元勇者提督 作:無し
The・World
駆逐艦 曙
[ウーラニア]
「…なんでテキストチャットなんだよ、ほら、ボイチャはどうした」
[やり方知らないの]
「めんどくせ…」
ならゲームに呼び出すな…これを横須賀の部屋に探しに行く所から始まったのに…まあ、おかげでこの大事なディスクと…
「おい、1人物思いに耽るな」
[話を]
「……ヴェロニカは完全に海と同化してやがる、お前らの言うシンカイセーカンとやらもあいつが自由に生み出せるみたいだな」
[そこまでは知ってる]
「ならガンガン進めるぞ、あいつは頭のてっぺんから足の爪先まで残さずデータになった…じゃあどうやって殺せばいい?」
[デリートするとか?]
「ハッハッハ!ユニークさのかけらもねぇな、出直してこい」
…会ったら殺そうかな
「まあ、デリートってなると膨大な時間がかかりすぎる…だからだな、黒い森を使おうと思う、そっちに接続して…」
[ダメ、黒い森は今私が管理してる、それは許さない]
「…なんかあるのか?」
[ある、最終決戦に使う、だから今使わせる事はありえない]
「……じゃあPlan Bで行くか、こっちは色々やばいんだがな、前の戦いでNABのデータセンターを使ってフリューゲルの銃の射程を伸ばしたんだが…」
[ストップ、もう意味わかんない]
「…めんどくせぇ……」
こっちのセリフなんだけど…
「まずそこからだな、フリューゲル、曽我部隆二の武器はブリーラー・レッスル、これは撃ったものを改変させることができる、簡易データドレインみたいなもんか…ドレインしねぇけどな」
なかなかに危険な力ね
「これにはもう一つ能力があって対象を停止させる力がある」
[停止?]
「氷漬けにして動けなくするんだよ」
[なるほど、それで?]
「この銃なんだが、射程がわずか2メートル…これじゃあ当たるもんもあたらねぇ…でも待てよ?そもそもそれらはデータなんだ、じゃあコンピューターの演算能力を使えば射程を伸ばせるじゃねぇかってのがフリューゲルの考えだ」
[それでデータセンター云々が出てきたのね]
「まあ結果は成功だ、それと、それを流用しようって考えてる、黒い森を使ってって話はそれが理由だが…たった今Plan Cを思いついた」
[聞かせて]
「…海を使う、あれなら無限の処理ができるだろ、なら…なんでもできる」
なるほど、なんでもありの空間をこっちの手中に収めようって話か
「よし、お前にやってもらう事は今んとこないけどいい案が浮かんだ!早速取り掛かる!」
[がんばれ]
「他人事かよ…」
なんにせよ、できることからやるしかない
[それと、コレを]
「…お前が組んだのか?」
[拾い物]
「…上等だ」
ネットカフェを出る、時間は僅かか…
「……お腹減った…どうしようかな…」
ショーウィンドウに並んだテレビがニュースを映す
『海軍元帥が謎の失踪を…』
…そうなってるのか
『容疑者として、宿毛湾泊地の提督である倉持海斗氏を…』
馬鹿馬鹿しい…いや、私もこのニュースを鵜呑みにする大衆と同じ考えだったんだろう、そう思うと…
「はぁ…」
歩調が遅くなる
「きゃっ!?」
「いた…」
誰かとぶつかった…?
