元勇者提督   作:無し

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大規模演習

工作艦 明石

 

ネットから提督を引き摺り出す試み

とりあえず何をするかが不透明なために

演習の後に正式に行うことになった

 

「明石ー…明日までにこれできる?」

 

「え、何ですかこれ…」

 

箇条書きにされた書類を渡される

とりあえず内容が意味不明なことは確かだ

 

「簡単に言えば艤装が自分で戻ってきてくれるようにするシステムだねぇ」

 

「その…これを?」

 

「うん、欲しいかなぁって…あ、勝手に外れるんじゃなくて、私が外してるの、そこは心配ないから」

 

「いや、どのみち心配なんですけど…」

 

「明日、何をやってたのか見せるためにも、今はそれと、後からもよろしく」

 

「…あの、私執務が……」

 

「今日1日変わるから、ね?お願い」

 

「………後で泣いても知りませんよ」

 

艤装の改造は久しぶりだ

時間が取れなかったし、何より他にやりたいことがあった

 

「……あ、これ無理か…ワイヤーで戻れるようにする?でもそれ危険かなぁ…多分軽量化したいって話だよね、なら何回も外せないけどこうして…」

 

久々に楽しい、気がつけば時間が経ってる

 

 

「ふふっ…できちゃった」

 

満足げにそれを見る

 

「ん、んんー!よーし…あれ?もうこんな時間!?」

 

日付が変わってもうかなり経っている

まさか艤装に半日以上かけていたのだろうか

いや、実際そうなのだろうが

 

とりあえず何かを口にしようと食堂に向かう

 

「…あ」

 

「あ…」

 

残り少ないカップ麺を手にした北上がいた

しかしそれを咎める気力ももはやない

 

「…それ、譲ってください…」

 

「……ごめん、私もようやくご飯なんだ…ここは譲れません」

 

鎮守府からカップ麺の在庫が二つ…四つ減りました

 

「っふはぁ…生き返った……」

 

「幸せそうな顔してるね、鳳翔さんと間宮にみられたら殺されるよ?」

 

「お互い様ですよ、それより、できましたよ、一度だけジェット噴射で戻ってくる様に改造しました、この機能をうまく使えば艤装をつけたままの加速が可能です」

 

「うーん、流石だね、それなら何とかなりそうだよ」

 

「…本当に何をするつもりなんですか?」

 

「明日…いや、今日わかるよ」

 

「…楽しみにしています、燃料を入れる場所などの設備で少し重量が上がってます、これに関しては魚雷を利用したタイプを作れば解決できるのかなぁ…」

 

「遠隔操作で魚雷を…うーん、妖精さんが協力してくれれば甲標的みたいにはできるかも」

 

「よーし、ごちそうさまでした!じゃあ私は行きますので」

 

「提督のとこ?飽きないねぇ…折角だしついてくよ」

 

 

 

「ふふっ…先客ありでしたか」

 

「……これ、どうなんだろうねぇ…」

 

「…可愛いことだと、思っておきましょう」

 

ベッドに寄りかかって寝る曙と、その頭の上に置かれた提督の手

 

「…起きたんなら、万々歳だけどね」

 

「…折角ですしここで寝ちゃう?もう限界だわ私」

 

「……奇遇ですね、私もです」

 

棚の毛布を一枚曙にかけ、自分たちも包まり目を閉じる

 

なぜかいい夢を見られそうな気がした

 

 

 

「ねぇ、明石」

 

「なんですか?」

 

「いつもありがとう」

 

「遅いですよ…本当に」

 

「……まだ、僕は帰れない、君にアレを託す、君がそうなのかは…僕にはわからないけど、きっと覚醒を助けてくれるはずだから」

 

そこで目が覚めた

何だったんだろう…

 

「…ん?」

 

眠る前とは確実に違うことが一つだけあった

 

「…これは…」

 

私の手には、一枚の紙と、スマホが握られていた

 

 

 

 

 

 

 

 

雷巡 北上

 

まだ辿り着けない

あの必死さに、あの一瞬に

あの完璧な全てに

だけど、荒削りでも、近づいてる、その一歩が足踏みでも

ただ前に、今はこれが正しいんだと信じて進んでる

 

「……ふぅ…ん…んー…おはよ」

 

自分以外は眠ったままの提督だけ

ああ、寝坊したかな

 

「そんじゃーね、提督」

 

部屋を後にして、のんびりと艤装を整備する

演習場に行き、軽く動かす、パージからの再装着

…うん、悪くない仕上がりだけど、まだ難がある

でも十分

 

「……十分いける、これなら…」

 

誰も私を止められない

 

 

 

 

 

工作艦明石

 

「本日はよろしくお願いいたします」

 

「ああ、まあ気にすんな、事情はもう聞いてるから」

 

心臓が凍りそうになる

できるだけ平静を装って対処する

 

「事情と言いますと」

 

「あんたらんとこの指揮官が出てこれない理由だよ、意識不明なんだって?」

 

知られてる、なぜ?

