元勇者提督   作:無し

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泊地襲撃

宿毛湾泊地

駆逐艦 曙

 

曙「行ってらっしゃい、曙」

 

アオボノ「…アンタが言うのはなんか怖いわね」

 

朝潮「わざわざ見送りだなんて、何かあるんですか?」

 

曙「さあね、変な感じがしたから様子を見に来たの、アンタらが何するかすら聞かされてないけど」

 

アオボノ「…ホントに変な感じね、アンタも、今日って日も」

 

加賀「曇ってるわね、午後から雨になるわ」

 

アオボノ「哨戒艇は?」

 

加賀「今運転してくれる人と提督が話してるわ」

 

朝潮「爆雷よし、ソナーよし、主砲、魚雷、燃料、全て問題ありません」

 

アオボノ「ん、私も全部問題ないです」

 

加賀「艦載機も整備完了しています」

 

曙「…そろそろ日の出ね」

 

阿武隈「あれ?みなさん、集まって何を…?」

 

アオボノ「おはようございます、少し留守にしますので、その間はお願いいたします」

 

阿武隈「お出かけですか…?その割には物々しいですけど」

 

加賀「極秘任務よ、提督から朝礼で言われるはず、内容はその時にでも聞いて」

 

阿武隈「御武運を」

 

曙「戦果あるといいわね」

 

アオボノ「…ま、そうね…行ってくるわ」

 

 

 

 

 

 

哨戒艇

正規空母 加賀

 

加賀「随分と変わった色ね」

 

佐藤「衛生写真なんかに映って発見されないように…って書いてますが、速度が出てる時は効果は薄いと思います、これから二日間、快適な海の旅を」

 

アオボノ「…快適、でしょうか…果たして…そう言えばあなたは」

 

佐藤「これは失礼、名乗り忘れてました、私ネットワークアナリストの佐藤一郎と申します」

 

アオボノ「…ヘルバの腹心、黒の精霊ビト?」

 

佐藤「博識な方も居られるようで、ビトとお呼びになって下さっても構いませんよ」

 

アオボノ「結構です」

 

加賀「…日本海に出たら私が彩雲を飛ばします、周辺の索敵はお任せください」

 

    

 

 

 

 

宿毛湾泊地 

提督 倉持海斗

 

海斗「集まってるみたいだね、伝えておく事はは二つだけ、今日より三日間、青髪の方の曙と加賀、朝潮には出張に出かけてもらってるよ、詳細が知りたければ個別に聞きに来てほしい」

 

朧「何か聞いてる?」

 

曙「さあね」

 

海斗「それと第二次南西諸島方面への出撃について詳しい作戦会議をする事にしたよ、現状では他の鎮守府などの戦力との合同作戦になると思われる、これについての会議は15時より会議室で行うので、全員参加するようにね」

 

満潮「…また行く事になるのかな…」

 

如月「心配ないわ、帰ってこられるはず…」

 

海斗「何か今聞いておきたい質問は?」

 

青葉「えっと…はい、出張ってどこに…?」

 

海斗(…個別対応にしてもいいけど、ここで答えないと不自然に思われるかな)

 

海斗「ウラジオストクだよ」

 

青葉「ウラ…?…ロシア!?」

 

朧「え、ロシア?ロシアまで…?」

 

海斗「極秘の護衛任務だから口外しないようにね」

 

潮「そ、それ私たちが聞いてよかったんですか?」

 

海斗「大丈夫だよ、ただ、誰に聞かれたとしても絶対に言わないようにね、他に質問は…なさそうだね、じゃあ解散」

 

海斗(できれば内容については少数に伝える形にしたかったけど、みんなの前で緘口令をしけたと思えばいいか)

 

青葉(わざわざロシアに何を…ロシア…ロシアって何があったかな…)

 

朧「ロシアかぁ…お土産ってあるのかな」

 

曙「あるわけないでしょ、海路で行くんだろうけど、深海棲艦がうじゃうじゃ…いや、お土産に首でも持って帰ってきたりして」

 

漣「ひぇー…青いぼのたんはおっかないなぁ…」

 

