元勇者提督 作:無し
京都 舞鶴
提督 倉持海斗
「また戦えるようになる…?」
島風から力が無くなったとして、その力の源はセグメントだったはずだ、ならばもう一度セグメントを手にすれば戦える
「大丈夫、心配ないよ」
「…わかった」
この出血の痕は全て島風のもの、かな…
だとすれば…僕は間に合っていなかったことになる
またこの手から1人零す所だった
「…提督、なんでそんなに悲しい顔してるの?」
「……島風は誰にやられたの?」
「…曙さん」
「キミ1人で戦ったの…?」
「……逃げてるみんなが見えて、あのままだったらみんながやられちゃうって思って…」
…島風も、曙を止めてくれた事になる、か
「…よく頑張ったね」
「……うん」
アウラのセグメントは僕の中には一つしかない
コレを渡す事はできない…
「あの、よろしいですか?」
…神通、この人が治したんだったな…おそらく碑文使いか、それとも回復アイテムに準ずるものを持ってる
「何かな」
「あ、いえ…そちらの島風さんの御仲間が御無事であることを伝えたくて」
「ホントに!?」
「はい、確かである筈ですよ、この先に居ます、行かれるのであれば案内しますが」
「お願いします!」
「貴方はどうされますか?」
「…僕も行くよ」
「居た!睦月ちゃん!」
「にゃ!?ば、化けて出たぁぁ!?ふえぇぇごめんなさーい!!」
「…夢でも見てるのかな…間違いなく助からないと思ってたのに…」
舞鶴の子達の反応を見るに、本当に…死の直前だったんだろう、本当にギリギリだった、と言う事だ
「おばけでも夢でもないよ!生きてるもん!」
…なんにせよ、助かってくれて良かった、それ以上の言葉はない
だけど、今僕らが立ってるこの場所にどれほどの屍があるのか…
「…海斗くん…いや、倉持さん…本当に申し訳ない」
「…徳岡さん、頭を上げてください」
「今でこそ俺の指揮下、と言う事になっちゃいるが……私は貴方の部下を死なせるところだった」
「島風は自分の仲間を守ろうとしてた、その為に大怪我をした…本人にとっても誇らしい事だ、と僕は思います…」
「………」
「それに、島風は生きてる、あんなに笑ってる、なら僕は貴方を責めたりする理由が無いんです」
「…そうらしい、じゃあ早速…仕事の話といこう」
「ええ」
大規模な陸上戦闘…と言うだけならまだ話はわかるが…
民間人の死者数は千を優に越えるだろう…それだけの犠牲を出して、何がしたかった…?
「…NABのハッカーと連絡を取ったんだが、どうにも大規模なリアルデジタライズの実験の記録がある」
「リアルデジタライズの…?」
「…てーとく、リアルデジタライズの話…?」
「島風、何か知ってるの?」
「私、リアルデジタライズした時に提督の友達と会ったよ」
「友達?」
「トキオって人だよ」
「トキオが…?」
どう言う事だろう…
とりあえず曽我部さんとトキオにメールを飛ばす
「…送信失敗…?……圏外になってる」
電気設備もやられたのか?だとしたらどれほどの範囲が…
だけどネットとリアルが融合しつつあるのに通じないものなのだろうか…
「…そうか…隔離されたんだ」
ここはここだけ、それ以外の空間と分たれた
詳細までは特定できないが他の場所とは違う空間になってる可能性が高い
「1人で納得してないでこっちにも情報をくれないか?」
「…待ってください…ここから出られないかもしれない」
「出られない?」
「……援軍を絶って、完全に舞鶴鎮守府を破壊するつもりだった、と僕は推測してます」
「…なんだと…?確かに鎮守府にも襲撃があったがそれはもう退けた、第一アレは深海棲艦の…」
「……本当に深海棲艦だったんでしょうか、本当にそうなら…」
「本部と深海棲艦が仲良しこよしって事か…?冗談だろ…」
そう言う事、としか考えられない…
しかし、ネットとダイレクトに繋がっているのに圏外…か
いや、妨害されてるだけでうまくやればネットには繋がるのか?
