元勇者提督   作:無し

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囮作戦

台湾 

駆逐艦 アオボノ

 

アオボノ「結局民間人を乗せるのに丸々一日かかったか…」

 

朧「仕方ないよ、こっちも何回も辿り着けなかったんだし、今更来たってね…」

 

曙「まあそれにしたって、1日はかかりすぎよ、私達が食べたもの覚えてる?」

 

潮「…カップにおかず、ごはん、カレーが全部まとめられたって感じだったよね」

 

朧「うん、出てきたものそのままの説明だね」

 

アオボノ「…あのカレーは美味しくなかったわ、朧」

 

朧「はいはい…良いよ、今度作るから」

 

潮「私も手伝う!」

 

曙「…アンタら、本当にいつの間に仲良くなったの…?」

 

朧「前世とかから仲良いよ」

 

アオボノ「比喩表現、じゃないのよね、これが」

 

曙「…?」

 

アオボノ「………」

 

いつか、曙も思い出してくれる…そんな保証はないのに、そう信じずにはいられなかった

いや、信じなくては辛くなるだけ、これは私自身を守るための行動、何かを信じることが私を現実から守る手段…

 

朧「さて、と…そろそろ出発だね、用意して」

 

潮「佐世保の受け入れ用意も済んだみたい、鹿児島付近で護衛を終了することになるって」

 

曙「佐世保は大忙し、ね」

 

朧「瑞鶴さんのところに行ってくるね」

 

瑞鶴は結局意識は戻ったものの、ひどい混乱の中にある様だった

私は仲良かった訳じゃないし、関わるつもりはないけど

 

 

 

 

 

正規空母 瑞鶴

 

瑞鶴「…翔鶴、姉ぇ…って…誰?」

 

ずっと悩んでる、頭に浮かんだ翔鶴という名前

艦娘の採用に当たって、私の今の名前である瑞鶴の歴史については学んだ、翔鶴型の姉妹艦に当たる翔鶴についても学んだ

 

私は翔鶴という艦娘も、艦船も見たことすらないのになぜ姉と呼んでいるのか、この感覚は何なのか、わからない、全くわからない…

 

朧「失礼します」

 

瑞鶴「あ…朧ちゃん」

 

この子は艦船としての関わりがあった、と言う理由から私と仲良くしたい、らしい…

正直、有難い、葛城も同じ理由で仲良くしてくれてるし、友好関係を築くのに苦労がないのは楽でいいし

 

朧「具合はどうですか?」

 

瑞鶴「…ちょっと良くはないかな」

 

朧「…どんな感じですか?」

 

瑞鶴「えっと…その…気持ち悪いの、変な感じがして、変な声が…」

 

朧「声…?」

 

瑞鶴「…深海棲艦の声、今はしないけど…あと、なんか…翔鶴って…」

 

朧「………」

 

瑞鶴「…気持ち悪いの、知らないはずのことを知ってるの、私には姉なんていないのに、私の知らないことが頭の中に浮かんで…」

 

まるで記憶の断片みたいに、頭の中にこびりついてる

 

朧「それは…」

 

瑞鶴「…精神病なのかな、佐世保に帰ったら一回病院でも行こうかな」

 

朧「そう、ですか…」

 

どこか、朧ちゃんの表情は暗い

 

瑞鶴「…さて、頑張らないと…そろそろなんだよね」

 

朧「…はい」

 

瑞鶴「……大丈夫、私…頑張るから」

 

 

 

 

 

 

 

病院 

キタカミ

 

キタカミ「おー、夕張、待ってたよ」

 

夕張「……」

 

キタカミ「どう?裏取れた?」

 

夕張「取れなかった、本当に盗んだの?」

 

キタカミ「え?マジ?隠してんの?…別にいいけどさぁ…」

 

夕張「…今ならまだ間に合う、戻ってきなさいよ」

 

キタカミ「くどいなぁ、私はやることがあるんだって、それ自体も説明したよね?充分すぎる理由を伝えたよね?」

 

夕張「…それは…」

 

キタカミ「さて、ところで…南一号作戦、成功おめでとう」

 

夕張「何で知って…!」

 

キタカミ「…仲間は他にもいるんだよ、それだけの話さね」

 

夕張「………」

 

キタカミ「…帰りたいなぁ…みんなのとこに、みんなで遊びたい、みんなで戦いたい」

 

