元勇者提督   作:無し

202 / 625
繰り返し

宿毛湾泊地

駆逐艦 アオボノ

 

アオボノ(…まあ、結論はそこか)

 

綾波「…お、おそらく、す、推測通りなら何らかの形で…」

 

アオボノ「いつ?どうやって…どうやって私は仕込まれた…?病院で入院している時か?あの時に私は自分であることを失った…というのか」

 

綾波「お、おそらく…」

 

アオボノ「……」

 

書類を睨む

 

アオボノ「私の体内から何かを送受信し続けている…まるで爆弾のような物ですね、信号を受信できなくなれば私は爆散するのでしょうか」

 

綾波「…ど、どうする…んですか」

 

アオボノ「また宿毛湾を去ることになりそうですね、私に何の恨みがあるのやら」

 

綾波「…た、多分逆…」

 

アオボノ「逆、ですか」

 

綾波「発信してるのは…せ、戦闘データ…あ、曙さんを…引き込みたい人がいる」

 

アオボノ「かつてのあなた達のように?」

 

綾波は黙って頷いた

 

アオボノ「…では脳みそまで弄られる前に…ここを去りますか」

 

綾波「ど、どうするんですか」

 

アオボノ「提督に償う前に死ぬつもりはありません、かと言って誰かに利用されるのは嫌です、なので…修練を積む?いや、ここは大人しく隠居…ゲームしながら隠居も楽しそうですね、発つ前に提督に挨拶して来なくては」

 

綾波「…と、止められますよ」

 

アオボノ「でしょうね、やっぱりやめておきます…私は提督に言われたら従うしかありませんから…」

 

綾波「…こ、これ…け、携帯の番号」

 

アオボノ「…受け取っておきます、と言っても私は携帯を持ってませんけどね…戸籍があるあなたとは違って私は死人ですから」

 

綾波「…こっ…公衆電話…」

 

アオボノ「今稼働してる数は20万台を切ったそうですよ、果たして見つかるやら」

 

綾波「……そっその…れ、連絡!絶対に…絶対にしてください…!」

 

アオボノ(…意外ですね、知らないうちに随分と綾波に気に入られていたらしい)

 

アオボノ「…もしかして、私のことを妹だと思ってます?」

 

綾波「…だ…ダメですか」

 

アオボノ「…クフッ…アハハ!貴方が私の姉?馬鹿馬鹿しいにも程がある」

 

綾波「…ごめんなさい…ず、図々しいのは、知ってます…だけど…な、仲良くなれて…嬉しくて…」

 

アオボノ「……良いですよ?私に人の肉を無理やり食べさせたり蹴り殺したり…色々やってくれた貴方が私の姉を名乗るのならまず、朧に許しを乞うべきだとは思いますけど…まあ私は構いませんよ?」

 

綾波「ご、ごめ…ごめんなさい…」 

 

アオボノ「次会う時までに朧と仲良くなっておいてくださいね、お姉ちゃん?」

 

綾波「お……は、はい…!」

 

アオボノ(まあ、綾波からすれば心の拠り所が欲しいとか、そんな理由なんだろうな)

 

アオボノ「提督にはちゃんとこう伝えてください、私は…」

 

 

 

 

 

 

執務室

提督 倉持海斗

 

海斗「つまり?」

 

綾波「あ、曙さんは…じ、自身に埋め込まれた物が何か…取り出せる物なのか…そ、それを確かめられるまでは戻りたくない、と…とにかく安全な場所に行く…って…」

 

海斗「キミを疑うわけじゃないけど、間違いなくそう言ったんだね」

 

綾波「はい…」

 

朧「…綾波、嘘だったら…撃つよ」

 

綾波「…間違いありません、わ、私は…間違いなく、そう聞きました」

 

海斗(そう聞いた…か、つまり綾波は何かを察してるんだろうな)

 

海斗「朧、悪いけどみんなに伝えておいてくれる?」

 

朧「…わかりました」

 

朧は部屋を出た

 

海斗「綾波」

 

綾波「…はい」

 

海斗「キミの考えを聞かせて」

 

綾波「…お、おそらく…い、今は何をされたのかを探ることに徹してる、とおもっ…思います…」

 

海斗「その後、どう動くと思う?」

 

綾波「……わかりません」

 

海斗「まったく想像がつかない?」

 

綾波「…いいえ、な、何でもやりそうで…ど、どれを選択するか…」

 

海斗「有力な候補とかはあるのかな」

 

綾波「…う、埋め込んだ相手を…消すとか」

 

