元勇者提督   作:無し

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撤退

海上 

軽巡洋艦 北上

 

北上「…羅針盤は南西か、行くよー?」

 

沖縄諸島を東に見ながら進む

 

瑞鶴「彩雲、放つわ」

 

特に素早い艦載機が幾つか空を切る様に飛んでいく

 

朧「…早いなぁ…彩雲……あの速度だとどうやって当てれば…」

 

葛城「…研究熱心というか、敵に回したくない子ですね」

 

曙「朧は真面目すぎんのよ」

 

漣「そーそー、もっとゆるくいきやしょうぜ!」

 

瑞鶴「……そうは言ってられない、敵よ!軽巡2駆逐2!進路このまま!反航戦になるわよ!」

 

北上「ま、軽く当たろうか」

 

瑞鶴「第一次攻撃隊、出すわ!葛城!」

 

葛城「はい!先輩!!」

 

弓から放たれた矢が炎を纏って攻撃機に姿を変える

 

北上「…どういう原理なの?それ」

 

瑞鶴「さあね、わかんない…でも、仕事はするわ!そろそろよ!」

 

葛城「敵の対空射撃、演習に比べてヌルすぎますね…余裕で全滅です」

 

遠方で黒煙が上がっている

 

瑞鶴「うん、4隻とも撃沈!良い感じじゃない!」

 

北上「…あれ?これあたしら要らないんじゃない?帰って良い?」

 

朧「ダメです、ちゃんと仕事しないと」

 

北上「うえぇ…ダル……ん、羅針盤が沖縄を横断しろって言ってるよ」

 

曙「浅瀬を通る…って事ね、座礁に注意…するほどのところはないか、船じゃないんだし」

 

瑞鶴「そうね……えッ!?」

 

朧「何かありましたか?」

 

瑞鶴「先行してた彩雲が落ちた!」

 

葛城「彩雲が!?敵は何処に…」

 

瑞鶴「わからない…敵を確認する前に全部落とされてる…!」

 

北上「敵を確認する前に落とされるってどういう事な訳…結局最後はあたしらがやるわけか」

 

漣「まあまあ!とりあえず方角は?」

 

瑞鶴「方角はこのまま、横断して少しいった先よ…警戒して」

 

朧「了解です」

 

葛城「…艦載機飛ばした方がいいでしょうか」

 

瑞鶴「いや、あの速度で落とされるなら無駄よ…数で攻めるのもまだ敵がいるなら良くないし…」

 

朧「敵の対空がおろそかになるタイミングでお願いします」

 

瑞鶴「うん、了解」

 

島の隙間を通ると奥に艦影が見える

 

曙「敵発け…うっ!?」

 

まだ艦影が見えただけなのに、今撃っても着弾まで何秒もかかるのに、曙は右足の艤装を撃ち抜かれて水面を転がる

 

朧「嘘…!」

 

北上「まぐれでしょ、ほら、さっさと撃つよ〜」

 

漣「向こうもガンガン撃ってきてます!」

 

敵艦隊の砲撃はかなり手前に着弾してる…さっきのあたりはやっぱまぐれだ

 

北上「…もっと近づかないと狙えないな」

 

朧「曙!大丈夫!?」

 

曙「ギリギリ航行できるけど…片足が焼けたみたいに…!」

 

大袈裟、装備が砕けただけじゃん…

 

北上(ここで詰めるより航空機で…いや、落とされたって言ってたか…でもここで詰めるには先に艦載機を出させるしかない)

 

瑞鶴「…わかった…葛城!全部出すわよ!」

 

葛城「ぜ、全部!?」

 

瑞鶴「数で押せば何とかなるかもしれない!とにかく艦載機を放って!」

 

葛城「は、はい!!」

 

大量の艦載機が隊列をなして…堕ちていく

 

瑞鶴「…なにこれ…」

 

葛城「撃ち抜かれた艦載機が他の艦載機に衝突して…」

 

変な当たり方して…面倒

 

北上「……あー、もう…役立たないなぁ…朧!来て」

 

朧「え、行くんですか!?」

 

北上「やらなきゃ仕事したことになんないじゃん…ったく」

 

射程まで4…3…

 

朧「…あれ、雷巡級…?いや、まって…あの艤装は深海棲艦の艤装じゃない…?」

 

射程内…飛んできた砲弾を砲塔で弾き、狙う

 

朧「北上さん待っ…!」

 

北上「ッ…!?」

 

砲塔の中で炸裂した……炸裂した?

