元勇者提督 作:無し
宿毛湾泊地
提督 倉持海斗
海斗「現在青葉と北上は搬送に使う輸送船を護衛中です」
夕張「そうですか、その子はまだ意識が戻ってない?」
海斗「はい、それであの子はどこの病院に?」
夕張「私がここに臨時で医官として着任させていただきます、なのでここの医務室で面倒を見る事になります、噂では死体が深海棲艦になるとか言われてるので病院側の対応が冷たくて」
海斗「そうですか…」
夕張「まあ、受け入れた事は伏せておきますから」
海斗「…あの子の親族は?」
夕張「今のところは全くの不明です、着ていた衣服などは写真で見た限り汚れたものでした、丸呑みにされてそこそこな時間がたった…と考えています、なので人間の生存できる時間などを考慮して1週間前後の船の事故などを調べていますが…まあ、このご時世に船を出す愚か者もいませんから」
海斗「見つかればいいんですが…」
夕張「意識が戻ったら話を聞くつもりです、万一身寄りがなければ養成施設に入れて将来的に艦娘として雇用するつもりです、勉強にも仕事にも困りません」
海斗「…そう言う話をしていたつもりはないのですが」
夕張「おや、それは失礼…あなたを安心させる為に、と思ったんですけど」
海斗「安心?何のために」
夕張「横須賀鎮守府には優秀な指揮官が着任したものですから」
海斗「…伺ってます、火野拓海の事は」
夕張「ご友人…って聞いてましたけど、ずいぶん冷たいですね」
海斗「いえ、そう言うつもりじゃないんです、らしいな…と思っちゃって」
夕張「ああ、確かに、機械的に何手も先の準備までしてたのが逆に…って事ですか」
海斗「まあ、そんなところです」
夕張「さて、お仕事の話はこれで一旦おしまい、明石はどこに?」
海斗「工廠に居ると思いますが…お知り合いですか?」
夕張「ええ、同じ学舎を出たもので」
海斗「そうなんですね、是非仲良くしてください」
夕張「ええ、ではまた〜」
工廠
工作艦 明石
夕張「明石ーー!!」
明石「…うわ、あの声は…逃げよ」
組み掛けのパソコンをそのままに窓から建物の外に逃げ出す
夕張「アンタ在学中に私から借りたお金返してよ!しばらく私ここに居るから逃さないからね!?」
明石「…マジか…最悪なんだけど…早いうちに耳を揃えて返した方がいいなぁ…五千円…」
夕張「…あれ?何これ、あいつまたこんなもん作って…押収しとこうかしら」
明石「…マズイ、仕方ないから青葉さんから5千円せしめてそれで返そう、お金を返す為にも護らなくては…仕方ない」
窓から顔を覗かせる
夕張「…何で窓から顔出してんの…?聞こえてたのよね?」
明石「…そのパソコンちゃんが完成したら五千円入ってくるので、それで返します…」
夕張「は?アンタ…流石に利子をよこせとまでは言わないけど…まず謝ろうとかないの?」
明石「…えっと…ご、ごめんちゃい…」
夕張「……なんか、情けなくて泣けてきたわ…」
明石「そ、そこまで言う事ないじゃん!」
夕張「何で私がアンタなんかにお金貸したと思う?アンタを信頼してたからよ、なのに…今のアンタときたら…!」
明石「まーた…今のあんた、か」
明石(それを言われると旗色が悪いなぁ、いや、元々真面目でもなかったけど…何と言うか否定するのも情けないし)
夕張「…1週間のうちに返してよ」
明石「はーい、そんだけ?」
夕張「この…はぁ…そういや私も今は技術者として雇われてるの、同時に艦娘夕張としてもね」
明石「へぇ…じゃあこれからはバリーか」
夕張「……本当、情けなくて涙が出るわ…」
明石「いま情けない要素あったかなぁ…」
夕張「…これ、艤装用の修復液を作るための粉…逐一鉄の塊をガシガシやらなくて済むわ、艤装をこれに漬け込んだら最新技術のナノマシンが修復してくれるから」
明石「え、そんなすごいものなのこれ…うわぁ…し、調べたい…!これって余分にあったり…!?」
夕張「…いや、アンタにもこれを作ってもらうわ、ナノマシンはパソコンですでに組んだプログラムを組み込んである、それの組み方も、ナノマシン自体の作り方も覚えてもらうけど」
明石「おおぉぉ!つまり私も作れるようになるんだ!ハハッ!それを先に言ってよバリー!」
夕張「作れなきゃ問題なのよ…艤装のサポートをする妖精さんだって必要だし…その妖精さんもナノマシンで形成されてるから、この修復液がないと活動できないし」
