元勇者提督 作:無し
艦内
提督 倉持海斗
海斗(誰に会いに行くべきかな…)
朧たちの艤装は修復中、3〜4時間で全員分元に戻るらしいからさっきの戦闘で戦えなくなったのは加賀1人…いや、阿武隈も戦意を失ってる…今、さっきの戦いに参加した綾波以外の全員が精神的に弱ってる
綾波も表に出さないだけで辛いかもしれないし、この艦の全員が不安なはずだ
海斗(加賀はまだ治療中かもしれない、まずは、阿武隈だ)
甲板
海斗「やあ、阿武隈」
阿武隈「提督…」
海斗「大丈夫?」
阿武隈「……負けちゃった、よく分からないやつに負けちゃった…敵が撃ったのは五回だけ…ううん、一回は航空機を落とすのに使ってるから本当は四回だけ、なのに私たち六人をあっさり倒しちゃった…」
海斗「四発で六人を?」
阿武隈「…無理だって思うよね、でもやって見せたの、私は上から見てたけど、深海棲艦を撃ってる朧ちゃん達の艤装を持ってる手を狙ってた、撃たれて、体が傾いた朧ちゃん達は、味方を撃っちゃったの、本当に何が起こってるかわからない、ありえない攻撃をされた…」
海斗(…つまり、相手はキタカミだったのか…」
阿武隈「ねぇ、提督…私あの戦い、すごく懐かしいと思ったの、やられたのに安心した…提督、これって何?」
海斗「…何、か……阿武隈がそれに勝てるくらいに強くなれば、わかると思うよ」
阿武隈「…無理、私じゃ無理だよ…」
海斗「どうして無理なのかな、僕は阿武隈なら勝てると思うけど」
阿武隈「なんで…?」
海斗「阿武隈はなんで勝てないと思ったの?」
阿武隈「あんな撃ち方…できるわけない、提督は見てないから分からないと思うけど、あんなの…」
海斗「そうかなぁ…阿武隈の正確な射撃も、早撃ちも全部すごいと思うよ、真似できる子はそうは居ないよ」
阿武隈「でもあの敵には勝てない…敵…」
海斗「……どうしても勝ちたいなら、一度今のやり方を捨ててみたら?」
阿武隈「捨てる…?」
海斗「一瞬だけ敵の虚をつくために、今までのやり方を捨ててみたらどうかな」
阿武隈「…私のやり方を知らない敵相手にそんなことをしても無駄だと思います…」
海斗「もしかしたら阿武隈のことを調べてるかもしれないよ?」
阿武隈「そんなの…」
海斗「はい、これ」
阿武隈「……これは?」
海斗「これが使えるようになれば、君はもっと強くなれる」
阿武隈「…うん、そうかもしれない……でも、それじゃ届かない気がする」
海斗「そうかな?」
阿武隈「そう、これが付け焼き刃なんかじゃなくて、完全に私の力になったとしても、結局あの敵との勝負は…砲撃の技術が勝敗を分ける、今は絶対に勝てないけど、もっともっと強くなるから…」
海斗「うん、でも無理はしちゃダメだよ」
阿武隈「わかってる…」
船室
海斗「やあ、みんな大丈夫?」
朧「…提督」
潮「ごめんなさい、みんなやられちゃいました…」
海斗「怪我はないかな」
漣「ないです、漣達は…」
海斗「……悪いけど、艤装の修理が完了したらもう一度出てもらうことになると思う」
曙「本気?またあんな目に合うってわけ?」
朧「撤退できないんですか…?」
海斗(そのまま言うのは不安を煽るだけかな)
海斗「現状、作戦行動が完全に不可能なわけじゃないから台湾を目指すことになったよ、あと数時間で着く、予定だ」
朧「…それは、提督の判断じゃないですよね」
海斗「…決定したのは僕だし、責任も僕にある」
曙「はぁ…今日だけで後何回戦うのかしら」
漣「もう痛いのやだぁ…」
海斗(曙と漣はさっきの敗北のせいで戦闘に抵抗がでてきた、か…)
海斗「とにかく、怪我がないようで良かったよ、しばらく身体を休めて」
朧「はい、お気遣いありがとうございます」
病室
夕張「あ、どうも」
海斗「加賀の様子は?」
夕張「……あまり良くはないですね、暴れたので寝かせました」
海斗(暴れた…?加賀が?)