撃たれた砲弾は弾いたのに…

 

水面を転がる、砲を持っていた手が焼けるように熱い

 

北上「チッ…!何アレ…やっぱ数は正義って事かなぁ…!」

 

全部の砲弾の流れを把握できるわけがない、たくさん飛んできて、たまたま当たっただけ…にしても、これじゃきついか…

 

朧「…あの雷巡級…の仮面を被ってるやつ、やっぱり深海棲艦の艤装じゃない…」

 

確かに、あの雷巡級だけ艤装の色が違う…

 

漣「つまり、どういう事…?」

 

朧「…わかんない…」

 

北上「駆逐!魚雷出して!」

 

朧と漣が前方に魚雷を放つ、敵方から6回の砲音

 

6本の雷跡に吸い込まれるように着水した…

静かに鉄の破片が浮き上がってくる

 

北上(……スクリューだけ撃った…?冗談じゃない…)

 

水中での砲弾の動き、こんなに離れた位置からの魚雷の深さや細かな位置も把握してる…?

 

瑞鶴「…撤退!全員急いで逃げて!」

 

…退くしかなかった…

どうしようもなく、勝ち目がない…

 

あんな事ができるなんて、経験や運、そんな何かで測れない何かを持ってるとしか…

 

 

 

 

 

 

チ級

 

チ級「んー…ま、軽いねぇ…」

 

ヲ級「随分ト本気ヲ出シテマシタネ」

 

チ級「まあね、だってやらなきゃあたしの力の証明にならないし、証明ができなきゃあたしはここで暮らせないから」

 

ヲ級「…チ級…サンハ、帰レルンジャ…?」

 

チ級「翔鶴が帰れないでしょー、ダメだよ、それじゃ…提督に顔負けできないじゃん、それに青葉も悲しむ…赤城や加賀も…ま、覚えてなさそうだけどね」

 

ヲ級「………」

 

チ級「まあ…次はアレが出張ってくるだろうし?ちょっと脅しがいるなぁ…よし、横須賀行くかー」

 

ヲ級「エ」

 

チ級「魚雷盗むよー、こっちも協力者はいるわけだし」

 

ヲ級「協力者…?」

 

チ級「おーい、イムヤー、ちゃんと連絡しといてね…そう、そっちじゃなくて…おっきい方」

 

ヲ級「イムヤサンマデ深海ニ…?」

 

チ級「イムヤは…あたしが誘った、こっちで一緒にやろうってね……記憶があって、仲間が深海棲艦にまでなってんのに…みすみす見殺しにするやつの方が少ないって…倒されりゃ何とかなる、みたいな魔法はそうそう通用しないのは…知ってるからね」

 

ヲ級「…一体何ガ…?」

 

チ級「……深海棲艦の成り立ちを見ちゃったからねぇ…このまま深海棲艦と戦争してたら提督が苦しめられるよ」

 

 

 

 

 

 

宿毛湾泊地

駆逐艦 アオボノ

 

アオボノ「…艦載機が全滅したため撤退…?」

 

朧「北上さんの艤装も、曙の艤装も壊れたし…」

 

アオボノ「追撃は?」

 

朧「…全くなかったよ」

 

アオボノ(まあ…恐ろしいのが出てきたってことね…でもこっちと敵対してるけど、追撃がないなら倒したいわけじゃ無い…?)

