元勇者提督   作:無し

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艦隊演習

宿毛湾泊地

駆逐艦 島風

 

島風「よーし!旗艦頑張ります!」

 

赤城「期待してますよ、島風さん」

 

山雲「この編成、不思議な感じですね〜」

 

長門「ああ、だが駆逐散人に戦艦一人と軽巡一人、そして空母一人か」

 

大潮「張り切って行きます!」

 

阿武隈「戦力過多な気も…」

 

島風「それでは、まず作戦を…」

 

 

 

 

 

 

軽巡洋艦 北上

 

北上「んじゃ、まあよろしく」

 

加賀「期待してるわ」

 

霞「ガンガン行くわよ!」

 

日向「まあ、編成はこうなりますか」

 

満潮「これ、本当に怪我しないわけ?いきなりこんな…」

 

霰「んちゃ…」

 

北上「単縦陣でまずは索敵、空母の運用よくわからないんだよなぁ……とりあえず加賀は最後尾ね、それからえーと…戦艦は前でいいか、速力はそっちに合わせる感じで行こうか」

 

日向「わかりました」

 

日向(北上さんは私達の事は覚えてない…か)

 

北上「んじゃ、行こうか」

 

加賀「艦載機、でます」

 

矢が炎を纏い、飛行機に姿を変える

相変わらず原理が理解できない

 

加賀「…航空戦、始まったわ、でも艦載機の量も変わらないし…被害の出方は対空射撃にかかってる」

 

北上「はいはい、場所は?」

 

加賀「南…待って、北に敵航空隊を観測、直接仕掛けてくるわ」

 

北上「撃ち落とせばいいんでしょー?…北側ね……あれか」

 

艦載機が隊列をなして迫ってくる、どう撃ち落とすかが問題だ

あの深海棲艦はやってのけた、相手の戦意を撃ち砕く一撃を

 

北上「あんなのにできて…あたしにできない道理はない…!」

 

ガチッと艤装が音を鳴らし、弾を放つ

正確に艦載機を貫いたのに違う、こんな物ではない

 

北上「駆逐!艦載機狙え…撃て!」

 

号令と共に駆逐艦たちも撃ち始める

 

霞「全然当たんない…!」

 

霰「一機、堕としたよ…!」

 

手数が足りない…佐世保に連れてった時の駆逐の方がよっぽど役に立つ

抜けてきた艦載機が近い…!

 

北上「戦艦!直上!」

 

艦載機が演習用の爆弾を投下する

 

日向「私なら心配はない…ですね」

 

北上「え、何それ…刀…?」

 

日向「…ふっ…!」

 

刀で弾かれた爆弾は少し離れた位置で爆発する

 

日向「私物ですが、役に立つでしょう?」

 

満潮「うそ…あれ当たっても平気なの!?し、死んじゃうじゃ…!」

 

日向「あの程度では死にません、怪我も恐らくは…多少痛い程度です……来ましたよ!」

 

背後から砲音が響く

後ろを取られたか…!

 

日向「島風、阿武隈、山雲!加賀さんが狙われてます!」

 

島風「反応がちょっと、おっそーい…」

 

あの金髪の駆逐の狙いは加賀か…

 

北上「駆逐!左右に膨らんで速力落として!輪形陣にして加賀を守れ!」

 

島風「だーかーら、遅いって…!」

 

駆逐が魚雷を放つ

 

霞「な、何あの魚雷!水の上跳ねてるんだけど!?」

 

満潮「こ、こっち来ないで!!」

 

確かに相手の魚雷が変な挙動してるけど、駆逐みんな怖がって逃げてるし…

 

北上「あーもう!役に立たないな…!あたしが全部やるしか…」

 

阿武隈「貴方の相手は私です!北上さん!」

 

北上「…アンタ病院で会った…チッ、ぶっ潰してあげるよ…!」

 

どいつもこいつも目に痛い髪色してくれちゃって…ボコボコにしてやる…

 

阿武隈「北上さんの力…見せてもらいます!」

 

北上「そう言うのうざいって…!」

 

コイツ、メチャクチャ狙いが正確だ…

対峙してるだけで汗が噴き出す、コイツは一体なんなんだ、コイツは新人じゃなかったのか

 

加賀「くッ…!被雷しました…!」

 

北上「加賀!艦載機出さないの!?」

 

加賀「飛行甲板が使用できません、私は戦闘能力がありません…!」

 

島風「まずは空母を落としたよ…長門さん、見える!?」

 

遠方から砲音、風を切る音…

 

日向「…戦艦長門…ふふ…相手にとって、不足なし……ですか」

 

日向が飛んできた砲弾を叩き斬る

 

北上「なにそれ…ふざけてんの…?」

 

日向「至って真面目です…砲撃します…!」

 

戦艦の砲音は特に大きいな…

 

阿武隈「余所見禁物です!」

 

北上「え…な、にこれ…」

 

艤装が全部撃ち抜かれて…

 

阿武隈「……貴方は北上さんだけど…私の知ってるキタカミさんじゃない」

 

北上「…なにそれ…」

 

北上(あたしは、北上じゃない…?あたしは…)

