元勇者提督   作:無し

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すれ違い

宿毛湾泊地

軽巡洋艦 大井

 

大井(まさかまた軽巡からやり直しとは思わなかった…と言うか、これは重雷装にできるのかしら、そもそも慣らしが必要だし…工廠で作ってもらえるように頼むべきね)

 

曙「よっ」

 

大井「あら、何日ぶりかしら」

 

曙「10日くらい?まあ何でも良いわ、ようやく来たわね」

 

大井「ええ、ようやく戦うのね…でも、いいわ、球磨型の四番艦として絶対に全員連れ戻す…!」

 

曙「頼りにしてるわ、でも軽巡装備か」

 

大井「丁度今から工廠に装備を変えてもらいに行こうと思って…一緒に来る?」

 

曙「…そうね、ついてくわ、コレも整備したいし」

 

よく見れば曙の制服にはベルトと双剣が刺さっていた

 

大井「双剣…って、ここは前と違うのよ?」

 

曙「……と思うじゃない?」

 

ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべる辺り、使いこなせてるようだ

 

大井「まあ良いわ、あら?」

 

視界の端にキタカミさんが映った気がした

 

大井「…違う、あれは誰?」

 

曙「何言ってんの?」

 

大井「ここに別の北上さんがいるなんて聞いてないわ」

 

曙「ああ、悪いわね、やる気削いだ?」

 

大井「…少し、ね…でも姉さんたちがそんな状況なのに気分を落ち込ませたりなんかしてられない、使える物は棒切れでも、何でも使う…挨拶してくるわ」

 

曙「そ、気になるしついてく」

 

大井「……勝手にして」

 

視界の端に見えた影を追う

 

大井「こんにちは」

 

曙(うわ、キモ…外行き用の顔?)

 

北上「んぁ?……誰?」

 

大井「球磨型の四番艦、大井です、よろしく」

 

握手を求めて手を差し出す

 

北上「…大井…?」

 

北上はこちらを見たまま訝しむ様に私の名前を繰り返し呟き考え込む

 

大井(…あれ?この北上、何処かで…)

 

北上「大井!お前…!そうだ、全部思い出した…!」

 

曙「は?」

 

大井(…そうだ、自主解体した北上…!)

 

北上「お前のせいで…!あの時あたしがどんな目にあったと…!」

 

大井「…自分から解体を選んでおいて、それは無いんじゃないですか?解体したらどうなるかは知りませんが」

 

北上「あの苦しみを味わったのはお前達のせいなのに…お前達が…!」

 

大井「お前達お前達…他の言葉を知らないんですか?自分は悪くない、相手だけ悪い…そんなの通用するほど甘くないんですよ」

 

北上「黙れ!あたしは…クソッ!」

 

北上は当たり散らす様に壁を殴り、去っていった

 

大井「…はー……最悪ね」

 

曙「アンタらどう言う仲?」

 

大井「…呉で一時期球磨型としてね…一緒にやってたけど、私達がそっけないって…楽しくないからって自主解体を選んだんだけど…よっぽど辛かったんじゃない?解体された時」

 

曙「まあ解体って実際はネットの海に投げ捨てられるって事らしいし…何もできず、意思が残ったままフヨフヨ余生を過ごすとしたら相当むごいし、万が一お門違いでも恨みたくもなるんじゃない?」

 

大井「まあ…」

 

曙「だけど、アンタ十分そっけないわよ、今の対応を朧たちにされたらあたしだってしんどいわ」

 

大井「…そうかしら」

 

曙「もし対応は変わってないとか言うなら…本当に見直しなさいよ、今のアンタの口調は明らかに冷たかった、最初のよそ行きスマイルくらいしかまともな対応してないし」

 

大井「…そうね、わかったわ」

 

曙「ま、仲良くなれたら良いわね」

 

大井「同じキタカミさんを求めるつもりもないし、あの北上さんも北上さんとして、個人を受け入れて接するわ」

 

曙「まあ、あの北上問題アリだから根気良くね」

 

大井(アンタがそれを言うか…)

 

 

 

 

北上私室前

 

