元勇者提督 作:無し
特務部研究所
駆逐艦 アオボノ
アオボノ「……気分が悪いですね」
かつてのあの場所のように…
鎖で繋がれた人間の入れられた牢屋、そして笑う綾波
気分を害するものしかこの場にはなかった
綾波「良いじゃないですか、お陰で深海棲艦が人に戻せるかもしれない、尊い犠牲はいつの時代のどこにでも必要なんですよ」
アオボノ「…短期間で二転三転されると、やや困るのですが…反応に」
綾波「そうですか…ところで、貴方にも仕事を振りたいのですけど」
アオボノ(まるで前と変わらない…)
綾波「南西諸島海域解放作戦、宿毛湾が近日中に行うそうです…はい、これ書類です」
手渡された書類には深海棲艦鹵獲依頼とだけ書かれていた
アオボノ「…私に行け、と?」
綾波「貴方ほどの実力があれば…できますよねぇ?」
アオボノ「ここに居る多数の人間はなんのためにいるんですか、こんなに沢山いるのに…」
綾波「元、深海棲艦では…あんまり価値が無いんですよね、ほら、この数値が低すぎて…」
アオボノ「それは血圧では…?」
綾波「とりあえず、それもう通してあるので、さっさと出撃の支度を済ませておいてください、あと5日ありますので」
アオボノ(5日か…綾波も私を逃がそうとしているのかなどと思ったけど…それはないな、5日もあると簡単に止められる…)
綾波「何寝ぼけたように突っ立ってるんですか?暇なら被験体を連れてくるのを手伝ってくださいよ」
アオボノ「……遠慮します、書類を提出してきます」
オフィス
アオボノ「この作戦、もう目は通してあるんですよね」
数見「勿論だとも、君が行くことで倉持海斗の功績は半減する、その上多数のサンプルも手に入れられるだろう…うまく生捕にしてくれたまえ」
アオボノ「…わかりました」
数見「物分かりが良くて助かる」
アオボノ(…チッ…)
数見「話は以上だ」
アオボノ(…私にできるのは宿毛湾の誰かが死ぬことのないように…ってくらいか…)
愛知 病院
重巡洋艦 青葉
青葉(司令官が行けないからって私だけここに来る理由…ありましたかね…)
かなり大きい病院だ、というのに指定された時間に指定された言葉を口にするだけで待つ事なく応接室にまで通される
これもヘルバの影響力ゆえだろうか
黒貝「お待たせして申し訳ない、脳外科医の黒貝です」
青葉(…この人ってかなり有名な人だったはず…若くしてかなりの腕で…)
青葉「あ、えっと…」
黒貝「青葉さんでしたね、艦娘システムのことについても聞いています」
青葉「…え?」
黒貝「どうぞ、此方にいらしてください」
青葉(待って、私どこに…)
3時間後
青葉(…私がここにきた理由は私が検査を受けるためだったんですね…ヘルバさん、本当に食えない人だなぁ……と言うか私が検査を受ける意味って…)
黒貝「さて、検査の結果ですが…」
青葉「え、私も何か…?」
黒貝「残念ながら、しかし前もって伺っていた通りです」
青葉「前もって…?…まさか…!」
黒貝「貴方の脳にはAIDA感染者特有の腫瘍のような物が確認されました」
青葉「しゅ、腫瘍!?AIDAってネットのコンピュータウイルスじゃ…!」
黒貝「何も聞いていませんか?AIDAはリアルの人間にも影響を及ぼす、これもその一つ」
青葉「そんな…!こ、このままだと私は死ぬんですか!?」
黒貝「いいえ、この腫瘍は脳の電気信号を操るようなものです、貴方の体を害する事は…今の所はないでしょう」
青葉「よ…よかった…」
黒貝「…と言う事です、満足していただけましたか」
黒貝が睨んでいるモニターの映像が切り替わる
白い和装に身を包んだ少年が画面いっぱいに現れる
欅『ご協力、ありがとうございます♪』
青葉「だ、誰…?」
黒貝「ふむ…?貴方は欅に言われてここに来たのでは」
青葉「い、いえ…ヘルバって方に…」
欅『誰に言われて来たか…なんて、些細な事じゃないですか、それよりも…』
