元勇者提督 作:無し
雷巡 北上
とりあえず最初に思ったのは良かったということ
だけど次に思ったのは悔しいという事
「………なんか、情けないなぁ…」
素の実力なら負けない自信は、ある
誰にも負けない、空母でもなんでも沈めてやる
私が全部倒してやる
そう思ってたのに…
「私ってほんと無力だよ」
「…あの、なんで私にその話を?」
「え?こう、わなわなした気持ちをさ、ほら」
阿武隈の前髪をもみくちゃにする
「イヤー!や、やめてください!」
「…ふふっ…気分スッキリ」
「もう!明石さんに言いつけますからね!」
「おう、好きにしてこーい…止めたけりゃ提督を連れてきて欲しいもんだよ、まったく」
「ふふっ、北上さんも、意地悪ですね」
「ん?なーに翔鶴」
「初出撃で大失敗した阿武隈ちゃんを慰めてたんでしょう?」
「あ、その原因が何かってわかる?」
「…有り難うございました」
「……なんのこと?」
「私は、曙さんのおかげでもありますが、あなたにも救われました」
「何もしてないよ、私は、私の都合で一回ぶちのめしただけだし、力尽きた私を運んだのも翔鶴達、お礼言うなら私だよ」
「……何にそんなに責任を感じてるんですか?」
「さあねぇ…この上がった練度かな」
「明確で正しい答えですね…確かに、あなたほどの強さ、何も感じないわけがありません、私の発言も軽率でした」
「…そう?まあ何でもいいけどね」
「折角ですし、今度お詫びに何か美味しいものでも」
「いいよ、いこっか、内地の高い店がいいなぁ…」
「何がお好きなんですか?」
「……肉じゃがかな…バター乗っけたやつ」
「まぁ…どうしてそんなものを…」
「安いお肉もバターがコクを出して高いお肉みたいになるんだよ、美味しいよ」
「って、提督が言ってたんですよね」
「…ま、知ってるよねー、みんなで食べたっけ」
「……北上さんはあの頃に戻りたいんですか?」
「そう、ただ戻りたいんだよ…私は、あの頃に戻って…どうしたいのかな…」
「漠然と、ただ過ごしたい、それだけなんですよ、きっと」
「…そうかもね」
「よし!せっかくですし私がみんなにあの肉じゃがを作っちゃいます!」
「バターなんて余ってたっけ…」
「……ここ、物資不足でしたもんね」
「まあ、次の演習で内地に行った時に買い込もうよ」
「わかりました、それじゃあまた!」
「……ふふっ…待っててね、みんな」
その日の夕食は、本当に肉じゃがが出た、バターがのっかってて
でもちょっと甘い味付けだったかな…私は1人で食べたから、ちょうど良かったけど
「………提督、早く帰ってこないとなくなっちゃうよ?」
横須賀鎮守府
「なるほど、この異動届は却下する」
「何でですか!もう一回説明しましょうか!?」
「ダメだ、あのデータには触らせん、あれを触るのは核のスイッチを押すことに他ならないと、私は伝えたつもりだが」
「だとしても!私はあのテクノロジーは世界に役立つと思ってるんです!」
「……だから狙われてるんだ、もしあれのありかが漏洩してみろ、戦争になる」
「………まあ、確かに素晴らしいものですけど…流石にそこまでは…」
「起きている、実際そう言う時間が、諜報局同士の小競り合いだがな、君は、世界を滅ぼそうとしてるんだ」
「………私は諦めませんからね!」
「…弱ったな、私は年若い娘の扱いには慣れていない」
「その様ですね、夕張さんももう少し聞き分けが良くてもいいんですけど」
「大淀、頼む」
「…またですか、わかりました、ケアはしておきますので」
「うむ……さて、仕事に戻るか」
呉鎮守府
駆逐艦荒潮
「朝潮ちゃん…?」
