元勇者提督   作:無し

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南西諸島へ

宿毛湾泊地 工廠

軽巡洋艦 夕張

 

夕張「し、死ぬ…控えめに言って過労死する…次の作戦の準備とアオボノちゃんから振られたタスク、それから情報の精査…わた、私の体は一つなんだよ…!」

 

明石「だ、大丈夫?」

 

夕張「大丈夫に見える?ねぇ、見える?この機械油とタコまみれの手を見なさいよ、横須賀の整備士としても、ここに派遣された医官と後付けの工廠の指導担当の役職も全部こなさなきゃいけないんだから…」

 

明石「うわ、指導担当とか初耳…」

 

夕張「アンタが成果出さないからでしょうがァァァ!!」

 

夕張(…それよりも問題はアオボノちゃんの持ってきたお金、これを受け取るつもりは毛頭ないけど…要するにこの金に恥じない仕事をしろ、ということ…重すぎる、私の年収の何倍よ…)

 

明石「…手伝おうか…?」

 

夕張「要らない、というかアンタはダメ…この仕事は私の仕事、本当に一つのミスすらできないの、電気コード挿すの忘れるようなやつに任せる仕事じゃない」

 

明石「それまだ引きずる!?」

 

夕張「……技術屋はね…一度の失敗で死ぬのよ、それこそレンズに指紋がついた、火薬の量がおかしかった、戦場に立たない私たちからすれば些細に見えることが闘う彼女らの命を奪いかねない…もっと本気で取り組みなさい、少なくとも私よりすごい貴方を私は知っている」

 

明石「…夕張より、すごい…私…」

 

夕張(と言っても…アオボノさんの退院まであと5日、3日後には南西諸島の敵を撃滅するための作戦を開始する…出番はないかもね)

 

明石「…船の方見てくる」

 

夕張「いってら、さて…続きをやりますかぁ…」

 

宿毛湾泊地は現在艦娘を運用してる施設の中で最高の人数を揃えている、戦力も申し分ない

戦艦は長門、日向の二名

空母赤城、加賀の二名

重巡洋艦青葉一名

軽巡洋艦の阿武隈、北上、二名

駆逐艦は朧、曙、アオボノ、漣、潮、朝潮、大潮、満潮、山雲、霰、霞、綾波、敷波、十三名

入院中のアオボノさんと最後の二名は戦力外

工作艦の明石、こっちも戦力外

 

合計二十一名、でも最高戦力を欠いているし艦隊の雰囲気もあまり良くない、理由は綾波、過去の所業を考えれば当然か

綾波ほど恨みを買えば後ろから刺されることがあってもまるでおかしくない、それに士気は生存にも直結する、次の作戦には私も同行しなきゃ行けない、生きて帰るには私の努力も必要なんだ

 

夕張「…よし、全員の艤装の整備よし、スペアも作った…あとは…」

 

私に仕事を依頼してるのはアオボノさんだけじゃないし、移動用の船の整備も必要だ

南西諸島に出撃する際、私達は一隻の軍艦に乗り込み、数名の艦娘がそれを護衛しながら進む形を取る、台湾本土まで進み、周辺の敵を撃滅、フィリピン海にて報告されている敵も撃破するようにと言われている

とても重要かつ、余りにも負担の大きな仕事だ

半月の期間を想定されているが、私の見立てでは複数回の撤退を余儀なくされるはず……深海棲艦の撃滅を阻む敵が出てくるのなら

 

夕張「…よし、できたできた、後はこの位置情報システムと艤装のパージ、復帰のシステムも動作確認して…最後に私の艤装を調整して…と」

 

出発の用意を済ませなくてはならない

 

 

 

 

 

病院 

春雨

 

病室のドアをノックする

 

アオボノ「お待ちしてました、どうぞ」

 

春雨「失礼します、点滴を替えに来ました」

 

アオボノ「ご苦労様です、ネズミさん」

 

春雨「ネズっ…」

 

アオボノ「貴方がわざわざ私の周りをかぎまわってる理由が知りたいのですが」

 

春雨「…深海棲艦から人間に戻った貴方に興味がありまして」

 