 

朧「……どう思う?」

 

アオボノ「本物が出てきただけでしょ」

 

朧「…それはわかってる、でもそういう意味じゃなくて…」

 

アオボノ「……考え方の違いってことよ、わかる?向こうは私たちに敵対して、私たちが深海棲艦を倒さない事が提督のためになると思ってる…それだけ」

 

朧「……何故?」

 

アオボノ「深海棲艦の成り立ちって知ってる?言っちゃえばね、ゾンビパンデミックみたいなもの…」

 

朧「意味がわからないんだけど、何が言いたいの?」

 

アオボノ「深海棲艦に殺されると深海棲艦になる、簡単に言えばそういう事」

 

朧「……それは、艦娘が?」

 

アオボノ「人間すべてに決まってるじゃない、だから外国でもで深海棲艦が目撃されるようになった…と私は考えてる」

 

朧「…人間が、深海棲艦に殺されたら、深海棲艦になるって事…は…」

 

アオボノ「そう、深海棲艦は人間の死骸って事…まあ、最初に生まれた深海棲艦とかは知らないケドね、何が理由かは知らないけど深海棲艦に殺されたら深海棲艦になる」

 

朧「………」

 

アオボノ「まあ不思議なのは…なんで私達みたいに元の体が戻ってくる奴がいるのか…かな」

 

朧「元の体?」

 

アオボノ「そ、食われたって言ったでしょ?ぐちゃぐちゃのボロボロに食べられたのに…なんでこの体が戻ってきたのか…」

 

朧「………」

 

アオボノ「話が逸れたわね…いや逸れてないんだけど、要するにそっちも見当がついてて、理由は艦娘だったから」

 

朧「艦娘じゃなかったら…?」

 

アオボノ「は、今更聞く?今回の出撃でたくさん殺したでしょ?多分そういうことよ」

 

朧「……そんな…」

 

アオボノ「まだわからない?話をわかりやすくまとめてあげる、深海棲艦に殺されたものは深海棲艦になる、過程は置いておいてね…そして、深海棲艦に殺されて、再度殺された場合艦娘なら戻って来れる可能性がある、ここまではok?」

 

朧「………」

 

アオボノ「そして、次、元々が人間の人間が殺された場合、深海棲艦になって、そして殺された場合…まあ、死んでも何にもならないわよね、ただの鉄屑として沈んでくんじゃないかしら?」

 

朧「…つまり私たちが戦ってる相手は、人間なの?」

 

アオボノ「……あんたバカ?」

 

朧「な…バカって…」

 

アオボノ「すでに死んでるの、生き物は死んだら等しく生物じゃなくてモノになるの、確かにこの事実が明るみに出れば人間に戻す方法を探ろうとする奴らが出てくるとは思うわ、成せるかは置いておいてね」

 

朧「………」

 

アオボノ「人権?死んだ時点でもうないわよそんなモノ、助けるべき?そうやって綺麗事を言ってればいい、命をかけてるのは自分じゃない奴らがいうセリフなんだから」

 

朧「私は…」

 

アオボノ「誤解がないようにはっきりさせとくわ、私は提督が幸せであってくれればそれでいいの、提督のために生きて死ぬ、そう決めてるのよ、誰が苦しんでも、誰が犠牲になってもね」

 

朧「だから…深海棲艦になった人間は全て殺す…?」

 

アオボノ「もう深海棲艦との戦争は始まってる、元々人間で、もしかしたら救えるかもって幻想に取り憑かれた奴が出てきたら…誰を責めると思う?」

 

朧「…確かに、それは提督を責めるだろうけど…」

 

アオボノ「それでも上は好き勝手言うでしょ?どうせね…そして私達は何も知らずに戦わされてたって事にされる…元々が人間になってしまったせいで、血も涙もない大人に使われてる子供にされてしまった、そんなの最悪でしょ」

 

朧「………」

 

アオボノ「最終的に切り捨てられる、最終的に打ちのめされる、そんなハズレクジを提督に引かせる?私がそんなことさせない、私は絶対に認めないわ」

 

朧「認めないのは分かったけど、だからって…」

 

アオボノ「極端すぎるのよ、この世界は…一歩間違えれば戦争犯罪者、そんな綱渡を渡り切ればきっと提督を英雄にできる」

 