大井(関係修復には早い方が良い…とは思ったけど、なかなか緊張するわね、やれるだけやるにしても…)

 

ノックをしようにも体が動かない

 

大井(何を怖がってるの私は…ただ今までのこと含めて和解したい、と言うだけ…)

 

戸を叩くものの、反応はない

 

大井「…留守、か…」

 

何処か安心してしまう、このまま先延ばしにして仕舞えばどんなに楽なんだろう

 

大井「あ」

 

コンビニの袋を持った北上が近づいてくる

 

北上「そこあたしの部屋、アンタ邪魔、どいてくれる?」

 

大井「…待って、少しだけ話を…」

 

北上「あーはいはい、確かにあたしも悪かったかもね、二度と関わらないよ」

 

大井「ちが…」

 

北上「…夢見てたのがバカだったんだよ」

 

大井(夢…?)

 

北上は私を押し退けて部屋へと消えていった

 

大井(…訳がわからない、何を言ってるのか…そもそも話を聞く気も無さそうだし…)

 

 

 

 

食堂

 

曙「それで尻尾を巻いて逃げてきた、と…馬鹿なんじゃない?ドアくらい叩き壊しなさいよ」

 

大井「馬鹿言わないで、私にそんな力ある訳ないでしょ?今は人間なんだから…」

 

曙(力があったらやるのか…)

 

大井「そもそも話を聞く気がない以上…無駄なのよ」

 

曙「……アンタ、それでこの話を終わらせるつもり?」

 

大井「…だとしたら?」

 

曙(……)

 

曙「いや、いいわ、アンタの勝手だし」

 

大井「勝手って…」

 

曙「まあ、転んだら誰かが手を差し伸べてくれる…とか思ってるなら大間違い、アンタが北上に利用価値を感じないならそれでいいわ」

 

大井「利用価値って…私はそんな事…」

 

大井(…いや、最初は利用しようとしていたし…何も間違っていない、私は…いや、利用価値を感じないのなら無理に付き合う必要もないんだ…)

 

曙「さて…あたしはあたしで姉妹をぶちのめしに行くかぁ」

 

そう言って曙は席を立っていった

 

大井(どうしよう…私は…)

 

 

 

 

 

 

執務室

提督 倉持海斗

 

海斗「…君の思考も全て、データ化されている…?」

 

アオボノ「そういうことですね、私の身体には大量のナニカ…このナニカを特定できていませんが、これは思考や行動をログに起こす様で…優秀な私は目をつけられた様です」

 

海斗「…だからって泊地を去る必要はないじゃないか」

 

アオボノ「いいえ、必要でした…向こうに行く事で助けられた命もありますしね」

 

海斗「……曙が艦隊に復帰できる様に手は尽くすよ」

 

アオボノ「ありがとうございます、これ以上は私は何もできませんし、聞けません、伝えられません、今は思考の読み取りで済んでいる様ですが…いつの間にか操られるやもしれない」

 

海斗「絶対にそうはさせない…約束するよ」

 

アオボノ「その言葉だけが私を支えてくれます、提督…みんなを守ってください」

 

海斗「わかった」

 

執務室のドアが荒々しく開く  

 

曙「曙ぉ!1発ぶん殴りに来たわよ!演習場まで顔貸しなさい!」

 

アオボノ「お断りよ、もう出るところだし」

 

曙「……なら尚更1発殴らせなさい、このまま出ていくなんて許すと思う?」

 

アオボノ「許してくれないだろうけど…それが何か問題ある?無理矢理押し通るなんて容易い事なんだから」

 

曙「ちょっとクソ提督、どうにかしてよコイツ」

 

海斗「ごめん、僕には止められないかな…」

 

曙「……やっぱそういう事ね、次会う時は海かしら」

 

アオボノ「そういう事ね、願わくば…ま、強くなりなさいよ」

 

曙「アンタもね」

 

朝潮「あの、失礼します」

 

アオボノ「おや、朝潮さん」

 

朝潮「ああ、まだいらっしゃった…よかったです、せめて一言お礼を…と思いまして」

 

