元勇者提督 作:無し
横須賀鎮守府
提督 火野拓海
拓海「ふむ…」
大淀「どうしたんですか、難しい顔をして…」
拓海「嫌な手段を使ったな…と思ったのだ、ヘルバが動いた事は正直助かる、私も手を借りるか迷っていたからな、だがやり方が派手だ」
大淀「赤裸々すぎる、ということですか?このくらいしなくてはダメージがないとも考えられますけど」
拓海「我々も痛みを伴う、いや、痛みが多すぎる、現在の士官の多くは責任を被る事になる、私は例外だがな」
大淀「…横須賀鎮守府提督、という肩書きではありますが、まだ中佐ですものね、提督にはノーダメージですか」
拓海「中佐というのも十分過ぎるほど異例の肩書きだ、流石にその点を突かれるのは痛い、だが私の足を引っ張るような余力もないだろう、これ以上問題を増やすわけにもいかんだろうからな」
大淀「流石に無傷とは行かずとも…ですか」
拓海「ここまで考えた上の行動だろう、さすがはヘルバ、か」
大淀「ではそちらの面は置いておくとして…浜風さんからの苦情はどうしましょう」
拓海「訓練でのスコアが基準値を超えるまでは出撃できないと言っておけ」
大淀「…その基準値、私でも出せませんけどね」
拓海「五月雨が出したスコアの中から一番低いものを選んだ、充分有情なつもりだが?」
大淀「提督は五月雨さんと同レベルの兵士を作ろうと?」
拓海「彼女も親元に帰る、基本的に出撃のないのか鎮守府において大きい戦力は必要としないが、有事の際にはな」
大淀「まあ、そうですね…」
拓海「アオバ達はどうなった?」
大淀「まるで情報がないそうです、道場も、家も、どこにいるのやら…」
拓海「……ふむ、亮は確か今…」
大淀「三崎さんですか?今は都内の……まさか、寮ですよ?」
拓海「一応改めるようにと伝えておけ、水上歩行用の艤装さえ手に入ればそれで良い」
大淀「わ、わかりました…多分ないと思いますけど…」
拓海「ああ、私もそう思う……だが念には念を入れろ、床下、天井裏、埃一つ見逃すことのないようにと」
大淀「掃除もしてきてもらいましょう」
東京 寮
川内
川内「ぶぇっくしっ!」
神通くしゅんっ!」
那珂「はっ…はぁ〜っ…はぁ…」
亮「なあ、あんまり大きい音は…」
川内「ごめんってば、だけどくしゃみを我慢するのは無理があると思わない?」
神通「那珂ちゃん、ちゃんと出さないと菌が外に出ませんよ」
那珂「あー!ムズムズする!」
亮「声がでけぇ…お前らの声のせいで俺は女児向けアニメとかギャルゲーばっかやってる奴って扱いになってるんだぞ…!」
神通「…それは、すいません」
那珂「でもさー…」
川内「…?」
神通「何か騒がしいですね、那珂ちゃん」
那珂「はーい」
屋根裏に素早く隠れると同時にノック音
亮「はい」
アオバ「すいませーん、部屋の点検に来ました」
亮(点検…聞いてねぇぞ…)
川内(勘づかれたか…)
神通「姉さん、出口に行きましょう」
那珂「待って、1人とは考えにくいよ…出口も張ってるんじゃない?」
アオバ「おー、綺麗なお部屋だこと」
亮「何の要件でしょうか」
アオバ「貴方が女性を連れ込んでるって話を聞きまして」
亮(転がり込んでるだけだけどな)
川内(多分それで調べにきたわけじゃないよね、わざわざ艦娘が来るってことは…)
神通「逃げる他ありません…那珂ちゃん、外の様子は?」
那珂「ダメ、何かウロウロしてる人がいて…あれ?あの子って…」
重巡洋艦 アオバ
アオバ「部屋を改めさせてもらいます」
亮「どーぞどーぞ」
アオバ(…殺風景な部屋だけあって、なかなか…隠れる場所はない…となると、天井か…出入り口らしいものはないし…ん?)
ドアがノックされる
亮「…出ても?」
アオバ「どうぞ?」
亮「はい、どちら様ですか」
返事がない
亮「…なんだ…?誰もいない…?」
アオバ(…なんの来客…?いや、今のって陽動なんじゃ…!)