朧「……提督が望んでなくても?」

 

アオボノ「私だってそんなことはわかってる、だけどこの仕事を提督が辞めてくれないでしょ、中途半端で終わらせる…って方向性だとしても、私達は悪戯に提督を苦しめるだけよ」

 

朧「………」

 

アオボノ「提督も難儀な人よね、苦しまない道なんてないんだから」

 

朧「それがわかってるなら、なんで…」

 

アオボノ「苦しみを1番軽減する、それしか私にはできないのよ、朧、わかるでしょ?それに私はここに長く居れないのよ」

 

朧「……なんで?」

 

アオボノ「私は罪人だからよ、何人殺したの?綾波が何?私だって罪人で何よりも私は提督を殺しかけてる、朧だって私を許せない、違う?」

 

朧「そんなこと…」

 

アオボノ「…あ、そ…私は提督が好き、だからこそ自分が許せない、提督は私の罪を分かった上でおそばに置いてくださるけど、それをみんなが許すわけじゃない」

 

朧「………待って、今…ちょっと待って、提督は覚えてるの?」

 

アオボノ「…まさか、気づいてなかったの?」

 

朧「そんな…わかってて、提督は綾波達を迎え入れたの?」

 

アオボノ「…今更そんなこと言うなんて間抜けも間抜けね…ホントに気付いてなかったなんて」

 

朧「曙はいつ気付いたの…?」

 

アオボノ「気づくも何も…提督が再誕を発動させたんだから覚えてるのが当たり前じゃない、と言ってもその考えに至ったのは少し前だけど」

 

朧「………」

 

アオボノ「さて、次は誰が駆り出されるのかしら、北上サマに勝つのは楽じゃないし」

 

朧「曙が出るんじゃないの…?」

 

アオボノ「無理、私は今実力を出すタイミングじゃないの」

 

朧「タイミング…?」

 

アオボノ「今私が突出した力を見せて、提督のためになると思う?ならないに決まってるじゃない、今はまだなの」

 

朧「……よくわからない」

 

アオボノ「ま、いいわ…さて…私は行くところがあるから」

 

朧「行くところ…?」

 

アオボノ「勉強にね、東京まで」

 

朧「東京……お金あるの?」

 

アオボノ「貸してくれるでしょ?」

 

朧「………」

 

 

 

 

 

 

東京

神通

 

那珂「よーし、住所割り出せたよ」

 

川内「うん、間違いないね…よーし、提督を捕まえに行こうか」

 

神通「合コンの誘いに乗るのが1番早かった気がしますけど…」

 

那珂「合コンの日は明日でしょ?良いじゃん、先に捕まえれるならこれで」

 

神通「まあ…構いませんが……?」

 

神通(…誰かが私を見てる…?あれは……)

 

川内「神通?どしたの、置いてくよ?」

 

那珂「神通姉さん?」

 

神通「…ちょっと野暮用を思い出しました、20分ほどくださいますと…」

 

川内「ふーん…」

 

那珂「…了解」

 

2人を追い払い、人気のない方へと移動する

 

神通「此処ならどうですか?」

 

幅3メートルほどの路地、槍を持っていても十分に振るえないか…

 

神通「居るのはわかってるんですよ」

 

神通(…と言いましたけど、撒いてしまったのでしょうか、それなら恥を…いや、いる)

 

黒いフードで顔を覆い隠した小柄な人影…

 

神通(…京都以来…と言ったところか…)

 

神通「無口ですね、早速やりましょうか」

 

黒ずくめの敵が迫ってくる

 

神通「動きが少し変わりましたか…綾波さん」

 

世界が変わってまでも…執拗なことだ

執拗に回し蹴りを繰り出してくるが、軽い…

 

神通(…軽い、ですが…受け止められないように軌道をブラしてる…捕まえて関節技…時間がかかりそうですね、それなら攻めてしまいますか)

 

相手の蹴りに合わせて蹴りを放つ

こうなると体格の差は顕著に出る

足の長さが、体重の差が

こっちの蹴りはずっと重く、長く、そしてしなるムチの様に…

 

