元勇者提督   作:無し

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護衛演習

宿毛湾泊地

駆逐艦 朧

 

朧「…えっと、それでは合同演習を始めます、勝利条件は同じ、護衛対象のドラム缶が破壊される前に敵戦力を撃破、もしくは相手艦隊のドラム缶を先に破壊です」

 

秋雲「あー…質問いい?向こうでシャドウボクシングしてる人達は…」

 

秋雲が神通と那珂の方に視線を送る

 

朧「えっと…一応こっちの軽巡枠として…」

 

秋雲「…マジ?あの人達普通に素手だけど…?え?本当に?」

 

那珂「大丈夫大丈夫!那珂ちゃんたちはー、素手でも戦えるから!」

 

陽炎「…いや、せめてグローブとかしてこっちの安全に配慮を…」

 

神通「ちゃんと加減はします、気絶はしない程度にしますので…」

 

陽炎「ヒェッ」

 

川内「いや、それ逆に辛いと思うけど…っていうか本当に2人がやるの?私が出た方がまだ安全だと思うけど…」

 

那珂「巡洋艦2と駆逐艦4の編成だもん、しょうがないよねー♪」

 

神通「ねー」

 

川内(…もういいや)

 

秋雲「そこの方ー!匙を投げないで!」

 

陽炎「ああ、推しになぶり殺されるならそれもそれで良いのかもね」

 

秋雲「いや、馬鹿なこと言う前に…あーもう、面倒臭いしいいや、こうなったら秋雲さんがやってやる!」

 

 

 

 

朧(編成は…こっちが旗艦神通さん、そして那珂さんと朝潮、大潮、漣、潮…朝潮と大潮は突出した部分はないけど連携を取りやすい、潮も指示は完璧にこなすから心配ないけど…漣は浮いた言動や実力を測る力の無さからの無謀な行動が目立つ…)

 

かと言って、決して戦力にならないわけではない

相手がただの深海棲艦なら無謀な行動も金星を狙った動きということもできるだろう

 

朧(…護衛のすることじゃないんだけど…と、それより…)

 

佐世保は龍田を旗艦に鈴谷、秋雲、陽炎、磯風、叢雲

 

朧(向こうは新人が2人…普通なら勝てる戦いって言えるけど、問題は龍田さんかなぁ…)

 

無線機に音声が入り始める

 

神通『会敵予定のポイントまで20秒…先に航空機が来ましたか、対空射撃開始!』

 

潮『落としました!』

 

朧(鈴谷さんは航空機も扱えるんだっけ…位置が先にバレたのはどう影響するかな…)

 

龍田『秋雲ちゃん〜?狙える?』

 

秋雲『あと少しで射程入ります!』

 

龍田『入り次第撃っていいわよ〜』

 

音声のログを書き起こす

 

朧「先に撃てる状況に持ち込んだのは佐世保、と…」

 

那珂『見つけた…ねぇ、1人くれない?』

 

朝潮『同行します』

 

レーダーの那珂と朝潮の進路が大きく外れる

 

朧(サイドから叩きに行くなんて無茶な気がするけど…)

 

神通『無茶はしないでくださいね…漣さん!敵の狙いは護衛対象です!弾幕を張ってください!』

 

漣『ひー!剣幕ヤバ…』

 

潮『砲撃飛んできました!』

 

神通『潮さんと大潮さんで前方に砲撃を開始、敵ではなく位置を狙って下さい』

 

通信が混雑し始める

 

龍田『反航戦、始まるよ〜』

 

神通『まだ単縦陣を維持して下さい、30秒したら進路を南に!漣さんはズレて私たちの後ろに入ってください!複縦陣にみせかけて数的不利を悟らせない様にします!』

 

潮『T字戦に持ち込むんですね…わかりました!』

 

漣『20秒前!…15…10…』

 

神通『進路変更します!』

 

秋雲『うわっ、T字不利!?同航戦に…』

 

