元勇者提督 作:無し
佐世保鎮守府 演習場
駆逐艦 秋雲
秋雲「…はー…すっごいなぁ…」
陽炎「あれ?秋雲…なんでそんなとこで絵なんか描いてんの?」
秋雲「おー、陽炎に…叢雲と磯風だっけ」
磯風「ああ、ようやく名前を覚えてもらえたようでありがたい」
叢雲「この数日に何度間違えられたか」
秋雲「あはは、ごめんごめん…それより見てよアレ」
陽炎「…ん?うわっ…やってたんだ」
陽炎が隣に腰を下ろす
磯風「何だ?何か…音は微かにするが…」
叢雲「あそこ、うっすらと…何?あれ…戦ってる?」
秋雲「演習中って札、見なかった?使う?双眼鏡」
そばに置いていた双眼鏡を2人に渡す
磯風「ありがたい」
叢雲「……何アレ」
秋雲「龍田さんが瑞鶴さんに格の違いを教えるワンシーン、かなぁ…」
陽炎「…今の瑞鶴さんじゃ厳しい、と思ってたけど…思ったより龍田さんが余裕たっぷり、って感じね…」
秋雲「この前聞いたんだけど、龍田さん記憶が戻ってからずっと修練してたんだってさ…そりゃそーなるよ」
召喚式の砲撃と槍だけで全ての艦載機を寄せ付けず、余裕たっぷりに近寄って行く姿はやはり、まだ違う
秋雲「…いい絵になるけど…こりゃ子供向けじゃないなぁ…」
陽炎「子供向け?もしかしてアンタ子供向けの絵なんか描きたいの?」
秋雲「いんやー?秋雲さんのお友達が絵本を書いてるんだけどそのお手伝いでね」
陽炎「へー…なんか前も聞いたような」
秋雲「その人であってるよ、一冊書くのってすごく大変だからアイデアとかになればなーって」
陽炎「深海棲艦との血みどろの戦争を?やろうとしてる事が戦争教育と変わらないわよ」
秋雲「いや、それは言い過ぎでしょ…なんにしてもこれは使えないなぁ…バトルものにしても面白みに欠けるし」
磯風「あー、すまない」
秋雲「んあ?」
磯風「あの龍田と言う方は…どのくらい強いのだろうか?」
陽炎「見た通り…この中では、ズバ抜けてなのかな」
磯風「いや、もちろん私達が届かないほど強い事は百も承知だ、知りたいのは艦娘としてどのくらい強いのか…そうだな、もっと言うと私と同じ日に艦娘を始めたあの人は全ての艦娘の中でどれくらい強いのか…」
秋雲「えー…まぁ、上から数えた方が早いのは確かだよねぇ…」
磯風「やはりアレよりも上が居るんだな」
陽炎「上っていうか…別格かなぁ…」
叢雲「別格?あんなに強いのに?」
秋雲「見ればわかる、としか言えないけど…秋雲さん達が知ってる強い奴らは本当に化け物だったからねぇ…」
陽炎(化け物になる奴もいたけど)
陽炎「ま、この前の出撃で見てヤバかったのは…宿毛湾の曙かなぁ」
秋雲「この世界でどうやってあんな事してるのか…って感じだけど、あいも変わらずの…ってね」
磯風「ふむ…是非会ってみたいものだな、稽古をつけてもらいたい」
秋雲「やめた方がいいよ、面倒見悪そうだし」
陽炎「乱暴よね」
叢雲「そんなに嫌な奴なの?」
秋雲「1人は嫌な奴」
陽炎「1人は…まあ恐ろしい奴というか…」
磯風「ん?んん?どう言う事だ?」
秋雲「宿毛湾の曙は2人いるんだよ、その2人共が恐ろしく強い…ほんとに会えばわかるって」
叢雲「…それって駆逐艦曙の艤装が強いだけじゃなくて?」
秋雲「違うと思うなぁ…」
陽炎「アレはただの化け物…と言うか今の青い方、チラッと聞いただけだけど全部の駆逐艦の艤装に適応してるらしいし」
磯風「そんな事があり得るのか?」
陽炎「さあ?私達は殆ど関わらないから知らないけど…あり得るんじゃない?」
秋雲「おっ、決着がついたみたい」
陽炎「思ったより持ったわね…でも、流石の龍田さんも無傷とはいかないかぁ」
軽巡洋艦 龍田
槍を大きく振るい、鋒を突きつける
瑞鶴「くッ…!」
龍田「わかった〜?今の貴方じゃまだダメなのよ〜」
瑞鶴「…なんでこんなに引き伸ばしたの…もっとあっさり勝てたでしょ」
