元勇者提督 作:無し
宿毛湾泊地 演習場
駆逐艦 浜風
朧「おー、結構当たる…」
浜風「私は実戦で通用すると思いますか」
ここの駆逐艦でワリとマトモに強い人は誰か、と聞いたところ朧さんに私の砲撃を見てもらう事ができた
朧「実戦、となると…私は出したくないな」
浜風「…なんでですか?!的には7割当たってます、充分じゃ…!」
朧「今はまだ的を狙う練習しかしてないでしょ、その的も全部真ん中を正確に撃ち抜けてるんじゃなくて、ただ的に当たってるだけ、半分掠めてるみたいなものだし…それに、そのまま戦闘に出たら何もできずに死ぬよ」
浜風「…どうしてですか」
朧「相手も撃ってくるって事、忘れちゃダメだよ、止まったまま撃てる訳じゃないし回避行動も交えなきゃいけない、何を焦ってるかは知らないけど、砲雷撃なんて戦闘においては複数あるうちの一つの要素に過ぎない」
浜風「…それは」
朧「多少他より優れてるくらいなら、砲撃が下手でも生き残れる子を編成すると思う…求めてる答えなのかはわからないけど、これが私の考え」
浜風「…じゃあ、今までやってきた事って何なんだ…」
朧「要素の一つではあるんだよ、突出してるわけじゃないけど決して下手じゃない、新人にしてはずいぶん筋がいいと思う、このまま伸ばせば周りよりずっと高い精度で動きながら砲撃できるはずだよ」
浜風(艦娘システムって始まって半年も経ってないけど、古株っぽい言い回しだなぁ…)
朧「それに一つ一つやるべきなんだよ、ジグソーパズルとかもまずは一つの角とか、端を全部埋めてからとか、それぞれのやり方があるわけだし…横須賀は一つずつ能力を育てるスタイルなのかもしれない」
浜風「……私は今すぐ実戦に出たいです」
朧「今のまま実戦に出ても精々駆逐級2.3匹と道連れになるのが精一杯だよ」
浜風「…手厳しいですね」
朧「命の重みは知ってる…つもりだから」
執務室
駆逐艦 アオボノ
アオボノ「…提督、助けられるチャンスがあった、と言うのは間違いではありませんが」
海斗「わかってる、君は他のみんなを危険に晒す事を考慮して撤退した」
アオボノ「その通りです、間違いありません」
海斗「キタカミはどうなったと思う?」
アオボノ「…それは…最悪の結末かと、申し訳ありません」
海斗「いや、キミは悪くない、最善を尽くしてくれたと思ってるよ…今まで通りなら深海棲艦になっても倒せば…元に戻る、のかな」
アオボノ「…キタカミさんが深海棲艦を守っていた点などから…考えづらいと思います、ですのでこれを」
海斗「これは何?」
アオボノ「深海棲艦に関する資料です、深海棲艦を調べます」
海斗「深海棲艦を、か…何だか今更な気もするけど」
アオボノ「この研究にはヘルバさんが協力してくださいます」
海斗「ヘルバが手を貸してくれるの?」
アオボノ「約束を取り付けました、こちらの情報を開示したところ快く」
海斗「って言うのは…どこまで?」
アオボノ「1から100までです、提督、綾波にこの施設で深海棲艦に関する研究をさせても構いませんか」
海斗「…まあ、構わないよ」
アオボノ「重ねての質問なのですが…提督は深海棲艦を助ける事ができる、と思いますか」
海斗「難しい話だね、助けるの意味にもよるけど」
アオボノ「…人に戻せると思いますか?」
海斗「曙は…イムヤを人だと思える?」
アオボノ「イムヤさんですか…」
肌の色も言動も、何もかもが人としてのそれだが、今のイムヤさんは深海棲艦…
アオボノ「私は受け入れられます」
海斗「それは何で?肌の色?それとも攻撃的じゃないからなのか」
アオボノ「……どれとも言い難いです、私がイムヤさんと言う人を知っていることは理由としては大きいですが…」
海斗「僕は…もし全ての深海棲艦が人間に戻ったとしても、みんながイムヤみたいに自分の意思で生きられるとは思えないんだ」
アオボノ「…そうですか」
海斗「もしかしたら肌の色が戻らなくてそれを化粧で隠さなきゃいけないかもしれない、それだけならまだいい、体の一部がないことも考えられる」
アオボノ「…受け入れられる事はなさそうですね」
海斗「少なくとも今はね、深海棲艦を助けるって言葉にはいろんな意味があると思う、僕が思う深海棲艦を助ける事は受け入れる事だ」
アオボノ「研究は不要ですか?」
海斗「いや、必要だよ、だけど深海棲艦を人間に戻せるとして…正しい形の人間に戻れるのかな」
アオボノ「……それは、私も不安視してました、でもそのための研究です」
海斗「いつから始められる?」
アオボノ「すぐに、準備はもう整っています」
海斗「準備がいいね」