明石「ふーん…」
夕張「…効果には興味なさそうね…はぁ…これ使って、とりあえず修復薬に使うナノマシン用のプログラム…」
USBメモリを二つ手渡される
明石「…何で二つ?」
夕張「こっちは消去用、何かあったらナノマシンの中の命令を全部消して動きを止められるから…アンタ絶対やらかすし」
明石「うへぇ…言いたい放題言ってくれるなぁ…とりあえずこの艤装直したいんだけど、使っていい?」
朧さんの艤装を見せる
夕張「……誰の?」
明石「朧さん、結構派手に立ち回ったらしいよ」
夕張「見ればわかる…けど…使い手にマッチしてないのかもね」
明石「どう言う意味?」
夕張「うーん…明石、ちょっと場所借りるわ」
明石「え、ちょっ…そ、それ国の所有物ってことになってるから壊さないでよ!?」
夕張「わかってるっての…何もしてないと多分着弾点にブレが大きい筈だし……」
明石(だ、大丈夫なんだろうか…)
海上
重巡洋艦 青葉
青葉「…あ、あの…北上さん」
北上「ん?何ー?」
青葉「めんどくさいとか言って仕事を司令官に押し付けるのはやめた方がいい…と思います」
北上「えー…ウッザイなぁ…」
青葉「…自分の仕事は自分でやってください…!」
北上「別にいまその話しなくても良くない?後10分もすれば泊地だしさぁ…」
青葉「泊地に着いたら理由をつけて逃げますよね…報告書くらい自分で書いてください、今後始まる訓練も真面目にやってください!」
北上「ウザ…別にそんなのやらなくていいんだって、あたし天才だし」
青葉「…天才がこの世に1人とは限りません…」
北上「何?青葉もできる?あたしみたいな芸当がさぁ…いや、できてもできなくても関係ないんだよ、普通より突出してるだけであたしは貴重な存在、無碍にできないんだよねぇ」
青葉(確かにそう、北上さんを咎めるにも北上さんは大きく艦隊を乱すような事はしてない、だけど…)
青葉「…あなたの才能は特別なんかじゃ…!」
北上「じゃあ、見てなよ…コレができる?」
主砲を南へと向ける
青葉「何を…」
北上「んー、そっちに何か居るからねぇ…ほら」
発砲、そして着弾、黒煙が上がる
青葉「…本当に何かいた…?」
北上「多分駆逐級って奴かなぁ…あれ動き単調でわかりやすいよねぇ」
いたずらっぽく笑いながらそう言う
私は敵を確認すらできてないのに…
青葉「…確認してきます」
北上「おっけー、死なないようにね」
黒煙が上がった方角へ移動する
周囲に沈みゆく黒い破片が幾つも散らばっている
深海棲艦が死んだ証拠…か
青葉「……報告しないと」
後方から激しい波の音がする
振り返ると駆逐級の深海棲艦が3匹群れをなして近づいてきている
青葉(いつの間に…!でもこの距離なら外れない!)
主砲を構えて放つ、2体撃沈
青葉「後1体…あれ…どこに…?」
遠方から砲音が3度鳴る
左右に着弾音…
確認すると2体の軽巡級とさっき見失った駆逐級が黒煙をあげて死んでいた
青葉「…軽巡級も…居た…」
北上「あのさぁ…まあ、確認は必要だけど気を抜きすぎじゃない?あたしに注意する前にさぁ…」
青葉(…助けられた…北上さんに…この北上さんに…)
北上「…聞いてんの?あたしに話し聞けってワリには随分だよね」
青葉「ありがとうございます、助かりました」
北上「…まあ、いいけどさぁ…なんなのさ、ほんとに…」
青葉(…私が成長して、見返してやればきっと…北上さんも変わってくれる筈、私が努力すれば…あれ?)
仕留められたハズの駆逐級の外側がバラバラと音を立てて崩れる
青葉「…なにこれ…」
北上「うわ、ぐっろ…んー…なんか肌色が見えるんだけど?」
肌色…中に人…?
崩れてる部分に手をかけて引き剥がす
北上「ちょっ…手、切れてるよ?」
無視して引き剥がす
制服が見える…藤色の髪型も
青葉「…貴方は…」
顔を確認したい、必要無い、誰かは知ってる、でも
バリバリと音を立てて外皮を剥ぎ取る
北上「え?なにこれ…曙って双子なの?」
青葉「や、やっぱり…やっぱり曙さんだ…!」
北上「いや、曙なのは……あー、すいません、船のベッド空きありますか?も一つ突っ込むので…はい」
青葉「きっと…絶対そう…!」
抱き抱える
人肌よりも少し暖かいような気がした、私の体温が低いのだろうか
青葉(急いで帰らないと…!)