夕張「……」

 

鼻腔を血の匂いがくすぐる

 

キタカミ「…嫌な匂いがするね」

 

夕張「匂い…?」

 

ノック音

 

キタカミ「…帰って、アンタの匂い、最低だし、視界に入れたくない」

 

綾波「ひ…ぁ、の…わた、わたし…しし、司令官から…」

 

要するに、見張り役…しかも提督直々に…

つまり、罪は忘れろと言うことか…再誕で全部消し飛んだから、忘れろ…ってことなのか

 

キタカミ「とりあえず入って」

 

入ってきた綾波は随分と震えていて、なのに笑顔で

 

キタカミ「夕張、席外してくれる?」

 

夕張「…構わないけど、殺しちゃダメよ、処理が面倒だから…あと見えるところに傷をつけちゃダメ」

 

キタカミ「何もしない、ただ話すだけだよ、提督が手を出すなって言ってるんだから」

 

夕張「…どう言うこと?倉持海斗は記憶を持ってるの?」

 

キタカミ「さあね」

 

綾波「…ぇ…?き、きおく…ある…?」

 

綾波の顔色がコロコロ変わる

いや、正確には青ざめっぱなしなんだけど

 

綾波「ど、どど、どう言うこと…ですか…あ、綾波は…し、しれいか…え…?」

 

キタカミ「提督は、アンタの罪を許してくれてるんだよ、それだけ」

 

綾波「おえええぇぇ…おぼっ…」

 

キタカミ「うわっ!真顔で吐くなよ…夕張、頼める?」

 

夕張「…はぁ…」

 

清掃道具を取りに夕張は部屋を出た

 

キタカミ「はぁ…なんで突っ立ってんの?」

 

綾波「だ、ダメ…綾波は…わた、私は…許されちゃ…」

 

キタカミ「何、今更罪悪感でも沸いた?アンタが殺した人間の命は全部元に戻っちゃってる、アンタは許されちゃった…それが何か不満?」

 

綾波「ダメ、ダメなんです…わ、私は許されない罪を…!」

 

キタカミ「そんなの知らないよ、と言うか許されちゃダメってどうなりたいのさ」

 

綾波「そ、それは…あ…貴女達に…ころ…殺されたくて…」

 

キタカミ「うわ…こいつバカだ、私が殺したら私はただの殺人犯だよ?どこに殺す理由があるのさ、みんな今生きてるのにさぁ」

 

綾波「わわ、私は…どうやって…つ…償えば…」

 

キタカミ「知らないよ、勝手に1人で永遠に苦しんでればいいんじゃない?…でもさ、私には提督がこう言ってるように思えるんだ、誰だって幸せになる権利はあるって」

 

綾波「おえええ…」

 

キタカミ「…何で吐くのさ…」

 

綾波「おえ…おええ…し、幸せの許容量が…お、おお…オーバーしちゃって…」

 

キタカミ「…幸せだねぇ、自分が満たされて、もう幸せが欲しく無くなるほど幸せを感じる許容量があるなんて、それ自体が幸せだよ」

 

綾波「おえええ…」

 

キタカミ「…吐くな吐くな…ん?」

 

通信が入る

 

キタカミ「……マジか、まあ、曙が何とかするだろうけど…」

 

ドアが開き、掃除道具を持った夕張と看護師が入ってくる

 

夕張「すいません、現在進行形で部屋汚して…」

 

看護師「この方もちょっと急ぎで診察しますね」

 

綾波が看護師の1人に拉致られた、まあ、とりあえず精神病棟あたりにぶち込めばいいと思う

 

キタカミ「夕張〜?」

 

夕張「何、今忙しい」

 

キタカミ「台湾の艦隊に…機動部隊が強襲かけたってさ」

 

夕張「は…?」

 

 

 

 

 

 

 

海上

駆逐艦 アオボノ

 

葛城「数が多すぎます…!駆逐級だけで3桁いくんじゃないでしょうか…」

 

瑞鶴「彩雲が見つけた敵は全部西側、このままだと10分後には捕まる.」

 

アオボノ「行きはよいよい…帰りは怖い…か」

 

