元勇者提督 作:無し
ウラジオストク
駆逐艦 朝潮
朝潮「…これで終わりですか」
佐藤「はい、ドローンでの受け渡しでしたので…さて、宿を取ってます、ゆっくりと休みましょうか」
アオボノ「予想より襲撃はなかったですが、疲れました」
朝潮「結局交戦回数は5回ですが、雑魚ばかりでしたね…船の食料は味気なかったので、そろそろまともなものが食べたいです」
加賀「ロシア料理といえばボルシチですけど、そもそもこんな時間にやってるお店、あるのかしら」
佐藤「ホテルに行けば食事を出してくれる様に手配しています、心配ありません」
アオボノ「…カレーライスはありますかね」
加賀「一応言っておくけど、日本と同じカレーライスが出てくるとは思わないことね、ロシアはまず米食ではないわ、カレーライスが万が一出てきたとしてちゃんとした白米がセットになっているのかしら」
アオボノ「……もう…ピロシキでいいです」
加賀「諦めがいいのは良い事ですよ」
朝潮「…ロシアン寿司…こんなのもあるんですね」
病院
軽巡洋艦 夕張
夕張「人払いはしました、何があったのか、聞かせてくれませんか、もう隠し事も敬語もなしです」
海斗「わかった…何があったのか…か、深海棲艦の手で操られた翔鶴が僕を襲いにきた…その時の翔鶴には自我が無くて、呼びかけに応える事もしなかった」
夕張「…自我がある時の翔鶴さんに会ったことが?」
海斗「この前肉じゃがを作りに来てくれたからね」
夕張「…マジですか…アレは…うーん…というか、接触してたんですか?急に暴走した?」
海斗「いや」
夕張「…キタカミさんが絡んでる?」
海斗「そうだね、キタカミは翔鶴を止めようとしてた…」
夕張(…止めようとしたのならどうしてああなったのか、何がどうだったのか…全部想像が容易ね……どうしても止められなかったから殺した)
夕張「…キタカミさんは」
海斗「多分、戻ったよ」
夕張「……分かった事を言うようですが、今助けを求めてるのは青葉さんじゃなく…」
海斗「わかってる…だけど青葉も助けを求めてる、苦しんでるのは2人とも同じだ」
夕張「それは失礼しました」
海斗「…翔鶴の遺体はどうなるのかな」
夕張「多分、知られたら研究者にまわされる事に…」
海斗「それだけは避けたい、弔ってあげたいんだ」
夕張「…そうですね」
夕張(私としても、深海棲艦の研究に使いたい気持ちはあるけど、他にサンプルは充分だし、そもそも…とても使おうとは思えない)
病室のドアが荒々しく叩かれる
長門「失礼する、提督、深海棲艦の死体が消えた」
海斗「…え?」
夕張「消えた…?どういうこと…」
長門「海に向かって這いずって行ったり、解けるように消滅していくのを目撃した者がいる…執務室にあったのも…崩落した部分から引き摺られるように海に…」
夕張「……生きてるって事なのか…それとも…」
海斗「…わからない」
夕張「深海棲艦に関する情報がなさすぎる、今日交戦した深海棲艦ってどれだけ居たのか、深海棲艦が死んだ艦娘や人間の成れの果てなら…」
長門「……その話を聞いて、なんだがな、確かアオボノは粉々に噛み砕かれたと聞いた」
海斗「曙から?」
長門「ああ、食事時に生々しくな…」
夕張「ご愁傷様です」
長門「私の考えは…本当に気分を害する、最悪な物なのだが…」
海斗「聞かせて、多分僕も同じ事を考えてる」
