元勇者提督   作:無し

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感情

宿毛湾泊地

駆逐艦 漣

 

「ご主人様、顔色が優れませんぞ」

 

「……ごめん、1人にして」

 

「…はい」

 

 

 

「ダメでした…ごめんなさい」

 

「漣でもダメか、最近漣には甘いからなんとかなると思ったんだけど」

 

舞鶴から帰ってきていうか一夜明けた、それだけしか時間は経ってないのにご主人様の顔はまるで老人のように深い影が差していた、ご主人様はこう言った、僕が鳳翔を殺した、と

 

「…敵さんがどう思ってあんなことしたか知らないけどさぁ…本当に良く効いたよ、1番嫌なことしてくれたね、提督が完全に潰された」

 

「……北上さん、言い方が軽すぎますよ」

 

「明石さん、何かお薬とかないんですか…?あんなご主人様、見てられません…いや、見たくないです…」

 

「みんな何か勘違いしてますけど、あれは心の問題です、傷に薬を塗る訳じゃないんです、治したければ…ゆっくりと時間をかけるしかないんです」

 

時間を…?私たちにはそんなモノないのに…

 

「提督が1番満足することは死ぬか殺すかだよ、そうすれば簡単に戻る」

 

「北上さん、それは極端すぎます」

 

「命の取った取られたでおかしくなった、自分は一線を引いたところにいてマトモなつもりだった、でも、もうそれすらもダメなんだよ」

 

……命の取り合い…か、確かにご主人様はそんなのと無縁なところから此処にきて、いざ本当に人を殺したのは…昨日が初めてなのかもしれない

 

「マトモじゃないのは、私たちもです」

 

「……そんなのみんな知ってるよ、誰も自分はマトモなんて思ってないよ…」

 

「今回は特に自分が殺したって感情が強いのが不味そうですね、提督が人を殺すと言うこと自体にも線引きはありましたし」

 

「鳳翔もそんなこと望んでないと思うけどねぇ…」

 

「……漣は、てっきりボーノが特別なんだ、って思ってました」

 

「ああ、うん、それは…多分みんな同じかな、今回の件で裏で安心した子は絶対居る、まあ良い悪いは置いといて、自分もそう思われてるんだってみんな思いたいからね」

 

多分、誰がこうなってもご主人様を苦しめただろう…もしかしたら鳳翔さんが羨ましいとすら思う人が居てもおかしくないとも思う、自分のことを見て欲しい、単純な欲望のために

 

「それよりさぁ、あたしは納得してないんだよね、なんで舞鶴の連中がウチにいるの?狙ってくれって言うようなもんじゃん」

 

結局鳳翔さんを除く舞鶴のメンバーは今此処に居る

 

「提督の意向です、どうにもなりませんよ」

 

「優しすぎるからあそこまで苦しんでるのに…さらに自分を苦しめる原因を受け入れてもね」

 

「まあ、仕方ありません、元々泊地は広いし離島鎮守府に移った人の部屋は空いてる、充分収容できる…」

 

北上さんはどうしても納得がいってないみたいだ

 

「駆逐艦ウザい」

 

「はにゃ!?それは漣もですか!?」

 

「この間までべったりで実はパパって呼んでみようとしてたところが非常にウザい」

 

「うわ、それはウザいですね」

 

「明石さんまで…って言うかなんでバレてんの!?」

 

「朧から聞いた」

 

「言ったことないのに!?」

 

「寝言で何回も呼んでたし、くっついてる時にもじもじてたのは試したかったからじゃないかって、茶話会のネタ一位だよ、宿毛湾駐留組はみんな知ってる」

 

「あぁぁぁぁ!もう生きていけないぃ!」

 

「死ぬこともできませんけどね」

 

「死んだら大好きなパパを余計に追い詰めるからねぇ?」

 

「んがぁぁぁぁ!!」

 

「あの…」

 

「ああ神通、ごめん、うるさかった?てかそりゃうるさいか、あはは」

 

「……余所者の私が言うのは間違ってるとは思いますが…あまりにも貴方達の死への認識が軽くありませんか?貴方達の仲間だった人が死んだんですよね…?」

 

「訂正してください」

 

「…だった、じゃない、ここで過ごした以上は仲間だよ、神通だって此処を出たならわかるでしょ」

 

「それは失礼しました、しかし…」

 

「……あたしや明石はぐっらぐらに煮えたってるよ、心配しなくてもね…漣とか、その頃から来た子達は認識が薄いけど」

 

「沈んだと死んだの違いについて、理解が薄い気がしますから」

 