神通「…ッ!!」

 

蹴りが当たる直前に、地面についた片足で後方に飛び退がる

冷や汗が吹き出して襟を濡らす

 

神通(今の蹴り…待たれていた…読まれていた…あのまま当たっていたらダメージこそあったでしょうが…喰らいつかれて…やられていた…)

 

回し蹴りは向こうの専売特許…ならこちらの得意な蹴りは前蹴りだ

私なら回し蹴りよりも早く、そして鋭い蹴りを放てる

それにこの突くような蹴りを掴むには、一点に集中する衝撃を受け止め切らなくてはならない

 

神通(一撃で決める…!)

 

油断も、余念も、躊躇も、何もない

純粋な殺意で仕留める為に、距離を測り、自分の間合いに持ち込む

 

神通「はぁっ!!」

 

膝を胸に抱えるほどに折りたたみ、そして伸ばす

足先で貫く様に蹴る単純な動作だが、破壊力は十分すぎる…が

 

神通(…見切られた…!)

 

紙一重でかわされた…フードの下の口角がニィッと上がったのが見える

 

神通「この…!ッ!」

 

軸足の足首に衝撃、体が浮き上がる感覚…足払いをされ、情けなく地面に堕ちる、頭を強く打つ、脳が痺れるような感覚

追撃に来てるのもよくわかる

 

視える…相手の動きが、全て

 

地面に横たわったまま、待つ

こちらの距離になる瞬間に狙いを済ます

 

追撃の手段は意外にも飛び蹴り…確かに横たわった私に全体重をかける蹴りは有効だになり得る、反撃もしづらい、選択としては間違ってない…でも

 

神通(その挙動は…私の…?)

 

胸につくほどに膝を折りたたみ、射程に入った瞬間に足を伸ばす単純な蹴り…

こちらも同じく蹴りを放つ

 

お互いの足を掠め、脚の長さが勝負を分けた

 

神通「綾波さんだと思ったけど違う…曙さん…?」

 

アオボノ「ゲボッ!…おえっ…!」

 

フードから青い髪が覗く

 

神通「一体何のつもりで…」

 

アオボノ「…はぁ…まだ…見せて貰いますよ」

 

神通「……ラーニングが目的ですか、随分と手荒な…え?」

 

起き上がる動作で一瞬下を向いた、確かにその瞬間に目を離してしまったが…その一瞬で消えた…

違う、上を取られた

 

アオボノ「本気で来てもらわないと、往復と食費の合計47,000円分の価値がないですからね」

 

背中に衝撃、軽い…が、人間の身体には十分なダメージになってしまう…

 

神通「……その構えは…」

 

アオボノ「違いましたか?那珂さんの構えのつもりでしたけど…那珂さんに仕掛けることも考えたのですが、釣れたのは神通さんでしたから」

 

神通「…いいえ、本当にそっくりですが…少し旧いですね、そこが残念ですよ」

 

アオボノ「それはそれは…今の那珂さんにも興味が湧いてしまいますよ」

 

…時間切れですね

 

神通「なら、本人に直接教えてもらったらどうですか?」

 

アオボノ「おや…危なかったです」

 

…那珂ちゃんの奇襲をかわしましたか…

 

那珂「…完全に、背後とったつもりだったんだけどなぁ…ひっさしぶり〜」

 

川内「ウチの妹に手を出すなんて、どう言う理由か…ゆっくり聞かせてもらおうじゃん?」

 

アオボノ「……良いですよ、ゆっくり聞いてくださって」

 

神通「…本気でやるつもりですか」

 

那珂「みたいだねぇ、3対1なんだよ、わかる?」

 

川内「素手は専門じゃないけど…それでもまあ、ある程度はできるんだよねぇ…」

 

余裕たっぷりにこっちを見下すようなその目は…私の心臓を冷やす

 

神通「随分と余裕そうですね、足元を掬われても知りませんよ」

 