「………なんでイムヤさんが此処に…」
「曙さん…!」
臨戦態勢…か
「街中でやるわけないでしょう、それより少し顔貸してもらいましょうか……ついでにお金も」
「え?あ、え?」
「…なんで貴方あんな所にいたんですか、東京は敵の根城って意識がないんですか?」
「私は…その、何もできないのが嫌だから…その…」
「その?」
「本部に行けば最新装備とか落ちてないかなって…」
…IQ5くらいだろうか、脳のメンテナンスは何処で受け付けてるんだろう
「…見つかったのが私にじゃなければ殺されてますよ」
「…殺さないんですか」
「ええ、此処の食事代を出してくれるなら」
「…そのくらいなら、どうせ牛丼なんて安いですし…食券買いますけど並みでいいですよね?」
320円が私には途方もなく高く感じるけれど
「奢ってもらえる以上何も言いません」
「いただきます」
「いただきます…」
…そういえばまともな食事を最後に食べたのっていつだったかな……うっ…ダメだ、思い出さないほうがいい…
結局綾波は吐き出してたし私は無理矢理飲み込まされたし…あれは北上さんもそうだけど私も嫌な思いしてる、忘れよう
「…箸が進んでませんけど…?」
「嫌な事を思い出したもので…んむ……おいしい…」
「泣くほど…!?」
ああ、うん、美味しい…馬鹿みたいに美味しいわけじゃない、チェーン店ならではのハズレのない美味しさ、優しくてほっこりする味わい…今の私には染み渡るなぁ…
「えっと…話をしても?」
「…あ、あぁ、どうぞ…」
「…敵なんですか?」
「もう違います、私は…烏滸がましい事をいうようですが目が覚め、改めて提督への忠誠を誓いました」
「…よかった…」
「まあ…んぐ……んぐ…戻ろうとは思ってませんが」
「なんでですか?」
「…それこそ烏滸がましい、許される事じゃない…まあ、せいぜいリンチされてからならって感じですけど、それに割く時間はありません」
「…時間があればリンチされるんですね…」
「されて当然な行いをしてきましたから」
…自覚はある
「………」
空か…
「…私あんまりお腹減ってないんで…食べます?」
「イムヤさん」
…しまった、思わず手を握ってしまった
「はい!?」
「…ありがとうございます」
「どういたしまして…?」
「美味しかった…お味噌汁なんて飲んだのいつ以来でしょうか…あー…ほんとに美味しかった…」
「…お金、ないんですか」
「………」
「はい」
「え?」
いち、に、さん…
「これで貸し…って事で」
「…ありがとうございます」
「よーし!貸しを作ったし!こんごはタメでいくわ!」
「ご自由にどうぞ、本当に助かります」
「……みんな、帰ってくるの待ってると思う」
「…だとしたらみんな馬鹿ですよ」
「馬鹿だもん、みんな…」
「…そうでしたね…」
私の戦い方も、私の生き方も、見直す時だ
「帰るつもりはありませんが…」
「なに?」
「…カレー、食べたいって朧に言っておいてください」
「わかった、カレーね」
…約束は守る、私が2人分になるかはわからないけど
宿毛湾泊地
工作艦 明石
「ダメ、まだ完成しない」
「明石…そろそろ休憩しなよ」
「結果がでなきゃ意味ないのよ…!」
「…過程だけを見てくれるわけじゃないから?」
………
「過程だけを見てくれる人なんていない…その通りね、技術屋やものづくりをやる人間には刺さるわ」
「…まあ、私が思い続けた言葉ですから」
「提督もそう言ってた」
「……そうですか」
「提督は…一番結果に固執してたんだろうね、命懸けで助けようとしてたんだって」
「馬鹿ですよね、そんな事しなくてもいいのに」
「…故人に向かって…」
「死んでません!提督は死んでなんかいない!」
「…明石…」
…違う、提督は死んでないんだ…
提督は死んでないんだ…!
「私がおかしくなったと思うなら好きなだけそういえばいい…だけどそれ以上提督が死んだなんて言わないで…」
「…わかった、ごめん」
早く腕輪を作らなきゃ…絶対に…!
駆逐艦 曙(青)
「よ、アオボノ、元気ねぇな」
1人でのんびりしてたのに、隣に誰かが座る
「…そりゃそうでしょ、摩耶こそ偉く元気じゃない」
「…空元気だ、そうでもしねぇと潰れちまいそうでな」
立ち直る暇なく、何もかもが移り変わる
「…さて、そろそろやらなきゃ」
立ち上がり相場を確認する
「…何を?」
「訓練よ、私は…立ち止まってる暇なんかないのよ、あの元帥ってのを倒して、ようやくカイトの敵が消える」
「……合わせとくか?」
「お願い、多分誰か暇な奴がいるからそいつとやりましょ」
離島鎮守府
駆逐艦 電
「………」
予知が続く
此処が爆発する予知…
それがどんどん鮮明になる…
「電ちゃん?」
…誰かいる
誰かが火薬に火を…これは…あの曙…
裏切った方の曙…
「電ちゃん」
「はわっ!?」
「うわっ、ごめん、脅かすつもりはなかったんだけど…大丈夫?」
「な、なのです…ご心配なく…」
あの曙が此処を爆破する…じゃあ対策を立てないと…
「なんともないんならいいけど…」
どうすれば…
「じゃあ早く行こうか」
「…え?行くって何処に…」
「宿毛湾泊地、そっちにみんなで移るんだって」
「…何故?」
「ここにいるより施設がしっかりしてるかららしいよ、怪我人もいるから手当てとかをする為にみんなで移動して最終決戦の用意をするんだーって…今朝の話忘れちゃった?」
……全く聞いてなかった
「…あれ?」
じゃあ曙さんはなんで此処を爆破するのでしょうか…
なにかあるはず…何が理由なんでしょうか…
宿毛湾泊地
フリューゲル
「なるほどねぇ、海か…ヘルバさん、そこんとこどうです」
『不可能に限りなく近いわ、だってそれができたら私達は海を完全に支配できることになるわ、そもそもこのデータ自体が断片の寄せ集め…まとまりがないせいで一つ一つを改竄することは出来ても…』
「すいません、明石、発言してもいいですか」
「どうぞ?」
「…データドレインを使えばそれは可能だと思います、単体を改竄するデータドレインじゃなく…ドレインハートを…」
海そのものを全て改竄するって事か…?