鈴谷『待って、相手複縦陣になってる、多分突っ込んでもいける!』

 

龍田『…そうね〜、叢雲ちゃん、磯風ちゃん、水雷突撃を仕掛けるわ〜』

 

朧(人数が不利なこの状態で普通に当たられたら逆にキツい…那珂さん達は…大回りして完全に裏?そんな時間あったとは思えないんだけど…いつの間に)

 

神通『来ますよ…ギリギリまで耐えます!』

 

潮『砲撃を置く…置く…!』

 

龍田『…上空に向かって砲撃…?』

 

磯風『どうやら相手も新人らしい、なら戦果を上げられるかもな…!』

 

叢雲『あ、ちょっ!独り占めはさせないわよ!』

 

龍田『あら、旗艦発見…魚雷を用意して』

 

神通『敵旗艦、突撃してきます!魚雷用意!』

 

龍田/神通『放て!』

 

秋雲『あぎゃっ!?』

 

陽炎『秋雲!?うぇあっ、い、いつの間に…!』

 

那珂が秋雲の背後から強襲した様だ

 

鈴谷『ちょっ!龍田!後ろ後ろ!』

 

那珂『ドーモ、那珂=チャンです』

 

朝潮『呑気に挨拶してる場合ですか…!?一撃でも多く叩き込まないと!』

 

那珂『いいのいいの、楽屋挨拶はニンジャとアイドルの基本だから…それに3人こっちを向いたし、そのうち1人はもう戦闘不能♪』

 

鈴谷『2対2と3対4…!』

 

朧(人数差が逆転した…しかも不利な状況でほとんど戦ってないから最初から有利だったのと何も変わらない…!)

 

那珂『イヤーッ!』

 

鈴谷『うわっ!?びしょ濡れ…服滅茶苦茶濡れたし最悪!』

 

那珂『朝潮ちゃん!ドラム缶狙って!』

 

朝潮『わかっています!』

 

陽炎『させない!この…!』

 

龍田『ちょっと…狡いんじゃない〜?』

 

神通『そんな事はありません、私たちは常に真剣なだけですから…早くやりましょう、本気でどうぞ』

 

龍田『無手の相手に槍を使うのはあんまりだけど〜…』

 

神通『数的優位もあります、ハンデです』

 

龍田『…後悔するわよ〜』

 

無線機が本来出せない音に悲鳴をあげる

 

朧「耳が…なにこれ、金属音…?」

 

龍田『…蹴りで受けられるなんて…楽しいわ〜…』

 

神通『私もです、ですが…魚雷に無駄話に…そしてあの位置での砲戦、無駄な時間を過ごしすぎですね』

 

龍田『…ッ!2人とも!』

 

神通『喋る暇があると?口を開いていると…舌を噛んでしまいますよ?』

 

龍田の無線機が途切れる

 

朧「…え?壊したの…?あれ、那珂さんの音声も入ってこない…2つも壊れた…?」

 

 

 

 

 

 

演習場

軽巡洋艦 神通

 

神通(一つ…二つ)

 

大振りな槍の柄に拳を当て弾き、その腕を大きく振るう

 

龍田(意識を一瞬でも逸らしたやられる…召喚した砲撃も意味を成してない…)

 

神通「三つ!」

 

龍田「!?」

 

急な大声に龍田の槍の穂先が浮く

体を大きく捻り、槍を掻い潜り、しならせた腕を龍田めがけて放つ

 

龍田(手刀…!)

 

神通「勝負アリ…ですね」

 

龍田の槍が真っ二つに折れ、海面に浮く

 

龍田「……貴方の腕はナイフか何かなのかしら〜…」

 

神通「いいえ、ですがその槍は貴方に合っていない様ですね、その槍自体も貴方の扱いに耐え切れず傷ついていた…」

 

龍田「みたい、ね…ところで、呑気におしゃべりしてていいのかしら〜」

 

神通「よくわかっているでしょう、そちらの駆逐艦は全滅です」

 

上空から降ってきた砲弾に叢雲と磯風は大破判定、6対2ともなれば想像は誰にでも容易い

 

龍田「…降参しま〜す…あら?無線機壊れちゃってる」

 

神通「……あ、すいません…最初の打撃でつい壊してしまいました…」

 

龍田「あら…そうなの」

 

神通「旗艦からの指示を断とうと…」

 

龍田(…意図してやったとは思わなかったわ〜…これ、私怒られないわよね?)