潮「実際、一二を争うくらい強いからね」

 

北上「……」

 

阿武隈「うーん、私も行ってみたかったなぁ、極秘任務」

 

赤城「そっちですか、てっきりロシア料理を食べたいのかと」

 

阿武隈(この赤城さんは食いしん坊だなぁ…)

 

 

 

 

 

 

 

 

海上

キタカミ

 

キタカミ「は?何それ」

 

瑞鳳「私達に行けって?」

 

ヲ級「…イエ、適当ナ深海棲艦ニ向カワセタソウデス…」

 

キタカミ「…なんでまた泊地を襲撃なんて…」

 

イムヤ「元々深海棲艦は色んな浜辺や海岸、港を襲って人間を殺してた、それが軍港というだけ…って考えは落胆的過ぎますよね、統率者がいるわけだし…」

 

キタカミ「…チッ…まあ、どのみち向かった奴らは壊滅する、あたしらが全部守る理由はない…ってのは…」

 

瑞鳳「仕方ありません、今回の犠牲には目を瞑るべき…と言うか、なぜ戦力が揃ってる宿毛湾泊地を…情報に疎い…?」

 

キタカミ(…あのクソッタレが情報に疎い…は、あるかもしれないけど、それだけが理由とは思えない、何か理由があるはず…)

 

キタカミ「一応様子だけ見に行けるようにしとこう、こんなので出し抜かれてもつまんないし…」

 

瑞鳳「わかりました」

 

イムヤ「賛成です」

 

 

 

 

 

 

海上

駆逐艦 アオボノ

 

アオボノ「予定通り、出ましたか」

 

加賀「軽巡級3、駆逐級3…どうするの?」

 

アオボノ「艤装を持ってきています、私1人で充分ですよ」

 

加賀「慢心はどうかと思うわ」

 

アオボノ「じゃあ、朝潮さんも来てください」

 

朝潮「わかりました、片付けましょう」

 

艤装を装備し、海面に降りる

 

アオボノ「戦闘開始」

 

加賀「…ラジオとか、あるかしら」

 

佐藤「ありますよ、漫画もファッション雑誌もあります、お好きなものを」

 

加賀「……ラインナップが微妙ね、次はジャンプを持ってきて」

 

佐藤「サンデー派なもので」

 

朝潮「…なんとも暢気な」

 

アオボノ「信頼されてると思えばいいです…来ましたよ、目視」

 

駆逐級が先に見えたか

 

朝潮「佐藤さん、速度を落とせますか?このままの速度を維持しながら戦うのは厳しいので」

 

アオボノ「それはあなただけです」

 

主砲で駆逐級を二隻沈める

 

朝潮「…言っておきますけど、あなたが規格外なのであって、普通は当たりません」

 

佐藤「こんなものでどうですか?」

 

朝潮「充分です」

 

朝潮の主砲の角度を確認する

 

アオボノ「…ふふ…」

 

朝潮「…はぁ…」

 

朝潮より一呼吸速く放つ

駆逐級の側面を弾き、肉の柔らかい面を露出させ、朝潮の砲弾を当てる

 

朝潮「本当に気持ち悪いですね、あなたの砲撃」

 

アオボノ「それはどうも」

 

朝潮「…褒めてないんですけどね、あの北上さんが今の貴方を見たらどう思うでしょうか」

 

アオボノ「嫉妬で狂うんじゃないですか?」

 

朝潮「嫉妬…しますかね、あんまり向上心がない感じでしたけど」

 

アオボノ「軽巡級を始末します」

 

魚雷発射管を向ける

 

朝潮「…やはり1人で片付いてしまいましたね」

 

アオボノ「当たり前です」

 

魚雷を放って船に乗り込む

 

アオボノ「戦闘終了、出してください」

 

加賀「…潮風に晒し過ぎました、髪が痛んでしまいますね」

 

朝潮「到着したら休む時間はあるんですか?」

 

佐藤「予定通りでしたら」

 

アオボノ「退屈ですね、大物の一つもいない」

 

加賀「そんなに戦いたいの?」

 