何としてもこれ以上広めては…

此処を守らないと…

 

「ああ、そんな不安そうな顔すんな、別に誰に言うつもりもねぇし」

 

「何のつもりですか」

 

「仲間が守ってるもんをぶっ壊すほど、俺も悪趣味じゃねぇって言ってるんだよ」

 

「仲間?」

 

「俺と、此処の提督はお互いに命かけて世界を救った仲なんだよ」

 

ああ、じゃあこの人もデータドレインとか使えるのかな…

 

「さて、その話は後にして、とりあえず演習だが、どこでやるんだ?」

 

「奥に演習場がありますのでそちらで」

 

「わかった、じゃあ行くか」

 

 

 

 

 

 

雷巡 北上

 

「んー、眠い…めちゃ眠い…」

 

「お゛ぉ゛い!こんのバカ上がぁぁぁ!!クマ!!」

 

「…とうとう、ばかかみからばかうえになったんですね、あほうえさん」

 

「……もう…帰っていいか?」

 

「えー、なんなのさなんなのさ…私にそんな恨みでもあるわけ?」

 

「恨みがあったらこんなに怒ってないニャ、でもそろそろ本気で怒るニャ」

 

「と言うわけで、演習の前に締めに来たクマ!」

 

「演習だとやりたい放題されますし、万が一負けたら何も言えませんからね、あぁ、でも演習でキラキラしてる北上さんも素敵っ」

 

「……帰りたい…」

 

「いつまでも初雪みたいなこと言ってんじゃねぇクマ!お前のパソコンぶち壊すぞ!クマ!」

 

「姉貴、これに関しちゃ俺も許しておけねぇから、覚悟してくれよ…」

 

「………変わり身はっや…」

 

やっぱり賑やかな方が楽しいなぁ…

ちょっと行きすぎたスキンシップも、怪我をしないレベルで

 

「いででぇでででで!」

 

「お、大井姉さん…?」

 

「今日は全く止める気がないクマ、一回折ってやれクマ」

 

「ちょっまって!タンマ!今ミシッていった!逝く!腕の関節が変な方向に!」

 

「北上さぁ〜ん、多摩姉さんが写真撮るまでダメですよ〜?」

 

「すまんニャ、これ動画だったニャ!」

 

「動画!?動画なんですか!?じゃあもっと悲鳴をあげてもらわないと…!」

 

「あ、姉貴!流石に今折ったら提督がうるさいぞ!?」

 

「……チッ…」

 

「た、たすかった……い、いたい…痛いよ…」

 

「あぁぁ!可愛いわ!何でこんなに素晴らしいのかしら!多摩姉さん!回して!もっとアップで!」

 

訂正しとく、怪我はする

それでもこの時間は本当にかけがえのないものだ

 

 

 

 

 

「第一回目、演習用意」

 

「あ、思いついた」

 

「何を?」

 

「曙Aの呼び方、髪が青いし、アオボノでいいじゃん」

 

「あんまり変わってないし、それならいいかも知れませんね」

 

「……まあ、それなら許してあげるわ」

 

「ん、じゃあ、行こうか」

 

「全員抜錨せよ!進むわよ!」

 

 

 

 

「敵確認したよー、東に20修正すれば衝突するけど、速力的にT字不利になりかねないね」

 

「大きく回って後ろから行けばいいんじゃないですかー?」

 

「馬鹿、相手は魚雷ばっか積んでるんだから無理よ、北上、2人あげるわ」

 

「んじゃあ愛宕と阿武隈、2人でこっちに来て援護してよ」

 

「はぁーい!」

 

「わかりました」

 

「暁!雷あんた達は私たちと後ろから叩くわよ!」

 

「任せて!」

 

「私が全部やっつけちゃうんだから!」

 

「よし、じゃあ行くよー」

 

タイミングを図る

艤装を捨てるタイミングを…

 

 

 

 

「来たぞ!北上だクマ!大きく撃て!当たる必要はないクマ!」

 