アオボノ「提督は許可をくださると思ってましたから…それに、ヘルバさんは元々その手の研究をしようとしてたみたいです、この前運んだものもそれに関するデータだとか」
演習場
軽巡洋艦 阿武隈
阿武隈「もう…まだ帰らないのかなぁ…横須賀の人」
不知火「……まだかかりそうですね、もう一周行きますか」
阿武隈「ランニングだけしても…うーん、そういえば艦娘に登録しないんですか?した方が良いんじゃないですか?」
不知火「それは同意しますが、ちゃんと予定通りの所属になるか不安なもので」
阿武隈「…やっぱり、佐世保に?」
不知火「当然です、姉妹にも会いたいですから」
阿武隈「姉妹…かぁ」
不知火「あなたは確か居ませんでしたね、その分キタカミさんと深い仲だった気がしますが」
阿武隈「…キタカミさんって本当に私と仲が良かったんですか?」
不知火「同じ所属ではないので確か、とまでは言えませんが…私の目にはそう映りました」
阿武隈「…敵じゃなく、味方で…」
阿武隈(どうしたらいいんだろう…)
瑞鳳「不知火!」
阿武隈「ひゃぁっ!?」
不知火「瑞鳳さん…?な、なんでここに…?」
瑞鳳「…訳合って一時的にお世話になってる、本当に不知火?私のことわかるよね?」
不知火「わかります、わかりますよ…お会いできて嬉しいです」
瑞鳳「…よかった、キタカミさんを助けるのに手を貸してほしいの」
不知火「勿論そのつもりです、ですが今は艤装などがありません、艦娘として登録してから戦線に出るつもりです」
瑞鳳「…それってどのくらいかかるの?」
阿武隈「2週間…くらい?」
瑞鳳(2週間…そんなにかかったらキタカミさんはどうなるんだろう…私も艦載機を用意する余裕はないし、登録して鎮守府に所属すれば…いや、行動が制限される…)
不知火「…そういえば、瑞鳳さんは所属は?」
瑞鳳「え?…ああ、所属して無い、どこにもね…」
阿武隈「え!?」
不知火「じゃあその弓は?」
瑞鳳「買ったの、ちょっと不安だったけどちゃんと使えるし…」
阿武隈「水上歩行用の艤装は!?」
瑞鳳「…そっちも買った、お金だけはあったから」
阿武隈「売ってるものじゃない…と思うんですけど」
瑞鳳「まあ、ちょっとね」
不知火「艤装さえ手に入ればそれでいい気もしますが…一応正規の手順を踏んでくる事にします」
瑞鳳「…わかった、2週間は待ってる」
不知火「ええ、少しは早められるといいのですが」
研究所
駆逐艦 綾波
綾波「…おげっ…」
アオボノ「中々に悪趣味なところですね、本当にそっくりだ」
かつての自分の研究所を思い出す内装、違いは白衣の研究者が大勢いることくらいか
中央のモニターがヘルバのキャラクターを映し出す
ヘルバ『ここにある機材、人材は自由に使えばいいわ、ただし全ての情報は私が管理する』
アオボノ「それは構いませんが…これは?」
綾波「…そ、それ…艤装…?」
ヘルバ『ここは艦娘システムの研究を兼ねている、思うところがあったのよ』
アオボノ「…この艤装を誰かに提供した事は?」
ヘルバ『有るわ、それが何か気になるかしら?』
アオボノ「随分と性能が低いですね、オリジナルに比べたら」
ヘルバ『私も不思議、何が違うのかしら』
綾波(…この艤装には何が足りないんでしょうか)
ヘルバ『それと、約束の物はそれ』
医療器具や検査機などがズラリと並んだ部屋がライトアップされる
アオボノ「……」
ヘルバ『不満?』
アオボノ「いいえ、ご協力に感謝します」
ヘルバ『もう一度言うけど、ここにある物、ここにいる人材は好きに使っていいわ、だけど全て私が管理している事を忘れないで』
アオボノ「承知しています」
ヘルバ『なら良いわ』
アオボノ「早速始めましょうか、綾波」
綾波「…はい」
綾波(敷ちゃんをここに連れてきたくはない、必要最低限なものを持ち出さなきゃいけない…か)
アオボノ「機械の動かし方は分かりますか」
綾波「…だ、大丈夫、です」
複数の機械を操作して戦艦棲姫の腕の解析を始める
アオボノ「さて、私も始めますか」
執務室
駆逐艦 曙
曙「そう言う訳で、暫くここを出るわ」
海斗「どのくらいで戻るつもり?」
曙「さあ?アタシも情報はないし…それに向こうのことを説得するのにどれだけかかるかわからない、相手が記憶持ちではない可能性の方が高いんだから」
海斗「曙は絶対に会う必要がある、と思ってるんだね」
曙「イムヤの話の通りだったらね、これは詳しく調べる必要があるのよ…でも、何も知らないのは困るわ」
海斗「流石にこれ以上ヘルバに頼り続けたくはないかな」
曙「わかってる、上手い事やるわ、無理なら諦めるし…とりあえず、行ってくる」
海斗「行ってらっしゃい」