アオバ「天井にはどうやって入るんですか!?」
亮「いや、なんで天井に上がれる前提なんだ…?」
アオバ「あーもう!」
その辺の物に登って天井を叩く
亮「お、おい…危ない…」
アオバ「穴あけてもいいですよね!?」
亮「よかねぇよ?!な、なんで穴開けようとしてるんだ…?」
アオバ「うおりゃぁー!!」
亮「話聞けよ…」
アオバ「…穴開ける道具!」
亮(いや、無いに決まってるだろ…)
携帯が鳴る
アオバ「…もしもし?」
衣笠『見つかったって、歩行用の艤装』
アオバ「…え?」
衣笠『保管庫にあるのを数え直したら出てきたって』
アオバ「……あー…?」
亮「………」
アオバ(これって私人の家を勝手に荒らしに来たヤベー奴なのでは…)
亮「オイ、アンタ」
アオバ「ぴぇっ!?」
亮「さっきから好き勝手してるけど…誰に許可もらってこんなことしてんだ?」
アオバ「…あー、ガサ、どう言えばいいと思う?」
衣笠『提督の名前出すのはまずいかなぁ…でもやれって言ったの提督だし』
アオバ「んじゃ問題ないでしょ、横須賀鎮守府の司令官、火野拓海の指示ですけど?」
亮(さっきキョドってたくせに急に偉そうだな…)
アオバ「…ど、どこに電話を?」
亮「アンタの上司に決まってんだろ、こんな無理矢理な家宅捜索が認められるわけねぇだろ」
アオバ「ハッハー!その上司に言われてきてるんですからこっちに分があるにきまって…」
亮「オイ、拓海どうなって…あ?間違い?」
アオバ(…なんか、雲行きが…?)
亮「…ああ……あー…ああ、つまり、ウチにドカドカと上がり込んできたコイツは、そっちの勘違いで送り込まれたんだな?」
アオバ(ちょーっ!?あ、いや、さっき見つかったってガサが言ってたけど…そんなまさかトカゲの尻尾切りみたいな事されるんですか!?)
亮「勘違いだとよ、ご苦労さん…帰れば?」
アオバ「し、失礼しました…」
アオバ(…ゆ、許された…)
亮「ああ待て、一つだけ聞いとく…アンタが荒らした部屋、その責任は誰にあるんだ?」
アオバ「え?あー…あはは…失礼しましたー!」
三崎亮
亮「ったく…川内、片付け手伝え」
春雨「はい喜んで〜」
亮「うおっ!?…な、なんでお前が…!」
春雨「忍者春雨、お呼びとあらば即座に参上…な〜んて」
亮「…アオバ達が帰ったのはお前の仕業か?」
春雨「勿論、私は便利屋ですから」
亮「春雨…お前、誰と組んでる?」
春雨「スーパーハッカー…欅とかヘルバとか、いろんな名前がありますね」
亮「…なんで欅と組んでる」
春雨「司令官のお役に立ちたいから、じゃあ不足ですか?」
亮「…危険だぞ」
春雨「え?もう危険な目に巻き込んでおいて今更それを言うんだ、おっどろき〜……っといいますか…中途半端だったんですよ」
亮「中途半端?」
春雨「今、みんなの能力が下がる形ですが、私も第一線で戦える…私にもチャンスが来た…碑文使いと馬鹿げた力を持った人たちだけが活躍できた…私の手元にあるのはこれだけ」
亮「…その籠手は…」
春雨「作ってもらったんです、楚良の双剣…私は…中途半端な力を持ったせいで諦める事も食らい付くこともできなかった…だから、私はこの世界でこそ戦いたい、役に立ちたい、みんなを守りたい…川内みたいに、楚良みたいに」
亮「だからって無理するなよ、俺が言うのも違うのはわかってるが…」
春雨「無理なんかしてない、今が楽しい、ようやく私が求められてるんだから」
亮「…そうか」
川内「あのー…そろそろ出てもいいですか」
春雨「いいけど、ここにはもう居ない方が良いよ、旅行に行ってたことにして帰るべき、向こうの水上歩行用の艤装について書き換えは終わったし、疑わしきを罰することはできない」
川内「そもそも神通クラスの格闘戦ができないと移動用の艤装もらっても困るんだよねぇ〜…ほら、どうしようこれ」
亮「…ウチの天井裏はどうなってんだ…?」
春雨「割と快適空間だったよ、ソファと漫画とシンクがあった」
亮「…どこからツッコミいれりゃいいんだ…?つーか…シンク…?」
宿毛湾泊地 食堂
提督 倉持海斗
間宮「左手はちゃんと関節を包丁の板に当て続けてください、指を切っちゃうので」
