元勇者提督   作:無し

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完遂

沖縄近海

正規空母 瑞鶴

 

北上「なんだ、余裕じゃん」

 

北上のはなった砲弾を受けて最後の一匹が黒煙をあげて沈む

 

瑞鶴「…違和感しかない、不自然よ、ここまでスムーズすぎるわ…ここまできて、何度もやられてきたのに…こちらは無傷で突破…」

 

曙「確かに、不自然なのはわかる…だけど仕事だし進むしかないでしょ」

 

朧「後方警戒と護衛のための艦隊を追加で要請してます、後方からの追撃も心配ない、と思いますよ」

 

瑞鶴「うん…だよね、大丈夫なはずだよね…」

 

なのに拭えない不安、この気持ちは何なのだろうか…

不安からだろうか、幻聴まで聞こえてくる…

 

???『…引キ返シナサイ……オ願イ、引キ返シテ瑞鶴…』

 

頭に響く様に…誰かの声が

 

瑞鶴「……」

 

朧「瑞鶴さん…?」

 

瑞鶴「あ、気にしないで…ちゃんとやり切るから」

 

???『来チャダメ…私ハ私ヲ制御デキナイ…貴女ヲ…殺シテシマウ…』

 

瑞鶴(誰かの声が響いてる…頭の中で優しく、懐かしく…でも、私に忠告するならそれは的外れよ…)

 

沖縄を超えて台湾へ

敵を撃滅し、民間人を船に乗船させて、日本へと移送する

 

今度こそ成功させなくてはならない、この作戦にはとんでもない数の人命がかかってるのだから

 

葛城「彩雲が敵航空隊を発見!突破させます、敵の位置は正確には把握できてませんがこのまままっすぐ行けば会敵すると思います!」

 

瑞鶴「攻撃隊!出すわよ!」

 

葛城「はい!!」

 

???『瑞鶴…引キ返シテ…』

 

瑞鶴(…なんで…私には、この声が聴こえるの…貴女は、何が伝えたいの?)

 

艦戦から戦闘の報告が入る

戦況、敵の数、位置…

 

葛城「…五分…か…?」

 

瑞鶴「劣勢、と言うべきよ…海面スレスレを艦攻が飛んでくる!射撃用意!」

 

朧「曙!前に出るよ!複縦陣に変更!戦闘は私と曙が行きます!北上さんと潮は後ろに!」

 

北上「うーい…」

 

潮「はい!」

 

朧「…見えた!曙!やや東に敵艦攻!撃つよ!」

 

瑞鶴「何あの動き…かわした?」

 

朧「速い…!でも、落とせないわけじゃない!!」

 

多少取り逃がしはするものの朧の機銃は正確に敵艦載機を捉えていく

 

曙「このぉぉ!!堕ちなさい!」

 

朧「雷撃来ます!回避運動!」

 

少し離れた位置を雷撃が通っていく

 

朧「居た!敵艦見ゆ!」

 

瑞鶴(…うっすらと、見えるだけなのに…何、目が釘付けになって…視線が外せない…何なの、この感情…この感覚は…)

 

その理由が知りたい、何で私がこんなに気になるのか…

 

ヲ級「…来テ…シマッタノネ……」

 

瑞鶴「その声…頭の中で響いてたのはアンタの声って訳ね…」

 

アレが空母型の深海棲艦…空母型だから、惹かれた…?

 

瑞鶴「っ…!?」

 

違う、脳が蠢くような

血管が収縮する様な

 

瑞鶴「……これ…な、に…?」

 

頭に浮かぶ…

アレは…あの深海棲艦は…誰なのか

 

瑞鶴「……翔鶴…姉ぇ…?」

 

 

 

 

 

 

駆逐艦 朧

 

朧「瑞鶴さん!しっかりしてください!瑞鶴さん!」

 

瑞鶴さんは虚ろな目でぼーっと海面に立ち尽くしている

ゆすっても呼びかけても反応はない、ただそこに存在してるだけ…

 

葛城「……瑞鶴先輩、どこを見てるの…?き、聞こえないんですか?瑞鶴先輩!」

 

北上「……葛城の方はさっさと艦載機出してくれる?ここで全滅したくないならさ」

 

敵から砲撃が飛んでくる、艦載機も迫ってくる、迷う時間なんてかけらもない…

 

葛城「…4人で…行けるんでしょうか」

 

曙「やらなきゃ死ぬんじゃないかしら、こんな危険なとこまで出てきちゃったんだから…」

 

瑞鶴「…翔鶴…姉ぇ…」

 

朧「瑞鶴さん…?」

 

記憶を取り戻しかけてる…?

