元勇者提督   作:無し

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黒い敵

横須賀鎮守府

駆逐艦 電

 

五月雨「…ぅぐ……あっ…」

 

館内の廊下をまるでゾンビのように這いずって居る、外傷は…これは何…?アザだらけで、裂傷や火傷がない…

 

電「さ、五月雨ちゃん…な、何があったのです…!」

 

五月雨「黒い…て、き…」

 

電「黒い敵…?」

 

五月雨「…う……」

 

電「五月雨ちゃん!だ、誰か!救護の方!どなたか居ませんか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

拓海「ふむ、五月雨が出撃していたこと自体、私は知らなかったが…この怪我、明らかに深海棲艦のつけるものではない、敵は深海棲艦ではないな」

 

大淀「提督、例の盗まれた艤装の件で上を締め上げてきました…が、どうやら盗まれたのはあの艤装だけではないようで」

 

拓海「想定内だ、正確に報告しろ」

 

大淀「…海軍内で秘密裏に艦娘以外でも扱える水上歩行器具を作ろうとしていたようです、その試作品を3セット盗まれていたらしく、それと12式魚雷を4つ盗まれた…と、おそらく細かいチェックをすれば他にも」

 

拓海「…頭を抱える他ないな」

 

電「あの…」

 

拓海「なんだ」

 

電「12式魚雷…記憶通りなら軍艦用の魚雷なのです、それを盗むと言うことは…」

 

拓海「敵がそれを扱える…とは思えんがな、艤装に関しての一定の知識などがあるのなら話は変わるが」

 

電「……そうなのですか」

 

五月雨「…っ…ぁ」

 

大淀「気がつきましたね、良かった」

 

五月雨「…黒い…敵…綾波さんじゃない…」

 

拓海「今喋る必要はない、落ち着きたまえ」

 

五月雨「…勝て、なかった…!…勝てなかった…!」

 

よほど悔しいのか、大粒の涙を目に浮かべて居る

 

拓海「五月雨ほどの実力者が負ける…というのは、正直驚いたが」

 

電「打撃のみでの戦い…打撃……待ってください、今神通さんはどこに居るのです」

 

拓海「…成る程、アオバと衣笠を呼んでくれ、至急川内型を探すようにと」

 

大淀「わかりました」

 

電「…なんで川内型、なのです…?」

 

拓海「三つも盗まれているなら三人ともである可能性がある……それと、以前盗まれた軽巡用の艤装だが、あれは球磨型のものだった」

 

電「球磨型…?」

 

拓海「球磨型軽巡洋艦に…1人で艦隊を相手にできる実力者がいたのは、覚えていないかね」

 

電「北上さん…!そんな…」

 

拓海「憶測に過ぎんがね」

 

たった1人の敵の影響による何度もの撤退…そして誰1人も犠牲者が出ない敵の異常なまでの消極的な行動

五月雨さんの乗っていた砲艇への超長距離からの反撃による破壊…

十分すぎる状況証拠、ここまで確信に至る充分な要素があるのなら…

 

電「…なんで、敵に与してるのですか…」

 

拓海「理由については想像がついている、しかし…解決することは至難を極める…いや、率直に言おう、不可能だ」

 

電「…人間の再構築、の話ですか…」

 

拓海「そうだ、艦娘の復活についてもそうだが…あれは私の考えに過ぎないが小規模の再誕が起きているような物だと考えている」

 

電「さい…たん…再誕…?そんな!それならあの戦いはなんだったのです!あの苦しみは!あの死はなんだったのですか!」

 

拓海「落ち着きたまえ、まだ確定したわけではない…再誕が起きると言うことは世界の歪みがある…と考える事もできる、だが…私は世界がそれに適応した…新しい世界の形なのではないかと思う」

 

電「……あんまりにも楽観的なのです」

 

拓海「それを信じた物達が武器を取り、我々に立ち向かってくる」

 

電「…電達はどうすれば…」

 

拓海「キミはあまりにも賢すぎる、少し馬鹿になってみるのも良いのではないか」

 