宿毛湾泊地 医務室
軽巡洋艦 夕張
夕張「…だからここで寝てる人が2人もいるわけ…なるほどねぇ…」
青葉「…あの…」
青葉の手を消毒し、全ての傷口を塞いでガーゼを固定する
夕張「…ずいぶん深くまで切ったものねぇ…青葉?」
青葉「えと…ごめんなさい、でも…もしかしたらって思って…結果それは正しくて…」
夕張「まあ、何にしても良かったわね、仲間が見つかって」
青葉「…仲間かはわかりません、私を認識してくれるとも限りません」
夕張「宿毛湾は寂しいこと言うわね、横須賀なんて大淀さんと電ちゃんが会った途端大泣きして大変なんだから」
青葉「そう、なんですか…?」
夕張「年が随分離れてるけど、姉妹みたいなものだから…大淀さんも電ちゃんに全部押し付けて逝った事を気にしてたらしいし」
青葉「……」
医務室のドアが荒々しく開く
朧「曙は!」
夕張「まだ寝てる、久しぶりね」
朧「…夕張さん…記憶があるんですね…」
夕張「うん、青葉から聞いてる、ここの記憶持ちは朧ちゃんと青葉の2人だって」
朧「…此処には綾波もいます、あの狂ったやつが」
夕張「まだ会ってないけど会ったら逃げ出すかも」
青葉「…そこまで、危険は感じませんでした…」
青葉が朧ちゃんに肩を掴まれる
朧「危険を感じなかったって…何もされてないからそんなこと言えるんですよ…!漣も曙も…北上さんも…!どんな目にあったと思ってるんですか?曙は殺され、漣もアイツに襲われた時あと少し遅ければ死んでた、北上さんは生きたまま体を削られた…!しかもアイツはその時の記憶を持ってる…!」
夕張「記憶持ち…?青葉を疑うつもりは無いけど本当にその綾波大丈夫なの?」
青葉「…多分、何にしても私は司令官が手を出すなと言うのなら手を出すつもりはありませんし、仲間として接します」
朧「正気ですか…!?」
青葉「そう思うのは無理ありませんけど、私は…世界の再誕で全てが一度リセットされたと思ってます…罪とか、そう言うのも全てひっくるめて」
朧「…リセットされたのなら、私のこの記憶は?」
青葉「…わかりません、青葉達はただのバグなのか、それとも記憶を持つべくして持ったのか…」
朧「……人になったとして…1番根深い感情は、憎しみです」
青葉「…憎しみは何かを育ててくれますか?」
朧「殺意と、復讐心」
夕張「はーい、やめ!2人ともやめて、青葉は朧ちゃんの辛さを知らない…守ろうとしてるとしても迂闊だよ」
朧「…アタシが手を出せば周りからどう見えるか…と言う意味なら理解してます」
夕張「なら、あとはこっちの目につかないところでやって…止める権利はないけど、見かけたら止めなきゃいけない…こんな記憶持ってるの、私達だけなんだから、理解されないよ」
朧「……はい」
青葉(…いつか、朧さんは綾波さんを殺しかねない…提督に相談したほうがいいのかな…)
朧「アタシも青葉さんに関わりはしません、なのでお互い余計な手出しは無しでいきましょう…提督にも気づかれませんから」
青葉「……」
朧「そう言う事で、曙のベッドは?」
夕張「…1番奥よ」
青葉「…失礼します」
駆逐艦 朧
ベッドに横たわった妹の頬を撫でる
この世界で生まれた時、前の記憶があったのは自分1人だった、4人で深海棲艦の居ない世界を何事もなくただ生きていた
だけど、私にとっては1人だけ欠けていた、前の世界では曙が2人いたから…私にとっては妹は4人いて、仲の悪い2人の曙がいつも喧嘩をしていて…
頬を撫でる手が掴まれる
曙「…おはよう、ほっぺたがヘコみそうだからやめてくれない?」
朧「……曙…」
曙「んー、まさか会えるなんてね…此処どこ?」
朧「宿毛湾泊地だよ、曙は深海棲艦の中から…」
曙「覚えてる、食われたのよね…最悪だわ、本当に…艦娘としての力がなければこんなものか…」
苛立ちを隠す様子もない
朧「……やっぱり、深海棲艦は人を食べるの?」
曙「正確には人の体、もしくは心を食べる……力のないアタシは…体を食われた」
力があると、心が食べられる…?