海斗「何か言ってましたか?」
夕張「いいえ、それとこれ、怪我の状態です」
左足と右肩に着弾したらしく、艤装のガードを通り抜けての深刻なダメージがあると記載されている
海斗「…夕張さん、これは」
夕張「あ、お気づきになりましたが、艤装に一撃、そして右肩と左足に一撃ずつ…つまり、三発撃ち込まれてますね、そしてお気づきの通りこれは14cm単装砲からのダメージだと推測され…」
海斗(つまり、キタカミは…加賀にだけ三回も攻撃を加えた、何か理由があるはずだ、加賀が脅威だった?違う、一体何が…)
夕張「と、こんな感じでやられ……聞いてます?」
海斗「あ、はい、聞いてます」
夕張「…とにかく、怪我は深刻、当分出撃できないでしょう」
海斗「加賀に何が起きたかわかるまでは、怪我が治ったとしても出撃させるつもりはありません」
夕張「……そうですか」
横須賀鎮守府
駆逐艦 敷波
敷波「あ」
五月雨「あ」
拓海「ふむ…?」
敷波「…えっと、きょ、今日からしばらくお世話になります…敷波です」
五月雨「よ、よろしくおねがいします…」
敷波(…司令官……自分を殺した相手と一つ屋根の下でどうやって暮らせって言うのさぁぁぁ!!)
五月雨(私が撃った敷波だよね…え、大丈夫かな…めちゃくちゃ恨まれてるんじゃ…?)
海上
駆逐艦 島風
島風「敵を力強く、そして素早く撃滅!」
山雲「流石ですね〜…あら?」
島風「んー…なんか浮いてるね…人?」
山雲「沈みかけてますよ〜?」
島風「よいしょっと……あ」
山雲「どこかでみた顔ですね〜、多分一回しか会ったことないです〜」
島風「こっちにも浮いてる!オウッ!?」
山雲「…誰でしたっけ〜、これ」
島風「扶桑さんだよ」
山雲「あら〜、じゃあ連れて帰ってあげないと〜」
艦内
海斗「扶桑と如月だね、意識が戻るまで病室に寝かせておこうか」
島風「あ、そうだ、如月ちゃんだ、誰かと思った」
山雲「名前が出てきませんでしたね〜」
海斗「2人ともご苦労様、それにしても会敵数が明らかに多すぎるな…予定の半分も進めてない…」
島風「そうなんですか?」
海斗「うん、敵が進路を塞いでる時とかは方向を変えたり、速力を落としたり、予定では多くても二、三回の戦闘でもうそろそろ到着してるはずだったんだけど」
島風「うーん…船が目立ってるから?」
海斗「…いや、それよりも深海棲艦が進むのを拒んでるみたいに見えるね」
島風「深海棲艦が…?なんで?」
海斗「深海棲艦に拠点があるのかすらわからないけど、もしかしたらそれに近いものがあるのかも」
海上
駆逐艦 アオボノ
アオボノ「…チッ、まだどこにも見えませんね、一体提督はどこに……あ」
神通「…あ」
なんでこんな海のど真ん中に…
アオボノ「…それでは」
神通「待ってください、そんなにつれない態度を取るなんて酷いじゃないですか」
アオボノ「私は忙しいんですよ」
神通「…忙しい私達を無理矢理止めてタコ殴りにしたのは…どこのどなただったでしょうか」
アオボノ「何が望みですか、謝罪くらいならいくらでもしますよ」
神通「わかっているでしょう…?…リベンジマッチですよ」
アオボノ「見たところ、海上歩行用の艤装以外装備してないように見えますが?」
神通「ええ、必要ありませんから」
アオボノ「……はぁ…決着がつくかどうかを抜きにして…3分間だけ相手してあげます」
神通「1ラウンドあれば充分すぎますよ…!」
あいも変わらず鋭い蹴りを放ってくる
アオボノ「そのままでいいんで聞きたいのですが…なぜこんなところに?」
神通「南西諸島海域に向かった艦隊を偵察しに」
アオボノ(偵察?何の為に…いや、神通さんはそもそも艦娘として活動していない、艤装を持ってるのも不自然だし…この人の行動は意味がわからない…)
神通「随分と余裕ですね」
アオボノ「時間を無駄にしたくないもので、考え事を……あの、一回すみません、待ってもらえますか」
神通「…なんですか?」
アオボノ「今の時代に褌はないと思います」
神通「……遊びのつもりでしたが、ここで殺してもいいかもしれませんね」
アオボノ「おや、本気をみれるのは僥倖です…ッ!」
手刀からの突き…?
