元勇者提督   作:無し

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進捗

宿毛湾泊地

工作艦 明石

 

「夕張!ここの配列は!?」

 

「いや、わかんないって…腕輪のコピー自体ほぼ無理な…」

 

「だからそう言うのはいいから見ておかしかったら教えて!」

 

「……大体腕輪の存在が全部デタラメだから私の目には何もかもがおかしく見えて…あー、ごめん、黙るから…」

 

落ち着いて、イラついちゃダメ…

提督のために早く完成させなきゃいけないのに

 

「夕張、そっちの進捗は?」

 

「腕輪の暴走を抑える事自体が難しすぎてとても無理よ…私がどんだけ頑張ったらコレができるのか…」

 

「お願い、夕張にしかできないから、本当にお願い…完成させられるのは夕張だけなの…」

 

「そんなこと言われても…」

 

「お願いだから…私の全てがかかってるの、コレがダメなら私はもう生きていけないの…!」

 

「……ねぇ、明石…コレが完成したらどうなるの…?」

 

 

 

「…成る程ね、多分それは提督は喜ばないと思う」

 

「うん、よく知ってる…だけど、私はそれがいいの」

 

「ここにいる子達を放り出して心中するのが望みなの…!?それは…」

 

「それは提督も同じ、なら一緒に死ぬ人が1人でもいるべきなの…!」

 

「2人揃って自分勝手よ、それは…」

 

自分勝手でもいい…全ての勝機はそこに集約する

 

 

 

 

ベイクトンホテル ペントハウススイート

駆逐艦 曙

 

「…よし、こっちの解析は終わってる…2日もかかるとは思わなかったけど、これで充分ね」

 

明石はどれほど進めたんだろう

そもそも私をどれだけ恨んでるんだろう…

 

ケリをつけた事象の全てが私の影のようにまとわりつく、次はお前の番だ、と…

 

「犠牲なくして…前に進めず、私はもう歩むのをやめない」

 

誰だろうと犠牲は出てしまう、私が出した犠牲は…確実に必要のないものも含まれてたし、許されない咎を背負ってしまった以上…止まることが何よりの冒涜

 

「……送信完了、と…明石、貴方次第ですよ…」

 

さて、時間はどのくらいあるのか見に行かないと

 

 

 

 

 

 

海上

重雷装巡洋艦 北上

 

「……」

 

氷漬けにした元帥に、若干ヒビが入ってる…また戦うことになるまで、どれくらいの時間があるんだろ

 

「北上さん…そろそろ戻りませんか?」

 

「うん、明後日くらいかなぁ、時間が許してくれるのは…予定より早くそうなると思う…ん?」

 

鼻につく匂いだなぁ…

ムカつく

 

「なに?遊びに来たの?それとも主君を待ってる?」

 

「え?北上さん?」

 

匂いの源に質問を投げかける

 

「後者は正解、前者は…相手が相手ですから」

 

「貴方は…!」

 

阿武隈が砲を構える

 

「良いよ、撃たなくて…向こうも丸腰だし、火薬の匂いなんて全くないからね」

 

「………」

 

警戒を解かないのは良いことだけど…話しにくい雰囲気になってるなぁ…

 

「良いでしょうか」

 

「何?曙」

 

「いつ頃、ですか?」

 

「あと2日持てば良いんじゃない?」

 

「わかりました…それでは」

 

「…あたし達とやる気は?」

 

「一切ありません、明日も、明後日も…たとえ一ヶ月先でも一年先でも」

 

「それが聞けてよかったよ」

 

…事の顛末は、青い方から聞いてる

殺した罪とか、そんなのを問うより…今は、敵を増やさない

 

「腕輪の方はどうですか?」

 

「さあね、阿武隈、右手のやつ曙に渡してよ」

 

「…これ15cmですから撃てないと思います」

 

「いいから、早く」

 

曙が砲を重そうに持ち上げる

 

「よーし、阿武隈、肩をかすんだ、ほれ」

 

「え、あ、はい…」

 

阿武隈に寄りかかり、杖を投げる

 

「撃て」

 

砲音とともに杖が砕け散る

 

「ん〜…阿武隈、評価は?」

 

「…2度ほどズレてたと思います」

 

「そだね、曙、腕落ちたね」

 

