元勇者提督 作:無し
海上
駆逐艦 アオボノ
アオボノ「長門さん、扶桑さんと如月さんは抱えてください」
長門「構わないが…提督達は」
アオボノ「綾波から今通信が入りました、提督は無事だそうです」
朧「…燃料は確保したよ」
明石「一応その場凌ぎのボートっぽい何かはできましたけど…ええ、4つ…一つあたり10人が限度、それ以上は沈むと思います」
アオボノ「充分すぎますね、島風さん、水上歩行用の艤装をお一つ貸していだけませんか?代わりにこちらを渡すので」
島風「…同じ艤装…それにその双剣……そっか、これはそういう戦い方のためにあるんだ」
アオボノ「おや、思ってる数倍は勘がいいんですね」
島風「…できるの?」
アオボノ「やるんですよ、出来ないことをやるのは特技ですから」
島風「…じゃあ、半分こ」
短剣を一つ投げる
アオボノ「2人で敵を殲滅しましょうか」
島風「私1人でも余裕だよ」
アオボノ「私1人でも万に一つ…いや、たとえ億に一つもありえはしませんが…例えば誰かを失う事になったら提督が悲しみます」
島風「む…じゃあ、それで」
朧「日向さん!急いで救助に!」
日向「はい!」
その辺を浮いてる兵士もこれで一応命は助かるはず…後は提督の事だけ
横須賀鎮守府
駆逐艦 敷波
五月雨「あ、あの…お茶…」
敷波「え、あ…ど、どうも…」
五月雨/敷波(気まずい…)
五月雨(初めてこぼさずにお茶を出せたけど手の震えが止まらない…)
敷波(これ毒?毒入ってるよね?え、飲めと?自殺しろと…?)
五月雨/敷波(沈黙が辛い…何か喋って…!)
五月雨「え、えと…あの」
敷波「う、ううん?」
五月雨「そ、その…い、良い茶葉なので!美味しいと思います!」
敷波(…そうか、上等な茶葉で死ねるなら死に様として上等だろうってことか…仕方ない…腹を括ろう!)
敷波「い、頂きます…」
五月雨(やった!私が淹れた飲み物を誰かが飲んでくれるのって初めてだ!)
敷波(手が、手が震える…!落ち着け、覚悟を決め…あ)
湯呑みが手を滑り落ち、膝で跳ねて地面にぶつかって割れる
敷波「あ、ごめんなさい!」
五月雨「…そんな…!」
敷波(うわ!その反応マジ!?明らかに毒殺失敗で困ってる顔してるよ!?絶対に毒殺失敗で困ってるよ!)
五月雨(せっかくこぼさずに淹れたのに…私のドジじゃ無くて、相手の人のドジでパァに…うぅ…)
五月雨「も、もう一杯淹れてきますね!」
敷波「あ、お気遣いなく!…行っちゃった…え、嫌なんだけど…飲みたくない…」
遠方から悲鳴と何かが割れる音がする
敷波「…何?何が起きてんの?え?」
10分後
大淀「すいません、五月雨さんが棚の下敷きになったので私がお茶をお持ちしました」
敷波「す、すいません…わざわざ」
大淀「…心配せずとも、毒なんか入れませんよ、あなたの上司と、うちの上司が仲がいいですから」
敷波「……でも、貴方は、アタシを…」
大淀「ああ、殺したいほどには憎んでる……筈なんですけど、今は生きてますからね、私も提督も…」
敷波「………」
大淀「提督を暗殺したのは貴方である事は調べてます、と言ってもあの大和型2人も噛んでますし、私としてはそっちの方が嫌いですけど…じゃなくて、別に今生きてるんですから、変な考えを持つのもどうかと思いまして」
敷波「…変では、無いと思います…」
大淀「気にしなくて構いません、私たちは貴方を受け入れます……それよりも、貴方には辛い話をします」
敷波「…辛い話……」
大淀「宿毛湾泊地の艦隊を乗せた艦が沈められました」
敷波「そんな!綾姉ぇは!?」