「………」
「あのー、朝潮ちゃん?」
「流石に鬱陶しいです、1人にしてください」
「………その、ごめんね?でも、私たちは姉妹なのだから、何かあったら…」
「言うつもりはありません、放っておいてください」
「………わかったわぁ…ごめんね…」
最近ずぅっとこの調子、正直疲れるわぁ…
「……はぁ…」
「お、荒潮だクマ」
「荒潮さん、大丈夫ですか?」
「…球磨さんに、神通さん…珍しいペアねぇ…」
「……姉妹のことでいろいろあるクマ」
「…そうなんです…よければ私たちに相談しませんか?」
「……そうさせてもらうわぁ…」
「え、那珂さんってそうだったのぉ!?知らなかったわぁ…」
「意外だろクマ、球磨も驚いたクマ」
「はい、姉さんが夜戦を恐れるようになってから、姉さんの代わりを必死に務めるうちに誰よりも忍者らしさに固執して…」
「わからないものねぇ…アイドルは諦めたのぉ?」
「忍者系アイドルとして売り出して、それが成功したみたいで…」
「この前もテレビ出てたなクマ」
「テレビまで出てるなんて…すごいわぁ…」
「これは多摩には内緒なんだが、クマ…また北上がいろいろやったらしくて、謹慎させられてたんだクマ」
「この前もそんな話してませんでしたか…?」
「別件だクマ、なんでも阿武隈って新入りを可愛がったらしいクマ」
「あ、その話聞いたわぁ…大潮ちゃん曰く、阿武隈ちゃんから挑んできて、秒殺したって」
「ま、秒殺は当たり前としても、やり過ぎたクマ、その日阿武隈は出撃があったのに出れなくなったから、罰として出撃させたら単独で艦隊を潰しに行ったらしいクマ」
「鬼神の如き活躍って聞いたわぁ…」
「実際球磨達も4人係でも勝てるか微妙だクマ、だけどそんなことばっかやってると取り返しがつかんクマ」
「うーん、言いたいことはわかるわぁ…」
「だから次来た時、球磨達がたっぷり説教しようと思ってたんだ…クマ…」
「多摩さんがどうかしたんですね…」
「あいつは大井以上に北上を大事にしてたクマ、でもそんなことばっかしてるから最近胃が痛いらしいクマ」
「大井さんはどうなのぉ…?」
「次のお仕置きを考えて楽しんでるクマ」
「なんというか…図太いですね…」
「ちなみに木曽は最近キャラ付けを頑張ってるクマ、一番球磨、ものまねしまーす、クマ」
「「わーー」」パチパチ
「き、木曽だ…キソー…くっ…何で俺がこんなことを…!ってやってたクマ」
「わ、モノマネすごく上手…!」
「ほんとにそっくりだったわぁ…」
「意外にモノマネも上手な球磨ちゃんとして宴席に人気だクマ」
「その…この前勝手に離島鎮守府に行ってたじゃない…?」
「あー、めちゃくちゃ怒られたやつだクマ」
「その事でですか?」
「…正確にはあそこの提督のことみたいなんだけどぉ…」
「…片思いってやつかクマ」
「いえ、それ以前に意識不明の重体になってて…」
「「えええぇぇぇぇぇぇ!!」」ガタタッ
「こ、声が大きいわぁ…」
「は、初耳だな…クマ」
「…その、流石に驚きました…」
「それで、その、すごく機嫌が…」
「まあ、想い人がそうなってたら無理もないクマ」
「そうですね…」
「仕方ないわよねぇ…」
「でも確かに最近は行き過ぎだクマ」
「折角だしまた遊びに行ってはどうでしょう」
「離島鎮守府にぃ…?前行った時にボートに穴開けられたから嫌な思い出が強いのよねぇ…」
「何があったんだクマ…」
「…その…北上さんに…」
「あいつもう一回沈めてやろうか…クマ」
「多分手も足も出ないかと…」
「ああ見えたあいつ寂しがり屋だから、球磨達が怒ってる時は素直に怒られるクマ、構ってもらえてるって喜ぶんだクマ」