龍田「あっさり勝ったら…何も学べないじゃない、せっかく時間をたっぷり使ってあげたのに…貴方のやった事はただ物量で押すことだけ」
瑞鶴「その割には傷だらけじゃない…!」
裂けた腕の皮膚をなぞる
龍田「…痛くないと、人は覚えないって言うわよね〜…痛みを感じるのが嫌だから、痛い目に合わなくていいように…でも、私は痛い目に合うことを選んだ、何でだと思う?」
瑞鶴「かわしきれなかっただけでしょ?強がりも大概にしなさいよ」
龍田「…そう、確かにかわしきれなかったけど、私は一つの艦載機も撃ち落としてないのよ?貴方の立ち回り一つでこの勝負に勝てたのに貴方は考えず、勝つことを捨てたの」
瑞鶴「違う!私は…」
龍田「何も違わない、だって本当なら貴方が私に負けるわけがないから」
瑞鶴「…は?」
龍田「かなり優勢な状況から開始された演習だからじゃない、どんなに不利でもそれを跳ね除ける程の強さが貴方にはあるはずだったのに」
瑞鶴「…何を知ってそんな事…!」
龍田「さあね〜、でも今の貴方、折れてるじゃない?」
瑞鶴「折れてる…?」
龍田「さっき私を傷だらけだ、って言ったけど…それで満足してるの〜?そんなんじゃ倒したい相手には勝てないわよ〜」
瑞鶴「ッ…!」
龍田「貴方はその場で、必要な時には頑張ってる…だけどそれじゃ足りないの、やり方がわからないなら聞けばいい、技術を知らないなら教わればいい…でも、相手が真摯に対応してくれるのは相手が頑張りを認めてくれた時だけよ?」
瑞鶴「今の私が努力してないって…?舐めんじゃないわよ!アンタなんかすぐ倒せるようになってやる…!」
龍田「せいぜい楽しみにしてるわ〜」
秋雲「お疲れ様です、龍田さん」
龍田「あら?もしかして見られてたかしら〜」
秋雲「みんなでバッチリと」
陽炎「ちょっとやりすぎな気もしましたけど…」
龍田「大丈夫よ、発破をかけただけだから〜…あら?磯風ちゃん、何か気になる?」
磯風「貴方は何で槍を使うんだ?機銃や主砲を持った方が効率的だと思うのだが」
龍田「んー、2人とも、少し私を撃ってくれる?」
秋雲「えっ、砲持ってないですよ…」
陽炎「私1人でも十分伝わるだろうし秋雲は見てるだけでいいわ、どうします?後ろから?」
龍田「どこからでもどうぞ〜?」
陽炎が周囲を回りながらこちらに砲を向ける
磯風「本気か…?」
叢雲「やりたい事はわかるけど…」
予告なしの発砲、砲弾を斬り捨てる
龍田「あら〜、顔を狙うのは良くないんじゃないかしら〜」
陽炎「すいません、急所を狙うの癖にしてて」
そう言いながらも砲撃の手は緩めない
龍田「うーん…そろそろ苦しいかもしれないわ…2人だったら捌けなかったかも」
陽炎「本当ですか?それは嬉しいかも…」
秋雲「ちゃんと毎日訓練してるもんね」
磯風「……アレって私たちにもできるものなのだろうか」
叢雲「少なくともすぐにできるようになるとは思えないけど」
全ての砲撃を捌き、槍を振るって煤を払う
龍田「少し服が焦げちゃったわ〜、急所狙いを強くイメージさせて、さらに急所のみに攻撃を集中させる…かとおもったら急所以外にも飛んでくるし、かなり実践的だったわよ〜」
陽炎「せめて一撃は入れたかったのになあ…」
秋雲「秋雲さんも負けてらんないなぁ、頑張らないと」
深海棲艦基地
キタカミ
チ級「姉貴…起キロ姉貴」
キタカミ「…木曾…」
私がこっちに堕ちてから木曾は良く笑うようになった、深海棲艦の表情は人のそれと比べてひどく歪んでいたけど、確かに笑っていた
チ級「大井姉モ早ク深海ニ来ネェカナァ…ヤッパリ、俺ハミンナト居タイヨ」
あれだけ理性を保てていた木曾すらもこうなった、それが堪らなく不愉快だった、私もそうなるように感じて
キタカミ「…大井っちは…来ない方がいいと思う」
チ級「ア?」
木曾に胸ぐらを掴まれる
チ級「ナンデダヨ、オレハミンナデ居タイダケナンダ、ナンデ否定スルンダヨ…!」