アオボノ「いいえ、考えたくないだけです」

 

朝潮「何を」

 

アオボノ「…いや、忘れてください」

 

アオボノ(…良くも悪くも、私と綾波は同類、か…)

 

 

 

 

 

宿毛湾泊地 演習場

駆逐艦 綾波

 

綾波「あ、ありがとうございました…」

 

朧「…打撃の訓練になんで私を毎回誘うの?」

 

綾波「…わ、私の事を、恨んでる朧さんなら…ほ、本気で相手してくれる…と思って…」

 

朧(確かに、いっそのこと殴り殺してやろうかと思ったけど…普通に強いからまず有効打を一撃入れるのが難しいんだよね…)

 

朧「そう言う事なら私は力不足、もうわかったでしょ?」

 

綾波「い、いえ…すごく、たた、助かってます」

 

朧「お世辞は要らないって…」

 

綾波「お、朧さんを…選んだもう一つの理由…」

 

朧「もう一つ…?」

 

綾波「しゃ、射線を目で追ってますよね…も、もし艤装が有れば…撃たれてたら…わ、私は死んでます…」

 

朧「…いや、どう言う事?」

 

綾波「無意識、なんですね…ま、まるで自分の手に主砲を握ってるように…常に、撃つことをか…考えてる…格闘戦の中で砲撃を交えようとしてる…」

 

朧「格闘戦の中で砲撃を…」

 

朧(つまり、ゼロ距離での殴り合いをしながら…砲撃?いや、ちょっとよくわからないな…)

 

綾波「……き、きっと…すぐに、気付きます」

 

朧(気付く…って、まるでわかってるみたいな言い方、癪に触るな…)

 

朧「…そろそろ会議だし、行くよ」

 

綾波「は、はい…」

 

 

 

 

 

会議室

提督 倉持海斗

 

長門「つまり、人海戦術…と言う事か?」

 

海斗「いや、それだけでは難しい、だから乗る艦自体の設備もフル活用するつもりだよ」

 

曙「最初っから使えばよかったんじゃないの?」

 

海斗「…それが、前回は砲弾とか魚雷とか、全部無かったらしくて」

 

朧(完全に捨てるつもりだったわけだ…)

 

綾波(流石に一回も砲撃しないのは不自然でしたけど…そもそも弾薬を積んでなかったんですね…)

 

夕張「次はそんな事ないんですよね?それと詳しい予定は?」

 

海斗「今、各地に警備府や泊地を緊急で増やしてるのは知ってるよね、これにより艦娘の数自体が増える、そしてその艦娘の訓練が終わるのが大体3ヶ月後の見通しだよ、それまでは近海の防衛に努める」

 

明石「…燃料などは持つんですか?うちの国は輸入国だし、そろそろ深海棲艦が出現して一年になりますけど」

 

海斗「なんとかなるみたいだよ、ギリギリで大量に輸入してたみたいだし」

 

夕張「一層の事ソーラー発電機積んで、艤装も電気式に…試したい!」

 

曙「それ感電とか大丈夫なの?」

 

夕張「さー、問題ないでしょ多分、まあ今みたいな大雨じゃ試しようがないけど、感電しても死ぬだけだって」

 

漣「…怖っ」

 

海斗「燃料の産出国では、深海棲艦を退ければいつでも輸出する準備はできているそうだよ、だから南西諸島の敵を撃滅する事に成功すれば燃料は確保できる」

 

長門「最悪、次の作戦で無理やり燃料だけ確保すれば…いや、それも難しいか」

 

海斗「そうだね、燃料を手に入れる以外に活路がなくなった時点で此方の負けだよ、他の物資に関しても決して潤沢なわけじゃない、艤装関連の扱いは丁重に行う様に」

 

長門「それで、撃滅という事だが…」

 

夕張「何かすごくやばい敵とか、観測されたんですか?」

 

海斗(…一番厄介なのはキタカミ達…なんだよね)

 

海斗「現段階ではまだ、だけど欧州で新種が目撃されてるらしい、今後より強力な深海棲艦を見つける事になるかもしれない、決して油断はできないよ」

 