「…こっちも圏外だ、クソ…まだ鎮守府にも連中がいるのに…」
「鳳翔…」
「一度うちの鎮守府に戻ろう、そっからなら何かできるかもしれない」
「…急ぎましょう、もしかしたら再び攻撃されてるかも」
九竜トキオ
「見つけたぜ…ハッカー!」
「おいおい、クラッカーだ、間違えんなよ坊や」
全身金色の甲冑に身を纏った女性のキャラクター…
鳥をモチーフにしてるのか、顔はクチバシのようなバイザー、背中には羽…
「なんの目的でヘルバを追ってる!」
「仕事でな、なんだ、知り合いか?丁度いいな、案内してくれよれ
「ふざけんな!なんで敵なんか連れてくんだよ!お前をここで倒してやる…!」
「…やめとくんだな、アタシのボディは全身からデータドレインが流れ出てる、触れたらお前さんのリアルも保証できねぇよ」
「データドレイン…!?なんでお前が…!」
「CC社は解析が済んでてな、もとから制御せず、微弱なデータドレインを常に暴走させるってコンセプトで作られたのがこのキャラ、ウーラニアだ」
「……ヘルバに会ってどうするつもりだ…!」
「なぁんにも?元々仕事だって言ってんだろ?…あぁ、なるほどな、お前、こっちで追いかけっこしてたネズミと勘違いしてんのか」
「ネズミ?」
「ヘルバと連絡が取れなくてな、プロトタイプの腕輪の完成の知らせを持っていきたかっただけなんだよ、ほら、アレだ…日本語がわからねぇ…待ってろ、おい!リーリエ!פאַךってなんて言えば良い!」
「リーリエ…?」
聞き覚えのある名前とともに知ってる声がうっすら聞こえる
「…リーリエがいるって事は…フリューゲル、おーい…オッサーン…」
…全然出ないし、何やってんだよあのオッサン…
「ドーギョーシャって奴だ、わかったろ?なあ、邪魔しないでくれよ」
「…確認したい」
「なんだ?」
「…フリューゲルっていけすかないオッサン知ってる?」
「ああ、イかれたナイスガイか、なんだ?友達か?」
「……まあ、うん…なんでもない、ていうか、知り合いならメールとかすれば良かったんじゃ…」
「メールしようと思ったんだがこっちに探知かけた輩がいてな、面白そうだからぶっ壊してやった、その帰りについでに仕事をな?」
「えぇ…そっちがついでなのかよ…ヘルバのアジトを潰したのって…?」
「制御してないせいでなんでもクラックしちまうんだ、悪かったな、謝っといてくれ」
「………」
「それよりお前のキャラ、どんなハックしたらできるんだ?なかやかイカすじゃねぇか」
「…俺はハッカーじゃ無いんだけど」
「誰が作ったんだ?フリューゲルか?あのオッサン意外といけてるんだな」
「…あー、うん、そうだね、とりあえず詳しい事情はフリューゲルにお願い」
「ああ、じゃあな」
「…キャラが濃いやつが多すぎるよ…」
旧 離島鎮守府
工作艦 明石
「サバイバーズギルト?曽我部さん、それは…?」
「PTSDみたいなもんなんだけど…まー、カイトはそんな状態だねぇ?」
「…重い病気なんですか?」
「サバイバー、生存者のギルト、罪、生き残ったことを罪として認識してしまう、病気とは言わないけど…よく無い考え方の一つだね、過去の戦いで勇者カイトはコルベニクとの最終決戦、一人だけコルベニクのドレインをまぬがれた、当時こそ深く思い悩まなかったんだろうけど、ここで生き死にに深く関わりすぎた、だからこそ、自分があの時…自分が代わりに…そう考えてしまう」
「そんな…」
「ドレインを受けた仲間はあの時全員死に、今生きてるのはデータなのでは、と考えてる…ってのも間違いない」
「………」
「でも、カイトの精神は至って安定しているとも言える、精神面の支えは君たちって事になるわけだ、献身的に支えてやればきっと悪いようにはならない」
「…そうですか…」
…自己犠牲精神の裏側がよく見えた、そんな気がする
データの仲間…つまり私達も…
「不安になっちゃダメだ、コレばかりは俺がどうにかできる話じゃ無い、君達がしっかりと支えてあげなさい」
「…曽我部さんもちゃんとする時があるんですね」
