの爆発…ガソリンとかじゃないのか…」
「…あ、生存者…!」
真っ黒な服で必死に地面を這いずってる人に駆け寄る
何があったか聞けるかもしれない
「大丈夫で……あれ…?」
起こした、はず…あ…え…?
なんで私のお腹にナイフなんか刺さって…
「天龍!!…阿武隈!長門!」
「は、はい!」
「…く…うおぉぉぉ!」
痛い、熱い…痛い…!
なんで私がこんなことに…
「ぅあッ!…何…これ…!」
「がッ…ぁ……」
「嘘でしょ、長門まで一撃でやられるって流石に規格外なんだけど」
「……アハッ…!」
狂ってる…口元しか見えないけど、この人…笑ってる…
「…どこのどいつか知らないけど、タイミングが悪すぎたね」
…北上さんじゃどうやっても逃げ切れない…
なんとかしないと…
「…ふふっ…」
北上さんの方に行くのは止めないと…
「天龍、大丈夫だよ…鬼が来たから」
鬼…?何を言って…
「………」
黒いやつが北上さんの方に…!
「北上さん!」
「だから大丈夫なんだって、危なかったけど…やー、助かったよ、神通」
…いつの間に…間に割って入ってくれなければ北上さんはやられてたけど…
「…記憶も声も戻ったようで」
「ん、言ってなかったっけ、戦えないのは変わんないけどさ」
「……コレが、質の悪い偽物ですか、よくも私を騙ってくれましたね」
「………」
「全身、人工筋肉ですか、そんな事で強くなれるとでも?」
「…!」
真っ黒なやつの動揺がハッキリと見てとれた…
人工筋肉っていうのが何かはわからないけど…
「それとも、貴方もロボットですか?駆逐艦綾波」
「……何故綾波だと?」
黒いやつがフードを取る
長いサイドテールと駆逐艦の制服…
「私、視えてるんですよ」
「………」
視えてる…?
「横須賀の所属の貴方がこんなところで何を?そもそも、私のフリをして人を襲ってる事自体許し難いですね」
「………さようなら」
『逃すと思いますか』
綾波の足元に槍が刺さってる…いつの間に…?
「……」
「自殺ですか?」
小型の拳銃のようなものを自分に向けてる…?
「コレ、最新式のライトなんですよ、ほら」
こっちに向けて炸裂させた…!
「ッ!」
「眩しい…!」
閃光に辺りが包まれる
「く…油断してしまいました…すいません」
「見えすぎるのも困りものだねぇ、なんにせよ、助かったよ」
「いえ…天龍さんの傷が深いですね…傷口を自分で抑えられますか?」
「…はい…」
「抜きますよ、ふっ…よく我慢できましたね」
どくどくと脈打ってる…傷口が熱い…強く押さえつける
「長門、天龍についてて、阿武隈、早く起きな…急ぐよ」
「…わか、りました…」
…なんで北上さんはそんなに焦って…
「北上さん、焦る必要はありませんよ向こうから来てくれました」
「………本当に、最低最悪の人殺しになっちゃったんだ、私とおんなじで、気分はどう?曙…」
「…来なさい、再誕、コルベニク』