元勇者提督   作:無し

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不安感

演習場 

駆逐艦 島風

 

島風「えっと…私島風っていうの、よろしくね」

 

天津風「天津風…よろしく」

 

島風「えっと…とりあえず私としばらく同室だから、気になる事があったら何でも聞いてね」

 

天津風「…じゃあ…私って、何なの?人間?艦?艦娘システムって何…?」

 

島風(いきなり重い…)

 

天津風「私は…私って何なんだろう、こんな人の形なんかじゃなかった、何か言葉を発することもせず、海を走り敵と戦う鉄の塊なのにそれを記憶して、今ここに人の形で存在してる…私は…天津風だって思ってるけど…」

 

島風「……天津風、戦争の時天津風はどうなって欲しかったの?」

 

天津風「…金属に思考する能力はないわ、ただ知ってるだけ、何も思わなかった」

 

島風「…また、戦いたい?」

 

天津風「…わからない、戦場から逃げることは私の存在の否定だと思う…戦うために生まれた鉄の塊がこんな風に…そう、生きてる事だって私には…不思議、いや、恐怖してる」

 

島風「恐怖?」

 

天津風「いきなり感情を与えられて、考える力を与えられて…死ぬ事を理解した、それが怖くなって…」

 

島風「死にたくない?」

 

天津風「…当然でしょ、みてよこれ」

 

天津風が手のひらを見せる

小さな擦り傷に血が滲んだ跡があった

 

天津風「さっき躓いてこけたのよ、痛かった…そう、痛かったの…戦えばもっと痛くて辛い、痛覚を通して味わった事はない、だけど理解できる」

 

島風「じゃあ戦わなくて良いよ、うん」

 

天津風「…やっぱりそうなるわよね」

 

島風「存在の否定が怖いのは…大丈夫、私達は戦わなかったとしても天津風を仲間として受け入れてる、絶対に天津風を否定したりなんかはしない」

 

天津風「…本当に?」

 

島風「うん、私だって戦うの嫌だったし…自信もなかったから…」

 

天津風「でも、今は戦ってるの?」

 

島風「…私は無理矢理戦うしかない状況だった、だから…なし崩し的に…でも、今戦ってるのは私が選んだからだよ、私だってみんなの役に立ちたいから」

 

天津風「…役に…」

 

島風「…大丈夫だよ、天津風、ここには戦い以外を選んだ子もいるから…そうだ、ゲームしてみない?」

 

天津風「ゲームって…何?」

 

島風「おぅ…ゲームって伝わらない?遊ぶ道具なんだけど…」

 

天津風「将棋とか…そう言う事?」

 

島風「将棋…やった事ないなぁ……あ、テレビってわかる?」

 

天津風「てれび…」

 

島風「こ、これは強敵な予感…」

 

となればとっておきはただ一つ

 

島風「天津風には…私がゲームを教えるっ!」

 

天津風「…なにそれ、本…?ずいぶん薄いけど」

 

島風「ゲームのカセットケースだよ!?」

 

天津風「かせっ…?」

 

島風「……東京とか行ったら脳がパンクしちゃうんじゃないのかなぁ…」

 

 

 

 

 

天津風「こ、コレで良いの!?私できてるの!?」

 

島風「うん、そうそうそんな感じ」

 

天津風「…ゲームって凄いのね、こんな平面の先に広い世界があって…」

 

島風「そのゲームは主人公が決まってるけど、自分でキャラクターを作ってもう1人の自分として遊んだり、いろんな遊び方があるんだよ」

 

天津風「へぇ〜…凄い…こ、これが楽しいなのかしら…」

 

島風「間違い無いと思う、天津風、さっきよりずっと楽しそうに笑ってるもん」

 

天津風「…笑ってるか…ふふ…よかった、私人として生きてられるのか不安だったけど、とりあえず楽しみは見つかったわ」

 

島風「案外簡単に解決したりするでしょ?」

 

天津風「そうね、あんなにウジウジしてたのがバカみたい」

 

島風「せっかく人間になったんだから…人生で辛い事、たっくさんあるよ、でも、楽しい事もいっぱいある」

 

天津風「…みたいね、良い勉強になったわ」

 

島風「そのゲームクリアしたら次はネトゲやろう!」

 

天津風「…クリアって、消すって意味よね…?」

 

島風「あー、うん、そうじゃなくて…」

 

 

 

 

 

 

東京

駆逐艦 曙

 

曙「ねぇ、コレって続きないの?」

 

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亮「……何で俺はお前のパシリやってるんだ?」

 

曙「細かい事は気にせず、ほら、続きは?」

 

亮「まだ出てねぇ、つーかお前帰れよ」

 

曙「移動費の方が高いの、ネットカフェで泊まってた方がずっと安い」

 

亮「だからって何で俺を呼び出すんだ?」

 

曙「…わざわざ死の恐怖サマを呼び出してやることって言ったらレベリングくらいでしょ」

 

亮「ざけんな、何で俺がお前のレベル上げを手伝わなきゃいけねえんだよ、俺だって忙しいんだ」

 

曙「じゃ、いいや…それより神通にも会わせてくれない?」

 

亮「何でまた俺に頼むんだよ」

 

曙「The・Worldで会ったのよ、アンタんとこに居候してるって?」

 

亮「…直接連絡取れてるならそっちで話せよ」

 

曙「何で会いたいかわかってるでしょ、それに川内型は揃いも揃ってアンタのとこの艦じゃない」

 

亮「今の俺にあいつらをどうこうする力はない」

 

曙「そう言う話してるんじゃないことくらい、わかってんでしょーが」

 

