元勇者提督 作:無し
海上
キタカミ
キタカミ(…弱い、か…守ろうとした私が弱い…)
キタカミ「…最低だ、最低だよ曙…!」
キタカミ(確かに折れた、翔鶴を殺したことも、1人で動き続けてる事も…全部、全部だ、だけど…それは守るため、守らなきゃいけない物のために戦う奴が弱いだなんて…)
アオボノ「最低ですか、よもや貴方がそんなことを言うなんて…私の期待を裏切るのはやめてもらいたいです」
キタカミ「期待…?なんだよそれ…勝手に期待してそれに応えなきゃ落第ってこと?ふざけんな…!あたしは守るために戦ってきた!仲間を!人間を!守らないといけないと思ったから守ってきた!」
アオボノ「…ではなぜ今貴方は私に砲を向け、殺気を放つのですか」
キタカミ「敵として目の前に立ってる以上…そうなるのは当然でしょ」
アオボノ「なら、貴方は提督の敵になるのですね」
…心に何かが宿る
アオボノ「かつての仲間を殺す事に…一切の躊躇いがないのですね」
キタカミ(…仲間を、殺す…)
瑞鳳は帰ってきた、だけど翔鶴は?帰ってくるわけがない、ここで今…もし、殺したとして…
キタカミ「……そんな訳ないじゃん…」
小さく呟く
アオボノ「始めましょうか、出頭命令には向かった愚か者への懲罰を」
死の香が鼻を突く、反射的に体が動き、砲弾が服を掠めて焼く
キタカミ(殺しに来てる…!曙には躊躇いがない…仲間を殺すって事をわかってない…だけど、やらなきゃやられる…!)
砲撃戦が始まる
お互いの砲弾が空中でぶつかり弾ける
戦艦棲姫(…フム、押サレテイルカ…ヤハリクチダケノ存在…指揮ハ上等ダト聞イタガ…)
アオボノ(深海棲艦もそろそろ仕掛けてくるかな…)
アオボノ「動いたら、殺す…瑞鳳さんも」
動こうとしていた深海棲艦の動きが磔にされたように止まる
瑞鳳(怖っ…何この感じ…脳が支配されるみたいな…)
アオボノ「キタカミさん、貴方にはやはり余裕がない」
砲弾がぶつかり、煙が視界を塞ぐ
キタカミ「余裕なんかあるもんか…命懸けの戦いに…!」
アオボノ「だとしたら、それは勘違いですよ」
命懸けの戦いじゃない…?
アオボノ「貴方は生かして提督の元に突き出すのですから」
煙の中から曙が飛び出し首と腕を掴まれる
キタカミ「ッ…、…!」
アオボノ「さっさとオチてください、そうすれば……ぁッ…え…!」
ゼロ距離で、両手を使ってるなら防げない…
接射を叩き込む
アオボノ「いッ…!アハッ…!」
砲口を突き付けて撃ったのに笑ってる…?