『…確かにそれができるのなら一気に成功の可能性は上がる、かといって腕輪の完成は至難の業よ』
「横須賀の人たちはなんで完成させられたんでしょうか」
「…そりゃあドレインの機能しか…そうか」
『改竄する必要はない、データを吸い出して並べる作業を何かに肩代わりさせれば完成する…そもそもそれができればヴェロニカ・ベインをそのまま殺す事だって可能ね』
「アオボノさんの腕輪を流用したい気持ちもありますが、どうにもそれはそれで難しいしなにより負担が大きすぎるでしょうから、ならば改竄のない簡単なドレインをやってしまえばいいのかと…例えるなら、濾過装置みたいに」
「よし、時間はない、取り掛かろう、海に溜まってるデータを全て流用するぐらいの気持ちでやればいける…失敗作の腕輪にもリンクさせよう」
『そして網にかかった女帝は?』
「俺がトドメを刺す…そう言う取り決めだ」
一つの復讐譚が今、最後のページを開く音を立てる
「っと…失礼、電話が…なんだウーラニア、こっちは会議中で…」
『聞けよフリューゲル、グッドなシステムができたぜ…これであのイカれたババアをクラックできる!』
「いや、そっちはもう決まったんだ、これから腕輪を…」
『まあまあ細かいことは言わずにデータを読めよ、これなら半日もかからず完成するだろうからな』
…切られたか、仕方ない…
「…なるほど…ヘルバさん、これを」
『……デトロイトのハッカーも、日本のハッカーも考えることはだいたい同じなのかもしれないわね、明石、此処の作成を担当して』
「徳岡さんにも準備を進めてもらいます、なにしろ濾過作業は手動ですからね」
『それにしても…このアイデア、かなり面白いわ、倒す時に集まったデータを利用して腕輪を完成させる…試す価値は充分ある』
東京湾
駆逐艦 曙
「ご機嫌いかがでしょうか、ヴェロニカ様」
『…確か、東雲だったわね』
「貴方にこれを」
マイクロチップを差し出す
『…それは?』
「黒い森への接続ファイルです、貴方が一番欲してると思いまして」
『………意図が分からないわ』
「計算の結果、貴方に協力することが1番勝利の確率が高いと判断しました」
『成る程、それなら納得できる、勝ち馬に乗ろうって言うのなら…正しい判断ね』
「ありがとうございます」
海にチップを落とす
『…間違いないわね』
「お気に召していただけたようで幸いです」
『それで?貴方は私に何を求めてるの?』
「私は機械です、主君の指示に従うだけ」
『それなら構わないわ、そのシンプルな思考はステキよ』
「ありがとうございます、では」
さて、アウラはどう動くだろうか…
全てが予定通りに行くはずはない、少しでも他のことを進めておこう
横須賀鎮守府
ああ、いたいた…
「大和さん」
「…東雲さん、生きてましたか」
「全隊を率いて離島鎮守府に奇襲を仕掛けましょう」
「……何を?」
「今、向こうの警戒心は緩んでいます、頭が落ちたが敵も帰った、油断…いや、悲しみが蔓延している、マトモな作戦は遂行できません」
「…なら宿毛湾を叩くべきでは?」
「宿毛湾にはまだ他に司令官がいます、ならば指示できる人間がいない離島鎮守府の戦力から削りましょう、元帥はそれを望んでいます」
「…そうですね、全隊に通達します」
よし
離島鎮守府
「…おい、東雲、どうなっている…なんでもぬけの殻なんだ」
「全く敵の反応がありませんが?」
「奥に洞窟のような墓場があります、おそらくそこに隠れてるのでは?」
「……本当だろうな」
「何か疑う理由が?」
「行きましょう、武蔵」
…そういえば武装は持ってきてないな…あそこに落ちてるのは12cm単装砲…充分か
「…なんだこれ、燃料に弾薬に…」
「運び出す途中のようですね、思ったより行動が早い」
「接近に気付いて隠れてるものがいるやもしれん!探せ!」
…ふむ…誰か残ってるなら爆殺は狙えないかな…もっと早く物資移動させるか捨てるかだと思ったのに…
…背後に気配…
「心配ないのです…敵対するつもりはないんですよね?」