海斗「…とにかく、見つけて連れ戻したい…けど、何を埋め込まれたか調べないうちは危険だね…でもそれなら僕たちで守れば良い」

 

綾波「……」

 

海斗「綾波?」

 

綾波「し、司令官…目を、目を見せてもらえませんか…?」

 

海斗「目?」

 

綾波が近づいて目を覗き込んでくる

 

綾波「……」

 

海斗「…綾波?」

 

綾波「…し、失礼しました…な、なんでもありません」

 

海斗「目がどうかしたの?」

 

綾波「…ひ、ひどく充血してるので、せめて今日は早い時間に眠って下さい、が、眼精疲労にはビタミンB2が良いので…他の栄養も含む鰻など…た、たべて、よく休んでください…ま、間宮さんに用意してもらいます、ので…」

 

海斗「わ、わかったよ」

 

綾波「し、失礼します」

 

綾波は一礼して部屋を出て行った

 

海斗「…うーん…弱ったな」

 

 

 

 

 

東京 喫茶店

駆逐艦 曙

 

曙「っはー…こっちは物価高いわね、パンケーキが千円超えるなんて…やってらんない」

 

亮「お前ちょっと口閉じてろ」

 

大井「……」

 

千草「…あ、あの?」

 

曙「ま、いいや…えっと…何で日下千草まで出てきてんの?」

 

千草「えっと…一応姉として…と言うか、貴方と会ったこと、ありましたっけ…」

 

曙「一方的に知ってるわ、艦娘の駆逐艦曙、よろしく」

 

日下千草に手を差し出す

 

千草「ど、どうも…」

 

大井「それで?今日は私にどんな用件ですか、艦娘の人」

 

曙「要点だけ言うわ、アンタ以外の球磨型はみんな深海に堕ちた、あたし達としては全力でぶつかって殺しに行くわけだけど…アンタどうすんの?」

 

大井「…球磨型?なんですかそれ」

 

曙「…そう、じゃあ質問を変える、球磨、多摩、キタカミ、木曾、残らず殺して良いの?」

 

亮「おい」

 

大井「………」

 

曙「選びなさい、どっちを選んでも良い、アンタは関わらずに一生を生きても良い」

 

大井「いきなり殺すか殺さないか選べって、何が言いたいんですか?私に…知らない人の命を背負え、と?」

 

曙「そう、それなら良いわ、選ばないなら選ばないで…後悔しても遅いわよ」

 

大井「…ふん」

 

曙「一生そうやって知らんぷりしてなさい」

 

亮「おい!」

 

千草「待ってください、曙さんでしたよね、少しだけ時間をもらえませんか?」

 

曙「…ねぇ、もしかして記憶持ち?」

 

亮「…ああ」

 

千草「…こっちを見て」

 

大井の顔を無理やり自分の方に向け、向かい合って話す

 

曙「…意外とパワー系なのね」

 

亮「ヒーラーの癖に殴るタイプだ」

 

千草「ちょっと2人とも黙ってて下さい」

 

曙「…はーい」

 

大井「…何?痛いんですけど」

 

千草「後悔しない?」

 

大井「後悔って…何を」

 

千草「私は、この世界で…妹ができて嬉しかった、前の世界よりずっと楽しく生きてこれた…もちろん辛いことばかりだったけど、みんなが居て、やっと歩けた、前を向けた…」

 

大井「何を言って…」

 

千草「1人になろうとしないで、きっと私や、三崎さんが居ても…貴方は孤独なまま」

 

大井「…何を知って…」

 

千草「艦娘の適性検査、受けたんでしょう?全部知ってる、何で迷ってるのかも…」

 

大井「…それは…」

 

曙「…ちょっと待って…もしかして、アンタ記憶があるの?」

 

大井「…そうよ…あるわ、だとしたら何?大井として生きろって?そうするべきだ、って言いたいの?」

 

亮「マジかよ…」

 

大井「そりゃあ記憶が戻って真っ先に姉さんたちに会おうとした、身の回りにいる人間が誰なのか分かったし、どうやって顔を合わせるべきかって…それも楽しみになった、一瞬だけですけどね…」

 

千草「…記憶がある、となると艦娘として生きる事を周りに期待される、少なくとも私と三崎さんが記憶がある事はわかっていましたから」

 

大井「艦娘になって…私は何が為せるのか、キタカミさんの様に強くない私がなる意味なんて無い…と思ってたのに…なんで…」

 

曙「つまり、アンタは知らないフリを突き通すつもりだった…って事?姉妹がどんな状況になってるか聞いておきながら…!」

 