キタカミ「…はな……せ…!」
万力の様により強い力で締め上げられる、意識が薄れ始める
アオボノ「もっとあっさり折れると思ってたのに…意外ですね、それに…やっぱりキタカミさんは優しすぎる」
キタカミ(…うる…さいなぁ…次は、頭に撃ち込む…)
駆逐艦 アオボノ
アオボノ「勝負あり、キタカミさんは貰っていきます」
戦艦棲姫「待テ、ソイツヲ置イテ行ケ、サモナクバコイツラヲ…」
…キタカミさんの姉妹艦の深海棲艦か
アオボノ「お好きにどうぞ?」
戦艦棲姫「何…?」
アオボノ「私がその人達守る理由って、何かありますか?私が用があるのはこのキタカミさんだけ」
戦艦棲姫「チッ…面倒ダ、ヤレ!」
深海棲艦が一気に襲いかかってくる
アオボノ「忠告はしたんですけどね、撃ち方始め」
船からの砲撃で一つ沈む
アオボノ「戦艦棲姫、貴方もここで死にたいなら…殺してあげますよ」
アオボノ(キタカミさんがこいつを生かしていた理由が知りたい、人質に手を出される前に殺すくらいはできたはずだ…多分、人間に戻せるとでも言われたんだろう)
戦艦棲姫「駆逐艦如キガ何ヲ…」
アオボノ「その駆逐艦如きに舐められてるようではね」
戦艦棲姫「デハソノ認識ヲ変エテヤロウ…!」
怪物のような艤装がこちらを見据える
アオボノ「…バーカ」
タイミングを合わせて一発放つ
戦艦棲姫「ナ、何ガ起キタ!?ナンダコレハ!」
怪物の主砲が内側から破裂し炎上する
アオボノ「戦艦を仕留めるのは得意なんですよ、それと貴方との交戦データに再生したとありましたが…艤装の方は再生するのでしょうか、興味がありますね」
戦艦棲姫「ナ…!」
アオボノ「まあ、三下ってことは同格が他にもいるという事…貴方を殺すより、実験に使うべきでしょう」
戦艦棲姫「コノ…!」
主砲がこちらを向く
アオボノ「アハハ、はぁ…貴方本当に学びませんね…そんなに死にたければどうぞもう一撃」
戦艦棲姫の艤装の主砲全ての砲身に砲撃を撃ち込む
アオボノ「はい、バーン」
戦艦棲姫の艤装が内側から爆砕する
戦艦棲姫「コ、コンナコトガ…!」
アオボノ「ほら、早く再生させてくださいよ、それともできないんですか?今貴方を撃ったらどうなるんでしょうね」
戦艦棲姫「フザケルナ…!コノ…!」
戦艦棲姫の右腕が吹き飛ぶ
戦艦棲姫「ギャァァァァ!?」
アオボノ「あら、存外脆いものですね…ふふふ、頭に当てればよかった…って、おかしいですね、再生してくださいよ、ほら早く」
戦艦棲姫「ヒ…!オ、覚エテイロ!」
戦艦棲姫が水中に姿を消し、それに続いて他の深海棲艦も消える
アオボノ「この腕、持って帰れば研究してくれるかな…生きてる深海棲艦のパーツなら…アリですね」
与那国島
アオボノ「敷波さん、いらっしゃいますか」
…人の気配はしない、ずいぶん前に放棄された島だし当たり前だけど
アオボノ「綾波さんに頼まれて連れて帰りに来ました」
イムヤ「…曙さん」
アオボノ「イムヤさん、お会いしたかったです」
イムヤ「キタカミさんは?」
アオボノ「倒しました、お陰でほら…脇腹が軽く…まあ、イムヤさんなら問題ありません、瑞鳳さんにも同行してもらってます」
イムヤ「…敷波は向こう、連れて帰って」
アオボノ「やっぱり貴方も?」
イムヤ「私は…深海棲艦を守らなきゃ」
アオボノ「間違ってないんでしょうね、そのセリフ自体は」
イムヤ「…何が言いたいの」
アオボノ「イムヤさん、貴方も深海棲艦なんじゃないですか?私は貴方が水中に潜ってる姿を見たんですよ」
イムヤ「…そりゃ、潜水艦だし…」
アオボノ「艤装は?」
イムヤ「…それは…」
アオボノ「キタカミさんが一度も魚雷を使わないのは…まあ、良しとします、だってあの人のメイン武器は単装砲でしたから…でも、使わないにしても魚雷はどこに行ったのか…貴方が持ってる」
イムヤ「それが何」
アオボノ「貴方の攻撃手段がどこから来たのか…は置いておいて…何で貴方が潜水できるんですか?潜水艦の艦娘はまだ何処にも存在してないんですよ、深海の水圧に耐える事や酸素の確保が難しいんでしょうか…」
イムヤ「…確かに、深い海に潜るのは辛い」