大淀「わかりません…深海棲艦の攻撃によるモノ、となってはいますが…」
敷波「違うんですか…?」
大淀「まあ、恐らくは…倉持さんの艦隊が艦娘システムの有用性を世界に広めてしまいましたから、上層部としては面白くないのでしょう」
敷波「そんな理由で…?なんで…!」
大淀「さあ、でも人間は欲深い生き物ですから、それに貴方だってつまらない指示で人を殺してる…貴方に意見する権利はありませんよ」
敷波「…っ…」
大淀「でも、あまり心配はないと思います、こちらで同行させている艦娘との連絡がついていますので、ただ…綾波さんに殺人の容疑がかかっているようです」
敷波「綾姉ぇ…いや、綾姉ぇはもう人を殺したりなんかしない…!絶対にあり得ません!」
大淀「である事を祈ります…さて、私達も仕事を始めましょう」
大淀さんが書類を出す
敷波「…この書類は?」
大淀「簡単に言えば、貴方が出す被害届です、横須賀鎮守府での貴方への扱いは明らかに法にも、軍規にも違反するモノです、たとえあなたが誰にでも牙を剥いたとしてもね…」
敷波「……何が狙いですか…」
大淀「革命、というと大袈裟ですが…上層部の一斉排除でしょうか」
敷波「できるんですか?」
大淀「無理です、なので下準備の段階から色々仕込んで準備を始めます」
海上
軽巡洋艦 夕張
鳳翔「こっちにも生存者がいます!」
日向「多過ぎます…」
朝潮「……満潮、絶対こっちを見ちゃダメ!!」
血の匂いが充満している、ここに飛んできた砲撃で木っ端微塵になったモノが散らばっている
片腕のない者も居れば、下半身のみが浮いていたり、頭と肩が浮いていたり
阿武隈「…駆逐艦は絶対にこっちに来ないようにしてください!」
北上「おぇ…気持ち悪…」
赤城「……長く見ているとおかしくなりそうです、早く生存者を確保して離れましょう」
夕張(コイツらの何割かは、私たちを殺そうとした…本当に救う必要があるのか…)
日向「夕張さん、大丈夫ですか…しんどいなら離脱していただいても」
夕張「ううん、大丈夫…」
青葉「…あれは……深海棲艦!深海棲艦が来てます…!東に大量の深海棲艦!」
鳳翔「艦載機を向かわせました……これは…深海棲艦に人が襲われています!向こうでも船が沈んだようです!」
夕張「嘘…何がどうなってるの…!?」
アオボノ「積載量は限界です、が、夕張さんならそちらの残骸を使えば筏くらいは作れるでしょう?」
夕張「で、できる…けど…」
アオボノ「島風さん、手を貸してください、私たちで敵を殲滅します、うまくやれば向こうの救命具が手に入るかも」
島風「燃料は!?」
アオボノ「持参してます」
青葉「ああ…そのドラム缶燃料なんですね…」
アオボノ「誰か機銃を」
朧「あ、うん…これ」
アオボノ「それでは、皆さんもこっちに向かってください」
島風「うわ、本当にその速度出せるんだ…よーし…!」
明石「……なにあれ、なんであんなに速いの…?40ノット近く出てない…?」
夕張「…あの人はジョーカーなのよ…」
青葉「ジョーカー…?…まさか、全部の艤装に…?」
夕張「そう、身体的に無理な物は除いて全てね…朧ちゃん達の予備も…あの人の依頼で作った…」
朝潮「……成る程」
駆逐艦 アオボノ
アオボノ「見えた、島風さん、使い方は?」
島風「わかってるけど、一応聞きたい!」
アオボノ「簡単に説明します、起動すると艤装が2度ジェット噴射をします、一度目で海面から浮き、二度目で方向転換…いいですね?燃料をパージしました」
島風「やっぱり空中を蹴る感じ…よし!やるよ!」
アオボノ「戦闘開始」
二手に分かれる
島風「連装砲ちゃん!砲撃開始!」