深海棲艦が輸送船を狙う、それも人を乗せた輸送船を

これは深海棲艦に知能がある証明になるんじゃないだろうか

この船団にいる人間達は合計で6桁に届くだろう、つまり、向こうの思い通りにことが進めばその6桁全部深海棲艦になると言うことだ、戦力増強には持ってこい

ならば狙うのはとても有効で…

 

ぎゅうぎゅう詰めの輸送船船が何隻もあり、そしてその周りを軍艦が囲って、さらに私たちが遊撃部隊の様に展開している、軍艦の囲いの内側に1匹でも入ったら…犠牲者が出るのは免れない

 

こうなったら優先されるのは民間人の命、そしてその命令が下るのは私達…いや、私にだろうな

 

北上「台湾側のお偉いさんと話してきた、1人囮になって、できるだけ敵を食い止める人が必要になったよ」

 

曙「は?死ねって事!?」

 

朧「そう言うことは提督に確認をとって決めるべきだと思いますけど」

 

北上「まーまー、とりあえず援軍は要請したからさ、それまでうまく惹きつけるだけでいいんだよ、青いのいってくれる?」

 

…まあ、構わない、私なら食い止めるくらい余裕だ

 

葛城「ちょ…!ほんとに一人で行かせるつもり!?」

 

北上「時間ないんだって、それに元々の護衛する為の船団に手を出されたら困るんだよ、ほら、お仕事だしみんな危険になるよ?」

 

アオボノ「わかりました、弾薬と燃料を余分にもらえますか、足止めと撤退に使いたいので」

 

潮「……」

 

北上「えー?そんな暇ないって」

 

北上が肩を掴み、耳元で囁く

 

北上「ま、落ちこぼれなりに上手くやりなよ」

 

アオボノ(…ウザ…)

 

朧「…これ、魚雷発射管」

 

潮「わ、私も…機銃だけ…」

 

北上「ほら、さっさとしなー」

 

アオボノ(無駄弾、無駄な燃料は一切許されない…ここで死のうと提督の役に立てるとしても…私は、提督のために死ぬわけには行かない)

 

船団を見送り、西に向かう

潮と朧が少しだけ分けてくれた弾薬を上手く使うしかない

 

わずかな速度でじっくりと時間をかけて会敵する

 

アオボノ「空母5に戦艦10、駆逐が…あーもうめんどくさい…全部潰せば終わりですね、やりましょうか…戦闘開始」

 

敵の艦載機を落とし、砲弾を紙一重ですり抜け、敵を仕留める

 

簡単な仕事だ、簡単だが、数が多すぎる

 

アオボノ「全部死ね」

 

敵の急所を撃ち抜き、撃破する、敵を撃滅する

駆逐級なら楽だ、巡洋級も問題はない

面倒なのは人型の空母級と戦艦級だ、両方単純に硬い、私が1番苦手とするのは単純に硬い敵だ

どんな敵でも弱点はあるがそれを正確に貫くのは難易度が高い、集中力を使うし、下手を打てない

 

アオボノ「…ここ、そしてここ」

 

艦載機を撃ち落とす、撃ち落とされたものが無傷の艦載機を巻き込んで堕ちていく

戦艦級の艤装の中の砲弾を貫く、爆発で戦艦級の腕が弾け飛ぶ

 

アオボノ「この程度…!」

 

体に嘘はつけない、自分の体は自分が1番よくわかる、疲労が蓄積し始めている、トレーニング期間が足りてない、体力が足りない

 

アオボノ「…1、2、3…!」

 

仕留めても仕留めてもキリがない

終わりが見えない、それどころか増えている

 

戦艦も、空母も増え続けている

 

アオボノ「…そろそろ撤退行動を始めないと、燃料がまずい…か」

 

弾薬だけは余裕があったが、燃料は心許ない

 

アオボノ「…はぁ……提督…」

 

完全に停止する、ここでどれだけ削れるか、どれだけの数を殺せるかで話が変わる、私が生き残るために、私が帰るために

完全に停止したまま狙いをつけて放つ、全て殺す、全て撃ち落として、全て

 

アオボノ「必ず…必ず帰ると約束します」

 

機銃に弾薬を装填し、前方に向ける

 

人型には目玉に何発でも弾をご馳走してやる

人型の深海棲艦は皮膚自体が硬く貫くことが至難、つまり私が戦うには分が悪い…それならば潰せる部分を潰せばいい

 

ル級「ギャァァァァァ!!」

 

ヲ級「ギィィィィィ!!」

 