黒貝「……その様だ、青葉さん、貴方のAIDAの感染経路は分かっています」
青葉「えっ…?」
欅『貴方の艤装です』
青葉「艤装…私たちが危険に晒されているって…もしかして!」
欅『そうですね、貴方達艦娘は…おそらく全員AIDAに感染しています』
青葉「そんな…じゃあこれは…大本営が…?」
欅『まず間違いないでしょう、このAIDAは改変された形跡があります、詳しい事は調査段階ですけどね』
黒貝「改変された形跡?通常のものとの違いがあるのか…青葉さん、先程体を害する事は今の所ないと言いましたが、取り消させてください」
青葉「ま、待ってください…整理が追いつきません、このAIDAはコンピュータウイルスなんですよね…?」
欅『コンピュータウイルスと呼んでいるのはその方がわかりやすいから、実際はただの電子生命体です、ネットに突如現れた…ネットワーク全体のバグ』
青葉「そ、それがなんで人に…?」
欅『詳しい事は分かりません、ですがAIDAは脳に寄生します、通常はThe・WorldのPCを介して感染するのですが…艤装から感染するとなると…』
青葉「り、リアルに出てきてる…?そんな、こんなのおかしいじゃないですか!どうやって…!」
欅『詳細は一切不明です、でも、AIDAは取り除く事ができる』
青葉「そっか、データドレイン…!」
欅『データドレインを使える碑文使いを手配します、明日、用意しておいてください』
青葉「わ、分かりました…」
黒貝(艦娘システムか…AIDAと一体化した人間…故に0.5秒の壁を越える事ができる…)
青葉「まだわからない事があるんですけど…私達、特に攻撃的になってるつもりは…」
欅『ええ、承知しています、そこも手が加えられた部分なのではないかと…ここからは完全な憶測ですが、おそらく艦娘システムの管理のために手を加えたものと思われます』
青葉「…それじゃあ危険性はない…?」
黒貝「逆でしょうね、AIDAの凶暴性を自在に引き出せるとしたら?」
青葉「そんな…!」
欅『AIDAは麻薬と言っても差し支えのないものです、しかしその力を自在に操れるとしたら…相当危険な代物です、全員をデータドレインして治すにはどれだけ掛かるか…』
青葉「と、止めないと…艦娘をもう増やさない様にしないと…!」
欅『それは無理です、艦娘システムはもうかなり浸透している上にメインの対象は孤児です』
青葉「そ、それが何か問題なんですか…?」
欅『自分に直接関係しない事には人の関心は薄いんです、自分から艦娘になる事を志願した人や孤児の艦娘が悲惨な目に会う事よりも、深海棲艦が人を襲うと言う事実の方が重要なんでしょう』
青葉「やってみないとわからないじゃないですか!」
欅『確かに、事実が明らかになれば声をあげる人も出てくるでしょうが、根絶は不可能です…深海棲艦が居る限り』
青葉「っ……そうだ…司令官、司令官のAIDAは!?アレは私達のAIDAとは違うんですよね…!?」
欅『別物です』
青葉「司令官は大丈夫なんですか…!?」
欅『そちらも今の所は…ですがそちらのAIDAは通常のAIDAとは大きく異なる点があるんです』
青葉「異なる点…?」
欅『まだ調査段階ですが…そのAIDAが出現したギルドやタウンにデータの異常が見られました、そのため現在閉鎖状態になっています…問題のAIDAは駆除されましたが、おそらく身の危険を感じると周囲に危害を及ぼす様で…』
青葉「じゃ、じゃあ…!」
欅『今のところ、駆除はかなりのリスクだ…と思います』
青葉(司令官のAIDAが駆除できない…司令官のAIDAを駆除したらどうなるかわからない…AIDAは脳に腫瘍を作る、つまり最悪の場合は…)
黒貝「そこまで危険なAIDAは聞いた事がないが…」
欅『AIDAは常に進化し続ける生命です、AIDAがどうして今存在してるのかもなんとなく想像がつきます、ネットから一度離れる事で消滅を免れた』
黒貝「ネットから離れた?」