「……精進しましょう、あと1日もある」

 

2日だっての…

 

「…おかえり」

 

「まだ取っておいてください、明日、夜会があれば参加します」

 

「最後の晩餐って事?えー…縁起でもない」

 

「そんなつもりありませんでしたけど、まさか負けることを恐れてるとか?」

 

…まさか、この笑いは嬉しさから来るものだ

 

「そんな訳ないじゃん、待ってるよ、曙、また私のお肉食べる?」

 

「うげ…やめてくださいよいじめるの」

 

「え!?北上さんのお肉ってなんですか!?」

 

阿武隈うるさいなぁ…

 

「…ところで、体調は?」

 

「相変わらず杖なしでは動けないし、体も辛い、AIDAをもらったけど、生命維持以上はできない」  

 

「………」

 

「大丈夫、盾にでもなんにでもなって、無理矢理戦力になるから」

 

「それはやめてください」

 

「冗談冗談」

 

ま、本気でやるか悩んでるけどね

 

「心配せずとも、優秀な弟子が3人もいるから…いや、曙を数えたら4人かな」

 

「…あの不知火ですか、それと…?」

 

「朧だよ」

 

「朧が…?」

 

芽を出してるのが、という意味で、それ以外にもみんなに教えてる…でも、実戦レベルなのはその3人だけ

 

「朧ができるようになったなんて…」

 

「違う、朧は今自分を失ってる」

 

「…自分を失う、というのは?」

 

「……朧であって朧じゃない」

 

あれは…誰かといえば、カイト

 

「どういう意味ですか」

 

「認知外依存症が結構重篤でね?提督の記憶全部見て、自分が建造される前の記憶より濃いからさ…」

 

「自分が提督である、と…?」

 

「そゆこと」

 

ま、多分それだけじゃなさそうだけど

 

「……わかりました、お二人に夕暮れ竜の加護があらんことを」

 

「曙にもね」

 

「それでは、また、北上さん、行きましょう」

 

………

 

「阿武隈、ちょっと部屋の片付け手伝ってよ」

 

「片付けですか…?あのゴミ屋敷を…」

 

「あ、言ったな!私が気にしてることを!」

 

「…動かないので仕方ないと思いますけど、記憶戻ってから散らかしっぱなしじゃないですか…飲み物のボトルとか窓のヘリに置いて…」

 

「そうそう、ダメ?」

 

「…カーテンで隠しても消えませんからね?」

 

「ダメかぁ…てかよく気づいたね」

 

「……運搬係は私ですから」

 

アレは何処にあったかなぁ…

 

「たははは…片付け頑張るからさぁ…」

 

「唯一記憶戻って残念な点ですよ…」

 

 

 

 

 

 

宿毛湾泊地

フリューゲル

 

「おう、少年」

 

「フリューゲル、何処行ってたんだよ」

 

「ちょっとな、それより進展は?」

 

進み具合は悪そうだ、仕方ない

 

「曽我部さん!!」

 

「ん?おやぁ…明石の嬢ちゃんじゃないの、何?」

 

えらく焦ってまあ

 

「早く来てください!」

 

「…はいよ…」

 

 

 

「…これは…」

 

「徳岡さんと渡会さんも作業に入ってますが間に合わないレベルです…」

 

なんて量だ…腕輪そのものを分解したデータって…何が味方してるんだコレは…

 

「ほとんど完璧な腕輪が作り上げられます…!」

 

「良いことじゃないの、何?なんで俺を呼んだわけ?」

 

「…今の話の流れで普通分かりません?」

 

「おじさんにはわかんないなぁ…」

 

「早く作りますよ!ほら!作業手伝ってください!」

 

…もう少しのんびり帰ればよかった

 

「そういや、このデータの出どころは」

 

「…メールの送信主は、ヴェロニカ・ベインの施設から送っていると…今もなお絶え間なくデータが送り続けられてます、濾過装置で取り出したデータも合わせて組み上げてますが…完成の形すら想像できなくて」

 

そりゃそうだ、人類が完成させられる代物じゃない、未知の何かを1から作るようなレベルの話だ

 

「ま、俺ももう少し頑張りますかねぇ」

 

 

 

作業を続けると意外なことにスムーズだ、まるでボビンに巻きついた糸を手繰り寄せるように1を始めれば永遠に作業は続いていく

 

「…しかし、何作ってるのか想像できないのは困るな」

 

「腕輪、それ以外のなんでもありません」

 

「腕輪、ねぇ…」

 

 

 

 

 

 

提督 徳岡純一郎

 

「渡会、どうだ」

 

「…順調なのかすら分かりません」

 

「…だな、女神様はどうやってコレを…」

 

腕輪を作り出してたんだ?