電「どう言う意味なのです」

 

拓海「…今は私がいる、キミの分まで私が考え、悩み、君たちに道を示そう、だからどうするかで深く悩む必要はない」

 

電「……今度はいなくならないで下さい」

 

拓海「ああ、任せてくれ」

 

 

 

 

 

東京 

川内

 

川内「うひゃぁ…痛そ…」

 

神通「ふふ…痛いですよ、危なかったです…まさかあの人があんなに強いなんて」

 

那珂「…ほんとに正確に腱を狙ってるね、ちゃんと避けられてて凄いけど」

 

神通「止まれば、私は二度と拳を握ることができない身体になっていましたね、向こうが積極的だったらどうなっていたか…」

 

川内「ま、天然モノは美味しいからねぇ」

 

那珂「天然物…?」

 

川内「例えばキタカミと五月雨は自分の努力と経験で創り上げた天然モノ、キタカミは不知火とか阿武隈を育ててたけど、そっちは養殖モノ…違いはなんだと思う?」

 

那珂「……教えてくれる人がいるかどうか…」

 

川内「半分正解、養殖モノには限界があるんだよね、成長は確かに早い、お手本があるからね、でもそのお手本に並び立つと進む道がわからなくなる、そこから下手な考えで自分の動きを崩す奴もいるし、遥かに超える奴もいる…」

 

那珂「…逆に天然モノは限界がないって事?」

 

川内「そこも含めて半分、天然モノはそこまでの道のりを自分で作ってきた、だから進み方を知ってるんだよ、どうすれば今より少しだけ強くなれるか、を何度も何度も繰り返す方法をよく知ってるんだよ」

 

那珂「ふーん…つまり五月雨はまだ伸びるんだね」

 

神通「怖い限りです…」

 

亮「長話はいいが、お前ら俺の部屋から出てけ、というか帰れ」

 

そう言って提督が私たちの前にお茶を出す

 

川内「いーじゃん、なに?彼女でも来るの?というかお茶出してる時点で帰ると思ってないよね」

 

亮「そりゃお前らのことはよく知ってるからな…那珂、こぼすな、お前俺の城を汚すな」

 

那珂「賃貸のお城」

 

神通「これを城というあたり…出世できませんよ提督」

 

亮「うるっせぇよ!というか第一にここは寮だ、部外者が長居したら色々まずいんだよ!」

 

川内「大丈夫大丈夫、ばれないから」

 

那珂「うんうん、ちゃんと痕跡も消してるし」

 

神通「血も、髪の毛も、指紋も全て完璧です」

 

血のシミだけが怖いので入念に対策はしておいた、バッチリ

 

亮「……待て、お前ら…まさか住み着く気か…?」

 

那珂「え?わかってなかったの?」

 

川内「事情は説明した通り、となると灯台下暗しなここは絶好な隠れ場所ってわけ」

 

私たちを探すであろう大本営の管理下の施設内…見つかりようがないね

 

亮「…お前らを上に売ったら金になんねぇかな」

 

神通「防衛大生では良くて賞状程度ですよ」

 

亮「チ…本当についてねぇ…」

 

那珂「まあまあ、身の回りのお世話くらいするから……川内姉さんが」

 

神通「炊事洗濯完璧ですよ……川内姉さんは」

 

…2人とも私に全部丸投げか

 

亮「お前ら2人にそんな期待はカケラもしてねーよ!つーか寮なんだからそういうことはやってくれる人が居るんだよ!」

 

神通「早く提督になってくれませんか?」

 

亮「言われなくても戦時下だから卒業が早まる予定だ、次の春には軍人になる、あとは俺の頑張り次第か」

 

川内「へー…四年の所が二年になったわけね…でもあと半年はあるよね」

 

神通「半年もこんな生活を強いられるなんて…」

 

亮「馬鹿、卒業してもいきなり艦隊司令官になんかなれるわけねぇだろ」

 

神通「お家を新しく借りますよね?」

 