両眼を抑えて人型が叫ぶ、再生するのかしないのかはどうでもいい、幸いこいつらにも恐怖心があるようで、無事な個体は自分の目を守ろうとする素振りを見せている

 

アオボノ「雑魚に用はない、私の仕事は殲滅ではありません、時間稼ぎなのだから」

 

そうだ、どんな集団にも頭がいる、ただの烏合の衆ですらリーダーやそれに準ずる何かがある、となればそれを潰す

 

背中に背負った機関を海に捨て、海面を走る

大体の目処はついていた

 

アオボノ「貴女ですね、この艦隊のリーダーは」

 

敵の中心に飛び込み無傷の戦艦級に詰め寄る、明らかに動揺と恐怖の見える相手の砲撃など何も恐れることはない

そもそもここまでくれば同士討ちの可能性が大きいせいであまり撃たないだろう

 

アオボノ「はじめまして戦艦さん、さようなら」

 

ル級「キシッ…!」

 

この距離で砲撃をする奴はバカだ、手を伸ばせば胸ぐらを掴める距離なら肉弾戦になる

肉弾戦に持ち込めば敵型は砲雷撃ができない、そして肉弾戦など全く想定してない深海棲艦が相手なら一対一になりやすい

 

ル級の艤装の砲身を踏み台に上を取り、飛び上がる

 

アオボノ「上を見たのは間違いでしたね、貴女の最後に見る光景は太陽です」

 

ル級の偽装は前面には確実な防御性能があるだろう

熟達した者なら前後左右を守り切れるだろう、だが、上は想定外だったらしい、振り返るだけにしておけばよかったのに目で追うことを優先したばかりに

 

アオボノ「あなたが惨めに死んでくれれば戦意は落ちるようなので」

 

両目に機銃を突っ込み、体内を破壊する

 

ル級「ギッガッ!!ごポッゴポポッ…!」

 

叫び声を上げることもできず、ただ、死ね

 

アオボノ「まだ、貴女一人じゃ足りない」

 

近くのヲ級の首に肘を引っ掛け、背中に張り付く

後頭部に主砲をつきつけて何度も放つ、ヲ級のもがく力が抜けていく

 

アオボノ「足りない、まだ足りない!もっと!もっと!!」

 

足を目を潰した戦艦級の首に引っ掛けて地面に引き倒して機銃を口に突っ込み放つ

 

アオボノ「次!つ…ぎ……」

 

足が、動かない…いや、動かすんだ、動かさなきゃ死ぬ、ここでは死ねない、まだ戦わなきゃいけないのに止まるわけには行かない

 

アオボノ「…え…?」

 

砲撃の嵐の中心に私がいる、足を持ち上げなくてはならないのに私の体は動かない

 

機関を捨てた位置まで…戻らないと…この敵の海を進まないといけない

 

流石に無理か、現状を冷静に理解するくらいの頭はまだ残ってるが、それが逆に残酷だ

 

 

 

 

 

 

 

佐世保鎮守府

提督 倉持海斗

 

渡会「…戻ってきたな、全員無事のようだが」

 

海斗「いえ、1人足りません…交戦の連絡はないのに…」

 

居ないのは曙だ、だとしたら何故いない…?曙は勝手に単独行動したりするタイプじゃない、何かわかる子がいるはずだ

 

通信機を使って連絡を取る

 

海斗「聞こえる?こちら佐世保鎮守府からだけど、誰か応答できる?」

 

朧『…はい、大丈夫です』

 

海斗「あけ…アオボノは?」

 

朧『…こちらに向かってくる敵の大群を発見した為、1人で時間稼ぎに…』

 

最悪だ…

 

海斗「それは…誰かが指示したの」

 

朧『………』

 

海斗「答えて」

 

青葉『北上さんです、私達は東側に展開していたのでそれを知った頃にはもう…』

 

北上か…

 

海斗「曙に通信機は」

 

朧『持ってません……』

 

海斗「……わかった、青葉、到着したらすぐに話があるから、みんなを集合させて」

 

青葉『了解…』

 

曙の戦った敵はどれほどの数なのだろうか

どこにいて、どうなっているのだろうか

 

渡会「…問題児がいるようだな」

 

海斗「はい、本当に…」

 

…どうすれば良いんだろう、北上に対しても、曙のことも

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