だとしたら、あそこにいるのは…あの空母ヲ級は翔鶴さん…?

 

朧「……倒さなきゃ、倒して…連れ帰らなきゃ…!」

 

 

 

 

 

 

 

病院

キタカミ

 

キタカミ「…ハーイ、なんか機嫌悪いねぇ…」

 

夕張「艤装の修理、オッケーよ…何でこっちにまでそんなに危ない話持ってくるのか…」

 

提督に頼んで夕張と接触することは成功した、傷ついた艤装の修理を秘密裏に頼むために

まあ、腕の良い技術者は大事にしなくてはならない

 

キタカミ「いや…ちょっとね…無理しなきゃいけないからさ」

 

夕張「無理って…その傷でまた海に出るつもり?普通に死ぬわよ?」

 

キタカミ「死なないよ、アタシは弁えてるからねぇ…」

 

夕張「……ま、そんな茶飲み話…どうでも良いか」

 

眉間に冷たい感触

 

キタカミ「わお、いつの間にこんなにナイスな黒いツノが生えてたんだろアタシ」

 

夕張「冗談言ってる場合じゃないのわかる?これ本物よ、モノホンの銃、人間なんてこれ一発で死ぬんだから…大人しく洗いざらい喋ってよ」

 

キタカミ「え?やだよ」

 

夕張「…撃つわよ」

 

キタカミ「ここでクイズです、なぜ夕張はこんな病院で私を脅してるのか…しかも本物の銃を使ってね、答えは簡単、独断行動だから」

 

夕張「………」

 

眉一つ動かさない、いや、眉間に皺がよりすぎてわからないだけか

 

キタカミ「もし横須賀とか本部の連中と仲良しこよしでさ、許可まで取ってるならこんなにお淑やかな手段取らないよねぇ?」

 

夕張「…これがお淑やか?」

 

夕張はセーフティーを外して撃鉄を起こす、ようやく私も汗をかける

 

キタカミ「だってさ、すでにアタシ国家反逆罪だし?それにアタシの盗んだものを考えてみなよ、即座に拷問するのが普通でしょ」

 

夕張「…倉持海斗に配慮してる、とは考えないの?」

 

キタカミ「……あー、もしかしてアタシが何盗んだか知らない?知ってたらそんな悠長なこと言えないと思うなぁ」

 

夕張「……艤装じゃないんですか?」

 

キタカミ「いや、そんなもんもう修理まで任せてんのにさ…いや、間違ってはないんだけど…言っちゃえば魚雷だよ魚雷」

 

夕張「魚雷…」

 

キタカミ「そっちじゃないよ、アタシたちの艤装じゃない…」

 

夕張「な…艦船用の魚雷…?そんなのどうするつもりで…」

 

キタカミ「使うんだよ、使わなきゃ勝てない相手を倒すために」

 

あの化け物を倒すために

1人は青いの曙、そしてもう1人は…もっと恐ろしい化け物

 

夕張「何をするつもりなの…」

 

キタカミ「…勇者を目指す、ラストチャンスかなって思ってさぁ」

 

夕張「…は?」

 

キタカミ「夕張、これ知ってる?」

 

 

 

 

夕張「…つまり、深海棲艦は人間で…深海棲艦を殺すと言うことは…いや、そんな考え方ふざけてます、一度殺されてる時点で人として死んでる…なら…!」

 

キタカミ「でも、もしみんな助けられたらさ…最高じゃない?」

 

夕張「それは…だからって…」

 

キタカミ「あたしがやりたいのは戦争の引き伸ばし、それだけだよ」

 

夕張「それで何人が死ぬと思って…!」

 

キタカミ「……あたしさぁ…何にもわかんないんだよね、引き伸ばして死ぬ人の方が多いのか、普通に深海棲艦撃滅して死ぬ人の方が多いのか」

 

夕張「そんなの引き伸ばした方が犠牲になる人が多いに決まってるじゃない…!」

 

キタカミ「そっかぁ…多いんだ、多いんだねぇ…」

 

まあ、当然だ

助かる確証のない命より…と言うのは、当然の話

 

自分の助けようとしてる命は失われた命…今生きている命を守ろうとする方がずっと現実的だ…

だけど、そんなの…私の動力にはならない、突き動かす力にはならない

 