「ま、俺も医者だしぃ?…ん…変だな、カイトの信号が途絶えた」
「え?」
「………コレは、なんだ?」
「なんですか?この写真…」
「舞鶴付近らしいな…透明な壁に覆われてるみたいな…うわっ…グロぉ…」
「死体…!コレ、全部死んでるんですか…?」
「……御構い無しなやり方だな、何が目的なんだ?カイトの信号が途絶えたことと何か関係が…ああ、あるね、夕張ちゃんのグローブの信号も舞鶴で切れてるわ…なんかあったな、こりゃ」
「そんな!」
「まあ、大丈夫でしょ、勇者サマを信じるしか無い訳だし」
……胸騒ぎがする…
舞鶴鎮守府
提督 倉持海斗
「鳳翔!」
「提督…情け無い姿をお見せしてしまい申し訳ありません…」
ボロボロになった鳳翔の周りには深海棲艦の死体が転がっている
10…20はいるか
「…キミがこれを?」
「……取り逃しはしていません、全滅させた筈です」
「一人で…良くやったもんだな…」
此処の駆逐艦は先の襲撃で艤装にダメージを受けて修理中だったらしい、だから一人で対処するしかなかった
まるでそのタイミングを狙ったような襲撃
「お陰でもう立つ気力も有りませんけどね…でも、みんな守れました」
「良かった、本当に」
そこまで酷い怪我じゃ無いにしろ、早く傷を手当てするに越した事はない
「修復剤は有りますか?」
「今五月雨に取りに行かせてる」
「提督!大変です!修復材も資材も全て無くなってます!」
「何!?ちゃんと探したのか!」
「探しました!でも有りません!」
…陽動だったのか、仕方ない、回復アイテムを…
「…あれ…?」
「…どうしたんだ?」
「……そうか、圏外か」
完全に封じ込められた事になる…
北上や天龍も心配だ、一度戻るべきだけど…
「あー、おい?」
「……何かネットに繋げる電子機器はありますか?」
「…さっき試した通り全部ダメだ、此処にあるパソコンも普通の奴だしな…そうだ、弥生、お前はどうなんだ?今碑文の力は使えるのか」
「…ダメみたい、です、エンデュランスも居ない…友達に会いにいくって言ってました…」
「どうしたもんか…いや、待てよ…繋げるか?ちょっと待っててくれ」
横須賀鎮守府
駆逐艦 綾波
「あら、提督様、なんの御用でしょうか?」
「今度はなんの遊びだ、また随分とやられたものだな」
「でも楽しめましたからねぇ…あとこのオクスリ、結構イイですよ?どうですか?」
「戦闘には興味はない」
「残念ですねぇ、安全性も確認できたのに」
「自分の体で臨床実験をする姿には尊敬の念を抱く、しかし私は興味がないものでな」
「天才ですから、でも碑文、むかつきますねぇ、あんなチンケなのに負け続けるのも嫌気がさします、おかげでお遊びに興が乗ったじゃないですか、あ、東雲さんも貸してください」
「好きにしろ」
「…にしても、東雲さん、良く言うことを聞きますねぇ、碑文の力を使うとチップの制御が弱くなるって今回の計測でわかりましたけど…それでも提督を愛してやまないようですが」
「簡単な事だ、モノを壊すのは簡単だ、いくら積み木を積み上げたとしても簡単に壊せる、アレは自分の中で積み上げた信頼を、その信頼する相手に砕かれた、壊れかかった、ならまだ信じようがあっただろう、必死に守っていたモノを背中から簡単に壊されたのだから…もはやアレにとって自分が積み上げた信頼を壊される事は何よりも恐怖する対象になった」
「そして自分で壊したくないから必死にそれに追い縋る…惨めですねぇ…ゾクゾク来ちゃいますよ」
「倉持海斗が壊したように、自分は壊したくない、それだけだろう、だがそれが私の駒として役に立つ」
「依存させると言うのは実に楽な手段ですからねぇ?」
「まったくだ、おかげで暗殺すらも無駄、本当に役に立つ」
「そう言われて喜ぶ顔が目に浮かびますよ、人どころか艦娘としても扱われてないのに、提督にとって東雲さんは?」
「使い捨ての道具だ、そしてその道具が自分を長く使うよう、捨てられないようにと必死に縋っている、それだけだ」