朧「どう言う事…?」
曙「……戦う用意がいる、艤装ある?仕事があるのよ」
ベッドから降りて準備運動のような動作をする
朧「待って、曙は艦娘じゃ…」
曙「……艦娘よ、いつまで経っても、どんな世界に行っても…あたしの中から忠誠と経験だけは消える事がない…」
朧「曙、七駆はアタシ以外記憶が…」
曙「情けな…何?アイツらみんな何も覚えてないわけ?というか誰がいるのよ」
朧「加賀さん、赤城さん、青葉さん、北上さんと、明石さん…」
曙「覚えてるのは?」
朧「青葉さんだけ…それと、夕張さんが医官として着任してる、あとは綾波と敷波もいる、3人とも記憶を持って」
曙「ふーん…興味ないわ、此処の指揮官は?」
綾波に反応をしない…か
朧「提督は変わってない」
曙「…倉持海斗?」
朧「そう」
曙「…はぁ…1番最初にそれ言ってよ、挨拶してくるわ」
朧「何も覚えてないよ」
曙「それが?何か関係ある?私は中性を覚えてるの、それだけで十分」
夕張さんに一声かけて曙は医務室を出て行った
執務室
駆逐艦 曙
ノックを3回する
曙「失礼します」
海斗「空いてるよ、曙、どうしたの?」
ドアを開く、ああ、提督だ
求めていた人がそこにいる…あと青葉さんも居る
海斗「あれ?いつもの制服じゃ…いや…」
青葉「目が覚めたんですね…」
曙「別の曙です」
海斗「みたいだね、でも君は艦娘じゃないと思うけど…?」
…提督に記憶がない、私を知らない、か…ふふ
曙「艦娘として雇ってくださいませんか?」
青葉「……」
海斗「えっと……普通は養成施設に入るとかをしてもらうことになるんだけど」
曙「必要ありません、何でもやります、やらせていただきます、なのでなんなりと私をお使いください」
海斗「…本部に問い合わせてからでもいいかな?流石に僕の独断では…」
曙「はい、それと…青葉さんに一言言わなくてはならない事が」
青葉「…此処でですか?」
曙「翔鶴さんについてです」
私が深海棲艦に食われる直前の記憶を伝えなくてはならない
青葉「…あなたは翔鶴さんと?」
曙「あの方は記憶を持っておられませんでしたが…私と一緒に深海棲艦に襲われ、落命してしまいました」
青葉「そんな…!」
海斗「……青葉は翔鶴って人と?」
青葉「…友達でした」
海斗「そう…」
曙「翔鶴さんについて、何か聞きたい事があれば私の元を訪ねてください……あれ…」
曙(しまった、今の私は身寄りがないのか…帰る場所もない…そもそも私は人となった時、深海棲艦の襲撃で人としての家族も…)
曙「……これは…余計に此処を離れる事ができませんね」
海斗「え?」
曙「私の身寄りは完全になくなってしまってます、どうにか此処に置いていただけると本当にありがたいのですが…」
青葉「あの…とりあえず私の部屋に来ますか?寝泊まりだけなら充分にできると思います…狭いですけど」
曙「助かります、そうさせてください」
青葉「司令官、いいでしょうか…」
海斗「君が構わないなら、そもそも空き部屋も多いし…好きに使ってくれて構わないよ?」
曙「いえ、青葉さんの部屋にいかせてください」
海斗「わかった、それで良いならそうして」
曙「温情をかけていただきありがとうございます」
海斗「大袈裟な子だなぁ…あはは…」
青葉「…らしい、気もしますけど」
青葉私室
曙「すいません、置いていただいて」
青葉「いえ、それより何でしょうか、私に聞かせたい事があるんですよね…?」
曙「簡単に話すと、深海棲艦には二つの種類がある、という話を…」
青葉「待って、なぜそんな話を私に…?」
曙「提督を躊躇わせるだけですから、それに青葉さんは知っておいたほうがいいかと思って」
青葉「…躊躇うって…」
曙「翔鶴さんに会えば一発でわかりますよ」
青葉「…会う?死んだんじゃ……いや、違う…まさか…」
曙「ええ、深海棲艦に寄生された、みたいな感じですね…詳しく話しましょう、あの日、翔鶴さんは私と同じ海岸にいて、その海岸に深海棲艦が押し寄せたんです」
青葉「…このご時世に海岸に?」
曙「カレンダー3.4枚分くらい前の話ですよ、私たちは逃げ遅れて、翔鶴さんの方に黒い破片が飛びついた…頭の上で何かを咀嚼するような動作を何度かした後に翔鶴さんの様子がおかしくなって…まあ、言ってしまえばヲ級とそっくりな姿になりました」