大井「…そう、そうよ!怖くなった…この世界には人として命を与えられた私がいる…前の世界とは違う、もし腕が吹き飛んだら2度と元には戻らない…魔法みたいな力もない…そんな世界で戦う事を恐れて何が悪いのよ…!」

 

曙「アンタねぇ…!」

 

亮「やめろ、これも一つの選択だ…それに無理な戦いをして無駄死にする様な真似、誰も望んじゃいねぇ」

 

千草「周りの期待、誰かの理想…それに無理やり合わせる必要なんかない…でも、自分から離れていく必要もない」

 

大井「…私は…離れてなんか…」

 

千草「本当に離れてないと思うならそれで良い、私たちに貴方の生き方を変える力はないから…私たちにできるのは変わらずに貴方の居場所である事だけ」

 

大井「…居場所…」

 

亮「…曙、今日は悪いけど帰ってくれ、大井にも時間がいる」

 

曙「見たいな、ゆっくり考えて…どのみち後悔なんてするものよ」

 

大井「…そうね、自分の手で介錯すれば、とか…誰かに任せて投げ出せばとか…どっちを選んでもそう考えると思う…でも、それでも…キタカミさんや姉さん達…木曾も…深海が居場所な訳がない…!」

 

曙「…決まりね」

 

大井「重雷装巡洋艦、大井…艦隊の救出作戦に参加します」

 

亮「良いんだな」

 

大井「ええ…何よりも…私だけが関わらないなんて事、許されるわけがない、許せるわけが無いの…!そうよ、大事な姉妹を見捨てて生きていく人生なんて…死んでるのと変わらない」

 

千草「…行ってらっしゃい」

 

大井「ええ…この世界での短い様で長い間でしたが…貴方の妹としての人生も楽しかったです」

 

亮「別に今生の別れじゃねぇんだ、そこまでかしこまった挨拶する必要ねぇよ」

 

大井「…それもそうね…じゃあ、行ってきます、四人目の姉さん」

 

曙(そういえば龍驤はどうしてるのかしら)

 

大井「すぐに戦線に参加する方法はある?」

 

曙「無いわ、軍人…まあ、公務員として登録される訳だし?その手間だけはかかるけど、待っててあげるから」

 

大井「…わかった、待ってなさい」

 

曙「さて…私も宿毛湾に帰るかぁ…」

 

亮「ああ、またな」

 

曙「…思いっきり…暴れてやる、楽しみね」

 

大井「私としては不安の方が多いけど」

 

 

 

 

 

 

 

某所

駆逐艦 アオボノ

 

アオボノ「…貴方達が私に何かをした?」

 

数見「なぜ君が所属の泊地を抜け出し、逃亡しているのかは問わない、キミほどに利口な少女は初めて見たよ、曙」

 

嫌な笑顔を浮かべる男だ

 

アオボノ「貴方は」

 

数見「数見だ、特務部を率いているものだと言っておこう…キミをスカウトしにきた」

 

アオボノ「その前に、私に何をしたか答えてもらえますか」

 

数見「発信機と…それからこんなものを」

 

あからさまにソレ専用というスイッチを懐から取り出す

その手のボタンはイヤと言うほど身に覚えがある

 

アオボノ「押さなくて結構…貴方への暴言はどのくらい許されるんでしょうね」

 

数見「一切を禁ずる、話が早くて助かる、私に従いなさい」

 

アオボノ「…おかしいですね、艦娘システムは望めば民間人に戻れると言う契約を含むはず」

 

数見「死人に口なし、と言う言葉はご存知ないか?」

 

アオボノ「…チッ…」

 

アオボノ(つまり私みたいな海から戻ってきたタイプは対象外…と言うか人権もなしか)

 

数見「キミを特務艦に任命する」

 

アオボノ「拒否すれば?」

 

数見「どうやらキミを動かすには…倉持海斗、そして綾波型を手にかけるのが早いのかもしれない」

 

アオボノ「…手にかけなくて結構です、従いましょう」

 

アオボノ(とことんクソだな…)

 

数見「配置は本部へと移ってもらう、ついてきたまえ」

 

アオボノ(…運命は変わらない…と言ったところか)

 

 

 

 

 

 

海上

荒潮

 

荒潮「…ぷぁ…っ」

 

肺に大きく息を吸い込む

潮の香りと焦げ臭い匂いが鼻腔を塗りつぶす

 

荒潮「…ごほっ…ここ…どこ?」

 

目の前に小さな手が伸びる

 

暁「…掴んで、陸まで引っ張るから」

 

荒潮「…あら〜…」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。