確かに漣達は何度か沈んだと言われた人たちが戻ってきたのを目にしてる

 

「……わざと戯けてると?」

 

「提督が持たないからねぇ、お通夜ムードだと多分どんどん追い詰めてく、というか大きい戦いなんだから死ぬのなんて当たり前じゃん、それを引きずって戦えなくなったら…何も救えないんだよ」

 

「そして救われない」

 

「………」

 

「あれぇ?まだ不満ある?軽い話じゃないからさぁ、今ので満足して欲しいんだけど」

 

「……あのお二人は?」

 

「ああ、アオボノと摩耶?休ませてる、2人とも消耗してるからね、2人だって壊れかけなんだから」

 

…2人とも死んだまで帰ってきた、本当に虚ろな目で、何もわからない、声をかけても反応すらしない、死人と変わらない濁りきった目で

 

「壊れかけって……」

 

「そりゃそうでしょ、だって2人とも1番刺したくない人間を刺したんだもん、時間が要る、休まなきゃ戦えない」

 

「まだ戦わせるつもりですか…!?」

 

「……私が何も言わなくても、提督が何も言わなくても、やるだろうこらね、私らにできるのはせいぜい死なないような作戦を立ててあげることくらい」

 

「……理解ができません」

 

「してもらう必要ないから、誰も理解できなくて良いんだよ」

 

「…ここは、随分と冷たいですね」

 

「…馬鹿騒ぎして、忙しくしてないとさぁ…壊れちゃうんだよ、みんな、耐えられなくなってきてる、現実が見えてきたって言うかね」

 

……明日には消えるかもしれない、なら考える時間なんて欲しくない…

消えたくないとか、思う時間の分だけ辛い…

 

「…貴方達は此処のトップではないでしょう、何故貴方が仕切ってるんですか…?誰の言葉を語ってるんですか」

 

「トップじゃないけど、トップがあれじゃ動かないんだって、動かないとヤバいのくらいわかるでしょ、時間ないんだよ」

 

「だからって…」 

 

「あたしは誰より失う辛さを知ってるよ、誰よりね、だから無機質で冷徹に、確実に失わない手段を選べる」

 

「…本当にそうですか?貴方よりも辛い人だって…」

 

「死ぬ痛み、辛さ、喪う事、殺す事…一通り知ってるから、よくわかるんだよ…今、ここに何があると思う?」

 

北上さんが自分の頭を指す

 

「何がって…脳、と言う事ですか」

 

「……そう、頭脳、記憶を保存する場所、変な話だよねぇ…人間でもないのに…あ、いいや…あたしさぁ、自分の記憶だけじゃなくて、あと1人分の…記憶があるんだよね」

 

「誰かの記憶…?それは…記憶を失っていた貴方、ではなく…?」

 

「そんな訳ないじゃん、アレもあたし、全部自分のことなんだから」

 

「……じゃあ、誰の…?」

 

「…さあねぇ、誰かなぁ…まあ、この世で最も欲深かった子、かなぁ…すごくちっぽけな望みを抱えて死んで逝った」

 

「北上さん…」

 

「ん、やめとくよ、これ以上はね」

 

「……随分と変わりましたね」

 

「変わってないからこうなんだよ、何も変わってない」

 

「いいえ、変わりました…あの頃はお互いを思ってたのに、今は1人に固執しすぎています」

 

「……そうかもねぇ」

 

もしそうだとしたら、何が悪いのだろうか

 

「…話をマトモに聞く気は無いですか」

 

「まあね、だって神通はあたし達の気持ちなんかわからないじゃん」

 

「……そうですか、失礼します」

 

「…北上さん、今のは…」

 

「あたし達がやるのは負け戦、それに向こうはまだまだ戦えるんだし…ほら、あたし達が何もしなくても向こうは向こうで全部解決してくれるかもじゃん?そしたらあたし達も提督も何もしなくて良いよ、楽だよ、ラッキーってね」

 

「……」

 

「…でもさ、それって何も納得できないんだよ、あたし達はなんの報復もしてない、取り返すべき奴もまだ向こうにいる、提督の望みがあたし達の望みなら…やるしかないじゃん、地獄の果てまででも行くしかないじゃん」

 

本当にご主人様はそう願ってるのかな…

 

「私達は正しいんですか?」

 

明石さんが疑問を問いかける

 

「正しい…?そうさねぇ…正しいか、難しいとこだよ、提督のやりたい事が正しいかって言ったら…それは私たちの正義」

 

「正義?」

 