「後方に曙!…駆逐艦が合計で3だな!あいつがどんだけ成長したか見ものだぜ!」

 

「川内!那珂!木曽と後方を叩けクマ!」

 

「「了解!」」

 

 

 

 

「すいません!被弾しました!」

 

「えぇー…何やってんのさ…曙、まずいよ、阿武隈が中破反対かな」

 

『こっちも不味いわ、那珂…噂でしか聞いてなかったけど、メチャクチャ強いし!』

 

「うへぇ…」

 

「愛宕さん大破判定もらいました!」

 

「ごめんなさぁい…この距離でやられるなんて…」

 

「…当てに来てないと思ったんだけどなぁ…阿武隈、動くよ、愛宕は引いて隠れてて」

 

「は、はい!」

 

 

 

 

「おー、ついてるニャ」

 

「まさか大破中破とは思わなかったですね」

 

「お前から練習してただろクマ」

 

「よっぽど前北上にいいようにされたのが許せなかったんだニャ」

 

「そんな事ないですよ〜!たまたま当たっただけです!」

 

「弾着観測もなしでよくやったクマ、じゃあ、魚雷行くぞー!!クマ!」

 

 

 

「阿武隈、ルート変更、左右に分かれるよ、魚雷は機銃で対処して」

 

「は、はい!」

 

「…さて、私も本気で行かないと、このままじゃ6対1か…いいかもね、痺れるねぇ…」

 

『北上!こっちはもうダメよ!全滅!」

 

「残念だけどこっちも愛宕やられたし、阿武隈は経験積ませに行ったけどダメだと思うよ、でも夜戦はするから」

 

『…本気で言ってんの?』

 

「最後の1人まで諦めないもんなんだよ、そんじゃね」

 

 

 

阿武隈は見える魚雷にだけしか対処できてないし、酸素魚雷と砲撃であっさり仕留められた

だから私の番って訳だ

 

「本部〜、夜戦突入するよー」

 

『本気なのね…まあ演習だしいいけど…』

 

 

 

「夜戦突入クマ!?確かに北上消費抑えてたとは思ったが…まだやる気か…クマ」

 

「ちょうどいいニャ、姉の怖さを教えてやるニャ」

 

「え、えぇ…夜戦なの…?」

 

「大丈夫よ、川内ちゃん、那珂ちゃんがいるじゃない」

 

「大井ちゃん…」

 

「草も眠るウシミツアワー…敵のニンジャは何処に…」

 

「…肝心の那珂にスイッチ入ってるんだけど」

 

 

 

 

 

 

もうすぐ夕暮れ

そう言えば提督が言ってたな

 

「夕暮れ竜の加護がありますように…ね、さて、暁の水平線に勝利を刻みますか」

 

両手にある砲をみる

ちゃんと装填できている

敢えて今回はまだ一度も撃ってない

 

「魚雷発射!」

 

私が夕暮れを背にしている

この距離ならこちらははっきりとは見えないはず

 

そしてこの魚雷を追いかける

 

 

 

「来たぞ!前方!マジで1人だ!」

 

「その前に魚雷を潰せクマ!」

 

「大井!勘でいいから撃てニャ!」

 

「了解!」

 

 

 

 

「撃ってきたねぇ…さて、そろそろ行くよ…」

 

目の前で大量の水柱が立つ

魚雷をパージする

 

全力で進む

水面を滑らながら進む

今の速力は幾つだろう、体が吹っ飛びそうになる

 

「…見えた!」

 

 

 

「はっ速っ!?ってあいつ魚雷捨ててるぞクマ!」

 

「打ち切った装備を捨てたって訳ですか…いい考えかも知れませんけど…ッ!被弾!正確に機関部を抜かれました…!」

 

「まぐれあたりに怯むニャ!仕掛けるニャ!」

 

 

 

「…いける…いけるよ!今なら!」

 

確かに掴んだ感覚を、手放さない

 

「次…!」

 

多摩姉ぇに被弾、次…川内

 

「……っ…居ない…那珂は……」

 

「ドーモ、キタカミ=サン、ナカ=デス」

 

「うぉっ!?どっからきたの!?」

 

いつの間にかすぐそばに来ていた

 

 

 

「よし!支援砲撃開始クマ!」

 

「…まさかこっちも一撃でやられるとは思わなかったニャ」

 

「…雷巡って改装したら狙撃艦にでもなるんでしょうか」

 

 

 