長門「……死体は、深海棲艦に作り替えられてしまう…としてだ、すでに生命としては終わっている者が再び生を…何かを与えられたとしてだ…」
海斗「…ついさっきまで生きてた人間だけが深海棲艦の材料じゃない」
長門「ああ、それが適切かもしれない、遺体から深海棲艦を作れるから回収しているんじゃないか…と、私は思うんだ」
夕張「ちょっと待って、それって…深海棲艦の死骸も、って事…?」
海斗「可能性としては十分あり得る…のかもしれない」
夕張「じゃあ私たちは何と戦ってるの…?私達は…いや、この戦いってどういう…!」
海斗「まだ可能性の段階だけど、もしそうなら…いや、元々何かあるはずなんだ、深海棲艦が産まれる手段が、それを破壊しないとこの戦いは終わらない」
夕張「……今の段階じゃ勝ち目なんてない…か、そもそもなんで泊地を襲撃してきたんだろ」
海斗「わからない…」
綾波「あ、綾波、はい…入ります」
綾波と阿武隈さんが入ってくる
綾波の方はかなり酷い、片腕片足が折れてる
阿武隈「失礼します、提督、どうですか?」
海斗「見た目ほど酷くないよ、すぐに戻れる」
阿武隈「血塗れだったのに…?」
夕張「まー…今アタマが居ないのはマズイですからね…時間が経ちすぎたせいで出血は多かったですけど、脳も特に問題なし、とならばとりあえずは」
綾波「…す…すいません、いいですか」
海斗「大丈夫、聞かせて」
綾波「し、敷ちゃん…敷波が、攫われました…」
海斗「攫われた…?」
綾波「……お、お願いします…わた、私の、妹を…助けてください…」
綾波がボロボロの体を無理矢理曲げ、土下座の形を取る
夕張「ちょっ…!」
海斗「やめて、綾波」
綾波「…た、立場も…現状も……理解してます、今が厳しい…いや、無理なのも知ってるんです…で、でも…私に残ってるのは…!」
海斗「わかってる、敷波は何としても助ける……阿武隈、戦えるのはどのくらい?」
阿武隈「え、あ……重傷者は綾波さんと提督だけで…戦闘が難しいのは北上さん、それと大潮ちゃん、山雲さん…私も少し手に痺れがあります…」
海斗「じゃあ他のメンバーで曙達が帰ってくるまで防衛をするように伝えて、またいつ攻めてくるかわからない、もし拒否する子がいたらその子達には好きなようにして良いって言って」
阿武隈「えっと…はい」
長門「助けに行くんじゃないのか?」
海斗「朝潮達が帰ってくるのを待つ、今はまだ動けないけど…万全な状態で望む、綾波、構わないかな」
綾波「はい…お願い、します…」
綾波(…間に合って)
ウラジオストク
駆逐艦 アオボノ
アオボノ「…ふーん…」
朝潮「どうしました」
アオボノ「緊急で帰る手段はありますか、腹心さん」
佐藤「空路なら速いでしょうね、しかし飛行機の運行は深海棲艦の発生から2週間で完全に取り止められました、撃ち落とされてしまうので」
アオボノ「世間話してるんじゃないんですよ、とりあえずすぐ飛べるものを手配してください、乗れるのは私一人でも構いません」
加賀「何かあったの?」
アオボノ「白雉が襲撃され、甚大な被害が出たと…」
朝潮「…狙ったかのようなタイミングですね」
加賀「……今からでは深海棲艦と交戦することも考えて丸一日はかかる」
アオボノ「帰るのは私一人で充分です、貴方達は佐藤さんの護衛です」
佐藤「おや、置いていかれるのかと」
アオボノ「貴方はさっさと飛行機を手配してください、そうでなくては居る価値がない」