「そうですねぇ、早いところ死んだ方が楽なんでしょうけど…あ、あとこれ、碑文のプロテクト値のデータです、戦闘のダメージはなかったので計測できませんでしたが、精神面に大きく影響があると思われます」
「…ほぉ!成る程、やはり東雲は結局そのままだったか…!」
「ええ、倉持海斗が出てきた瞬間、大きく心拍数なども変化しており、感情の抑制が働いたせいで自分の精神がわからなくなりつつあるようです、そろそろ人格も崩壊してもおかしくないんですよね、と言うかとっくにしてる筈なのに…偉く長持ちする道具ですね」
「いい買い物だったわけだ、完全な死兵となるか、それも一興だが東雲にコルベニクは少々贅沢が過ぎる」
「それとこれ、会長さんからの報告書でーす」
「…今回の件に黒い森を使ったことがバレたか」
「当たり前でしょう、黒い森の力でリアルとネットの融合度を跳ね上げてその空間だけ隔離、そしてその中における電波を完全に遮断、融合度をとことん落として、完全な隔離状態…本来なら艦娘も深海棲艦も霧散してもおかしくないんですけど、バリアのおかげで消滅を免れてるし…」
「こちらの意図を察して深海棲艦を動かしてくれた事についてはありがたいの一言に尽きるな」
「倉持海斗、神通、那珂、弥生、島風この要注意人物を全員捕らえただけで御の字、勝手に餓死してもらいましょう、あ、餓死って実は空腹で死ぬんじゃなくて免疫がですね」
「そんな話を聞きたいわけではない、くだらん」
「この5人、直接手を下さなくていいんですかねぇ?」
「なんだ、お前が今勝手に死ぬと言ったんだろう」
「ゴキブリってしぶといですから、ちょっと不安なモノで」
「かと言って今更中に入ることも、殺しに行くこともできん、隔離が終わっては何もできんからな」
「あーん、ちゃんと殺さないと綾波ふあ〜ん!」
「…チッ」
「ちょっとはノッてくださいよぉ…冷たいですねぇ…」
「腕は」
「新しい合金の腕つけまース、碑文使いのいない潰すところあったら呼んでください」
「仕事をしろ」
「私は戦うのはダメなんですって、私の専門は弱いモノいじめですから」
「そうか」
「…アハッ、いいこと思いつきましたよ?もし出てきたら殺しちゃうために…あー、この辺だと此処かなぁ、あ、これをこうして…戦力の配置、しちゃおうかなぁ…やっぱ私天才…」
「…やるならさっさとやれ」
「はいはーい、やりまース」
舞鶴鎮守府
駆逐艦 島風
「おっそーい!!」
「すまんすまん、ほら、これだ」
「…それは?」
「黒い森に接続する為のUSB、これ自体が繋がってるからいけるんじゃないかと思ってな」
「黒い森に?」
「可能性の一つだ、だけどあたりなら儲けもんだろ?」
そう言って提督はパソコンにUSBを…提督?提督と提督…提督が二人…うーん…
「島風?どうしたの?」
「…てーとくが2人もいてなんて呼べばいいのかわかんない」
「島風はもう舞鶴の駆逐艦なんだから、僕を提督って呼ぶ必要はないんだよ」
「…じゃあなんて呼べばいいの?」
「……カイト、それで良いよ」
カイト…カイトかぁ、うん、それならいいかも
「わかった!カイト!」
「よし!動いたぞ!」
「ならこれと接続しましょう」
「…さっきからつけてる手袋か、なんだそれ」
「秘密兵器ですよ」
そう言ってケーブルを繋いで何かを動かす
「…よし、これなら…」
「え、なんでこの状況でその姿に…?」
「これがあればどこでもカイトになれるんだ、よし、みんなを外に送るよ」
「…ようわからんが、助かる、外にさえ出れば逃げようもあるわけだしな…」
「北上達も回収しなきゃだから先に送ります、生存者も探さないと」
「ありがとうございます」
魔法のようなエフェクトが私たちを包む
一瞬で景色が変わる
変わった景色の先に銃を持った兵士が1人
「…待って!敵!」
「逃げて!」
銃声が響く
『このッ!』
軽巡洋艦 北上
「お、提督〜、待ってたよ」
「お待たせ、みんな揃ってるようで何よりだよ」
「早くしてください、ここに居ると気が狂いそうになるので」
「…神通さんだったね、生存者を探せたりはしない?」
…提督もあまり長くその姿で居るのは避けたいかぁ