電か…
「ええ、特には」
「東雲!誰と話してる!」
「早く来なさい!」
…うるさいなぁ…
「中に誰か?」
「いいえ」
単装砲を弾薬庫の方に向けて撃つ
「…みなさんお変わりありませんか?」
「爆音がうるさすぎて聞こえないのです」
…なんて言ってるか聞こえないな…多分お互いそうだけど
…いま破片がかすめたし、此処は危ないなぁ…酷い爆発だ…
「…一体何があったのでしょう、酷い有様なのです」
「お腹減りましたね、何か食べにいきましょうか」
「そうですね、内地に美味しい寿司屋があるのです」
「いいですね、ぜひご相伴に預かります」
瓦礫が音を立てて持ち上がる
「東雲ぇ!」
「……私の名前は、曙です、その名で呼ばないでいただきましょうか」
「何を…!」
「電もいるのです』
「あの碑文は…大和、前に倒したやつだ!」
『大淀さんの仇…という事でよろしいですね』
…フィドヘルか、これが
「データ兵器は此処にあります、充分対処できる!」
『……馬鹿なのですか?』
「何…?」
『そんなもの使う暇もなく、鏖殺され、苦しむ事すら許されないと何故わからないのですか?』
「戯言を!武蔵!」
「応!」
データ兵器で碑文を倒したと言っていたけど、私がいることを忘れてないだろうか
「…バン」
武蔵の艤装が発火する
「東雲!お前!!」
「裏切るのですね!本当に…!」
「…頭お花畑…通り越してますね、脳みそ機械のスクラップには用はありません、さようなら死んでください屑どもが」
まあ、このくらい罵っても許されるだろう、マフラーとバッジ分だけは仕返しする
『私を忘れないで欲しいのです』
雷が降り注ぐ
『司令官さんの仇も、一緒にとります』
残った燃料が燃え、弾薬に引火し爆発が響く
『ほら、私を倒すんじゃなかったのですか』
…爆発も雷もモロに当たって普通なら確実に死んでるってレベル…まだ立てるのは大和型ゆえか、そのタフさが今は苦しみを増加させるだけ
「当たれば死ぬ!撃て!」
私もただじゃ済まないし離れておくか
「まて!逃しません!」
……
「…電さん」
『お一つどうぞ、なのです』
「では、いただきます」
思い出せ、北上の動きを
…ここ
「死になさ…砲塔の中に!」
大和の砲塔が炸裂して吹き飛ぶ
『貴方も死ぬのです』
鉄扇が武蔵めがけて飛んでいく
「この!この!」
『輪廻、汝を引き裂かん』
まるで砲弾を切り裂き、四肢を引きちぎるように…
『大淀さんは限界でしたらだから私に託した…未来は明るいと信じて』
「がぁぁぁうぁっ!あがっ!」
『その未来の為に…犠牲になるのです』
武蔵のいる空間が歪んでいく
「…1番化け物な碑文…って感じですね」
『予備動作が大きすぎて碑文同士では通用しないのです』
クレーターの真ん中に肉塊が転がってる…二つ分か
『…範囲を広げすぎたようですね、ごめんなさい、あげたつもりでしたが、食べてしまいました』
「どのみち自分のデータ兵器にやられてました、構いませんよ」
…はぁ…マフラーもバッジも、帰ってこない…虚しいな
『東雲さんはやめたのですか』
「ええ、まあ…提督の真意を知れましたから、それよりもヴェロニカはどうするつもりですか?」
『管轄外なのです、そちらこそどうするつもりなのです』
「心配ありません、その時までに」
『…本当に味方みたいですね」
「まあ…味方のつもりですから」
許されるつもりはないが
「曙さんはネットに強いのですか?」
「無理矢理覚えました、周りのやってることをひたすら見て覚えました」
「……付け焼き刃?」
「そういう事です」
宿毛湾泊地
フリューゲル
「ん〜、潮風が心地いい…気がするねぇ」
『あら、リュージ…わざわざ1人で会いに来てくれたのかしら?』
「復讐に他人は巻き込まない主義でしてね」
『そう、できるのかしら?』
いけすかない、何度でも言う、いけすかないやつだ
「今のアンタは確かに無敵かも知れない…でもそれも確実じゃない」
『何が言いたいのかしら』
