元勇者提督 作:無し
病院 玄関前
阿武隈
阿武隈「うーん…な、なんで病院…?というか我ながらなんで来ちゃうかなぁ…もう最悪…」
知らない人の言う通りにこんなところまでくるなんてまともな思考回路ならあり得ない…
阿武隈「帰ろ…」
瑞鳳「帰るんですか?勿体無い」
阿武隈「うわぁ!?い、いつの間に背後に!?」
瑞鳳「今きました、貴女が帰ることは自由なので止めません、でも貴女がここであの人に会えばきっと…」
阿武隈「……何が言いたいんですか…?」
瑞鳳「…私は欠けたものを取り戻しに行く、それだけです」
阿武隈(欠けた、モノ…私は何かが欠けている…?)
瑞鳳「それでは」
阿武隈「…欠けたモノって…何…?何が私に欠けてるの…?」
頭がメチャクチャになる、どうすればいいのかまるでわからない
阿武隈「…どうしよう、詐欺とかじゃなきゃいいけど…うーん、うーん…きゃっ!?」
北上「うわ…いったぁ……ちゃんと前見て歩いてくれる?」
阿武隈「ご、ごめんなさい…った…た…」
ウロウロしてたら誰かにぶつかってしまった、しかもその衝撃で首がなんだか痛い…折れてないよね…?首は折れたら死ぬって言うもんね…
北上「気をつけなよ」
阿武隈「はい…」
同い年くらいの人かなぁ…
阿武隈「…ホントに首痛くなってきた…いたた…大丈夫だよね?これ…あれ?あれは…提督!元気してた?」
海斗「えっ?僕に何か…?」
え?今私知らない人になんて言った…?
阿武隈「…ひ、人違いでした!」
阿武隈(な、なんか私おかしい!どうしたの…本当に何が起きて…提督って…アレだよね、船の乗ってる1番えらい人…それは船長か、あれ?提督ってなんだっけ、軍人さん?あれ?え?何?)
海斗「…あの、大丈夫ですか?」
阿武隈「だ、大丈夫です!」
もうすごく混乱してしまった、どうすればいいのかよくわからなかった
瑞鳳「ねぇ、倉持さん」
阿武隈「あ、貴女は…」
海斗「えっと…どなたでしょうか」
瑞鳳「……そんな事より、キタカミさん、居ないんだけど」
キタカミ…?
海斗「え…?居ないって?」
瑞鳳「病室に居ないのよ、逃げられてない?」
海斗「…まさか」
男の人が病院に向かって走って行った
瑞鳳「…貴方に会わせたい相手がいたんですけど、どうやらまたどこかに行っちゃったみたいです」
阿武隈「あの…どういう?」
瑞鳳「キタカミさんに会えば、きっと思い出せます」
阿武隈「…キタカミ…?キタカミさん…って…誰……あれ?あたしは…」
何かが、まるで見えない所が見えるようになったみたいな感覚、知らない何かが、今まで見えなかったものが急に見えるようになったような…
瑞鳳「阿武隈」
阿武隈「…阿武隈…?そう、そうだ…阿武隈…!でも、キタカミさんって…誰…」
そうだ、私は阿武隈…長良型軽巡洋艦の六番艦阿武隈…
所属は離島鎮守府から宿毛湾泊地に…そう、思い出せる…!
阿武隈「そうだ…なんで忘れてたんだろ…」
瑞鳳「良かった、思い出してくれて」
阿武隈「……」
…でも、まだ目の前の相手も、キタカミさんと言う人も分からない…いや、正確には艦船としての記憶があるから衝突した相手であることは分かるけど…
阿武隈「あの…おそらく、私の記憶はまだ欠落してます」
瑞鳳「…私はわかる?」
阿武隈「いいえ…」
瑞鳳「…そっか…こう言うケースもあるんだ…仕方ない」
阿武隈「えっと…」
瑞鳳「艦娘になって、そうすればいつか思い出せるから」
艦娘…命をかけた戦場に戻る…
瑞鳳「…やっぱり、嫌?」
阿武隈「抵抗が無いわけじゃありません、だって死ぬかもしれない…でも、思い出したんです、私、キタカミさんはまだ思いだせてません、だけど他にも沢山の大事な仲間がいる、みんなが戦ってるのに私1人安全な所にいられません!」
瑞鳳「よかった、貴方がそう言ってくれて」
阿武隈「ところで貴女は?」
瑞鳳「軽空母瑞鳳、またね」
阿武隈「はい、私きっと全部思い出しますから!」
瑞鳳「うん、それじゃあ」
横須賀鎮守府
駆逐艦 五月雨
五月雨「……火野提督」
拓海「なんだね」
五月雨「私の戦線復帰は何時ごろになりそうですか」
拓海「あと一ヶ月は少なくとも待ってもらう」
五月雨「そんな…」
拓海「君の受けたダメージは深刻な上に、件の敵に対応できるものが今はいない」