アオボノ「なのにあなたはそれをやってのけてる、不思議ですね、なぜですか?」
イムヤ「……だから、深海棲艦…って?」
アオボノ「違うのなら納得できる理由をどうぞ」
イムヤ「…無理、お手上げ…そう、私も深海棲艦…だけどあの戦艦棲姫の支配下じゃ無いし、暴走もしない」
アオボノ「それは何故ですか」
イムヤ「わからないの…私は深海棲艦が現れた日まで普通に生活してたの、勿論人間として…あの時の私は海辺に住んでたから、深海棲艦にすぐ襲われた、砲撃で建物が崩れて、下敷きになって、その瓦礫ごと海に攫われたの…」
アオボノ「…死んだ?」
イムヤ「死んだと思う、暗くて、息ができなくて、辛くなったのが…急に息が吸えるようになった、海の中で」
アオボノ「…深海棲艦になった瞬間、と言うことですか」
イムヤ「うん、記憶があるおかげで現状の把握には時間がかからなかった…周りの深海棲艦も、襲いには来なかった…だから確信した、私は深海棲艦なんだって」
アオボノ「それで?」
イムヤ「最初は陸地に戻った、陸で生活しても問題なかったし…周りの人はみんな死んじゃったけど、何とか生きていけた…でも、また深海棲艦がやってきて…やっぱり何もかも壊された」
アオボノ「…深海棲艦に与する理由には聞こえませんが」
イムヤ「……深海棲艦の砲撃で、人がバラバラになったの、で、それを深海棲艦が集めて…食べて…いや、口に入れて持って帰ってるみたいだった、だから私は追いかけた…戦艦棲姫を見つけた、戦艦棲姫はその人間の死体から深海棲艦を作り出していた」
アオボノ(やっぱり深海棲艦の原料は人間の死体か…)
イムヤ「この時にようやく私は本当に死んだんだって思って…じゃあ何をすればいいか考えた、この世界って、本当に何が起こるかわからない、もしかしたら深海棲艦を人間に戻せるかもしれないって」
アオボノ「馬鹿げてますね」
イムヤ「…前の世界が馬鹿げてたから…それで私はまず協力者を探した、助けてくれそうな人…でも、強くないといけない、それで記憶がある艦娘の誰か…それがキタカミさんだった、キタカミさんも姉妹を失って苦しんでたから」
アオボノ「……そうだ、少し待ってください」
イムヤ「何?」
アオボノ「…貴方は今ゾンビ、と言う認識でいいんですか?」
イムヤ「…噛んだらわかるかな」
アオボノ「遠慮します、つまり貴方は動く死体…でも人と変わらなくて…体温は?」
イムヤ「…あると思う、心臓が動いてるのかはわからないけど」
アオボノ「……宿毛湾に来ませんか?貴方を調べれば…何かが変わるかもしれない」
イムヤ「…迷惑、じゃない?」
アオボノ「提督も喜んでくださいます」
イムヤ「……そうかな、私たちが誘った時は…」
アオボノ「深海棲艦と艦娘では立場が違いますから…それと、貴方には苦痛が伴う実験も予想されます」
イムヤ「えぇ…それは嫌…」
アオボノ「別に本当に実験台にするつもりはありませんが…貴方を迎え入れる準備は私がします、どうですか?」
イムヤ「んー…じゃあ、今度奢って、牛丼」
アオボノ「ふふ…どこの奴がいいですか?」
イムヤ「320円のやつ」
アオボノ「わかりました、2人で行きましょうか」
イムヤ「オーケー、約束ね」
アオボノ「ええ、明日あたりにでも…ん?」
誰か来る…
敷波「い、イムヤさん!」
イムヤ「え、それ…」
アオボノ「……敷波さん、何で貴方に足が…」
両足が生えてる…間違いなく
そして1人で立っている…筋肉量にも問題はないのか…?
少し肌の色が違う点だけが気になるけど
敷波「曙…!あ、綾姉ぇは!?綾姉ぇはどこ…!」
アオボノ「大丈夫です、着いてきてもらってます、それより貴方の足は…」
敷波「戦艦棲姫…あいつが綾姉ぇの命と引き換えに足をやるって…!」
アオボノ(綾波の命と引き換えに…?)
アオボノ「…とりあえず帰りましょうか、調べるにもここじゃ何もわからない」
敷波「う、うん…うぁっ」
こっちに来ようとした敷波が派手に転ぶ
イムヤ「まだまだせっかく足があるのにまだ慣れてないのね…待って、支えてあげるから」
敷波「…ありがとう…」
アオボノ(…詳しく調べる必要がある…か)