元勇者提督   作:無し

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間一髪

東京 喫茶店

提督 倉持海斗

 

青葉「司令官…本当に大丈夫ですか?」

 

海斗「うん、問題ないよ」

 

コーヒーを啜る、味がしない…というか、何もかもを拒否しているようだった、味すらも感じたくない、考えたくない

一切を放棄するように…疲労と、尚も頭を回転させようとする意思が脳内で喧嘩をするように頭痛が続いていた

 

青葉「…司令官、その…体調不良とかも?」

 

海斗「大丈夫だけど…」

 

まるで見透かされてるみたいな質問、自分の感情、考え、全てが見抜かれているかのような不安が頭を支配する

ストレスからだろうか、吐き気がする、胃に流し込んだものが食道に上がってくるような嫌な感じが続いている

 

青葉「…司令官、やっぱり顔色が悪いです…」

 

海斗「そうかな…」

 

青葉「原因は…さっきの話ですか?」

 

海斗「……曙、か…」

 

僕達宿毛湾の艦隊が手こずっていた南西諸島海域にたった一隻の駆逐艦が出撃、出会った敵を撃滅した…

当然駆逐艦一隻でそんな戦果は通常あり得ないが…本部の人間から見れば無能な僕の責任だと言う事だ

 

青葉「…なんで特務部なんかに行ったんでしょう」

 

海斗「わからない…曙にも考えがあるはずだけど…や

 

青葉「…南西諸島の解放…できますかね…」

 

海斗「……できるさ、みんな一生懸命訓練を積んでくれてる、きっと大丈夫」

 

青葉「…そうですね、そういえば大井さんが合流してくれるそうです、きっと戦力になってくれると…」

 

海斗「きいてるけど…記憶はあるのかな?」

 

青葉「はい、あるそうです」

 

海斗「……それ、北上と会っても大丈夫なのかなぁ…」

 

青葉「あ…た、多分大丈夫だと思いますよ…きっと…」

 

海斗「とりあえず、早く戻ってみんなに伝えないとね」

 

青葉「…一ヶ月のうちに南西諸島海域の完全制覇…ですか…」

 

海斗「佐世保との協力も認めてもらえてるし…大丈夫、やれるよ」

 

青葉「はい、私たちにお任せください」

 

青葉(…前を向いてくれているうちは大丈夫なはず…私たちも頑張らなきゃ)

 

海斗「あれ、着信だ…はい」

 

拓海『海斗、こっちに来ていると聞いてな、少し来られるか』

 

海斗「いいけど…どうしたの?」

 

拓海『新しく配属される艦娘が複数いる、作戦の事もあるだろう、先に顔を合わせて置く方が良いのではないか、と思ってな』

 

海斗「わかった、すぐ行くよ」

 

電話を切る

 

海斗「青葉、横須賀に行く事になったけど…大丈夫?」

 

青葉「はい、泊地には連絡しておきますね」

 

 

 

 

 

 

 

 

2日後

 

宿毛湾泊地 演習場

駆逐艦 島風

 

島風「へー…これなら大丈夫なの?」

 

明石「9割大丈夫だと思います、艤装の誤動作も今の所なし、新しいプログラムも組み込んだし…これで時速200キロの世界に!」

 

島風「200キロ…もいらないと思うけど」

 

明石「……ところで、何でジャージなんですか」

 

島風「えっ…アレで外に出ると思ってたんですか…?」

 

明石「他所に配属された島風さんはそうらしいですけど…」

 

島風「それってただの露出狂だと思うんですけど…?」

 

明石「ま、まあいいや、早速試しちゃいましょうか!」

 

島風「はぁい…よし、連装砲ちゃん、行くよ…!」

 

速度を上げる

 

島風「40ノット到達…!」

 

息を吸い込む度に肺が凍りつきそうになる

 

島風「スイッチ入れます!」

 

艤装を作動させた瞬間身体が重くなり、歩行用の艤装に引っ張られるような崩れた態勢になる

 

島風(転んだら最悪死ぬ…!)