佐藤「おや、酷い言われようですね」
アオボノ「仕事は終わった、もうここにいる理由がありません、そんなに生きて帰りたかったのならば仕事内容に貴方を連れて帰る事も含んで貰うべきでしたね」
佐藤「はいはい、確認しますのでお待ちください…軍の戦闘機なんてどうですか?」
アオボノ「最初からそのくらいの仕事をすれば良いのに…」
加賀「砲を向けながらいうのは流石にどうかと思うわ」
朝潮「すぐ脅すのは良くないと思います」
アオボノ「どうでも良いです、私の役目が果たせるならそれで」
与那国島
瑞鳳
瑞鳳「…うーん…キタカミさん、本当に壊れそうな顔してる」
イムヤ「ずっと横になってて、もう何もする気力も無さそうですし…」
瑞鳳「翔鶴さんを手にかけた…か、仕方なかった事なのに…」
イムヤ「仕方ない、で済ませることはできません、私達じゃなく、キタカミサさんにとっては」
瑞鳳「…あ…この匂い…」
イムヤ「え?何かあったんですか?」
瑞鳳「……戦艦棲姫が来る」
イムヤ「え?」
深海棲艦の艦隊を引き連れて、近づいてきてる
瑞鳳「…艦載機、神通さんに壊されて全部修理終わってないのに」
イムヤ「…やりますか?…島に入られたら私は何もできません…」
瑞鳳「いや…まだやらない、むしろ逃げた方がいいかも」
キタカミ「逃げる必要なんかない、話がある」
瑞鳳「き、キタカミさん…」
イムヤ「いつのまに…起きて大丈夫なんですか?」
キタカミ「怪我はしてないからね」
戦艦棲姫「良イ島ダナ、ココガオ前達ノ拠点カ」
キタカミ「黙れ」
戦艦棲姫に詰め寄り、首元に単装砲を突きつける
戦艦棲姫「効カン…トイウ事モワカランカ?」
キタカミ「黙れって言ったの聞こえなかった?三下…あたしは少なくともお前なら殺せるんだよ、奥の手も出す必要もないんだ」
戦艦棲姫「ジャア、奥ノ手ヲ出サナキャナラナイ相手マデ敵ニ回スカ?ソノ前ニオ前ノ姉妹ハ死ヌ事ニナルガ…」
キタカミ「そう…だから何?」
戦艦棲姫「…ナンダト?」
キタカミ「もうさ…あたしには何もないんだよ、空っぽなあたしは…!」
戦艦棲姫「ククク、オイ、コレヲ見ロ」
輸送タイプの深海棲艦が2匹地面を這いずって近寄ってくる
戦艦棲姫「吐キ出セ」
ワ級「ガボァ…」
ベシャリと音を立てて人型が地面に落ちる
瑞鳳「…これ…」
キタカミ「…どういう意味」
戦艦棲姫「見タ通リ、貴様ガ殺シタ空母ヲ級…ノ、死体ダ」
キタカミ「だから何だって聞いたんだよ、次あたしがイラついたら…殺すから」
戦艦棲姫「ワカッタワカッタ…私ハコイツヲ生キ返ラセル事ガデキル」
キタカミ「じゃあ、やれ…早く」
戦艦棲姫「…交換条件…ト言ウモノヲ知ランノカ?」
キタカミ「どうせあたしがそっちに堕ちる事なんでしょ」
戦艦棲姫「イヤ…クク、モット面白イヤツガ居ルダロウ?」
瑞鳳(青髪の曙か)
キタカミ「居ない、あたしが一番強い」
戦艦棲姫「金髪ノ駆逐艦娘ヲ連レテ来イ、ソウスレバオ前ノ姉妹1人ヲ解放シ、コイツヲ蘇生スル」
キタカミ(金髪…島風の事だ…)
キタカミ「…蘇生、解放?本当にできるわけ」
戦艦棲姫「証明スル…オイ」
もう1匹のワ級がまた人型を吐き出す
敷波「ふぎゅっ…」
キタカミ「…へぇ」
戦艦棲姫「クク…オイ、コッチヲ見ロ」
敷波「ふぇ…?えっ…な、何ここ、な、何なんだよ!」
瑞鳳「…脚のない艦娘…」
イムヤ「敷波です、綾波の妹…」