アオボノ「貴方に対して何かを語ることで、私にメリットはありますか?」

 

春雨「…多分」

 

アオボノ「さて、先にお話を聞かせてもらいましょうか」

 

 

 

 

横須賀鎮守府

提督 火野拓海

 

拓海「不自然な点?」

 

電「はい、この作戦には上層部の方が一切絡みません、確かに海に出ることは危険が伴いますが二十名の艦娘が参加し、常に護衛される状況、そして対外的にもアピールできる作戦、これに新人で経歴も、コネも何もない倉持司令官が抜擢される…明らかに異常なのです」

 

大淀「なにより…宿毛湾に向かった軍艦ですが、最新式の巡洋艦であること自体は間違いありませんが積載されている装備が削られています、配置される人員も通常通りに運用される場合に比べて少ないと…」

 

拓海「承知している、だが案ずる事はない、そもそも上は倉持海斗に戦果を立たさせるつもりなど無い、若い芽を積み、宿毛湾泊地を手中にする、多くの犠牲を出した危険な作戦を若い将兵の犠牲を伴うことで艦娘システムへの批判を世界平和の名目で封殺する」

 

電「……相変わらずハズレクジを引くのが得意な人なのです、あそこの艦娘はたまったものじゃないのです」

 

大淀「…提督、何か考えてらっしゃるのでしょう?」

 

拓海「当然だ、が…私は目をつけられている、横須賀で指揮を執ると言うことは上層部にそれだけ監視されるということだ、これ以上の動きは君たちをも危険に晒しかねん…」

 

電「…見殺しにするつもりですか…」

 

拓海「そう思うかね」

 

大淀「いいえ、全く」

 

電「大淀さん…これが見殺し以外のなんなのです…?」

 

拓海「案ずるな、現状できる最善の手段は打つつもりだ、鳳翔と間宮に一時的に支援に行ってもらう」

 

電「…そのお二人だけですか?」

 

拓海「アオバと衣笠には川内型の捜索を続けて貰っている…現状これ以上の手がないのだ、仕方あるまい…それと、大淀」

 

大淀「はい、鳳翔さんには彩雲、烈風、流星改の3種類の艦載機を渡してあります、充分以上の数を」

 

拓海「これが今我々にできる最大限の支援だ、歯痒いがな」

 

電「勝算は…ありそうなのですか?」

 

拓海「ない、実戦に向けた訓練の時間が足りていない、戦闘への怯えを感じる者もいるだろう、万が一海上に停泊を余儀なくされた場合深海棲艦はどこからくるかもわからない、恐怖を感じている者が見張りに立てば最悪だ」

 

大淀「そうならないことを願うばかりです」

 

 

 

 

 

 

 

3日後

 

宿毛湾泊地

提督 倉持海斗

 

海斗「全員の乗船を確認、まずは朝潮、大潮、満潮、霰、霞の5名に船の周囲に展開してもらうよ、敵を見つけたらまずは報告、危険を感じたら船に戻る事、以上…質問は?」

 

満潮「な、なんで私たちが一番最初に見張りに立つのよ…私達はまだ着任したばかりで…」

 

朝潮「この周囲の海域の敵は日頃の哨戒で敵はあまりいません、満潮達はまだ着任して日が浅いからこそ安全なこの海域における警護をさせて頂ける、ある意味幸運な事なのですよ?」

 

海斗「概ね今朝潮が言った通りだよ、他に質問は?」

 

大潮「どうやって海に降りるんですか?」

 

海斗「甲板にリフトがあるからそれで降りられるよ、それと緊急時には各所にあるワイヤーを使って回収することになるよ」

 

大潮「わかりました!」

 

海斗「最後に、この作戦にあたって横須賀鎮守府から給糧艦の間宮と軽空母の鳳翔が手伝いに来てくれてる、無理に交流する必要はないけど、頼れる人達だから仲良くしてね、あ、勿論この艦の乗組員の人たちともね」

 

朝潮「…司令官、少し良いですか?」

 

海斗「何かな」

 

朝潮「敷波の姿が見えませんが…」

 