 

神通「こちら神通です、龍田さんが降伏を選びました」

 

朧『朧了解です、一応龍田さんに』

 

龍田「はーい、間違いないわ〜」

 

演習終了のサイレンが鳴る

MVPは那珂だった

 

 

 

食堂

 

那珂「そうそう!艤装は浮くけど那珂ちゃん人間だから潜れるもん!」

 

鈴谷「うぇっ!?も、潜ったの…?潜水艦じゃあるまいし…というかだからびしょびしょ…」

 

朧「…無線機、一応防水だったんですけど…壊れてますね、浸水で」

 

朝潮「す、すいません…」

 

那珂「うーん、艦娘の体ならあと10メートルは潜れたかな…潜ったことなかったけど!」

 

磯風「艦娘の体なら…って何の話だ?」

 

陽炎「あー、気にしない気にしない…ネジぶっ飛んでるのよ多分」

 

叢雲「滅茶苦茶な戦い方よね、ほんと…」

 

 

 

 

 

 

応接室

提督 倉持海斗

 

海斗「えーと、では乗る船は1つに、護衛は常に5名以上、新人は必ずローテーション時同時に2人以上が出るような事にならないようにすること」

 

度会「とりあえずはこんなものか…何か気になることは」

 

亮「いや、俺は何も」

 

作戦に参加する艦娘の名簿、海図、乗る船の資料や人員のリストなどを眺めながら話し合いは進む

 

海斗「目的は南西諸島海域の解放…と言うことになっていますが、上層部の見立てではこの辺りに基地があるのではないか…と」

 

度会「俺も聞いている、南西諸島海域の開放と言っても日本近海にも深海棲艦は大量にいる、真の目的は台湾の奪還、そして南西諸島海域にあるであろう深海棲艦基地の破壊…か」

 

亮「基地ってなると…海の底なのかそれともどっかの島なのか…」

 

海斗「多分島だと思う、物資は深海だと保存が難しいと思うし…砲弾とかね」

 

亮「一応艦娘の使うモンと同じらしいしな…あと、アンタの言う戦艦棲姫だったか…そいつを潰すメンバーは」

 

海斗「艦隊からは曙と島風を軸に考えようと思ってる」

 

度会「…龍田なら足を引っ張る様なことはないはずだ」

 

亮「じゃあ残り3人はうちの3バカでいけるだろう」

 

度会「武器もなしで大丈夫なのか?」

 

亮「ま、演習結果を見てから判断してくれ」

 

携帯が鳴る

 

海斗「あ、すいません、少し失礼します」

 

席を立ち電話を受ける

 

ヘルバ『カイト、急いで青葉の様子を見なさい、危険な状態よ』

 

海斗「え?」

 

ヘルバ『急いで』

 

それだけで電話が切れたものの、ヘルバの口調から切迫した状況である事だけは理解ができた

 

海斗「ごめん、ちょっと出てくる!」

 

亮「お、おい」

 

度会「追うべきか…?」

 

亮「…一応」

 

 

 

 

夕張「うぎゃっ!?」

 

廊下の曲がり角で夕張とぶつかる

 

海斗「ご、ごめん!」

 

夕張「廊下は走らないでくださいよ…もう…」

 

海斗(…そうだ)

 

海斗「夕張!ちょっと来て!」

 

夕張「えっ!?え、ええぇ?」

 

夕張を連れて青葉の部屋の前まで行く

 

海斗「青葉!青葉、居る!?」

 

ノックしても返事はない

 