亮「俺の許可を求めたって言うんなら、俺は許可したって言っとけ」

 

曙「…ま、いいけど…要件は終わり」

 

亮「随分とあっさりしてんな」

 

曙「こっちのセリフよ、まあごねられる理由もないけど」

 

亮「俺も忙しいんだよ…カイトによろしく言っといてくれ」

 

曙「カイトに?」

 

亮「研修でそっちに世話になりそうだからな」

 

曙「研修?そんなのやるんだ」

 

亮「いきなり現場に放り出されるよりはマシだろ、まあ、そう言うことでよろしく頼む」

 

曙「アンタも大概適当ね」

 

亮「お前には言われたくねぇよ」

 

 

 

 

 

 

横須賀鎮守府

提督 火野拓海

 

浜風「駆逐艦浜風、ただいま戻りました」

 

拓海「勝手な出撃以外については特に言及する点はない、以後控えるように」

 

浜風「…それだけですか?」

 

拓海「ああ、無事に帰ったのならそれで良い、該当海域での戦闘はとても激しい物だったと聞いている」

 

浜風「…一発の砲弾も放っていません、私はあの場にふさわしくなかった」

 

拓海「出撃したメンバーは宿毛湾、佐世保、どちらも高い評価を出している者ばかりだ」

 

浜風「……私の記憶通りでしたら旗艦を務めていた青髪の曙の成績は良くはなかったはずです」

 

拓海「書類に書かれた事が全て真実ではない、と言うことだ」

 

浜風「海を燃やし、炎の壁を作るような戦い方をするのが艦娘なのですか?」

 

拓海「…それについては報告書が上がっていない、私はそんな事実は認識していない」

 

浜風「あれが最新式の装備なら、あれを色々なところに配備したら…もっと早く深海棲艦を全滅させられるんじゃないですか?」

 

拓海「2度目だがその装備の情報は私には上がってきていない、おそらく向こうにいる明石が開発したオリジナルだろう」

 

浜風「…アレがあれば、きっと各地で深海棲艦をもっと効率的に撲滅できます!やってみせます、だからあの装備をください!」

 

拓海「何度も言わせるな、あれは我々が開発した物ではない、私に頼んだところでなにも変わりはしないだろう」

 

浜風「夕張さんと言う方と宿毛湾でお会いしました、あの方はもともと横須賀の所属で工廠での作業もできると聞きました」

 

拓海「彼女は別の仕事で宿毛湾に行っている、君の私的な要件で呼び戻す事はできない」

 

浜風「私的…?アレがあればもっとたくさんの深海棲艦を殺せて犠牲者も減るのに…!」

 

拓海「それよりも、だ…浜風、君に仕事だ」

 

浜風「…仕事?」

 

拓海「周辺の島の調査の際の護衛を頼みたいとのことだ」

 

浜風「護衛…」

 

拓海「海上を偶に物資が漂流している事があるが、それはおそらく深海棲艦が集めていると思われる、鋼材、燃料など、我々にとっても必要不可欠な物だ、特に燃料を失えば君達が海に出ることもできない」

 

浜風「…それで」

 

拓海「調査対象の島が深海棲艦の基地になっている、もしくは弾薬などの補給地点であると考えられる、そのため君にも護衛に出てもらう」

 

浜風「…わかりました、深海棲艦が殺せるならそれで」

 

拓海「仕事の内容は護衛だ、深海棲艦の殲滅ではない、よく理解したまえ」

 

浜風「変わりません、降りかかる火の粉は払う…いや、踏み潰すまでです」

 

そう言って浜風は部屋を出た

 

 

 

 

 

佐世保鎮守府

軽巡洋艦 龍田

 

龍田「うーん…瑞鶴?いつまでへそを曲げてるのかしら〜?」

 

瑞鶴「違うのよ、あの曙にうまく騙されたのが気に食わないとかじゃなくて…」

 

龍田「出撃許可の方?共同作戦にする為に宿毛湾の立て直しを待たなきゃ〜」

 

瑞鶴「そうだけど…今もまだ私の頭には助けを求めてる声がする」

 

龍田「…早く助けたいって事?」

 

瑞鶴「この前の出撃で会ったのは二回目だけど…ちゃんと顔を見たのはさ、初めてなんだ」

 

龍田「見てみて、何か変わった?」

 

瑞鶴「…うん、苦しそうだった…この助けてって声は…本当に助けを求めてるんだ、瑞鶴に」

 

龍田「…瑞鶴、に?」

 

瑞鶴「そう、瑞鶴の適合者だから私…あの人は翔鶴の適合者なんだと思う」

 

龍田(うーん…その辺りが一番安全なラインかしら、記憶が完全に戻ればその辺りも自分で補完してくれるだろうし)

 

龍田「じゃあ、もっと強くならないとね〜」

 

瑞鶴「わかってる、そういえばそっちは?いきなり駆逐艦の教育役って聞いたけど」

 

龍田「叢雲ちゃんはかなりスジがいいけど…少し物足りないわね〜磯風ちゃんも落ち着きがあるけどまだ体捌きが慣れてない感じっていうか〜…」

 

瑞鶴「龍田は足りてない所ないの?」

 

龍田「私は〜…」

 

龍田(…一度相手をしてみるのもいいかもしれないわね〜)

 

龍田「今、ここにいるメンバーなら最強だと思うわ〜?」

 

瑞鶴「…へぇ?私より?」

 

龍田「試してみる?」

 

瑞鶴「上等…明日の午前中に演習と行こうじゃないの…!」

 

龍田「楽しみにしてるわ〜」

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