長門(…かつての私の様な…深海棲艦の域を超える何かに成り果てるかもしれないわけだ、あの世界でこそあっさり倒されることができたが、この世界ではそうも行くまい…)

 

満潮「あの…私達は?」

 

海斗「現段階ではなんとも言えない、主計としてついて来てもらうかもしれないけど、もし充分な戦力が集まればついて来るかを選べる様にしたい」

 

如月「…今選べるわけじゃないんですね…」

 

海斗「ごめん、それは無理だね」

 

満潮「……行きたくないし、みんなにも行ってほしくない」

 

大潮「……」

 

霞「何だらしないこと言ってんのよ…」

 

山雲「そうですよ〜?大丈夫、大丈夫〜…ちゃんと帰れますからね〜」

 

明石「あ、私も質問が…あれ?何か…今変な音しませんでしたか?」

 

夕張「……した、外だ」

 

何人かが窓に集まる

 

満潮「深海棲艦!!」

 

海斗「えっ?」

 

夕張「嘘!深海棲艦が海から這い出て来てます!」

 

海斗(泊地を狙って来た…曙達がいないこのタイミングでか…)

 

海斗「仕方ない、撃退するよ!全員装備を装着後正面玄関にて再集合、決して1人で戦いに行かない様に、2人以上で行動すること!」

 

長門「直ぐにそこまで来るぞ…私は先に応戦する!」

 

綾波「わ、私も行きます…!」

 

海斗(泊地だけを狙って攻撃を仕掛けて来てる…?いや、他の場所も警戒するべきか、他の鎮守府はどうだ…確認しないと)

 

 

 

 

 

駆逐艦 綾波

 

綾波「…もうこんなところに…!」

 

10ほどの深海棲艦が陸地を這いずり回りながら近づいて来る

 

長門「撃たせる前に叩き潰す!」

 

綾波「は、はい!」

 

深海棲艦を蹴り飛ばす

 

綾波(…ッ……気配…?どこに…上?)

 

まるでこちらの様子を伺っている様に、何機かの艦載機が飛んでいる

 

綾波「艦載機…!雨で見えなかった…でも攻撃して来ない…?なら、後回しで……」

 

目の前の敵を優先するべき…

 

長門「吹き飛べ!!」

 

綾波「…はッ!」

 

戦線を押し上げらには人が足りない、でも頭数さえ集まれば充分に対処できる数…

 

綾波「ほ、本当にここだけですか!?」

 

長門「わからない…どこを攻めて来てるのか、狙いはなんなのか…前!戦艦級4…!」

 

綾波(戦艦級が4…?さっきまで駆逐級や軽巡級ばかりだったのに、急に大物を……何がしたいのか…まるで……)

 

赤城「艦載機出します!」

 

長門「間に合ったか…!大物が来て困っていたところだ……」

 

朧「みんな!狙って…撃て!」

 

曙「戦艦級って……頭沸いてんのかしら…島風!」

 

島風「はい…!」

 

戦艦級が1つ地に伏せる

 

大潮「こ、これ倒せるんですか!?」

 

山雲「難しいけど〜、不可能じゃないですね〜」

 

北上「……ウザ」

 

綾波「私、戻ります!少しお願いします!」

 

長門「お、おい!?」

 

綾波(何が狙いなのかはわからないけど…でもまるでこれは陽動…)

 

 

 

 

 

 

キタカミ

 

キタカミ「翔鶴!待ちなって!」

 

ヲ級「……」

 

イムヤ「ダメですキタカミさん!抑えられません…!」

 

瑞鳳「馬鹿力…殴って止める!?」

 

キタカミ「無理!操られてる…クソッ!あのクソッタレが…!」

 

艦載機で様子を見るって話だったのに、急に翔鶴がおかしくなった、わざわざ大回りして泊地に入って…何かを目指して進んでる様な

 

ヲ級「……」

 

キタカミ「この…待って、翔鶴……待て!」

 

このまま進めば執務室に…

 

イムヤ「…そっか…狙いは司令官…キタカミさん先に行って司令官を!」

 