「あたし達が信じる正しい、これが正義、呉の提督とか神通がやろうとしてるのは大義、これは大衆が望む正しいの形、と言っても大衆なんて欲望に素直だから生きたい、とかそういう本能、みんなを生かすと言うのはこれにあたると思う」

 

「…大義と正義…」

 

……言い方を変えれば、正義と悪

 

「漣、心配しなくてもあたし達は悪じゃない、だって正しいって信じてるから…終着点がどこにあるかなんてわからないけど、疑ったらもう前に進めないよ」

 

…ご主人様、漣には…ご主人様の気持ちがわかりません…

だって漣達は艦娘で、人間じゃないから

北上さんがいうことが正しいのか、神通さん達が正しいのか、漣の気持ちが正しいのか…それすらも

 

 

 

執務室

駆逐艦 朧

 

「…入ってこないようにって札をかけてなかったかな」

 

「かけてありました、だから此処に来ました」

 

部屋も、提督も、どこか薄暗いな

 

「……僕は、今特に会いたくない子がいる、曙、北上、摩耶、明石、漣、そして朧」

 

「アオボノと摩耶さんは自分が傷つけたから会いたくない?」

 

「…何も見えてなかったんだ、だから僕は」

 

「北上さんと明石さんは自分に優しいから会いたくない、と」

 

少しずつ近寄る

 

「………」

 

「そしてアタシと漣は、記憶を垣間見られるのが嫌だから」

 

「……わかってるなら、早く出ていってよ」

 

「本当に?理由はその机に乗っかった刃物ですか?」

 

包丁を手に取る

料理をするための道具がこんなところにあるのは、随分につかわしくない

 

「……」

 

「死ねない、死にたくない」

 

提督の顔を持ち上げて目を見つめる

 

「…やめて」

 

目を瞑って虚につぶやいて

 

「止めて欲しい、きっと誰かが止めてくれる」

 

「やめてくれ」

 

私の手を引き剥がそうとして

 

「こうしていれば誰かが受け止めてくれる」

 

「やめろって言ってるだろ!!」

 

怒鳴りつけて…

 

「…すみません」

 

「……僕こそ怒鳴ってごめん、その通りだよ、そうなんだ、力があれば戦えるって勘違いしてた、甘い考えで鳳翔を殺した…」

 

そう言ってまた塞ぎ込む

 

「……避けられなかったことです」

 

「違う、防げた…一緒にいればたとえ撃たれたとしても治せた、僕のせいなんだ」

 

事実、そうなんだろう、結果的にはそうだったんだろう

 

「…提督、最近、私の認知外依存症の進行が著しいようで…こうしてる今も、提督の記憶が流れ込んできます」

 

私は全部見てる、全部知ってる

どんな風に思ってるか、どんなこと考えてるか

 

「………」

 

「あの待ち伏せは、予想できるモノじゃなかった、それに…提督、今からもっとたくさんの仲間が死ぬ戦いが始まるんです」

 

「…嫌だ…もう、もうたくさんなんだ、なんで全部うまくいかないんだ…どこで間違えたか、気づいた時には全部遅い…曙の事も、鳳翔の事も…全部そうだ…」

 

「立ち止まれば、二度と歩き出せませんよ、提督はもう選んだんです、私達が信じる道を、あなたが作らないと…」

 

みんな、進めない

 

「この道の果ては…地獄だ」

 

「それでも、提督は私達をそこに導かなくてはならない」

 

「なんでみんな僕に死ぬなって言うのに、自分の死にそんなに無頓着なんだ…」

 

…提督にそう言われる、か…

 

「…私達は、提督の事を信じてるからです」

 

「君達を殺すんだよ?最後にはみんな死ぬ…」

 

そう、消えてしまう、完全な死、消滅

だからなんだと言うのだろう

 

「提督、私達は一度聞きました、その時に提督は止まらないと言った、止まれないと言った、その言葉の責任を取らなきゃいけないんです」

 

「……わかってる…」

 

「提督、私が提督の記憶を全て見たとして…同じ立場だったとして…必ずそう思います、そうします、あなたの人生に、あなたの戦う理由に間違いなんて何もない、友達のため、仲間のため、なんでもいい、提督はあと一度だけ、ただ前に進んでればいい、もう一度だけ前を見てください、露払いは私達がします」

 

「朧…」

 

「提督のやろうとしてる事は、私たちでも為せる事で、提督にしかできない事です、その先なんて見なくていい、曙を助けることだけを考えてください、殺す命以上の重い命を救えばいい」

 

「…命に優劣はないよ」

 