青葉「……そうですか…今度はSFじみてきましたね…」
曙「もともとサイバーなSFでしたよ、ちなみに私は噛み砕かれたのに…この通り、傷一つない…正直言って、朧がいなければ暴れてたと思いますよ…夢だと思った、全部悪い夢だって」
青葉「…この世界は司令官が望んだものです」
曙「いいえ、みんなが望んだものですよ、決して独りよがりな世界じゃない…もしそうなら提督がただのうつけになるじゃないですか、提督が躊躇わずに済むように私たちは…背中を押さなきゃいけない、知られてはいけない事実を今は隠す必要がある」
青葉「……」
曙「大丈夫、こういうのは全部倒せば解決します、ゲームなんてそんなものですから」
青葉「…そ、そうですね」
曙「……引くのやめてもらえます?冗談なので」
医務室
駆逐艦 朧
夕張「朧ちゃん、そういえば艤装の修理終わってるよ」
朧「ありがとうございます」
夕張「ところで…ふふっ…精度、あげといたよ」
朧「え?」
夕張「朧ちゃんってかなり砲撃得意だったと思ってさ…違った?」
朧「いや…ブランクっていうんですかね…年齢と同じ時間触ってないから…」
夕張「だから扱いやすくブレをできるだけ殺しておいたから、きっと本来の実力で戦えると思うわ」
朧「…ありがとうございます」
夕張「艦娘は助け合わないと、ね?」
朧「はい、ちょっと報告してきますね」
朧ちゃんは出て行った…か
夕張「そうしてるの退屈じゃない?」
朝潮「………」
夕張「いや、目は覚めてるでしょ、わかるのよ?」
朝潮「司令官が私に声をかけてくださるまではこのままで居ます」
夕張「うわ、面倒…というか記憶あるんだ?」
朝潮「……死んで、生き返って…その時に流れ込むように、私の中で生まれるように記憶が…」
夕張「そういう思い出し方もあるんだ…」
朝潮「……今も不安で壊れそうです」
夕張「手、握ってあげようか?」
朝潮「…触れないでもらえません?」
夕張「あの、ごめん…なんかごめん、心が痛いんだけど…」
朝潮「冗談です、お願いします」
夕張「…やだ…駆逐艦ってこんなに怖いっけ…」
朝潮「…そこでうろうろしてるなら司令官を連れてくるなりしてくれませんか?」
夕張「……わ、わかりましたー…っていうか…来た途端に仕事がほとんど片付いたんだけど…」
朝潮「じゃあ当分顔を合わせることはありませんね」
夕張「あはは、泣きそ…わかりました、連れてくれば良いんでしょ、はぁ……」
駆逐艦 朝潮
海斗「えーと…目が覚めたみたいでよかったよ、とりあえず手を離してくれる?記録しないといけないから」
朝潮「何のために夕張さんがいるんですか、書記をやってもらいましょう」
夕張「……アイアム、医官、ノット、書記…オーケイ?」
朝潮「ノー!!つべこべ言わずにペンとクリップボードを持つ!」
夕張「……へーい、提督ー…?」
海斗「ご、ごめん…お願いして良い?」
夕張「…はぁ…いいですけど…」
海斗「とりあえず、名前とか、何処に住んでたのかを教えてくれる?」
朝潮「朝潮型駆逐艦朝潮、宿毛湾泊地所属の駆逐艦ですが?」
海斗「…えっと…」
夕張「この世界で何かしてたとかその辺を聞いてるのよ…?」
朝潮「…大潮や荒潮達と沖縄の孤児院で暮らしてましたが?何ならそこも深海棲艦に潰されたので帰る場所なんて何処にもありませんよ」
夕張「……想像を遥かに超えた重い話を軽く一息に話すのやめてくれませんか、朝潮さん」
海斗「…そ、それは大変だったね」
明石「妹達を逃した際に私だけ死にました、多分」
夕張「それは…御愁傷様というか…」
朝潮「黙りなさいメロン」
夕張「…私たち仲悪かったっけ…?」
朝潮「あなたが余計なことをしなければロマンティックな目覚めになる計画だったのに…その罪は重いですよ」
夕張「あ、それで怒ってらっしゃる…いや、なんか…私が悪いのかなこれ…本当にごめんなさい」
海斗「えっと…僕もごめん」
朝潮「いえ、司令官は何も悪くありません、私も言いすぎました、夕張さん、また仲良くしましょうね?」
夕張「…もうやだこの子」