五月雨「そもそも打撃は艤装が防ぐことのできないダメージです、誰が対応できるんですか」
拓海「そう言う問題ではない、きみに無理をさせるわけにはいかないのだ」
五月雨「……私は無理したいんです、やらせてください」
拓海「徳岡純一郎は確かに君のことを覚えていなかった、だがそれは稀なことではない」
五月雨「だから生きてるのが辛いんです、私の提督はいないんですから」
拓海「記憶が戻るケースもある」
五月雨「…提督はいま幸せな日々を過ごしてる、私はいちゃいけないんですよ、邪魔なんです、私は…だから軍艦らしく戦って死にたい」
拓海「ならば死への恐怖とためらいを捨てろ、私には君が死を望んでいる様には見えない」
五月雨「…では、どう見えますか」
拓海「我が儘で傲慢な子供だ、電のような」
五月雨「………」
拓海「案ずるな、それが当然だ、君は年端もいかない少女なのだから」
五月雨「私は…」
拓海「大丈夫だ、きっとキミにも夜明けがある」
五月雨「…夜明け?」
拓海「君は暗い夜の中にいるだけだ、夜が君を不安にさせているだけだ、いつの間にか夜は明ける、ゆっくり待てばいい」
五月雨「………」
拓海「…ところでだ、私はCC社と言う会社に旧い知人がいる、彼が主催する夜会に君を連れて行きたい」
五月雨「CC社のパーティー…?」
拓海「来ればわかる、だからゆっくりと待て」
福岡 博多
駆逐艦 朝潮
朝潮「あっさり見つかって良かったです」
青葉「荒潮さんだけ見つかりませんでしたね…」
朝潮「問題ありません、荒潮は姉妹を見捨てるタイプじゃない、私と同じ道を辿ったのだと思います」
青葉「…相変わらずサラッとエグいことを…」
朝潮「…あれは…」
天龍さん…?
青葉「え?……あ、天龍さんだ」
向こうもこっちに気づいたようで、遠くから笑いかけてくれる
朝潮「記憶持ち…!」
青葉「い、行きましょう!」
カフェ
天龍「ご無沙汰しております」
朝潮「…随分とお嬢様な感じになりましたね」
青葉「前からそうでしたけど、随分落ち着いた格好ですもんね…美しい感じです」
天龍「そんなことは…それより、お二人とも今は?」
朝潮「司令官の元で働いています、みんなで海を守るために」
天龍「…実は私も適性検査を受けたんです」
青葉「艦娘の?」
天龍「はい、今は結果待ちですが、願わくば一緒に…」
朝潮「司令官もきっと喜んでくれます、期待していますよ」
天龍「はい…あ、すいません、バイトの時間なので失礼します」
青葉「バイトしてるんだ…」
天龍「はい、ラーメン屋のキッチンで働いてます」
朝潮「仕事内容はお淑やかじゃなかった…!」
青葉「艦娘の時点で相当荒くれ仕事ですから…」
東京
三崎亮
亮「悪い、待たせたな」
春雨「遅いよ楚良」
亮「だから楚良はやめろ、それより軍について調べてきてくれ」
春雨「大雑把だし危険な事を振るね」
亮「川内たちのやってる事の裏を取ってきてくれ、アイツらが間違ってるとは思わないが、アイツらの持ってる情報が間違ってる可能性がある」
春雨「つまり、川内達に本当に正義があるかを確かめろ、と」
亮「そうなるな」
春雨「忍者じゃないのになぁ…」
亮「忍者じみてるからいけるだろ」
春雨「嫌な信頼…」
亮「頼む、川内達はしくじったら取り返しがつかないがお前は俺がなんとかできるかもしれない」
春雨「そこは保証するべきでは…私の司令官として」
亮「頼んだぞ」
春雨「了解でーす」
福岡 博多
天龍
天龍「お電話、お待ちしてました」
拓海『まず、適性検査の結果だが…非常に希有な例だが…2種類の偽装に適応が認められた』
天龍「だと思ってました、選んでもいいですか?」
拓海『…ふむ、構わんが…まるで…』
天龍「知っていました、から…私は天龍型ではなく、伊勢型二番艦、日向として戦います」
拓海『艤装を用意しておく、研修の日程などは改めて通知する』
日向「二つだけいいですか?」
拓海『なんだね』
日向「希有な例…と仰りましたが、前例が?」
拓海『ある』
日向「それと、伊勢型の一番艦は」
拓海『君の望むままにしよう』
日向「それでは」
電話を置く
日向「戦艦は多分まだ着任してないはず…天龍として戦うよりはきっと活躍できる…ハズ…できるよね…あーもう、今度は沈まないんだ…3回目はない…頑張ろう」