「1人で背負わなくていいんです、少なくとも…アタシも背負うから、もう一度立って、アタシが消える前に……」

 

「…大丈夫、朧は消えない」

 

「提督、アタシだけ提督の全部を知ってるのは不公平だから…教えてあげます、アタシが認知外依存症にかかってる理由」

 

「……まさか、君は初期配備された艦娘なの…?」

 

「そんな訳ないじゃないですか…」

 

提督の手を掴み、左胸に押し当てる

 

「しっかりと、鳴ってるんです、生きてるんです、私も…電子生命体だけど、生きてる、元々艦娘と人間の作りは遜色ないそうですが…わかりますか?」

 

「…生きてるのなんて、よく知ってるよ…だから…」

 

「提督、私と漣が他のみんなと違うのは、提督と同じになってるからです」

 

認知外依存症…それはある証明

 

「…本当に人間になりかかってるの…?」

 

「感じる、としか言い表せません、力が無くなっていくわけでもない、ただそうなって行くんだな、としか感じませんが…確実に」

 

私の体は、艦娘じゃなくなっていく、人間になってしまっている

羨望の的であり、滅びの証明

 

「……だから、認知外依存症に…?」

 

「提督、朧は消えます、いつか必ず」

 

「……そんな」

 

「…朧の代わりに、みんなでカレーを食べてくれますか?」

 

「……僕には、あのカレーは作れないよ…」

 

「じゃあ、もう立ち止まる余裕はないんです、お願いします…」

 

今の提督は、自分のために戦えない

だから…手を引く必要がある

 

「……あと一度だけ、私のお願いを聞いてください」

 

「やり方は、任せてくれるんだね」

 

「どのみち、曙の心を取り戻すにはそれしかありませんから」

 

誰よりも、提督は優しかったから

みんなに優しい嘘をついて、逃げ出したくて

 

「…大丈夫、僕はやれるから」

 

「分かってます」

 

提督が思いっきり戦える場所を作るから、それまで待っててもらわなきゃ

 

だから私もまだ消えられない

どんな事をしても

 

 

 

 

 

 

 

 

軽空母 龍驤

 

「…なあ、アオボノ、摩耶、そろそろ元気出せや」

 

「……クソ提督はさ、何があっても…模擬戦とかしてもさ、あたし達には絶対に手を出さないのよ、絶対に受けられない攻撃はしない、傷つけたりはしないのよ」

 

「だけど、昨日の提督は…違った、弱かったんだ、弱い、演習のとかよりもずっと弱かったのに…アタシらはボロボロになった、殺す為に戦ってた…」

 

まあ、そらそうやろうなぁ…北上が言っとった、感情の発散のさせ方を知らんって…

的を射とる、自分が仲間を殺したと感じ、自分を追い詰め、何かに当たり散らすことしか出来なかった

冷静さを書いて周りを見失い、仲間をその手にかけようとした…

 

弱い男やわ、やから…簡単に崩れてしまった

元から此処は随分と柔らかい地盤やったって事の証明かな

 

「…足並み揃えんとなぁ…」

 

「足並み…?」

 

「…今、この艦隊はワンマンプレーが目立ちすぎや、それこそイニスやメイガスとの戦いの時はお互いにサポートする戦いをしてた、やけどみんな…個人の実力だけで戦ってる、特にそう言う時の中枢やった北上も司令官もそれを忘れとる」

 

「…そうかもね…」

 

「…もう、わかんねぇよ…」

 

あかん、こりゃ重症やな…

 

「しゃっきりせんかい!!アンタらは力が有る!やったら率いたらなアカンやろ!」

 

「…うるっさいわね!こっちだって色々考えてんのよ!」

 

「なんでお前にそんなこと言われなきゃならねぇんだよ!」

 

「見てられへんほど間抜けやから言うとんのや!もっとしっかりせんかい!せやなかったらお前らのその力誰かにやれや!お前ら自分が此処の主力って自覚あんのか!?」

 

「あったら何ができるって言うのよ!」

 

「少なくともこんなところで油売るような真似はせん!このアホどもが!」

 

「ンだとテメェ!」

 

「なんの力も無いくせにいい気になって言いたいことばっか言って…!アンタに何がわかんのよ!」

 

「ホンマに救いよう無いわ!どーせお前らなんか曙にも勝たれへん、出会ったら殺されるんがええオチやその力も捨ててまい」

 

「テメェ!!」

 

「…離せや、その汚い手、なぁ、聞こえとらんのか」

 

「黙れ、さっさと口を閉じねぇと殺すぞ…!」

 