そもそもデータドレイン自体がめちゃくちゃなものだ、どんなものもすり抜けて改竄してみせる恐ろしい物…

 

「………なぁ、これ…別に形さえ出来て仕舞えばいいんじゃないのか?」

 

「形?」

 

「腕輪の形になるようにデータの配列を作るんだよ、1つ1つ組んでたらどれだけ時間をかけたところで…」

 

「…危険では?」

 

暴走の可能性はあるが…

 

「もとから暴走の恐れを持った代物だろ、それに今は急いで完成させるしかない…データの解析なんて待ってたら作業も停滞するしな…」

 

「……確かに…一度やってみますか」

 

「15分で終わる」

 

 

 

20分後

 

 

「……本?」

 

「インストールブック…ってトコだな、だが…完成したところで結局…試すやつがいねぇ」

 

誰かが試さないと…

 

「私が試します」

 

「…お前さんは確か…」

 

「朧です、貸してください」

 

半ば強奪気味にインストールブックを持っていく

 

「…ふんっ」

 

本を開き、地面に向かって投げつける

 

「お、おい!」

 

本から文字列が朧に向かって伸びる

 

「………」

 

「おい、大丈夫なのか…?」

 

無反応にそれを受け入れている

 

「…大丈夫、コレは使えます」

 

「お、おい…」

 

青色の腕輪がぼんやりと朧の右手首に明滅している

 

「明石さん達に伝えてきます、急がないと…」

 

「…どうなってやがる…」

 

「さあ…完成した、という事なのでしょうが」

 

「……あ、やべ、報告しないとな」

 

「そうですね、俺が報告してきます」

 

「あー、じゃあ頼んだ」

 

…大丈夫なのか…?アレ…

 

 

 

 

 

駆逐艦 朧

 

私は止まらない

止まれない

 

提督のために、曙のために、漣のために、潮のために、みんなの為に

 

自己満足で誰も望んでなくても止まりたくない…

 

「や、朧」

 

「北上さん、こんにちは」

 

「…お腹減ったねぇ」

 

「お昼食べてないんですか?」

 

「忙しかったからさぁ…阿武隈に部屋投げて逃げてきた」

 

「部屋を投げたって…?」

 

すごい字面だ…

 

「あれ、杖、提督のおさがりじゃなくなってる」

 

「あはは、不慮の事故で壊しちゃってさ」

 

「ダメですよ、大事なものだったのに…」

 

「…あ、朧、あたしカレー食べたいなぁ」

 

「カレー?」

 

「そ、明日決起会しようと思ってさ、作ってよ、海岸といえばカレーじゃん?」

 

…また面倒な…それに私は一刻も早く修練を積まないと

 

「間宮さんに頼めばいいんじゃ…」

 

「大丈夫大丈夫、間宮もたくさん料理作るからさ、じゃ、頼んだよ〜」

 

「え、ちょっと!……話聞かないなぁ…」

 

腕輪を慣らさないといけないのに…

 

「朧ちゃん!」

 

「…明石さん…」

 

会いたくなかったなぁ…

 

「腕輪!渡してください…!」

 

「…お断りします」

 

「絶対に今すぐ必要なんです!」

 

「私が使います」

 

コレは私が持つべき、絶対に渡さない…

私がカイトになるんだ

 

「…その記憶は朧ちゃんの記憶じゃない…」

 

「だとしても、私はこの腕輪を使うって決めたんです、邪魔しないでください」

 

「世界を救うのに必要なんです、どうか渡してください!」

 

「私が世界を救います」

 

…自分でも強情なのはわかってるけど…

私がこの記憶を持った以上…私がやらなきゃならないと思う、私は…

 

「…それに、明石さんはいくらでも腕輪を作れるでしょう…?」

 

「……私が止めてるのは、何より危険だからなんです」

 