キタカミ「わかってる…!」

 

瑞鳳「骨の一本でも折らなきゃ止まらないってこんなの…」

 

翔鶴より前に出て執務室のドアを蹴り開ける

 

キタカミ「提督!」

 

海斗「えっ…キタカミ?…あ、すいません、はい、ちょっと待ってください」

 

キタカミ「提督!逃げて、この襲撃の狙いは提督だよ!」

 

海斗「…狙いが僕…?」

 

ヲ級「ガァァァァァァ!!!」

 

すぐ後ろで咆哮がした

目に青い炎を灯した翔鶴が瑞鳳とイムヤを引きずりながら近づいて来ていた

 

海斗「翔鶴!?一体何が…!」

 

キタカミ「見てわかんない!?暴走してんの…!」

 

キタカミ(どうすればいい…!?翔鶴は倒せても…これじゃあ…)

 

瑞鳳「手段を選ぶ余裕はない…倒そう!」

 

キタカミ「最悪…!イムヤ!周り見といて!」

 

ヲ級「ア"ア"ァ"ァ"ッ!!」

 

飛びかかって来た翔鶴を瑞鳳が床に叩きつける

 

キタカミ「死なない程度には加減するからさぁ…!」

 

関節部を狙って撃ち込む…が、傷一つついていない

 

ヲ級「……ガ…ァ"…?」

 

撃たれた部分をチラリと見てニヤリと笑う

 

キタカミ「…はは……ヤバッ」

 

ヲ級「ゼン…機…」

 

瑞鳳「…屋内で艦載機を…!」

 

ヲ級「ハッカン…!」

 

キタカミ「多いっての…!馬鹿なんじゃない!?」

 

瑞鳳「このっ…手が足りない!キタカミさん無理!その人逃して!」

 

キタカミ「無理だっての…!」

 

キタカミ(私の後ろにいるからギリギリ怪我せず済んでるだけで、下手に動かしたら死ぬわこんなの…)

 

キタカミ「ねぇ提督!ここの連中は!?」

 

海斗「みんな正面で深海棲艦を相手してる…縁側は絶望的だよ」

 

キタカミ「曙は!?」

 

海斗「今は日本を離れてる」

 

キタカミ(あのクソッタレはそれを知ってた…?だから攻め込んで……いや、それだけじゃないはず)

 

キタカミ「それにしたってまだ殲滅できてないのはおかしいでしょ!?」

 

海斗「……向こうでも何かが起きてるのかもしれない…」

 

キタカミ(…翔鶴、ごめん……あたしさ、アンタのこと守れそうにないよ、加賀達に合わせる顔がとうとう無くなっちゃうわ)

 

キタカミ「瑞鳳!……翔鶴を…仕留める」

 

瑞鳳「!…わかりました!」

 

 

 

 

 

駆逐艦 綾波

 

綾波「や、やっぱり…やっぱり居ない…!敷ちゃん!どこ!?」

 

私達の部屋に居るはずの、もう1人が居ない

部屋は荒れた様子はないが、車椅子にも、ベッドにも姿がない…

 

綾波「どこに居るの…?……これ…」

 

窓の側が濡れてる…ここから誰かが出入りした…

 

綾波「……敷波は、私が守るって決めたんだ…約束したんだ…!」

 

窓を乗り越えて外に出る

 

綾波「どっちに……いや、きっと連れ去ったのは深海棲艦なんだから…海に近い方に…!」

 

追いかけるしかない、なんとしても追いつかなきゃいけない

ここで追いつかなきゃいけないのに…

 

海が見えた、そしてその遥か先に見えたのに

 

綾波「……そんな」

 

もう遅かった、海に沈んでいく彼女が

 

綾波「認めない…そんなこと認めない!」

 

海に出て追いかける、必死に追いつこうとする、身体中が痛い、何が起きてるのかわからない

 

綾波「……あれ…」

 

体が、動かない…水面に音を立てて崩れ落ちて…

気づいたら深海棲艦に囲まれてて…

 

ああ、めちゃくちゃに撃たれてたんだ…そんな事にも気づかないで…このまま死ぬんだ、自分の決めたことも、約束も守れずに

 