 

島風「連装砲ちゃん!」

 

曳航用のワイヤーを絡め、無理矢理引き起こす

視界が狭く、真っ直ぐ進むだけでも不安が心を支配する

 

島風(あと20秒…!このスピードを私のものにするんだ…)

 

島風「私が…1番早いんだから…!」

 

双剣を構え、魚雷発射管を動作させる

 

島風「…もっと早く!」

 

艤装から機械音がなる、最速に到達した合図

 

島風「……見える、全部!」

 

周囲に火花が散る

 

島風「5…4…3…2…1…0!」

 

急にスピードが落ちたせいで身体が空中に放り出される

 

島風「わっ!?」

 

水面を転がるものの、怪我はない

 

島風「…大丈夫、あの速さは私のもの…でも、艤装…改良してもらわないと死んじゃうな…」

 

 

 

 

研究所

駆逐艦 綾波

 

綾波「…これとこれが一致して…あれ?このデータは誰の…」

 

ヘルバ『名前のタグがあるわ』

 

綾波「天津風…す、すごい事がわかるかもしれませんね…」

 

ヘルバ『ええ、その子は丸々全てが深海棲艦と言っても良いほどね』

 

綾波「…ぎゃ、逆かもしれません、こ、この…この人が艦娘システム…いえ、かっ艦娘そのものなのかもしれない…」

 

ヘルバ『それにしても…面白い結果ね、その天津風という子と貴方達のデータ』

 

綾波「…わ、私が0%…あ、青葉さんが29%、ほか、他の綾波型が35%…曙さんが72%、あの腕が98%…」

 

綾波(この割合でデータが一致する…艦娘システムを使い続けたら深海棲艦になる…と言う事?それから何が影響してるのかもわかった、艤装のせいだ…私だけ0なのは支給された艤装を使った事がないから、だけど何がどう作用してるのか…)

 

ヘルバ『貴方には話しても良さそうね、AIDAはわかるかしら』

 

綾波「AIDA…?な、名前だけなら…」

 

ヘルバ『Aritificially Intelligent Data Anomaly、不自然、異常な知的データ…これがThe・Worldというネットゲームで生まれ、そして大変な事件を起こした…第三次ネットワーククライシスは知っているでしょう?』

 

綾波「ね、ネットワーククライシスって、あの…!?」

 

綾波(ネットそのものが初期化されたせいで様々な方面が致命打を受けて…被害総額も確か…計算できないほどの額、そして人命も信じられないほどの数が失われた…って言われてるあの事件…)

 

ヘルバ『あの事件はAIDAを駆除する為に起きた物…と言ったら信じられる?』

 

綾波「あ、AIDAって…ただのデータ…こ、コンピュータウイルスですよね…?そ、そんな物のために…!?」

 

ヘルバ『ただのコンピューターウイルスならそうかもしれない…でもAIDAは違う、見なさい、これはAIDA感染者との会話ログや動向などのレポート』

 

綾波(…何これ、感染者って呼ばれてる人達は…一体何が……)

 

支離滅裂、攻撃的な言動、まるで何かに怯えるような、怒ってるような…

そして破壊による快楽

 

ヘルバ『AIDAは麻薬』

 

綾波「…まや、く……そう、そうだ、これを………違うッ!ダメ!」

 

一瞬脳裏によぎった、これは利用できる、と…

これを使えば…どうなるか、とても容易に想像できてしまった…

 

ヘルバ『……』

 

綾波(ダメ、それだけはダメ…絶対に許される事じゃないのに…この麻薬を使えば人を操る事も、それどころか……あ、そうか…そう言うことだったんだ…)

 

綾波「…洗脳……艦娘システムは…AIDAで…操作されている…?」

 

ヘルバ『そう考えられる、と私は思った…どう?』

 

綾波「ど、どうって…」

 

嫌な汗が全身から噴き出す

すぐ隣にいるような人が麻薬で操られた兵士…?

 

綾波「…そ、そうだ!ネットワーククライシスでAIDAは全部…!」

 

ヘルバ『それはネットに接続されていた物だけよ、例えばネットからAIDAを取り出し、何かに保存していたとしたら?』

 

綾波「そ、そんな…そんなのって…!」

 

ネットワーククライシスが起きた意味もなければ…それが必要な惨劇が再び起きる…?

