元勇者提督   作:無し

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絶対

佐世保鎮守府 作戦室

提督 倉持海斗

 

海斗「…つまり、航空隊が敵を観測した地点は与那国島付近…となると戦闘した場所はどこになると思う?」

 

青葉「この辺りでしょうか、ただ、この辺りは潮の流れが早いと聞いてきます、戦闘に夢中で気づかなかったらかなり流れてる可能性もあります」

 

曙の位置を探る

急いで助けに行くためにもできるだけ正確に位置を把握しなくてはならない

 

朧「じゃあ方角とある程度の距離を絞って探しに行こう、今なら間に合う!」

 

北上「…あのさぁ、無駄だと思わない?」

 

青葉「黙りなさい…私達は貴女とは話していません」

 

北上「助けに行くだけ無駄だって、あの落ちこぼれはもう死んでるよ、まさか最期に敵を全く通さないとは思わなかったけどさぁ…」

 

海斗「北上、君の認識は間違ってるし、君は仲間を犠牲にしようとした、それは許されることじゃない、自覚を持つべきだ」

 

北上「え?なに?あの駆逐はあたしが殺したことになってる?頭おかしいんじゃないの?そもそもあたしらは軍人な訳じゃん、犠牲を伴う場合が無いわけないじゃん、何?あたしに死ねって言うの?」

 

海斗「違う」

 

北上「違わないよ、あたしが駆逐を人殺しだと言うなら、あんたらは私達を毎日のように死の危険のある戦場に送り出す人殺しじゃん、自分は安全なとこで何もしないでさぁ…」

 

青葉「いい加減にしなさい…!喧嘩を売りたいだけなら後でいくらでも買いましょう…その口を塞ぐか、1人でさっさと帰ってください!」

 

北上「あたしがわざわざアンタらを止めてあげてる理由わかる?わかんないか、あの駆逐ちゃんが生きてようが死んでようが、馬鹿げた数の深海棲艦を相手にするって言う無謀な作戦を止めてあげてるんだよ、0を救うために6を犠牲にしようとしてんの、アンタらは」

 

朝潮「…無能と喋るだけ無駄ですねら万が一あれが敵になったのなら100を犠牲にしなくては勝ち目がない」

 

北上「ホントにバカしかいないの?ここ」

 

海斗「北上、悪いけど退出してくれるかな、あまり時間はかけたくないんだ」

 

北上「……チッ、悪者ってことね…はいはい」

 

部屋の扉を誰かがノックする

 

渡会「倉持さん、悪いが出てきてくれ」

 

海斗「要件を伺ってもいいですか」

 

渡会「そっちの所属のが帰ってきたらしい」

 

海斗「わかりました、みんな、行こう」

 

 

 

 

波止場

 

海斗「……キミ達は…!」

 

青葉「え…?本物…?」

 

ぼろぼろのアオボノを引きずってる2人も満身創痍、全身傷だらけ…余程激しい戦闘だったことが窺える

 

長門「…青葉、わかるのか」

 

青葉「はい…!」

 

島風「帰ってきたよ、提督!」

 

朝潮「またお会いできて光栄です」

 

朧「島風ちゃん…」

 

渡会「そっちの所属、で間違いなかったかと思ったが?」

 

海斗「…いいえ、民間人です」

 

島風「提督…提督、私だよ、島風だよ、わからないの?」

 

長門「……」

 

青葉「島風ちゃん、仕方ない事なんです…」

 

渡会「…とりあえず、ウチは見ての通り受け入れ人数は限界だ、宿毛湾に連れて帰ってくれ」

 

海斗「わかりました」

 

 

 

 

島風

 

島風「……そっか、提督は覚えてないんだ…」

 

移動中の船室で集まり、話す

 

長門「かもな…当然とも言える、良い事とも悪い事とも言える」

 

朧「……」

 

青葉「何はともあれ、お帰りなさい、そしてアオボノさんを助けてくれてありがとうございます」

 

島風「…コレ、本当に青ちゃんなの?」

 

長門「動きが違う、あの縦横無尽さは確かに近しい物があるが、何者も寄せ付けない強さは…もう1人の方のようだった」

 