満潮「こ、こうですか…」
如月「できてるのかしら…」
間宮「大丈夫、2人ともちゃんとできてますよ」
戦闘を得意としない2人は食堂の調理補助をする事になった、間宮と鳳翔は長居する予定はない、次期作戦の目処が立たないのですぐにでも帰る事になる
その前にある程度料理の基礎を教えてもらいたい、と言う2人の要望のもと間宮主催の料理教室が開かれた
アオボノ「…肉じゃがなのかカレーなのか、そこが重要ですね、肉じゃがは食べたばかりなので御免被ります」
加賀「あら、美味しければいいと思うのだけれど」
朝潮「それよりも…司令官、私達に話と言うのは」
海斗「これだよ」
質素な包装をされた小箱を机に置く
加賀「プレゼントかしら」
海斗「違う、これを秘密裏にウラジオストクに運ぶ必要があるんだ」
アオボノ「…成る程、理解しました」
朝潮「説明されてもない状況で何を…?」
アオボノ「上層部が苦虫噛み潰した顔をしてる理由と、この小箱が出てきた理由、そして今朝来た試験的に艦娘が哨戒艇を扱うと言う…まあ、これだけわかってれば充分過ぎます」
海斗「君たち3人にはウラジオストクに向かってほしい、もちろん使えるのは海路だけ、哨戒艇を一艘用意してある、行き帰りに充分な燃料も用意してある」
加賀「…そうだとしても、30ノットで進めても往復に2日はかかるわ、というより…三人で乗るような哨戒艇ではとても往復はできない」
海斗「向こうでも燃料の補給ができる、だから往復は可能だよ、時間がかかりすぎるのは間違い無いんだけど…」
アオボノ「構いません、私一人でも行きます」
朝潮「私も行きましょう、ボートはどのくらいの速度が?」
海斗「深海棲艦と戦うより、観測したら逃げる事を優先してるから最高で35ノットまで出せるらしい」
加賀「…じゃあ、充分ね…でも、その速度なら装甲は期待できないわ、一撃でも被弾したら帰れない」
海斗「そう考えていいと思う、それと哨戒艇の操作に詳しい人が1人来てくれて、その人が現地での受け渡しもやってくれるらしい」
アオボノ「至れり尽くせり…いや、私たちは単なる護衛か」
朝潮「そう言う事でしょう、出発は?」
海斗「明日明朝、海門海峡を超えて日本海に進出したら直進して」
加賀「舞鶴あたりの子がやるべきだと思うのだけれど」
海斗「あ、そうだ…一応これは極秘任務だから、決して口外しない事、見られない事、良いね?」
朝潮「食堂でして良いのですか?」
海斗「艦隊のメンバーには話すよ、主力が急に消えるんだから隠せるわけがない」
加賀「妥当な判断ね」
横須賀 喫茶店
キタカミ
キタカミ「おー、なんかすごいニュースだねぇ」
瑞鳳「…私たちこんなところでお茶してて良いのかな」
イムヤ「さあ…でも情報集めは必要ですし…」
キタカミ「見てよこれ、艦娘システムに反対するデモだって」
瑞鳳「何故そんなものが…?」
イムヤ「脚のない子を雇用する代わりに…動物扱い…うわ…」
キタカミ「他にもロクでも無いメールとか、色々流出したみたいだね、いつの時代も上の人間は腐ってるねぇ〜」
瑞鳳「あ、このサンドイッチ美味しい」
イムヤ「このクッキーもいいですよ」
瑞鳳「ホントだー、そっちの紅茶ちょっと分けてよ」
キタカミ「…あのさ、真面目な話してんのに聞かないのはどうなのよ」
瑞鳳「だって私たちは上を潰すわけじゃないし」
イムヤ「そうそう、それよりも今を楽しむ方が大事ですよ」
キタカミ(…まあ、一歩道を踏み外せばどうなるか、見ちゃったからねぇ…思い残すことの無いようにしておかなきゃか)
キタカミ「…深海棲艦を人間に戻す手段ってあいつらに頭下げる以外にないのかな」
瑞鳳「研究者とか、いるんじゃ無いでしょうか?」
イムヤ「ハッキングとかしてみます?」
キタカミ(研究者…ねぇ……あれ?)
キタカミ「綾波抱き込めばはやくない?」
瑞鳳「え?…いや、キタカミさんがそれでいいならいいけど…」
イムヤ「でも綾波だし…」
キタカミ「アイツの力は確かだけど…どうしよっかなぁ」
キタカミ(背に腹はかえられぬ…か…かといってあれは劇薬だ…)