「そんなことわかってます、それでもやらなきゃいけない、誰かがやって傷つくなら私でいい」

 

「…自己犠牲は美しいものじゃないんですよ」

 

「それも知ってます」

 

「……時間の無駄みたいですね」

 

…怒らせちゃったな、悪いとは思うけど私にだって…いや、ダメだ…落ち着いてやろう、きっとチャンスはあるから

 

 

 

 

 

 

 

 

呉鎮守府

提督 三崎亮

 

「決起集会?」

 

「そう、早ければ明後日にも元帥との戦いが再開される…最後の晩餐って感じ?」

 

「…全戦力で当たるにしても…って感じだけどな、つーか川内、お前…スケィスを全部持っていきやがって…」

 

「あれ?ダメだった?」

 

「……いや、よくやった、お前なら任せられる」

 

「うん、ありがと…この世の終わりを前にのんびり美味しい物でも食べて…頑張って戦おっか」

 

「ああ、何が起こってもいい準備をして用意出来たやつから宿毛湾に行くように伝えろ」

 

「りょーかい!」

 

 

 

 

 

 

宿毛湾泊地

駆逐艦 弥生

 

「………」

 

「弥生」

 

「睦月…何」

 

「塞ぎ込んでるにゃ〜、と思って」

 

「…別に」

 

そんな事は、ない…

 

「碑文使い…なんて睦月達にはまっったく!わからないけど…弥生は大事な仲間を失ったんだから、思いっきり泣いてもいいんだよ?」

 

「…泣きたいわけじゃない」

 

「じゃあどうしたいの?」

 

「……全部メチャクチャになればいいなって思ってる」

 

もう、みんな不幸になって仕舞えばいいと思っている

 

「…それは睦月達も?」

 

「…それは…違う、と思う…」

 

「よしよし、偉い子だね」

 

「…何?」

 

頭は撫でないでほしい…

 

「好きなだけ怒って、好きなだけ泣いて、好きなだけ笑って…これは生きてる人の権利…弥生は生きてるんだから、もっと…ほら、感情表現してみて?」

 

「……どうすればいい?」

 

「今、どんな気持ち?」

 

どんな気持ち…ぽっかりと穴が空いたような…

 

「孤独…?」

 

「…じゃあ、これで1人じゃない…睦月じゃ足りないかもだけど」

 

優しく抱きしめられる

 

「足りないなら、ほら」

 

誰かが後ろから抱きついてくる

 

「菊月、長月、三日月、望月…みーんないるよ」

 

「皐月…」

 

「まだ足りないなら白露型も初春型も呼ぼうか?」

 

「……潰される…」

 

「どう、まだ孤独?」

 

…じゃない

 

「あったかい…」

 

「よし!じゃあののままみんなでおしくらまんじゅうだ!」

 

「え?あ、あー…睦月はそこはかとなく用事が……あれ?弥生、なんで睦月の手を…」

 

「……死なば諸共」

 

「にゃしぃぃぃぃぃぃ!」

 

暑い……

 

 

 

 

正規空母 瑞鶴

 

「へぇ…加賀さんって本当にすごいんだ…いや、助けに来てくれた時の艦載機の動かし方ですごいのは知ってたけどさ…」

 

「赤城さんもそうだけど、私や青葉さんみたいにAIDAを扱って無理に戦ってる人もいる中で何もなしに戦い続けられる人はみんなすごいと思うの…特に加賀さんなんて折り畳み式の弓を携行するようにして…」

 

「あー、あれ、カッコ良かったわよね……じゃなくて!AIDA!?翔鶴姉ぇ大丈夫なの!?」

 

「あら、言ってなかった?私感染者なのよ、でも瑞鶴、その反応…さては詳しいわね?凄いじゃない!」

 

呑気か!