朧「長門さん正解、そっちの曙だよ、でも記憶を持ってるのはそっちの曙だけだから、判断しやすいように染めたの」

 

島風「へぇ…ややこしいねー…」

 

潮「それより、何があったのか聞かせてください」

 

島風「なにがあったって…ねぇ?」

 

長門「…私達も急に人間の体に戻されたばかりでほとんど何も把握できてないんだ…戦場の真ん中で人間の体に戻ってしまってな…溺れながら襲われてるアオボノを守ってた…惨めな感じだったがな」

 

島風「私はちょっと外れたところで目が覚めて、艤装が捨てられてたから背負ったんだよ、背負ったら海に弾かれる感じで海に立てるようになったの、だから戦闘してる方に向かったら2人が襲われてたから連れて逃げたの」

 

朧「そっか…2人のおかげで曙が助かったんだ…本当にありがとう」

 

潮「ありがとうございます」

 

長門「…しかし、この身体では…我々は艦娘として戦うことは当分無理だな、腕は折れてるし傷だらけ…」

 

島風「私も全身傷だらけだよ…ヤだよこれ…」

 

朧「本当によく生身で生還しましたね…」

 

島風「曳航できるほどの力はないんだけど、艤装背負って猛ダッシュしちゃったよ…途中から青ちゃんの靴借りて滑れるようになったけど…」

 

長門「…本当に、離したら死ぬし離さなくても死にかけた…」

 

島風「途中で燃料が尽きたんだけど、巡回船に拾われてなんとか帰れたんだよね…本当よかったよ」

 

長門「それより、聞きたいことがある」

 

島風「あ、私も…なんで青ちゃん1人で戦ってたの?」

 

朧「……護衛任務中で、深海棲艦の大群から民間人を守るために…」

 

長門「…成程、確かに強者が残る事は作戦の成功に繋がる、間違った判断と咎め難い事だ」

 

島風「でも、あと2人いたらきっと無傷で逃げられたよ…1人じゃなかったら絶対やれたのに…青ちゃん無茶するね…」

 

長門「さっきから青ちゃん青ちゃんって…そんな仲だったのか…?」

 

島風「にひひ、知らない仲じゃないしいいかなって!」

 

朧「…ちょっと提督のところに行ってくるね」

 

長門「ああ」

 

 

 

 

 

 

提督 倉持海斗

 

海斗「北上、ちゃんと話を聞いて」

 

北上「うるっさいなぁ…何?いいじゃん、あの駆逐は戻ってきたんだしさ」

 

海斗「今後あんな作戦は絶対にやらないで」

 

北上「は?何?あたしの判断が間違ってるって言いたいの?」

 

海斗「間違ってるよ、誰かを犠牲にする事はどんな時だって正しい選択じゃない、もしキミが曙を犠牲にしようとしたことに後悔も躊躇いもないのなら…」

 

北上「クビにでもする?いいよ?やれば、できるわけないじゃん、あたしの成績は誰よりも上、この戦時下でそんなエリートをますます手放すの?んな訳ないじゃん」

 

確かに今日の戦績においても北上の成績はトップだった、表向きには

 

海斗「…とりあえず、キミは出撃停止処分とするよ」

 

北上「……本気で言ってるんだ、ふーん?なに、あの子はお気に入りだった?自分に媚びてくれる女の子が死ぬと困るからって?」

 

海斗「キミも曙も等しく人間だ」

 

北上「等しく人間?アハハ!馬鹿じゃないの?当たり前じゃん、人間以外の何?」

 

海斗「生きているんだ、誰かを犠牲になんかしちゃいけない、死にたくないのはみんな同じなんだ」

 

北上「そんな綺麗事が言えんのは後ろでふんぞり返ってるアンタだけ、綺麗事には興味ないんだアタシ…ま、抗議入れとくから、アンタがクビになるかも!アハハハハ!」

 

そう言って北上は部屋を出た

 

朧「提督」

 

海斗「…朧、聞いてたの?」

 