海斗「敷波には横須賀鎮守府に行ってもらってるよ、何かあった時守り切れないからね」

 

朝潮「そうですか、それなら良かったです」

 

 

 

 

 

 

駆逐艦 綾波

 

綾波「……」

 

吐きそうだ、気分が悪い、ここの空気は血煙のようで、嫌な感覚が私を包み込んでいる

鉄の匂いが私の本能をそそる

 

綾波「ふぅ…はぁ……ふうっ…」

 

変な空気だ、人を殺そうとしてる奴がいる、なんとなくだけどそんな気配がする

 

綾波「…誰か…あ」

 

加賀「……」

 

…ツキがない、話を聞いてくれなさそうな相手に出会ってしまった…

 

綾波「あの、あの…」

 

加賀「話しかけないで頂けますか」

 

綾波(…私の読みなら…多分この作戦には裏がある、でも止める手段がわからないのに…)

 

警報が鳴り、放送が流れる

 

海斗『左舷に深海棲艦が出てきた、北上、山雲、加賀の援護に向かって』

 

加賀「…貴方に構ってる暇は無さそうですね、私もいかないと」

 

綾波「あ……」

 

…どうして今の私はこんなに臆病なんだろう、どうしてこんなにか弱いフリをしてるのだろう

あの時のように図太く、自分の思がままに生きられたら…

強い私はもっと強い敵によって全てを失った…

弱い私は、何かに対峙する勇気すらもなかった

 

どっちがマシなんだろう、自分に対する嫌悪感だけが渦巻く

 

綾波(…敷波は、大丈夫…誰も敷波にまで手を出す人はいない…多分)

 

なら、私は…敷波がこれから先どれだけの不自由を抱えるかを考えずに、今取れる最善の手だけを

 

綾波(きっと狙いは司令官、この出撃全てが茶番、私はどうすれば良いのかだけを考える)

 

 

 

 

 

海上

駆逐艦 朝潮

 

朝潮「左舷に敵駆逐隊!総数3!砲撃用意!」

 

大潮「は、はい!」

 

満潮「撃って良いの!?」

 

朝潮「まだ、良く狙っていてください、あの距離を当てることは私たちにはできません、射程に入り次第指示を出します」

 

後方からリフトが降りてくる音がする

 

加賀「一航戦加賀、出撃します」

 

山雲「わあ、かっこいい〜、西村艦隊の駆逐艦山雲、抜錨しま〜す」

 

北上「え、その名乗りあたしもいる?」

 

加賀「満潮、だったかしら」

 

満潮「へ、は、はい!」

 

加賀「怯える必要はないわ、この程度の敵…鎧袖一触よ」

 

加賀さんが放った矢が炎を纏い飛行機へと変わる

 

北上「ほら、駆逐はそのまま警戒続け、あたし達は右舷の安全を確保するからさ」

 

朝潮(…この雰囲気…何か…)

 

朝潮「加賀さん、満潮達に撃たせても?」

 

加賀「構わないけれど」

 

満潮「え、う、撃つの!?」

 

朝潮「ちゃんと狙って…撃て!」

 

大潮「は、はい!」

 

満潮「えい!」

 

加賀「…二発ともやや外していますが、なかなかの精度です」

 

北上「加賀、そっち1人で大丈夫?」

 

加賀「…ええ、みんな優秀な子達ですから…敵駆逐艦は今航空機を狙っています、もう一度砲撃してください」

 

朝潮「…もしかして、記憶が…」

 

加賀「さあ、なんのことかしら…早くしないと戦果は私がいただきます」

 

朝潮「満潮!大潮!砲撃してください!」

 

10分ほどして、敵の殲滅が完了した

 

朝潮「満潮が2、大潮が1と…」

 

満潮「朝潮…姉さんも撃てばもっと早かったと思うんだけど」

 

大潮「そうですよぉ…」

 

加賀「実戦をこんなに安全な環境で行えるのは異例です、貴方達の姉は貴方達を育てようとしてるんですよ、生き残るために」

 

朝潮「…そうですね、絶対に死んでほしくないからこそ」

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