アオボノ「死にたく無いのなら、まだ見逃してあげますよ」
流れるように、そして独楽の様に敵の間をすり抜けて斬り裂く
島風「あ…これ、方向転換すると結構脚に負担が…!」
アオボノ「だから私1人で使おうとしたんですよ」
島風「むー…もう、酸素魚雷!」
アオボノ(的確に雷撃してる…てっきり砲撃しか頭がないと思ってたけど)
アオボノ「おや?」
遠方から来てるのは…綾波と…
アオボノ「……良し、まずは褒めてあげましょう」
綾波「ご、合流できました!司令官!」
海斗「曙!島風!他のみんなは!?」
島風「今こっちに向かってます!」
アオボノ「周囲は深海棲艦がうじゃうじゃいます、しばしお待ちください…」
島風「とーっ!」
アオボノ「島風さん、もう少しお淑やかにしたらどうですか、下着が丸見えですよ」
島風「私だってこんな服よりジャージの方がいいよ!?でもジャージだとびしょ濡れで寒いの!!」
アオボノ「…御愁傷様です」
剣を突き立て、蹴って押し込む
アオボノ「殲滅完了」
島風「よーし!おわりーっ!」
あっちも合流してきたか
夕張「凄い、こっちの想定を明らかに超えたデータよ…!」
明石「ねぇ、あの2人って本当に同じ人間なの?」
北上「自信無くすよねぇ、砲撃ダメなら接近戦ってのが笑えるけど」
青葉「司令官…ご無事で何よりです」
海斗「うん、ボートが深海棲艦に攫われてたところを綾波が助けてくれたんだ」
綾波「えっ!?…えぇ…えと…」
朧「……」
綾波「あ……ァハッ!!」
島風「速っ…」
綾波が海に浮いている兵士を1人蹴り飛ばし、他の兵士の頭を踏んで沈める
北上「なにやってんの?殺すつもり?」
綾波「…ぁ…い、いや!そそ、そうじゃなくて!」
アオボノ(…自分の命がかかってる中で提督を殺すのを優先する輩がいるとは思わなかったけど、今のは良い脅しになったな)
アオボノ「そんなことより、生存者の救助です、綾波さん、足をあげてあげたらどうですか?」
綾波「は、はい!」
島風「蹴られた方生きてるの…?」
アオボノ「かなり加速した蹴りでしたから微妙ですね、私たち同様艤装に噴出機構をつけて瞬間的に加速させ、火力を上げてる…ああ、補助器具で足だけに負担が行かない様になってるのか…」
青葉「救命具多数ありました!」
夕張「よし、早く回収して帰ろう…もうヘトヘトだよ…」
島風「私、駆逐艦隊の援護に行くね…」
アオボノ「お願いします、長門さんも扶桑さんと如月さんを抱えていますから戦闘は無理ですし、主力はほとんどこちらにいる、しっかり守ってください」
島風「もちろん、提督は任せたよ」
アオボノ「当然です」
宿毛湾泊地
アオボノ「…最後尾まで到着…か、艦娘の犠牲者はなし、海兵の方は…こっちじゃ把握のしようがありませんね……もう夜も遅いし、早く寝ますか」
島風「ん〜……?ん?」
青葉「どうしたんですか…?…この匂いは…」
赤城「和風出汁に醤油の甘い香り、お腹が刺激されますね…」
アオボノ「…肉じゃがみたいですけど、変ですよ、誰も居ないはずなのに…」
食堂からは確かに匂いが…しかも出来立ての様に湯気も上がってて…
食堂
島風「ご、ごはんだぁ…!え、た、食べても良いの!?」
明石「えと…誰が用意してくれたのかわからないし…わ…本当に肉じゃがだ…お浸しとお味噌汁…焼き鳥もあるのは何故…?」
アオボノ「…全部バターが乗っていますね…しかも、ついさっき乗せたばかりのようです、まだとけきっていません…」
綾波「……多分…た、食べても大丈夫…だと、思います」
朧「…うん、問題ないと思う」
アオボノ(翔鶴さんがここまできていた…?)