夕張「ちょっ、どうしたんですかいきなり…」

 

海斗「青葉が危険だって連絡があったんだ!」

 

夕張「危険…って、それならノックなんかしてる場合じゃないでしょう!」

 

夕張がドアを開き中に入る

 

海斗「青葉!」

 

青葉は部屋の隅にある自分のデスクから転げ落ち、吐瀉物に塗れた状態で倒れていた

パソコンは砂嵐、コントローラーは投げ出され、青葉の顔にはFMD(フェイスマウントディスプレイ)

状況から推察するに…

 

海斗(ゲーム中に…意識不明になった…?)

 

夕張「…ヤバ、これ息ができてないですね…!提督!救急車!」

 

海斗「救急車…!」

 

急いで電話を鳴らし、事情を必死に説明したがそこからの記憶は曖昧でよく思い出せない

 

 

 

 

病院

 

夕張「命に別状はないみたいです」

 

待合室のベンチに夕張が腰掛ける

 

海斗「…そっか、それならよかったよ…」

 

命に別状は無いとしても…意識が戻る保証はない

 

夕張「…黄昏事件、ですか」

 

海斗「拓海から何も聞いてない?」

 

夕張「軽くだけ、私はゲームはそこまででしたから…でも、ゲームしてて急に意識不明になったのは知っています」

 

海斗「…ウイルスバグ、データドレイン、八相…特殊な条件でキルされたPCのプレイヤーは…ゲーム中に意識不明になってしまった、青葉の部屋のつけっぱなしのディスプレイも…伸び切ったコントローラーの線も…なによりFMDをつけたまま倒れてる青葉も…全部がそれを連想させた」

 

夕張「でも、黄昏事件の原因は取り除かれたんですよね…?」

 

海斗「確かに、今はウイルスバグはいない…でも、日は沈む、黄昏はやってくるんだ」

 

夕張「……あんまり暗く考えないでくださいよ…っと、そうだ、面会します?一応許可はもらったんですけど」

 

海斗「うん、行くよ」

 

 

 

 

病室

 

青葉はベッドの上で死んだ様に横たわっていた

決して死んではいないのに

 

夕張「病院側は窒息による気絶とか、心的ストレス…って感じで見てますね、提督が面会するのはイヤな顔されましたけど」

 

海斗「まあ…上司ってなると疑われるよね…いや、実際ストレスの原因は僕だったのかも」

 

夕張「そんなの起きてから聞けばいいじゃないですか、すぐに目を覚ましますから、ほら、手出して」

 

海斗「えっ」

 

夕張に手を掴まれ、青葉の手を握らせられる

 

海斗「……」

 

頭にこびりついた記憶、本当に青葉は目を覚ますのだろうか

青葉は…未帰還者になったのでは

 

夕張「…ぅげ…すいません、提督から…あー、火野提督から電話が入ってたので失礼します」

 

海斗「うん」

 

部屋が一気に静かになる

静かすぎて、イヤなことばかり考えてしまう…

 

海斗「…青葉、起きてよ」

 

青葉「……」

 

海斗「…そうだ、ヘルバに連絡しないと…ヘルバは何があったか、知ってる」

 

手がぎゅっと握られる

 

海斗「…青葉?」

 

青葉「……あ、れ…」

 

海斗「青葉!良かった…目を覚ましたんだね…」

 

青葉「司令…か……あれ…、なんで私…ここは…」

 

海斗「病院だよ、青葉はゲーム中に倒れたんだ」

 

青葉「ゲーム中……倒れ、た…そっか、そうだ…」

 

海斗「青葉、何があったか話せる?」

 

青葉「…えっと……その、今記憶が混乱してて…けや、欅?さんに聞いてください…」

 

海斗「…わかった」

 

青葉「…司令官…」

 

海斗「何、どうしたの?」

 

青葉「…恐縮、です……ご心配をおかけしました…」

 

海斗「いや、いいんだ…無事ならそれで」

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