アオボノ「そんな、気になさらなくて良かったんですが」

 

朝潮「いえ、そんなわけには…荒潮を救っていただいた事、本当に感謝しています…ありがとうございました」

 

アオボノ「あそこで見捨てたら…私が私じゃなくなりますからね、もう仲間に手出しはさせたくないんです、私も手を出したくないし」

 

朝潮「そうですか…ところで、司令官」

 

海斗「もう来たの?」

 

朝潮「はい、候補生の三崎さんが到着されました」

 

海斗「わかった、応接室に行けばいい?」

 

朝潮「はい、それと新しく着任された方の案内も終了しましたので、後程皆さんに紹介を」

 

曙「何?大井だけじゃないの?」

 

海斗「うん、川内型と金剛が着任してくれる事になった、次期作戦についてもしっかり詰めた話をしなきゃいけないし…忙しくなるよ」

 

曙「そ、川内型もいるとなると…呉と宿毛の合同艦隊みたいなもんになってきたわね」

 

アオボノ(あれ…?金剛さんは知ってるけど…川内型については何の資料も見てないな…)

 

アオボノ「……私は早めに失礼しますね」

 

海斗「またね」

 

曙「ちゃんと鍛えときなさいよ」

 

アオボノ「誰に言ってんのよ、あんたこそ遅れをとる様なら私直々に殺してやるから」

 

曙「ふん」

 

海斗「行っちゃったか…」

 

朝潮「司令官、質問なのですが…」

 

海斗「川内型の事?配属先を選びたいから艦娘としては登録してないらしいよ」

 

曙「え?じゃあアイツら何しに来たのよ」

 

海斗「イメージアップの為の広報が主な仕事らしいけど…」

 

朝潮「…流石元アイドルと言ったところか、迎えに行った時に正門前でファンが屯してましたよ」

 

曙「へー…」

 

海斗「人目が集まるって言うのは…良くも悪くも利用できるかもね、外部からの不審な干渉を抑える事ができるし…だけどこっちの動きも観られる…肩身が狭い思いをするかもしれないけど我慢して欲しい」

 

曙「はいはい、暫くこれも控えとくわ」

 

そう言って双剣を机の上に置く

 

曙「側から見たらオーパーツだしね、あたしもそう思うし」

 

朝潮「そうですね、島風さんの訓練も控える様に言っておきます」

 

海斗「ありがとう、多分すぐに居なくなると思うから…」

 

 

 

 

 

 

私室

駆逐艦 敷波

 

綾波「…敷ちゃん」

 

敷波「何?神妙な顔して…」

 

綾波「あ、あのね…私ね、今のままじゃダメだ…って思うの」

 

敷波「ダメって…?」

 

綾波「敷ちゃんが艤装を装着した訓練を毎日してるのは知ってるし、私も前に進まないといけないな…って…」

 

敷波「そっか、うん!応援するよ!」

 

綾波(…そうだ、やっぱり今のままじゃいけない、こんなに後ろ向きで弱々しい考え方で生きていたら全て失うんだ、だから…今度こそ失いたくなんかないから…)

 

敷波「綾姉ぇ?」

 

綾波「…大丈夫、敷ちゃんは守るから…」

 

敷波(…綾姉ぇ、なんか、おかしい…?)

 

敷波「あ、綾姉ぇ?大丈夫?」

 

綾波「大丈夫…アハハ…大丈夫だから…」

 

敷波(絶対大丈夫じゃない顔してる…綾姉ぇおかしくなってる…?)

 

綾波「そ、そうだ、研究の続きしなきゃ!」

 

敷波「まって!この間もそう言って3日も帰らなかったじゃん!しかもさっき帰ってきたばっかだよ!?」

 

綾波「だ、だって…研究しないと…早くみんなを…」

 

敷波「みんなが何?何かあるの?」

 

綾波(…まだ不確定な部分もあるし、このまま艦娘をしてたら深海棲艦になるかもしれないとは言えない…それに…全部確かめてからじゃないといけない)

 

綾波「…もう少し、もう少しだけまって…」

 

敷波「なんなんだよぉ…それ……」

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