亮「入れると思ってんのか…?」

 

那珂は飽きて部屋を漁り始めてるし…

 

神通「……なら私たちと一緒に元人間を守る活動の司令官に…」

 

亮「そういうのは収入源が別にある奴がやるんだよ、少なくともそっちの待遇がボランティアの今は俺には無理だ」

 

川内「このリアリスト!」

 

那珂「あ、カードゲームある」

 

亮「那珂、勝手に部屋を漁るな、叩き出すぞ」

 

神通「つまり勝手なことをしなければ住み込んでもいいと…」

 

亮「見つかったら即座に退寮どころか退学だろうけどな…」

 

那珂「あー、大丈夫大丈夫」

 

那珂が天井の隅をペロリとめくる

 

亮「な……」

 

神通「この通り、天井に住み着きますので」

 

川内「衣食住も完璧、少なくとも、一ヶ月は上にいるから」

 

亮「……点検でバレたら本当にお前らのこと恨むからな…」

 

流石に何もいう気力がないか、まあ悪いけど許してもらいたい

 

神通「…それより、他の仲間は見てないんですか?」

 

亮「……聞くのか、それを…」

 

那珂「うわぁ、露骨に嫌そうな顔」

 

亮「…大井だ」

 

川内「ああ、大井…それが?」

 

亮「大井が…千種の妹になってやがった」

 

神通「…千草…って、ああ、食堂の…?」

 

川内「ぶふーーっ!マジ!?あの2人今姉妹なの!?」

 

那珂「確かに似てるとこあったよねー」

 

亮「…2人してゲームで変な宗教みたいなギルドに捕まってた…ってくらいか」

 

川内「いや、おもしろ…なにそれ」

 

神通「あ、姉さん、アニメの時間ですよ」

 

川内「あ、本当だ…リモコンどこ?」

 

亮「…はぁ…もうここは俺の部屋じゃないんだな…」

 

 

 

 

 

 

宿毛湾泊地

駆逐艦 朝潮

 

朝潮「司令官、少しお暇をいただきたいのですが…」

 

海斗「それは…どの位?」

 

朝潮「長くて1週間ほど頂きたいと思っております、理由としましては姉妹を探しに行くためです」

 

海斗「そういうことなら全然構わないよ、でも確認しておきたいんだけど、見つけたらどうするの?艦娘はやめる?」

 

朝潮「いいえ、全員連れて帰ってくるつもりです」

 

海斗「ぜ…そ、そう…」

 

朝潮「昨日お給料が出ましたのでようやく外に行けるようになりましたし、とにかく探しに行きたかったんです」

 

海斗「場所の目処はついてるの?」

 

朝潮「私たちはもともと沖縄の孤児院にいました、孤児の私達が行ける場所は多くはありません、きっと問題ないと思います」

 

海斗「…ちょっと待っててね……もしもし、青葉?ちょっと来てくれる?」

 

朝潮「司令官、お気遣いいただく必要はありませんよ」

 

海斗「多分九州の方に探しに行くでしょ?なら青葉と出張ってことにしておくよ、人材探しならあながち間違ってないかも知れないしね」

 

朝潮「…ありがとうございます」

 

海斗「大きい出撃の作戦は今はないし、あんまり気にしないで」

 

朝潮「ただ、あんまり勝手なことしてクビにならないでくださいね…」

 

海斗「あはは…キツイなぁ…」

 

青葉「失礼します…あ、朝潮さん」

 

朝潮「どうも、青葉さん」

 

海斗「青葉、朝潮の姉妹探しに同行してくれる?」

 

青葉「あー…成る程…わかりました、詳しい話は朝潮さんに後で伺えばいいですか…?」

 

海斗「うん、お願い」

 

青葉「青葉にお任せください」

 

朝潮「青葉さん、ありがとうございます」

 

青葉「いえいえ、その代わりと言ってはなんですが、写真を撮らせてください、全員揃った笑顔の写真」

 

朝潮「わかりました」

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