戦艦棲姫「オ前ニ脚ヲヤロウ…シカシタダデハナイ」
敷波「な、何言って…き、キタカミ…!」
キタカミ「………」
戦艦棲姫「話ヲ聞ケ」
敷波「ひっ…」
戦艦棲姫「オ前ノ脚ノ代償ハ、姉ノ命ダ」
敷波「綾姉ぇの…命…?…お前、綾姉ぇに手を出したら…!」
戦艦棲姫「出シタラ?ナンダ?オ前ニ何ガデキル?」
敷波「…殺してやる…絶対に殺してやる!」
キタカミ「……へぇ」
戦艦棲姫「クク…ハハハハ!殺シテヤル?言ウニ事欠イテ殺シテヤル?ドウヤッテ?」
敷波「首を食いちぎってやる!撃ち殺してやる!綾姉ぇに手を出したらお前を絶対殺す!」
戦艦棲姫「ソウカ…ダガ、関係ナイナ、コノ契約ハ一方的ナ物ダ」
敷波「お前等全員地獄に落としてやる…!」
キタカミ「…無理無理、馬鹿なんじゃないの?」
敷波「何…?」
キタカミ「力も何もないくせに殺してやるって、アハハ…馬鹿なんじゃない?呪ってやるとか、地獄に落ちろとか、力の無いなりの言い方あるんじゃないの?」
戦艦棲姫「全クダナ、マサカ貴様ト意見ガ合ウトハ」
敷波「…お前等にはわかんないだろうけど…アタシは自分の姉を殺されるとわかってんのに、神や閻魔に任せっきりになんかしたくないね…!」
キタカミ「……あー、うん、良いね…思ったより勘違いしてたかもしれないわ…瑞鳳、イムヤ、コイツ追っ払うの手伝ってよ」
瑞鳳「はい!」
イムヤ「え、えぇ!?わ、私何すれば…」
キタカミ「…なんだっけ、戦艦棲姫だっけ?お前は所詮雑魚だよ」
戦艦棲姫「雑魚ダト?」
首をかき切るジェスチャーをする
キタカミ「お前より強いヤツばっか居た世界から来てんだからさぁ…人質とって脅すしか脳のない臆病者め…ここで死ぬか、尻尾巻いて逃げ帰るか、今選べ」
戦艦棲姫「…フン、後悔スルゾ…!」
戦艦棲姫が踵を返して海に戻っていく
キタカミ「…そこで向かってこないから三下なんだっての…」
瑞鳳「…見逃すんですか?」
キタカミ「今やり合ってみ、敷波は死ぬし、向こうの援軍わんさか来るよ……ハァ…ごめん翔鶴…一時の感情で翔鶴が生き返れるチャンス不意にしちゃった…」
イムヤ「…島風ちゃんを犠牲にしてまで、翔鶴さんは甦りたくないと思います…」
敷波「……あの…」
キタカミ「…ん、なんだ、居たの」
敷波「いや…うん、あの…アタシなんで置いてかれたのかもわかんないけど…えと…どうすればいい?」
瑞鳳「……さあ…」
キタカミ「当分泊地に行くつもりはないから、しばらくここで生活してもらう」
敷波「えっ…せ、生活…?無人島生活?」
瑞鳳「大丈夫、元々有人島だったから済むところも何でもあるよ」
敷波「な、なにそれ…」
イムヤ「電気通ってないけど、発電機もあるし、燃料もある、拠点にはもってこいなの」
敷波「……あの、何でわざわざこんなとこで…」
キタカミ「帰れない理由が…いや、帰る前にやらなきゃいけない事があたしにはある、2人はそれに付き合ってくれてるだけ…」
イムヤ「…私も帰れない理由がありますから」
瑞鳳「……」
深海棲艦基地
戦艦棲姫
戦艦棲姫「…フン、マア、断ラレタ所デ何モ変ワランガ…」
死体に煙が集まっていき、形を作る
ヲ級「………」
戦艦棲姫「翔鶴…ト言ッテイタカ?」
ヲ級「…ハイ」
戦艦棲姫「オ前ハ私ノ道具ダ、再ビ死ヌタメニ、永遠ニ死ニ続ケル」
ヲ級「ハイ…」
戦艦棲姫「…ククク、私ノ側ニツケバ良カッタ物ヲ…」