欅『USBでもなんでもいい、AIDAはとにかくネットから完全に隔離されたものに一時的に移動した…それにより消滅を免れたんです』
青葉「……すみません、帰ります」
欅『青葉さん』
呼び止められたのに、そちらを向く気力すらない
欅『明日、お待ちしています』
青葉「…はい…」
バス内
駆逐艦 秋雲
陽炎「よーし!あがり!」
秋雲「嘘だ!またドベじゃん…秋雲さんやっぱり8切り欲しいんだけど…」
瑞鶴「大富豪はシンプルが一番だって…にしても…提督さん!まだつかないの?宿毛湾」
渡瀬「あと30分で着く、もう少し待て…」
瑞鶴「んー、というか宿毛湾に集まる意味ってあるの?」
秋雲「佐世保に船を回すのはリスクが高いから瀬戸内海を通して宿毛湾に運びたい…って事らしいですよ」
瑞鶴「それってなんか意味あるわけ…?横須賀で集まってそこから護衛するなり、一部横須賀に行かせればいいじゃん、というかなんで軍艦を全部横須賀に集めてるのかなぁ…」
秋雲「さぁ…」
陽炎「まあ、合同演習とか色々やらなきゃいけないこともあるし…それに佐世保も全戦力回すにしても、人数は宿毛湾の方が多いんですから」
瑞鶴「あ、見えた…アレかぁ…」
宿毛湾泊地 正門前
秋雲「うわっ…何この人だかり…」
瑞鶴「田舎なのにアホみたいに人居るけど…これどうなってんの?と言うかまだ門開かないのかな…」
陽炎「あ、来ましたよ」
朧が門を開く
朧「お待ちしてました、どうぞ」
瑞鶴が窓を開けて身を乗り出す
瑞鶴「よっと…堅苦しいなぁ…別にそう言うのいらないと思うけど…それより、1人なの?」
朧「今日は半分は非番です、長丁場になるならって」
陽炎「良いなぁ…って、それより…あの人だかりは…?」
朧「……後で説明します」
瑞鶴「はー、バス旅は疲れるわねぇ!」
秋雲「時間かかりますしねー…これなら船のほうが早いですよ」
陽炎「司令の機嫌を損ねるからあんまりそう言うこと言うのは…いや、いいか…それより、あの人だかりは…?」
朧「…えっと、あの人たちの追っかけです」
瑞鶴「あの人たち…?」
秋雲「んー…?あれは……」
朧が指した先には…
陽炎「那珂ちゃんずだ!えっ、本物!?」
秋雲「うわっ、びっくりした…あー、居たな、ネットアイドルっていうか…川内型じゃーん…」
瑞鶴「……アイドル…?めっちゃ殴り合ってるけど…」
朧「…まあ、その…修行らしいです」
瑞鶴「修行…アイドルなのに?」
陽炎「わかってないなー瑞鶴さんは…!那珂ちゃんずは3人とも武道に精通しててですね!」
秋雲(うわ…めんどくさいやつだ…)
朧(外の連中と変わらないのが中に…)
秋雲/朧「「はぁ…」」
秋雲「…ん?」
朧「えっと…」
秋雲「…そういやあんまり話したことなかったよね、秋雲、よろしく」
朧「朧、よろしくね」
朧と握手を交わす
秋雲「今のココってどのくらい化け物いるの?」
朧「…うーん…島風と曙くらいかな、確かに突出してるのは何人かいるけど、普通の域を出てはいないと思う」
秋雲「えっと…今青髪の方は…特務部だっけ」
朧「知ってるの?」
秋雲「1人で南西諸島の敵ボコしたとありゃ…有名になるよ」
朧「そっか…うん、でもいい子だから…うん…」
秋雲「歯切れが悪いなぁ…姉妹には苦労するタチと見た」
朧「まあね…」
秋雲「気持ち、わかるよ…」
陽炎「オイ、秋雲…アンタが苦労かける側なの忘れてないでしょうね」
秋雲「いちっ痛いって!耳引っ張らないで!痛いから!」
陽炎「こんな妹だけど仲良くしてやってね、ところで神通さんの好物とか知らない!?」
朧(神通さん推しなんだ…)
朧「いや、知らないけど…」
陽炎「何かわかったら教えてね!私挨拶してくるから!」
瑞鶴「まちなさい、遊びに来たんじゃないんだからね」
陽炎「ちょっとだけ!ちょっとだけだから!あー!やめて!首はやめてぇぇぇ!」
秋雲「……アレと比べたらマシに見えるでしょ?」
朧「あ、あはは…」
朧(どっちもどっちなんじゃないかな…)