「可愛らしいんですね…」
「素直じゃないやつだクマ」
「でもいい案だわぁ…きっと何かが変わるかもしれないし、みんなで遊びに行きましょぉ…?」
「許可をとって演習も組むクマ」
「那珂ちゃんもきっとよろこびます…」
離島鎮守府
工作艦 明石
「……はい、もしもし、提督代理の明石です…はい、あ、はい、え、あ、でも…はい……はい…わ、わかりましたー…」ガチャリ
「どうしたの?」
「そ、その…明後日呉鎮守府の方達が演習に来ると…」
「あ、あらあら…」
「……もうやだ…」
「え、球磨姉ぇ達が来るの…?やだなぁ…めんどくさい…」
「…すっごい笑顔ですね」
「……嬉しいんでしょうね」
「ま、でも球磨姉ぇ達を相手にできるまともなのって私しかいないし?仕方ないよねぇ…」
「もう見てられないんで出撃してきてください」
「あいよー」
「この辺の海域ですか」
「はい、この辺りだけでも解放するべきかと」
「……その、解放自体は済んでるんですが、毎日攻めてきてて…」
「最前線ですからね…」
「そ、そうだったんですね!失礼しました!」
「いえ、扶桑さんの考えはごもっともなので…」
「レディが飲むのにふさわしい飲み物がないわ!何か頂戴!」
「ホットミルクなんてどうでしょう、映画で酒場にわざわざ頼みに来る人もいますし…」
「鳳翔さん渋いの見るんですね…カードゲームの方が先に出てきました…」
「明石さん疲れてない!?雷に甘えてもいいのよ!?」
「…マ……ママ…?」
「明石ちゃん!?ダメですよ!犯罪です!」
「明石さーん!!北上さんが…北上さんがぁぁぁぁ!!」
「今日は何ですか!?」
「あ、また前髪が…セットしてあげますからこっちにきて…」
「Hey!明石ーー!!提督はいつになったらWake Upするですかー!!私生殺しヨー!」
「いや、これには深いわけが…」
「そういえば提督はお淑やかな方がお好きって言ってたような」
「その、私も姉妹が…千歳姉ぇがいて欲しいなぁって…」
「前の千代田さんもそう言ってましたね…その……ごめんなさい」
「……こればかりは神頼みですね」
「明石さーん、パンパカパーン!」
「パンパカパーン!お疲れ様です!」
「鳳翔さんも…パンパカパーン?」
「ぱ、パンパカパーン…」
「ほら、恥ずかしがらずに!一緒にやれば楽しいですよ!」
「わ、私には無理ですっ!」
「いや、ここ騒がし過ぎやろ」
「……まあ、確かにそうですね」
「大まかな事情は聞いたし、司令官がそんな状態何もわかるけどなぁ…その…練度偏り過ぎやろ……」
「ここはそう言うところなんです…と言うか強くなったら軒並み本土に攫われるんです…」
「怖いわ!?」
「………終わった」
「お疲れ様でした、今日は来客が多かったですね」
「……そうですね…行かないと」
「今日もですか?」
「……私にできることなんてこれくらいなんです」
「…もっと自分を大事にしてくださいね」
「提督…お願いします…目を覚ましてください……私、そろそろ辛いです…時間が経って、みんな強くなる中で、私は1人寂しく取り残されるみたいで…きっと間宮さんや鳳翔さんもそう思ってるはずですけど…私は……あの人たちほど心が強くない…」
「…ごめんね、1人で無理させて」
「……曙ちゃん…」
「……クソ提督、起きなさい、本当にしばくわよ…」
「いつか、ふとした時に、起きてくれるんだと思いますけど……」
「まだ先、か…ねぇ、明石、試してみたいことがあるの、アンタも手伝ってよ」
「何をですか?」
「……ネットからあいつを引きずり戻すの」