夕張「………」

 

キタカミ「ねぇ、アタシが何でこんな無謀な賭けをしてるか…教えてあげようか」

 

夕張「なによ…」

 

キタカミ「実はさ…ーーーーーー…なんだよ」

 

夕張「…え?でも…」

 

キタカミ「もう試したよ、ダメだった」

 

夕張「…つまり、どう言うこと」

 

キタカミ「救われない人も居るんだよ、それだけ、それ以上も以下もない…さて、向こうはどうなったかなぁ…」

 

夕張「……ここにくる前に、青い方の曙さん達が援軍として出撃したって報告があった」

 

キタカミ「おー、じゃあ一瞬で終わるじゃん、つまんな…」

 

夕張「……貴女…」

 

キタカミ「はぁ…あたしも欲望に素直に生きればよかった」

 

夕張「…今は違うの?」

 

キタカミ「あたしなりの正義に従って生きてるからね」

 

夕張「ならその正義に問いたいわ…深海棲艦と、人間の共存は可能?」

 

キタカミ「現状不可能というほかないね、翔鶴も今深海棲艦になってて比較的しゃべれるんだよ、意思疎通できるし記憶も戻ってる、うん…でもその翔鶴ですら共存は無理だよ」

 

夕張「…なぜ」

 

キタカミ「深海棲艦は特定の条件下で凶暴化するみたいだからね、それが起きちゃったら…まあ、怖いよ、あたしなら問題無いけどさぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

海上

駆逐艦 アオボノ

 

アオボノ「さて…と、やりましょうか」

 

朝潮「まだかなり先ですが、このままの速度でお願いします!」

 

秋雲「あ、あのー…」

 

陽炎「…やめときなさい秋雲、説明された通りこちらの…アオボノさんは無能のフリがしたいらしいから…」

 

青葉「…その、ご協力お願いします…」

 

潮「なんていうか…ごめんなさい…」

 

アオボノ「……見えました、最後尾…」

 

遠方に先行した第一艦隊の背中がみえる

 

アオボノ「…戦闘開始、続いてください」

 

単縦陣で戦場に割り込む

 

朧「援軍が来た!」

 

まだ戦闘が始まって間もないらしいけど

 

秋雲「瑞鶴さん!何突っ立ってんの!?」

 

陽炎「今はとにかく敵を仕留めること優先!安全を確保するわよ!!」

 

砲戦が始まった、翔鶴さんの救済の刻だ

 

アオボノ「…さてと」

 

圧倒…いや、何をしているかと言えば味方を守る以上のことはしてないのだが

片手の機銃は全ての砲弾の信管に向けて放つ

片手の主砲は全ての敵を誘導するために放つ

 

朧「…!」

 

秋雲「なにこれ…気持ち悪い…」

 

陽炎「……う、撃たないと…」

 

潮「これが…本気の曙ちゃん…」

 

敵が弱い、数が少ない、それなら私1人で事足りる…私1人が全員を無傷で連れ帰ることができる

でもそれは間違ったこと

 

北上「3匹目…っと」

 

曙「駆逐級仕留めた!」

 

秋雲「死ぬほど気持ぢ悪い…なにあれ、何でアレで喜べるの…?」

 

陽炎「…当てるのに必死だ気づいてないみたい、たった一度もここまで砲弾も艦載機も来てないことに」

 

アオボノ「…敵が逃げる…!」

 

潮「え?」

 

残されたヲ級と重巡級が撤退を開始した、数の差がありすぎるのなら仕方ないが…

 

アオボノ「翔鶴さん…!」

 

ここで助けなければならない、そんな感情が強く私を揺さぶった

 

朧「待って!曙!!」

 

アオボノ(雷跡…潜水艦!でも進路を塞ぐだけのルート…)

 

水中にチラリと赤い色が見えた

 

アオボノ(あの髪色は…貴女まで…?)

 

これ以上進めば容赦のない攻撃が私を襲うだろう、これ以上進めば私は仲間だった相手を手にかけるか、それとも仲間だった相手に殺されるかを選ぶほかなくなるだろう…

 

アオボノ「……」

 

主砲をおろす、だらりと腕が垂れ、砲口が海面を向く

 

アオボノ「…訳がわからない、貴女達は何がしたいんですか?」

 

私達は予定より大幅に遅れ、台湾の港へと到着することができた

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