島風「いただきまーす!……おいひー!お腹ぺこぺこだったから沁み渡るよ…!」
青葉「…この味……」
夕張「ん!美味しい!本当に美味しいわ!」
明石「わ、本当だ…?……アレ…なんだろ、この感覚…なんで泣いてるんだろ…」
朝潮「懐かしい味…」
アオボノ(本人が来てたのは間違いないか…)
アオボノ「…美味しい」
病室
正規空母 加賀
加賀「…っ…?」
鼻腔をくすぐる匂いに目が覚める
薄暗いけど、病室…しかも船じゃない…私達は帰ってきたのか
海斗「おはよう、加賀」
加賀「…おはようございます…あら、これは…?」
食事が用意されてる…肉じゃがに…焼き鳥?
海斗「食べてみて」
加賀「…はい」
焼き鳥を口に運ぶ
加賀「…固いです」
火を通しすぎてゴムの様に固い
口直しに肉じゃがを食べる
加賀「…嘘……提督、これは誰が」
ヲ級「私デス」
すぐ背後から声がする
加賀「…翔鶴なの…?いや、翔鶴なのね…会いたかった…!」
ヲ級「……私ハ、今ノ加賀サンニハ…会イタクアリマセンデシタ…」
拒絶された…?何故…
加賀「どうして?私が生きているから?それとも綾波を殺せなかったから?」
キタカミ「あのさぁ、加賀…良い加減にしなよ」
加賀「…キタカミさん…貴方もいたのね…」
キタカミ「提督、やっぱ撃ってもいい?」
海斗「ダメだよ」
加賀「…翔鶴、私に会いたくないならどうしてここに…?」
キタカミ「この件は提督に一任したつもりだったけど、翔鶴がどうしても物申したいらしいからわざわざ来たんだよ」
加賀「この件…?」
海斗「加賀、翔鶴は君が嫌いなわけじゃない、キミが翔鶴を大事に想ってるように翔鶴だって加賀を大事に想ってる…」
加賀「じゃあ、なんで…」
ヲ級「…私ノ事デ手ヲ汚ス真似ハヤメテクダサイ…私ノ名ヲ語リ、殺意ヲ人ニ向ケナイデ…加賀サンノヤッテル事ハタダノ八ツ当タリ…!私ノセイニシナイデ!」
加賀「…私は…」
ヲ級「……全部、知ッテルンデス、加賀サン、モウ囚ワレナイデ、今ヲ生キテ…私ノ死ハタダノ偶然…」
加賀「……そうかもしれない、確かに私は綾波に囚われていたのかもしれない、だけど私は綾波を許さないし、貴方を連れ戻したい」
ヲ級「…ナラ、待ッテマス、皆ンナデ迎エニ来テクレル日ヲ」
加賀「今じゃダメなのかしら…」
キタカミ「何であたしたちがこんな形とってると思うのさ…深海棲艦は上の意思でいつでも暴走する…翔鶴一人でここに来て、暴走したら…ヘトヘトのみんなにどんだけ被害が出るか」
ヲ級「…モウソロソロ、帰リマス…長居ハ危険デスカラ…」
海斗「…またいつでもおいで、迎えに行く準備が済んだら、すぐに迎えに行くからね」
加賀「………」
ヲ級「…ソレデハ」
加賀(………)
加賀「翔鶴」
ヲ級「……」
加賀「…貴方の作った焼き鳥、固かったわ」
キタカミ「うわ」
ヲ級「…スイマセン」
加賀「肉じゃがも慣れた味だけど、少し濃いし、変わらないわね」
ヲ級「………」
加賀「違う、口下手で悪いけど…私はこう言いたいのよ、貴女は何も変わらない、何時迄も私のダメな後輩なの、戻って来るなら…私の前にも顔を出しなさい」
ヲ級「ハイ…!」