 

頭に何かが響く

 

山雲「お相手しますよ〜、天龍さん」

 

日向「日向です、そして私は戦艦ですよ?」

 

阿武隈「二対一です、充分落とせます」

 

日向「これは…分が悪いかもしれませんね、全力でお相手します」

 

日向が刀で阿武隈の砲弾を切り落としてそう言う

 

満潮「死ぬ!死んじゃう!た、助けて!」

 

霞「す、進まなくなったんだけど!?」

 

霰「…んちゃ…」

 

島風「えっと…3人とももう撃沈判定だから動かなくていいよ、それと進めないのは艤装の動作不良だから後で修理を…」

 

……もう、なんていうか凄い光景だ、右側では全力で戦ってるし、左側では駆逐が駆逐をなだめてる

 

日向「流石に長門さんの砲撃まで捌いていては…苦しいですね」

 

山雲「こんなに〜、強かったんですか〜?」

 

日向「本来の艤装を使えばこの程度…」

 

阿武隈「でも、流石に数に押されたらなす術が無いみたいですね…!」

 

日向「そのようで、とうとう私も撃沈判定…か」

 

山雲「危なかったです〜」

 

阿武隈「ナイス援護でした」

 

…なんなのさ、これ…新人のはずなのに当たり前のように艤装を使いこなして見せて…

あたしが負けるなんて、あたしが…!

 

阿武隈「…立てますか?」

 

…コイツ…

 

北上「アンタの知ってる北上って何」

 

阿武隈「…わかりません、私も誰か探してるところなので…でも、あなたじゃなかったみたいです」

 

北上「普通に失礼なこと言ってくれるね、何それ、意味わからないんだけど?」

 

阿武隈「ごめんなさい、私もよく分かってなくて…」

 

北上「一番意味わかんないんだよそう言うの…ほんとウザ……あれ…何これ……」

 

暗い、暗い冷たい、この感じは何…

何か、思い出しそうな…

 

阿武隈「北上さん?」

 

北上「……はぁ…」

 

気の所為かな、いま思い出さなきゃいけないことなんて多分無いし…

 

 

 

 

 

執務室

駆逐艦 島風

 

島風「で、私がMVPです!」

 

海斗「確かに、満潮、霰、加賀をたった一人で撃破、長門への砲撃の指示、阿武隈と山雲との連携、旗艦としての作戦指揮も十分な水準だね」

 

島風「やった!」

 

海斗「でも、確かにキミの活躍は凄いけど深海棲艦との戦いでは危険を伴う、別れて行動するのは感心できないな…」

 

島風「大丈夫ですよ提督、私は絶対に犠牲なんか出したりしませんから…」

 

海斗「…君の心意気はとても大事だ、だけど現実はそうはいかないかもしれない」

 

島風「…わかってます、でも大胆な作戦はみんなを救う事もあります、速度の速い駆逐艦が少数で敵の機動部隊を叩く事も時には必要なんです、大規模な艦隊よりも被害を抑える為に」

 

海斗「キミはまるで何度も命懸けの戦いをしてきたみたいだね」

 

島風「してきました、だからここに居ます」

 

海斗「なら、一つ聞かせて、君はなんのために戦うの?」

 

島風「…私は…私は夜明けを連れてくるために戦います、どんなに暗い夜でも夜明けは必ずやってきます、その夜明けを私が連れてくるために…誰も夜に置き去りにしたりしません」

 

海斗「置き去りにしない…か…うん、期待してるよ島風、MVPおめでとう、これより先の活躍に期待します」

 

島風「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

病院

駆逐艦 アオボノ

 

アオボノ「毎日来なくてもいいんですよ?提督」

 

海斗「ごめんね、そう言うわけにもいかなくて、それより曙、今日は確認を取らなきゃいけないことがあってね」

 

アオボノ「キタカミさんが消えたことについて、ですよね、私は何も知りませんけど」

 

海斗「やっぱりキミの証言は寝て起きたら逃げられていた、って事なんだね」

 

アオボノ「はい、変わらず」

 

海斗「そっか、まあ居なくなったものは仕方ないけど…本当に協力して無いんだね」

 

アオボノ「間違いなく」

 

そもそも協力なんかする間でも無い

 

海斗「記憶喪失の少女が居なくなったと言うのはニュースにもなるだろうし、軍属である以上、多少キミにも言わなきゃならないことが出てくるけど…」

 

アオボノ「構いません、私の過失であることは間違いありませんので」

 

海斗「わかった、じゃあ今日はこれで帰るよ、それと来週には退院できるそうだから」

 

アオボノ「戦線への復帰が待ち遠しいです」

 

海斗「無理しちゃダメだからね」

 

アオボノ「はい、間違いようもなく、提督の命令に従い、確実で安全に執行します」

 

海斗「頼もしいね」

 

アオボノ「光栄です」

 

海斗「…綾波がここに来たいって言ってたんだけど…」

 

アオボノ「……まあ、構いませんよ、退屈ですし」

 

海斗「わかった、伝えておくね、それじゃあ」

 

 

 

 

 

宿毛湾泊地

駆逐艦 綾波

 