キタカミ「…木曾、深海に来るってことは…死ぬって事なんだよ、木曾は大井っちに死んで欲しいわけじゃないよね」
チ級「イヤ、俺ハ死ノウガナンダロウガ…関係ナイ」
キタカミ「…木曾、あんた自分が何言ってるかわかってんの…?」
チ級「ワカッテル、姉貴モ寂シインダロ?皆揃ッテ深海ニ落トセバイインダヨ」
キタカミ「木曾…それはダメだよ…」
チ級「ナニガダメナンダ?何ガ?俺達ハ死ンダ、確カニ死ンデコンナ姿ダヨ、ダケド求メテルンダ!寂シインダ!仲間ニ!姉妹ニ側ニ居テ欲シイダケナンダ!」
キタカミ「…っ…」
チ級「姉貴モ欲シイ相手ヲ落トセバイインダヨ、永遠ニココデ生キレバイイ」
キタカミ「…永遠に…居たい相手と…」
チ級「考エテミロヨ姉貴、俺達ガ人間ヲ襲ウノハ仲間ノ家族ヲ連レテ来ル為ダ、ソレノ何ガ悪イ?」
キタカミ「でも、それは…」
チ級「死ニ別レタ家族ト再ビ一緒ニ過ゴセルンダ、姉貴モ俺ヲ選ンデクレタジャナイカ、違ウノカ?」
キタカミ「…そう、だね」
キタカミ(…決して正しい行いではない、でもそれは…あくまで一般論…か)
チ級「病気デ死ヌ事モ、何カニ邪魔サレル事モナインダ、コレハヒトツノ救済ダ!」
キタカミ「…救済…」
チ級「姉貴サエ手伝ッテクレタラモット沢山ノ人ガ救ワレルンダ!」
キタカミ「…沢山の人が…救われる…」
チ級「姉貴ノ仲間モ、キットソレヲ知ラナイダケナンダ、キット救ワレタイハズダ」
キタカミ「…みんなが…救われる」
宿毛湾泊地
駆逐艦 アオボノ
アオボノ「艤装のテスト結果です」
明石「助かります、使用感はどうでしたか?」
アオボノ「30秒の制限が理解できました、曙に渡した艤装よりも…恐ろしいですね」
明石「使っていただいた通りこの30秒を超過すると何が起きてもおかしくはありません、例えば…爆散しても」
アオボノ「シンプルなデザインの島風型の艤装に拘ったのは?」
明石「最高速度を落とさない為です、確かに綾波型で作ったとしても…安定はしますが、速度は半分ほどになりますから」
アオボノ「半分…か」
明石「最高速度はキロ換算で時速200キロメートル、スポーツカーとかの世界…の一歩手前ですね」
アオボノ「正直扱い切れませんね、これはお蔵入りという事で…何よりむき身でこの速度の移動は内臓などがぐちゃぐちゃになりますから…最高速に加速しようとは思えませんでした」
明石「…そうですか、残念です」
アオボノ「ところで、話が変わりますけど…何故提督を嫌ってるんですか?」
明石「…そんなに露骨でした?」
アオボノ「提督が来ると逃げるのは勿論、仕事の会話も最低限でウザがって…とても見てられたものじゃありませんね」
明石「いやー…だってあの人は後ろでぺちゃくちゃ言うだけで、命懸けなのは私たち…いや、皆さんだけじゃないですか」
アオボノ「そういう割にはここが発足してからの短期間に2度死にかけてますけどね」
明石「それも嫌なんです、不幸体質に巻き込まれてるのかなぁって感じがして」
アオボノ「…まあ、私の前でそんな素振りを見せなければ構わないので、もう少し気をつけてもらえません?」
明石「…あー…アオボノさんも?」
アオボノ「青葉さんなんて貴方のことを偶に親の仇のような目で見てる時がありますからね」
明石「…一緒にゲームしづらいなぁ…」
アオボノ「人を嫌う事は人に嫌われる事、よく覚えておいてくださいね、私にも嫌われてるので」
明石「えっ」
アオボノ「貴方には利用価値しか感じてませんから……嘘です、冗談…そんな捨てられた子犬みたいな顔しないで」
明石「めちゃくちゃ焦った…ここやめて死のうかと…」
アオボノ「青葉さんのことも誇張しただけです、でも、人を嫌う事は人に嫌われる事、これは事実です、よく覚えておいてください」
明石「りょ、了解です…」
明石(この子、圧がすごいいなぁ…)