 

ヘルバ『つい最近…ネットゲームThe・WorldでAIDAが確認された…』

 

綾波「……本当に、AIDAが…艦娘システムに?」

 

ヘルバ『そう考えるのが自然だと思うけれど』

 

綾波「…ご、ごめんなさい、失礼します!」

 

研究所を飛び出す

 

 

 

 

 

数見「やあ、キミに逢いたかった」

 

綾波「…貴方は…!」

 

綾波(確か特務部の…)

 

数見「我々に手を貸してもらいたい」

 

綾波「お、お断りします!」

 

数見「ふむ、理由を聞かせてもらいたい」

 

綾波「わ、私は…私は身体的および精神的に欠陥があり、じ、自分のスペースでしか働くつもりはありません!」

 

自分でももはや何を言ってるのかは判らないが、とにかく断る事に必死だった

 

数見「ふむ…断られた以上は仕方ないか…と、そういえばキミには妹がいたか…ああ、あの問題になった敷波」

 

綾波「…!」

 

数見「もしキミが私とともに来ないのなら…」

 

そこまで言いかけたところで砲撃の音が聞こえ、男のすぐそばの地面が吹き飛ぶ

 

数見「…おや、これはこれは…」

 

海斗「ウチの艦娘に何か用ですか、特務部の数見さん」

 

綾波(司令官と青葉さん…ま、まだ帰ってなかったんですね…)

 

数見「随分と手荒な挨拶だ、会話の邪魔をするために危うく人を殺しかけるとは…これは軽い処分では済まないが?」

 

アオボノ「撃ったのは、私ですよ、直属の上司さん」

 

綾波「曙さん…?!」

 

アオボノ「どうも、横須賀で直属の上司よりもぉっとお偉い方に護衛を頼まれまして…ほら、これ命令書です…今の砲撃はあくまで私の独断で行なった物だと言う事もしっかりわかっておいてくださいね?」

 

数見「……成る程?それで」

 

海斗「何か話があるようでしたら、泊地の方でどうでしょうか…綾波に何の用があるのか、こちらとしても気になりますから」

 

青葉「それから、敷波さんをどうするつもりなのかも…!」

 

アオボノ「どうしますか、直属の上司さん」

 

数見「……そうですか、今日のところはこれで」

 

数見は踵を返して去っていった

 

綾波「…はは…あはは…」

 

ついへたりこんでしまう

 

青葉「…立てますか?」

 

綾波「ご、ごめんなさい…こ、腰が抜けちゃって…」

 

綾波(私の研究は…敷波を巻き込むかもしれない…いや、もっとたくさんの人を巻き込むほどの価値を…)

 

海斗「立てないなら仕方ないか、青葉、待たせてる子を先に案内してくれる?僕は綾波をおぶって行くから」

 

綾波「え、あ、あの…大丈夫ですから…」

 

海斗「無理しないで、ほら」

 

アオボノ「大人しく背負われてください、提督、私も一足先に泊地に」

 

海斗「うん、先に行ってて」

 

 

 

 

 

宿毛湾泊地

提督 倉持海斗

 

海斗「敷波を人質に…か」

 

綾波「…はい」

 

綾波(…敷ちゃんはどうすれば良いのか…たとえ艦娘を辞めても利用価値があれば狙われる…いっその事私が死ぬ他ない…)

 

綾波「あ、あれ…そういえば司令官って…まだ帰ってなかったんですね」

 

海斗「うん、横須賀で次の作戦に使う装備とかの打ち合わせをしてたら2日もかかっちゃって…でも泊地には連絡したと思うけど?」

 

綾波「わ、私は研究所に居ましたので…」

 

海斗「そっか、頑張ってくれてありがとう、でも無理はしないでね」

 

綾波「…そんな事…」

 

綾波(本当に、幸運だった…司令官の帰りが1日どころか30分ずれていたら?曙さんが同行していなかったら?私は…敷ちゃんの事を持ち出されるととことん弱すぎる…)

 

海斗「…綾波、敷波には絶対手を出させないから」

 

綾波「……はい…」

 

綾波(私は、ただ足を引っ張ることしかしていない…)

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