綾波「お、お待ちしてました…司令官」

 

海斗「待たせてごめんね、材料は揃ってる?」

 

綾波「はい…にんじん、じゃがいも、玉葱、糸蒟蒻、牛肉、それからバター…あ、あの…バターは必要なんですか…?」

 

海斗「なくても良いんだけどね、えー…とじゃあ、作ろうか」

 

綾波「は、はい…作ります、肉じゃが…」

 

 

 

 

綾波「し…下拵え、終わりました」

 

海斗「えーと…調味料をどのくらい入れれば良いのかは僕は詳しく知らないんだけど、綾波はわかる?」

 

綾波「…多分……」

 

 

 

 

 

綾波「…美味しいんでしょうか、これ」

 

海斗「うん、美味しいと思うよ、甘めの味付けで優しい味だね」

 

優しい味…か

大量殺人犯の私が料理を作ったら優しい味が完成するなんて…

 

海斗「これを盛り付けて、この上にバターを一欠片乗せたら完成だよ」

 

綾波「本当にのせるんですか…?」

 

バター…牛乳から取り出した脂質で作られた…いや、脂質そのもの…カロリーが…

 

海斗「うん、できたよ」

 

綾波「……本当に乗っかってる…えと…食べる、んですよね…」

 

海斗「うん、そのつもりだけど…?」

 

綾波(…カロリー…10g程の欠片でだいたい70kcal…ジョギング10分ほどのカロリー…肉じゃがは大体400kcalなのにバターが乗ると一気に…あぁ…)

 

加賀「…肉じゃが、ですか」

 

海斗「やあ加賀、演習お疲れ様、たくさん作ったから加賀も食べる?」

 

加賀「よろしいのですか?」

 

綾波「え、ええ…えと、はい…どうぞ」

 

加賀「では…あら、バターが乗っていますよ、洋風なのですか?」

 

海斗「そう言うわけじゃ無いけど、美味しいよ」

 

加賀「そうですか、ではいただきま…す……」

 

綾波(……加賀さんの様子がおかしい…?箸を中途半端につけたまま止まって…)

 

加賀「……!」

 

綾波「ひ…!」

 

綾波(こっちを見て、睨んだ…?)

 

海斗「…加賀」

 

険しい表情のまま加賀さんは肉じゃがを口に運び、咀嚼したと思うとシンクに吐き出した

 

加賀「……最低な味です」

 

綾波(…バターのせい……な訳、無いか…記憶が戻ってる…)

 

加賀「提督、あなたどう言うつもりでこの子にこれを作らせたの」

 

海斗「…ただ、みんなに食べてもらおうと思っただけだよ、綾波がみんなと馴染めるように」

 

加賀「……不愉快です提督」

 

海斗「それは何故かな」

 

加賀「貴女は翔鶴の気持ちを踏み躙るのですか…?私には到底理解できません」

 

綾波(…そっか、これは思い出の料理なんだ、肉じゃがにバターを乗せただけのシンプルな料理だけど、作る人が決まってるくらいには思い出深いものだった…)

 

綾波「…ごめ…はぁ…ごめんなさい…!し、知らなかったんです」

 

加賀「綾波、私は知っています…貴女が翔鶴型の改装計画を推し進めていたこと…」

 

綾波「…はい」

 

海斗「加賀、そこまでだ」

 

加賀「提督、私と綾波を同じ艦隊に配属するのはやめた方がいいでしょう、きっと不幸な事故が起こりますから」

 

海斗「加賀…!」

 

加賀「…貴方がこの子のために声をあげるのであれば…私は翔鶴のために綾波を殺しましょう、私は綾波を仲間とは認めません」

 

海斗「……」

 

加賀「記憶がない私が察するほど綾波に対する扱いは丁重でした、綾波を迫害する理由がどこにあるのか、ずっと考えていましたが思い出して仕舞えばその必要はありませんでしたが…」

 

冷たい目、すごく冷たく、氷の矢で射られたみたいに息ができない

 

加賀「私も馬鹿ではありません、手を出すような真似はしないと約束しましょう…綾波が馬鹿な真似をしない限り」

 

綾波「ひ……ひゅ…」

 

…息が…できない…

胸が苦しい、心臓が痛い

 

加賀「おや、手を出すまでも無かったようですね…そのまま死ねば楽かもしれませんよ」

 

海斗「加賀、それ以上何も言わないで」

 

加賀「…ふん、構いませんよ、ですが何も変わりません、それだけは覚えておくべきです」

 

海斗「…忠告は受け取った」

 

綾波「…はっ…あぅ……」

 

海斗「綾波、落ち着いて深呼吸するんだ」

 

綾波「ひぃ……はっ……ふぅ…ひぃ……はぁ…」

 

加賀「提督、私は貴方にそのような目で見られたことは今まで一度たりともありませんでした、残念です」

 

海斗「……確かにこれは僕の自己中心的な考え方だ、加賀がどう思うかを考えているかと言われれば考えてない、だけど…」

 

加賀「やはり、覚えたらしたんですね」

 

海斗「………」

 

加賀「流石に…頭にきました、失礼します」

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