アオボノ「恐ろしく鋭いですね、爪で頬の皮膚が裂けてしまいました」
神通「いい加減、攻撃してきたらどうですか?」
アオボノ「……そうですね、あなたの攻撃は私には使えません、その長い手足で勢いをつけ、その勢いを殺さずに突く、しかも体が一切ブレない、指先がブレることがないから皮膚どころか骨すらも貫くのでしょうね」
神通「試しますか?」
アオボノ「いいえ、これだからあなたみたいな脳内筋肉バカは嫌いなんですよ、艤装や武器の扱いなら筋肉量に左右されない程度は真似できるのに」
神通「おや、大したものですね」
アオボノ「…まあ、私の闘い方は…ここではできませんし…素直に言うと今のをみて私は勝てる気がしませんでした、なので降参します」
神通「おや、良いんですか?」
アオボノ「一緒に船を探しましょう、メインの艤装がそこにあるんですよ…それから私もリベンジしますから」
神通「……まあ、構いませんが、これでお互いに1勝、という事で」
アオボノ「引き分けのまま逃げても良いんですよ」
神通「お互い様です」
艦内
駆逐艦 綾波
綾波「し、司令官…!」
遅かった、司令官が見回りに行って、帰るのが遅いと思ったから探したら…
綾波「刺されてる…でもここは致命傷にはならない…ここで殺すつもりは……じゃあこの船は放棄される…?」
近くに気配…そして、鉄の匂い
綾波「…貴方ですか、貴方が刺したんですね」
ナイフを持った乗組員が襲いかかってくる
ナイフを持った手を蹴り、弾き飛ばす
綾波「…殺さないでおいてあげます、あなたは証人としての価値があるので……ですが、このまま無傷で捕縛するのは私が個人的に気に入りません」
蹴り倒し、足の骨を踏み砕く
綾波「…どうせ貴方なんて切り捨てられるんですよ、トカゲの尻尾きりの様に…どうせ偉い人にとって部下なんて駒なんですから…」
綾波(…私は、司令官の駒になれているのでしょうか、私はどうすれば…)
弾き飛ばしたナイフを拾い上げる
綾波「協力者の名前と、所属、その他諸々を答えなさい、死ぬより辛い目に合わせる手段は…いくらでも心得ています」
船室
綾波「4人目…これで、全員」
協力者として名前が上がった人間を連れ出し、全員制圧した
筋力などを無視した艤装で強化した蹴りが入れば、良くても骨が砕ける、あたり所によっては死ぬ程のダメージになる、しかも相手はこちらが攻撃してくるなんて夢にも思ってない
ぬるい仕事だった、あとは一人一人苦しめて吐かせるだけ、ゆっくりと甚振って、じっくりと…
海斗「…綾波」
綾波「司令官、気がつかれましたか…止血だけは済ませています、夕張さんには先ほど連絡しました、もう少しだけお待ちください…」
海斗「綾波、殺しちゃダメだ…」
綾波「え…?」
なんだろう、急に気持ち悪くなってきた…なんだろうこの感覚…
綾波(…いつの間に、前の感覚が…)
いつの間にか楽しんでいた、悦楽に支配されてはいけない、私がやってる事はただの代わり、私は私の悦楽のために人を殺すことはもうやめたんだ…
綾波(足音…)
朧「なにこれ…綾波、これは…!」
悪いことが重なった…
綾波「ち、違います!これは…」
警報が鳴る、会敵した時のものとは違う
そして船体が大きく揺れる
綾波「ひ、被雷した…!」
一つではない、いくつやられた?不味い、本当にこの艦が沈む…!
朧「うわ!うわわっ!?」
振動とともに大きく傾き、朧が司令官の方に転がっていく
すぐに放送で船底に穴が開き、浸水が始まったことが伝えられる、各所で騒ぎが始まった
綾波(どうすればいいの…?どうしよう、どうしよう…私に求められてるものは…)
朧「っつつ…て、提督!?意識がない…綾波…!」
綾波「ち、違うんです!」
朧「ナイフ持ったままよくそんな事言えるね…」
綾波「あ…」
証拠になる、と思ってたら…こっちが追い詰められる証拠になるなんて…
綾波「と、とにかく逃げないと!私も手伝いますから!」
朧「要らない!さっさと消えて!…誰か!誰かいないの!?」
…ここで余計に時間を使うわけにはいかないか…早く脱出手段を確保しなきゃ