「できますが、どこにも居ませんよ、残念ながら」
「…そう、ありがとう」
…またそんな不満げな顔して
助けられる量にも限度ってモノがあるよ、それにこれは仕方ない事だから
「……倉持さん、急いで送ってください、待ち伏せされてますよ」
「え?」
「早く!!」
「…これ、は…」
「………死んでいます、残念ながら」
「そんな、そんな訳、ない…」
…鳳翔が撃たれてた、執拗に、確実に殺そうとしたことが分かる
艦娘が陸で死ぬ、か…中々ふざけた話だよね
「…提督、現実見よう」
「……一緒に行くべきだった、そうすれば防げたのに…!」
「鳳翔が死んだことをどうこうお前って言ったんじゃなくて、周りをよく見てよ、こんなに血痕がある怪我してる子がいるってことだよ、ほら、弔うのは後でいいから早く立って、早く動くよ」
今提督に考える時間を与えちゃダメだ、絶対に自分を追い詰め続ける
「…わかってる…」
「長門、おぶって、早く行こう」
「…私たちに銃弾は普通あまり通らない筈…」
「通るやつもあるってこと、そんなことどうでもいいから早く」
「…貴方、ふざけてるんですか」
「やめろ!弥生!」
「どんな形でも助けられといてそれは無いんじゃない?待ち伏せだって予測できなかったのにさぁ…!」
合流はできたけど…待ち伏せされたせいで提督がすごい目で睨まれてる
ダメだ、此処にいたら提督の負担になるだけだ
早く帰らせないと
「みんな怪我した、みんな傷ついた…待ち伏せされたのは貴方の思慮が足りないからじゃないですか」
「……本当にごめん」
「提督、頭下げないで、あのままあの中に取り込まれてるわけにもいかなかったんだ、提督は間違ってないんだよ」
弥生の目が私に向く、甘やかすなと言う事なんだろうけど、他所者にはわからない事情があるんだよ…
「弥生、鳳翔を失って1番辛いのは俺たちじゃないんだ…」
「そうかもしれません、だけど誰が死んでいたかわからない、私たち全員の命が危険に晒されてたんです」
島風が口を出そうとするたびに睨みつけて黙らせてるし、感じ悪いなぁ…瑞鳳の記憶とえらい違いだ
「キミの言う通りだ、僕が君たちの命を危険に晒した…僕が…」
「提督、落ち着いて、今自分を責めても何にもならないよ」
「その様ですね、敵が来てますよ」
神通も気づいてるか、さすが視覚を司ってるだけあるねぇ
「…敵?どこに…」
「南の方角です、数は7、装備は小銃にグレネードが二つ…居ない…?」
「…提督…」
殺しに行った、か…ダメだよそれは、感情の発散のさせ方がわからなくなってる…とにかく誰かのせいにしたいんだろうけど…
「阿武隈、携帯つながる?」
「は、はい…」
「夕張と明石に連絡、提督はもう戦わせちゃダメだよ」
「…はい…」
……血脂の臭い、人の焼ける臭い
提督は、私が人を殺した時…こんな気持ちだったんだ
止めたいけど止められない、取り返せない一線を越える瞬間を目の前で越えられる
「……仕方ないよね、今日は、仕方ないんだよ…」
自分に言い聞かせる
力に飲まれてなきゃ、辛い時が誰にでもある
「明石さんが即刻帰ってくるようにと…迎えにアオボノさんと摩耶さんを出してくれるそうです」
「……多分もうすぐ来るかな…いい判断だよ、無理矢理でも止めなきゃいけないし」
…来た
「北上さん」
「何、神通」
「宿毛湾の人たちはワープが使えるんですか?」
「ワープ…ワープ…?ワープかぁ…腕輪から腕輪への移動とか、ワープなのかな、みんなじゃなくて3人だけできるんだけど、ほら、今やりあってる3人」
「……なんであのお二人は倉持さんを攻撃してるんですか」
「一回沈めるべきだって判断したんでしょ?別に良いんじゃない」
私だってそう思ってるし、でも私にはできないことだからなぁ
「……感情に身を任せると、人って強くも弱くもなるよねぇ」
提督の血の匂い、きっと、決着がついた
「そのようですね、先程拝見した動きとはまるで比べ物になりません、私でも片手であしらえそうです」
「……とりあえず、来る?」
「そうですね、一度お邪魔します」