アオボノ「足元を掬われるのは余裕がある人間じゃない、余裕のない人間だ」

 

川内「………」

 

アオボノ「なんでかわかりますか?足元を見る暇がないからですよ…ああ、あと弓の弦も少し余裕を持たせたりするそうですねぇ…余裕がないと、すぐ切れてしまう…」

 

那珂「だから?」

 

アオボノ「本気できてくださることは嬉しいですが…余裕のない貴方達に勝ち目はないですよ」

 

確かに、雰囲気に気圧されて余裕がないのは私たち…か

 

アオボノ「まあ、余裕たっぷりにお話してたら本当に足元を掬われるだけなんですけどね」

 

 

 

 

 

那珂「うええーーん!顔はやめてって言ったのにぃ!」

 

川内「…最悪…」

 

神通「………」

 

3人揃って、ボロボロだ

一撃ずつ確かに攻撃はヒットした、一撃だけ…

 

川内「神通の時はレンジを確実に測る為にわざと受けたのかな」

 

神通「いいえ、あのヒットは確実に想定外だったはずです…でも、その一撃から完全に私の攻撃は通用しなくなってしまいました」

 

那珂「痛いんだけど…!なんかすごく痛いんだけど…!鼻折れてない!?」

 

川内「あーはいはい、折れてない折れてない…アタシも一回確かに拳が入った、でもそれ以降は一度も当たらなかった…」

 

那珂「鼻血出てるんだけど!ティッシュは!?」

 

神通「はいはい…ちーん」

 

那珂「ん……久々にスイッチ入っちゃったなぁ…」

 

川内「みたいだね、神通も動きが変わってたし」

 

神通「…途中から視えてましたから…でも、まだ体が追いついてないんです」

 

那珂「わかる…鍛えてきたのに、まだ足りない…と言うか、体が違うんだよ…前の世界と同じ戦い方をしようとしたらだめなんだよ…」

 

川内「確かに微妙に違うんだろうね…例えば利き足が逆、利き手が逆…」

 

神通「踏み込みの際に力を込めやすい足が違ったり、前の身体ではやりづらかったことができるようになっていたり…」

 

那珂「良いことも悪いこともあるけど…どっちにしても、動きが引っ張られてるよ…良い勉強と言えばそれまでだけど…」

 

神通「………はぁ…良いようにボコボコにされて…」

 

川内「満足されて見送るしかなくて」

 

那珂「気分は最悪!雨!ゲリラ豪雨!台風!」

 

???「…何やってんだ?お前ら…」

 

神通 那珂 川内「「「あ」」」

 

亮「……なんでそんなに殺気を俺に向ける…おい、ま、まて、川内!止めろ!」

 

川内「止めるわけないじゃん、今むしゃくしゃしてるんだからさ…提督」

 

神通「提督、お伺いしたいこともありますが、先にストレス発散に付き合っていただきたいと思います」

 

那珂「そういう事で…よっろしくぅ!」

 

 

 

翌日

 

 

 

宿毛湾泊地

駆逐艦 朧

 

曙「ねぇ、みてよ朧」

 

曙に無理矢理ケータイへと顔を向けられる

 

朧「…ネットニュース?何々…「先日引退した那珂ちゃんずの3人が熱愛?東京都内で男性を連れ回してる那珂ちゃんずが目撃された、艦娘になるのではなく、好きな男ができたから引退したのではというウワサ…しかも3人とも顔に怪我をしており、相手はひどいDV男じゃないかと…」…なにこれ」 

 

映ってるの確実に呉の提督だし…ってか…怪我?神通さん達がこんなにボロボロになるなんて…

 

朧「…待てよ…?都内……?あ…曙ォォ!」

 

曙「うわっ!?な、何よ!」

 

朧「あ、ごめん、青の方!アオボノ!どこ!」

 

曙「…ランニングに行ったけど…」

 

朧「絶対犯人曙だ…!あーもう……!」

 

曙「え?な、何の話…?」

 

朧「あー、曙じゃなくて…あーもうややこしい!!」

 

曙「えぇ……」

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