「そーかそーか、じゃあやってみいや、殺してみ、殺せよ!はよぉ!自分より弱いやつにしか振われへん力なんて意味ないのがなんでわからん!!司令官は自分の身体犠牲にして闘っとる!その負担減らすためにお前らが居るんと違うんか!?」

 

「…このッ…」

 

「なんや、言いたいことがあるんやったら言えや!司令官のやり方は間違っとるけどな、自分より弱い奴を守るためにしか力を振るわんかった…誰かを助けるためにしか使わんかった…確かにお前らにそれを向けたのは間違いなく司令官が悪い、絶対にやったあかん事をした、でもそれは、一回の間違いやろ…!?なんでその一回の間違いを乗り越えることができへんねん、お前らが手を引いたらな司令官はずっと闇の中やぞ…!」

 

「……わかってる…わかってんだよ…!」

 

「未熟やからって許される事ばかりやない…司令官だって完璧やない…間違えを正したんのが仲間やろ、なぁ、摩耶、アオボノ、なんで此処におんねん…」

 

「…行くわよ、摩耶」

 

「……おう…クソッ……」

 

「…死ぬか思うたわ…あかんなぁ…くわばらくわばら」

 

司令官1人の世界やない、今の環境は司令官を支援するように見えて1人に頼りきりの環境、このまま司令官が潰れたら全部なくなる、どのみち時間もない…

 

「はぁ…やるせないなぁ…」

 

結局ウチはなんも知らんし、なんもできん

力には責任が伴う、やけどその責任も、重みもなんも分かってない、ウチにできるのは発破かける事だけ、失敗した時叱責する事も、道を正す事も本来できない…

 

ウチは、ダメなお姉ちゃんやなぁ…

 

「あかん!キャラやないわ、酒でも飲むか…弔い酒……か、1人ってのも寂しいもんやしな…艦としての記憶をどのくらい鳳翔が大事にしてたかも知らんけど…まあ、ははは…ちょっとくらいウチに付き合ってくれるやろか」

 

 

 

 

 

 

軽巡洋艦 那珂

 

「あ、いたいた」

 

「…那珂ちゃん」

 

「白露ちゃんお久、こんな事になるなんてね」

 

「頭突き、してもいい?」

 

「良いよー、おいで」

 

「……いっちばーん」

 

ぽすん、と言う音がして私のお腹に顔を埋める

椅子に腰掛けて、白露の後頭部を撫でる

 

「お腹かたーい…」

 

「鍛えてるからね」

 

「…死んじゃったよ、また…」

 

「…うん、死んじゃったかー…」

 

…死…

私達にはずいぶん重いな…

 

「此処の提督のせいだ…」

 

「……那珂ちゃんは、違うと思うなぁ…」

 

「……なんで」

 

「アイドルだから」

 

「…そっかぁ、なら…仕方ないかなぁ…」

 

「……きっとねー…1番悲しかったの、ここのみんなだよ…」

 

「…確かに、私達は長い付き合いでも、深い付き合いでもないけど…死に感じる重さは、同じだもん」

 

「…みんな泣いてた、ずっと涙の味がした…壊れて、おかしくなりそうになってた…本当に、辛かったはずだよ」

 

「……じゃあ1番じゃなくて、良い…」

 

「良い子いい子」

 

「…那珂ちゃーん」

 

「何?」

 

「…お膝もかたーい」

 

「………」

 

後頭部を強く掴み、お腹に押し当てる

 

「ん!?んぐっ!んー!むー!!」

 

「いたっ、噛んだな!もー!噛むのやめないと窒息させちゃうよ!」

 

「……ぷはっ…トぶところだった…」

 

「…スッキリした?」

 

「…んふふ…死にかけたんだってば」

 

「そうだね、ど?気分は」

 

「…鳳翔さんのことは、仕方ない事だし、此処にお世話になる訳だしね…諦める他ないとも思うけど」

 

「…ならいいや、ふふふ…」

 

白露のほっぺたを押して潰す

 

「…酷い顔」

 

「うっはいにゃあ…ぷぇっ…泣いてるんだから、邪魔しないでよ、私にできる弔い方なんだから」

 

「…鳳翔って人の事、何にも知らないけどさ…」

 

「…うん」

 

「…一緒に、泣いてもいい…?」

 

「…うん」

 

「ありがと」

 

たくさんの人が死んだのを見た

私の頭の中には消えない光景

永遠に私を苦しめる光景

 

「………」

 

提督、もっと頑張らなきゃ、ダメだよ…

那珂ちゃんも頑張るからさ

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