朧「はい、提督は間違ってないと思います、嘘をついてる点以外は」

 

海斗「嘘、か…」

 

果たして、どれのことか

 

朧「記憶がないフリをして島風ちゃんを傷つけたことが1番です」

 

海斗「…そっか、朧も知ってるんだ」

 

朧「はい、なんでそんな嘘をついてるんですか」

 

海斗「……僕は…今の僕にはなんの力もないからね、それに…覚えている、なんて…言えないんだ…」

 

朧「綾波のため、ですか」

 

海斗「曙のためでもあるよ、前の世界の罪に飲まれたまま生きる事は苦しすぎる事だし、曙なんてみんなが戻ってきたらきっと泊地を去る…覚えてちゃいけないんだ」

 

朧「それは…」

 

海斗「綾波を、責めるのなら…曙も責めなくちゃいけなくなる」

 

朧「それは違います!」

 

海斗「ううん、何一つ変わらない…確かに曙の行為は悦楽のためじゃないけど、でも罪は等しく罪なんだ」

 

朧「……」

 

海斗「…みんなが罪を覚えてるのなら、その罪は消えない」

 

朧「…どんな悪人の罪でも、忘れると…?」

 

海斗「…救いは一度だけ、この一度だけ全てが許された、無かったことになった…今から誰がどう動くか、間違った事をすれば裁きが、正しい行いには祝福が」

 

朧「………」

 

海斗「僕は…弱い、それに曙を責めることができない、だから…忘れたんだ、誰かを咎めるなんて僕にはできないよ」

 

 

 

 

 

 

病院 

駆逐艦 アオボノ

 

アオボノ「……ん…ぅ…」

 

微睡の中から、手を引かれる

 

優しい暖かさが私を包んでくれる

 

アオボノ「…私は…生きて…?」

 

海斗「おかえり、曙」

 

…ここは病院のベットの上か…体中包帯だらけ、片目も覆われてるが失明はしてないらしい、どうやって帰ってきたかも覚えてないけど…

 

アオボノ「…てい…とく…」

 

天井に両手を向ける

提督は何も言わず、抱き起こしてくれる、優しく抱擁してくれる

 

アオボノ「…あなたの艦…今、帰りました…」

 

海斗「もう無茶はしないでね、次また助けてもらえるとは、限らないんだから」

 

アオボノ「提督の御心のままに…」

 

キタカミ「…見せつけてくれるねぇ…そろそろ胸焼けするからそこの2人、離れてくれる?」

 

アオボノ「ひゅっ!?」

 

思わぬ声に心臓が一瞬止まった、再稼働した心臓は痛いほどに稼働してる

 

いつの間に2人部屋に…キタカミさんは個室なんだから私も個室で…

 

アオボノ「というかなんで貴女が2人部屋に!?貴女は個室でしたよね…!」

 

キタカミ「…軍人さんの見張りが常にあるからじゃない?」

 

アオボノ「…私か…!」

 

つまり、私の脳裏を一瞬よぎった提督のお見舞いは私1人のものではなくなった訳だ

 

海斗「…曙…離してくれると助かるんだけど…」

 

アオボノ「嫌です、絶対離しません…あと5分だけ…」

 

こうなれば恥はかき捨てだ、後悔しないようにしておくほか無い

 

アオボノ「……提督、私は絶対に、私は絶対に貴方を裏切りません、貴方の期待に応え続けますから…」

 

海斗「…僕に……過去に縛られないで、キミは前を向いて生きるべきだよ」

 

アオボノ「私が縛られているように見えるならそれは間違いです、私は望んで鎖を掴んでいるのです、その鎖はいつだって手放せる、でもその鎖を手放さないことを選んだんです」

 

キタカミ「…いつの間にか、絡まってるかもしれないよ」

 

アオボノ「私にとって、この鎖こそが相応しい、この鎖に永遠に囚われることが私の望みであり、それ以上は存在しないのです」

 

キタカミ「あいも変わらず…いや、愛も変わらずか」

 

海斗「なんで言い直したの…」

 

キタカミ「え?わからない?解説してあげ…」

 

アオボノ「結構です」

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