「やっば…強い…」

 

なぜか肉弾戦を仕掛けてくるし、なんか砲撃飛んでくるし…

嫌になるね

 

「随分とキャラ変わったねぇ…もしかして機嫌悪い?」

 

「…夜なんか…全部壊す…!」

 

「……やば…!」

 

見切れるわけでもないし、ギリギリでかわしながら砲塔向けても蹴られるし…

先に砲塔が曲げられる方が早い気がしてきた

 

「そういうのは川内の担当じゃなかったっけ…ま…いいけどさ…」

 

全力で距離を取る

せめて砲撃戦に持ち込む

 

「っと、離れたらだいぶん楽になったね…」

 

艤装を外した強みは歩ける事じゃない、走れる事じゃない

 

 

「クマ…チッ…あいつ、そう言うことかクマ、これじゃあ下から仕掛けようがどこから仕掛けようがあいつには当てるは辛いぞクマ」

 

「ジャンプで急旋回…なるほど、あれなら急に交わすなんて芸当もできますね、でもそれじゃあ攻めの手段は手の砲だけです」

 

「この精度でやられちゃ十分すぎるニャ…一撃で大破炎上の機関部をこうもあっさり…ニャ…」

 

「……努力してるんだクマ、あいつなりに」

 

 

 

「先にそっちから片付けようか」

 

未だに支援砲撃は止まないし、必死に交わすのも疲れてきた

那珂との距離も大分空いた

 

 

「……止まった!川内!木曽!逃げるクマ!」

 

 

 

 

「もう遅いよ」

 

三つさらに取った

あとは一つだけ

 

「…逃げるのはやめか」

 

「…性分じゃないしね」

 

「ここでネギトロにしてくれる!」

 

「……よし、準備いいよ、ほら、来なよ」

 

「後悔するでないぞ!」

 

流石に砲撃した弾すら殴り飛ばされるとは思わなかったよ

そして素手で魚雷投げられて、主砲を壊されるのも想定外だったよ

 

「ちょっ待って…流石にした!後悔したから!」

 

「もう遅い!」

 

ギリギリ、間に合った

手を通して持ち上げる

 

「ま、主砲じゃきついならコレだよね」

 

トン、と那珂のお腹に魚雷の発射管があたる

 

「はい、おしまい…でいいよね」

 

「……確かにそれは先程捨てたはず…」

 

「これ自体に燃料積んでるから、スイッチで戻ってくるんだ」

 

「…負けたー!あー!悔しい!!!」

 

「あ、戻った」

 

「せーっかく本気出したのに!何で負けたのー!何でー!!」

 

「いやぁ…疲れたぁ…悪いんだけど引きずっていってくれる?」

 

「…だってさ」

 

「仕方ないなー、手のかかる妹だクマ」

 

「…げ…」

 

「夜戦に単騎で突入するなんて馬鹿げたことした北上さんが悪いんですよ?」

 

「でも私勝ったよね!?」

 

「関係ないニャ、9割ムカついたからだニャ」

 

「それに雷巡の誇りとも言える魚雷を捨てるなんて流石に許せねぇぜ」

 

「や、やめてって!大井っち既に手が!捻らないで!あ、痛い痛い!」

 

 

 

「強いなぁ…」

 

「那珂ちゃんが負けるとは思わなかったよ」

 

「私も、まさか負けるなんてね…でも、やっぱりここにいる子はみんな強くなってくね」

 

「……違うよ、ここにいるからじゃなくて、必死だから、いつ死ぬかわからない必死さが、強くしてるんだよ」

 

「それだけじゃないと思うけど…ま、でも…偶には夜戦もいいかもね…」

 

「よーし!那珂ちゃんも!明日もニンジャアイドルとして夜戦頑張っちゃうよ!」

 

 

 

「北上さん、流石でした…」

 

「そんな複雑な顔しないで言ってくれると嬉しいんだけど…」

 

「だっていつも私のこといじめるじゃないですかー!」

 

「それより、今日はついてなかったね、あんなやられ方」

 

「…私の実力不足です、北上さんは当たってないし、かわせてたんですよね?」

 

「…あ、バレてた?ま、いい経験になったでしょ、1人で行ったらどうなるかとか」

 

「それもそれで酷いです!なんで私と合わせてくれなかったんですか!」

 

「……気分かな」

 

「もー!!明石さんに言いつけます!」

 

「……ま、こんな気分味わうんだから、実戦じゃできないよねってことだよ…はぁ…」

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