「うぬぼれんなってことですよ、今からその見えねぇツラを歪ませてやる」
試作のドレインを注入し、ネットワークに接続する
海の中にあるデータを全て吸い込むことなんてできるのか
さあ、実験と行こうじゃないか
『…それは?』
「失敗作の腕輪を好きなだけくらえ」
海に腕輪をぶちまける
『何がしたいのかしら』
「可能で我が失敗作たる所以はデータドレインの中のデータ改竄能力がなく、ドレインしかできない点にある…だけどそれはむしろ利用できるのではないか、って思いましてね?」
『何の話を…』
「まあまあ、ここからが肝心なわけよ…いやぁ、今頃徳岡さんは大忙しだな」
足元が輝き始める
『これは…!』
「さあ、死ね…ヴェロニカ・ベイン…!」
『こんなもの…!コルベニクを呼び出して阻害すれば…』
「禍刻・ゲシペンスト!!」
『…何を…?』
「こいつは周囲の時間の流れを遅くする技でね、生憎もうコルベニクは見たくないんだ…まあ、効くとは思って無かったし、疲れるからあんまり使わないんだけどねぇ…」
『いや、まだよ…!私には逃げ道がある!』
…逃げ道?何処に…
『アハハハハ!リュージ!残念ね、まだ私は終わらない…!』
いや…一つだけあるか、黒い森…
接続はここからもできるが、あの作戦内容の通りなら…この手で直接終わらせる必要がある
『そろそろ危なくなりそうね、さようならリュージ』
「…いや、すぐにそっちまで行ってやる…」
ワープを起動する
ベイクトンホテル
駆逐艦 曙
「あら、ヴェロニカさんじゃないですか、ごきげんよう」
ボイスチャットは練習しておいたけど初めて話す相手くらいはもう少し選べばよかったなぁ…
『あなたのおかげで助かったわ、なんとか逃げ延びられた…』
「…それは間違いです、そこは虎の口の中、そこにいるのは貴方だけじゃない…貴方の悪意の被害者の1人がそこにいる」
『…何を言ってるの…?』
きっとネットの中なんて何も見えないんだろうな
アウラはヴェロニカへどうするのか、私には想像できないけど
『…な、何!私が…私が!やめなさい!何が起こってるの!』
「多分データとしてUSBにまとめられてるんじゃないでしょうか、というかそもそも…神を掌握するとか、神を弄ぶとか考えるような悪人に救いはありませんからね」
『オリジン…!なら此処で…』
「今更気付いたところでおそらく、貴方はもう遅い」
『やめて!こんなの…!』
「因果応報ですよ、世の中は全て因果で回ってる……安心してください、あと2人…私もそっちに送られるでしょう」
声は聞こえなくなった、つまりUSBに完全に閉じ込められたのだろう
「…アウラ」
『何も言わないで』
アウラからすれば母の仇で己の仇…なのかな?
「ふんふ〜んふ〜〜ん…っと…ああ生身のヴェロニカ様、ご機嫌麗しゅう」
「…なに…あ、なた…」
しわくちゃの老婆は、きっとこの医療器具ひとつで生きてるのだろうな
USBを高く放り投げる
私の手には落ちてこなかった
「悪ぃな嬢ちゃん…こっからは俺の仕事なんでね」
真っ黒なコートのオジサンがUSBを持って行ってしまった
「リュージ…」
「さて、この前アンタの意識データを破壊した…と言ったがありゃ嘘だ、まあ…本物はこっち」
USBをみせる
「それと、ああ、まだ持っててくれて助かったぜ、よう生身の俺」
奥の方にあった男の死体から眼鏡を取り外してUSBを取り付ける
ヴェロニカにかけさせる
「…あ…ぁ…ああ…!」
「さて、映画の鑑賞をしながら天寿を全う…素敵なもんだろ?」
「…あ………」
…死んだか
「なんだよ…コレで終わりか?あっけねぇな…」
「………」
「……ま、復讐はやるもんじゃ無いってみんな言うしな、成し遂げても…虚しさだけが残りやがる…お前さんもそうか?」
「…私は、まだ愛する人が残っていますので」
「…そりゃいい、生き残ってる奴に目を向け続けるしか無い…それが死者への礼儀だ」
礼儀か
「本当なら拳突き上げて叫ぶくらいのつもりだったのにな…チッ」
…明石は、やり遂げてくれるだろうか