 

「いや、私碑文使いだよ!?瑞鳳にもう一通り説明されたし!っていうか…え?本当に大丈夫!?」

 

「大丈夫大丈夫、みたことない?AIDAを使って戦う人」

 

「…いや、無いけど…味方では」

 

「じゃあこれからそういう人と一緒に戦うこともあるわ、私と一緒に戦うこともあるだろうし…」

 

…そっか、翔鶴姉ぇや加賀さんとも戦えるんだ…

 

「……よし!頑張らなきゃ!」

 

「でも頑張りすぎは禁物よ、私はよく頑張って、崩れる人を見てきたから」

 

「うん、大丈夫」

 

「仲が良いのね、五航戦」

 

この声は…

 

「加賀さん!」

 

「っ…急に大きな声を出さないでくれる?驚いたじゃない」

 

「バタバタしてたものでなかなかお礼に行けず申し訳ありませんでした、助けに来て頂き、有難うございました!」

 

「……気にしないで」

 

「ふふふ、加賀さん、折角頭まで下げてるのに顔をそらすのは良く無いですよ?」

 

「…翔鶴、やめて」

 

「あれ?本当だ、なんで顔を逸らしてるんですか?」

 

「…気にしないで頂戴」

 

「瑞鶴瑞鶴、アレはね、貴方のまっすぐな感謝に感動してるのよ、ついこの間まで自分勝手だった貴方が僅かな時間で成長してるのが嬉しかったって言ってたし、何より加賀さん涙腺緩いから…ふふっ」

 

なんか私にも刺さるものがあるなそれ

 

「翔鶴!貴方本当にどこからそんな話を!」

 

あ、本当だ、涙目だ

 

「え?むしろ誰から聞いてると」

 

「…赤城さん!!」

 

…賑やかだなぁ…

 

「翔鶴姉ぇ、突っ込んだ話しして良い?」

 

「大丈夫、聞きたい事はわかってるわ…提督は以前にも一度長期間にわたって留守にしてたから」

 

「…いや、これは留守とかじゃ…」

 

口を手で塞がれる

 

「……言っちゃダメ、言っちゃダメなのよ…瑞鶴…」

 

…泣いてる…

 

「みんな、それを見ないふりをしてるの、最後の戦いが近いってみんなわかってる、それが終わるまで気丈に、何もなかったように振る舞う、誰が言ったわけじゃ無い…みんながそうしないと、戦えないのよ」

 

「…精神的支柱だった…?」

 

「…普通とは違う意味で、素晴らしい提督だったわ、みんなが同じ方向を向くために常に必要な人だった」

 

「…同じ方向って?」

 

「ええ、提督が向いてる方向は常に正しい、そう思ってみんな進んでたの…提督の代わりを勤めるのは…無理よ、誰にだって出来ない」

 

「…長期間居なかったって言ってたよね」

 

「その間は明石さんが、提督とは1番信頼関係にあったから…だけど、明石さんも頑張りすぎて潰れてしまいそうになって…でも提督のお言葉を胸に頑張り続けてたのよ」

 

「その言葉ってどんなの?」

 

「良いと思えることからやって行こう、そうする事でしか前に進めないから」

 

「……あはっ、なんだ、加賀さんずるじゃん」

 

「そう!そうなのよ!あの時私すごく悔しかったわ!」

 

「思ったより加賀さんも可愛い人なんだなぁ…」

 

「それは間違いないけど、加賀さんの作る料理だけは………あ、加賀さんの作る料理は絶品だから機会があったら絶対食べるべきね!本当に!美味しいから!」

 

…そんなに必死に勧めるなんて、よっぽど美味しいんだろうなぁ…妹思いな姉というか…優しいなぁ翔鶴姉ぇ…

 

「わかった、今度お願いしてみるわ…!」

 

「ぷ…くぷぷ…!」

 

…なんで顔を背けて…ハッ!きっと私と加賀さんが仲良くなっていくのがそんなに嬉しいんだ…!本当に優しい姉ね…

 

「そういえば知ってる?加賀さんってだいたい赤城さんに怒りに行くけど、いざ怒ろうとするとなんで言って良いかわからず一句読むのよ」

 

「…なにそれ、なんでそこで一句読むの!?え?おかしく無い!?」

 

「私もそう思ってそう言ったんだけど…「ごめんなさい、つい癖で…」って」

 

「癖!?どんな癖よ!あはは!」

 

「あら加賀さん、早かったですね」

 

「え!?」

 

…居ない…?

 

「わー、反応早いわね、そんなに笑ってるところ見られたく無い?」

 

「翔鶴姉ぇ…もしかして性格悪い?」

 

「え?」

 

…いや、ちょっと遊んだだけか…

 

「ふふふ…」

 

……悪魔の笑みにしか見えないのは何故だろう


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