綾波「……アハッ…アハハッ……ハハハハッ!!」

 

そうだ、当然だ、私の犯した罪を少しは償いたかったけど、そんな救いなんかないんだ、救われず、全てを奪われて死んでいく、なんでお似合いな末路なんだろう

 

綾波「…ごめんなさい…」

 

金属音が響く

ガリガリと音を立てて何かが削られる音が頭を引き裂きそうになる

 

曙「ボサっとしてんな!起きろ!」

 

綾波「…え…?」

 

体を誰かが抱えて起こしてくれる

 

潮「…曙ちゃん、先に離脱するよ」

 

朧「潮、早く行って!私達2人で抑える……」

 

曙「やれんの?朧」

 

朧「…舐めた口聞かないでよ、妹の癖に」

 

曙「はいはい、お姉ちゃん…ね…」

 

綾波「……なんで…」

 

なんで助けてくれたの…見てれば無惨に死んだのに、それが一番あなた達の望んでることなのに…

 

曙「…ここで死ねるなんて思わないで、アンタが死ぬのはもっと汚いとこでいいのよ」

 

朧「潮、早く離脱しないとどうなっても知らないよ」

 

潮「…わかった」

 

 

 

 

駆逐艦 曙

 

曙「さて、やるわよ」

 

朧「合わせて!」

 

曙「わかってるっての…」

 

魚雷をばら撒きながら周囲の深海棲艦との距離をとる

 

朧「西に向かうよ!」

 

曙「了解!」

 

このままいけば敵の中心に潜り込める…けど、殲滅する力がない、か

 

朧「砲撃開始!」

 

曙「朧!姿勢低くして!波が荒れてるから姿を隠してくれる!」

 

こうなったら敵を倒すことより、死なないことを意識する他ない

 

曙「少しでも掻き乱してやる…」

 

朧「待って曙…あれ!」

 

曙「…長門…?」

 

 

 

 

 

 

駆逐艦 島風

 

島風「キリがない…!」

 

長門「大丈夫だ、焦るな…!」

 

島風「長門さん!右!」

 

長門「斉射!!」 

 

深海棲艦をまとめて吹き飛ばすが、まるで水の様に流れ込んでくる

 

島風「…こうなったら…連装砲ちゃん!」

 

三体の連装砲ちゃんを先行させる

 

長門「何をする気だ!?」

 

島風「最速の力…見せます!」

 

双剣を握り敵に迫る

 

島風「ふっ…!」

 

すれ違い様に一閃、そして連装砲ちゃんに乗る

くるりと連装砲ちゃんがまわり、方向を変える

 

島風「いくよ…!連装砲ちゃん!砲撃!」

 

別の連装砲ちゃんの方に飛び出し、すれ違う深海棲艦を斬りつけ、そしてまた同じことを繰り返す

 

長門「…そこは任せていいんだな!?」

 

島風「大丈夫…!5連装酸素魚雷!!」

 

魚雷をばら撒きながら、斬りながら、撃ちながら

 

島風「やぁぁぁぁ!!」

 

戦艦級を斬り、踏み台にして飛び上がる

 

島風「酸素魚雷!」

 

水柱が各所で上がり、深海棲艦が沈む

 

島風「次!」

 

夕張「装備はいい感じみたいね…!」

 

島風「夕張さん!」

 

夕張「持って来てやったわ…この私専用の艤装!コレで付近の敵は一掃よ!」

 

長門「時間がかかり過ぎだ…!」

 

夕張「…ねぇ、待って、あれ」

 

島風「…アレは…何?」

 

長門「……あれは、私か…?」

 

島風「長門さん…?」

 

長門「…深海棲艦だった時の…私の様な…アレは、なんだ…?」

 

島風「…戦艦級…の…親玉…?アレを倒せば終わる!?」

 

長門「間違いないはずだ…だが、今のこの戦力で倒せるのか…?碑文も何もないのに…」

 

島風「…碑文だけに頼って生きて来たわけじゃない…私達は私達の力で戦って来たんです…!」

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