元勇者提督 作:無し
宿毛湾泊地 演習場
正規空母 加賀
加賀「…私と貴方、2人だけですか?」
瑞鳳「いいえ、化け物も二人呼んでおきました…今見せておいた方がいいですよね?」
島風「ば、化け物って…酷い言われよう…」
曙「…ま、いいわ…実力がついた証拠だと思えば…」
加賀「……過剰戦力ね、向こうはどうするの?」
瑞鳳「瑞鶴と葛城…あとはまだ暴れ足りないそうなので…神通さんと、それから川内さん、あとは秋雲と陽炎が入るそうです」
加賀「撤回、戦力的にはこちらが不利になりそうね」
瑞鳳「勝敗条件は旗艦の撃破…と言う名目ですが、向こうの旗艦の瑞鶴には手を出さないでください、私が仕留めます」
加賀「構わないけれど…」
曙「そう言う奴ほど負けるわよ」
瑞鳳「勝つつもりはないよ、全て思い出させる…その為には直接やり合わなきゃいけない」
島風「…戦って思い出すものなの?」
瑞鳳「…碑文使いの戦い方は本能でわかってるはずだから、少しそれを刺激すればいいだけ、難しい事は何も要らない…絶対に思い出させる」
曙「碑文使い…って、もうこの世界は碑文を呼べないのに?」
瑞鳳「碑文の力はここに作用するの」
頭を指す
瑞鳳「感覚、私は嗅覚の増大だけど、これは現実にも影響してる…碑文使いって多分脳がイカれてるから」
曙「…あ、そう…やっぱ鼻効くのね」
瑞鳳「もちろん、例えば…今食堂で明石さんが醤油ラーメンにニンニク入れて食べてるのがわかるくらいにね」
島風「それ鼻が良いのレベル超えてるんじゃ…」
瑞鳳「ね、瑞鶴は心の声でも聞こえるんじゃない?」
曙「川内型は?」
瑞鳳「詳しくは知らないけど…神通さんは死角がないのは間違いない、仕掛けるなら気をつけて」
曙「ま、島風となら行けるでしょ」
島風「最速だからね…!」
病院 病室
重巡洋艦 青葉
青葉「……退屈、だなぁ…」
司令官は帰ってしまったし…娯楽物もない
私の体はおそらく健康そのものだけど、一応朝まで病院で様子を見る事にもなったし…
ベッドに座って時間が経つのを待ち続ける行為はくたびれるのに1時間とかからなかった
青葉「寝てるしかない…か…」
横になり天井を見ようとしたら…
アオバ「…ハーイ?」
視界いっぱいに自分の顔が映っていた、横向きに
青葉「わぁぁぁっ!?」
アオバ「元気してたー…ら、こんなとこ居ないか、お見舞いに来たよ!」
衣笠「…驚いて放心してるんだけど、もうちょっとまともに登場できなかった?」
アオバ「サイレントエントリーは記者の基本!…って、おーい!」
青葉「…あは、あはは…ご無沙汰してます」
アオバ「そんな他人行儀な…お姉ちゃん泣いちゃうっ!」
衣笠「何が悲しくてこっちのアオバと血縁繋がるなんてことに…あー可哀想な青葉」
青葉「そ、それより!…随分早いですね、私が病院に運ばれてからまだ数時間しか…」
アオバ「しゅざ…ちょ、調査で呉に居たから、速攻!」
青葉「呉鎮守府?」
衣笠「動かそうにも民間の理解が必要でしょ?瀬戸内海って今のところ一度も深海棲艦目撃情報も深海棲艦による犠牲も出てないから」
アオバ「呉鎮守府の話にはみんな後ろ向き、このまんまじゃあ…ダメっぽいですね!特に漁業組合からの反応が厳しい!」
衣笠「数少ない漁場で砲弾の雨霰は御免だーって…まあ、舞鶴の方が先に動かせるんじゃないかって感じ」
青葉「た、大変なんですね…」
アオバ「さて、そんなクソどうでもいい話より…何があったの?過労?それとも…」
青葉「えっと…」
青葉(ここで話したら全部色んな方面に筒抜け…って考えると、何で言えばいいのか…)
衣笠「…アオバが邪魔?それなら衣笠さんが話聞くよ?」
青葉「いや、そう言うわけじゃ…」
アオバ「…まー、話辛いことを話せって言うのは…ジャーナリズム的には必要だけど、姉妹的には違うし…言いたい事だけ、話してもいい事だけ、教えて?」
青葉「え…は、はい…」
衣笠(アオバがまともな事を言った…!?)
アオバ「ガサ、何その顔…殴るよ?」
衣笠「いや、まあ…」
青葉(…AIDAに感染した事だけは喋っていいのかな…混乱を引き起こさないように……いや、逆に調べるように仕向ければ青葉の意図が…)
青葉「さ、最近、ネットゲームしてて…The・World」
衣笠「ああ、大淀さんもやってたっけ…?」
アオバ「いや、あれはアカシックラインっていう別ゲーですよ」
青葉「…AIDA」
衣笠「AIDAって…あの?…待って、青葉!AIDAが出てきたの!?」
アオバ「ガサ、うるさい」
青葉「…その、AIDAに感染しちゃって…でも、すぐ駆除してもらったから、もう平気です…」
アオバ「…AIDAに…そっか、アオバ達からしたらそれを力として操るイメージの方が強かったけど…AIDAは元々危険なものだった…」
衣笠「アオバ、The・Worldについてなんか知らないの?」
アオバ「ゲームについては司令官の方が詳しいですからね…でも、AIDA…あの危険なのが出てきたのなら…もうゲームはやめて欲しいところなんだけど…」
青葉(…そっか、私がThe・Worldを続けるかどうかも、選ばなきゃいけないんだ…でも、私は…)
青葉「やめません、やらなきゃいけない事があるので…」
青葉(私だけ助かるなんてダメ、司令官や皆んなのAIDAを取り除くんだ…!)
アオバ「…止めはしないけど、無理しないでね」
衣笠「辛いことや怖いことがあったら逃げておいで…って言っても、倉持司令は良い人だし、そっち頼るかー」
青葉「…うん」
アオバ(……?)
衣笠「あ、そうだ、さっき購買で雑誌いくつか買ってきたから!暇してると思って」
青葉「…ぷ、プロレス雑誌…」
アオバ「ガサ、それは自分の趣味では…」
衣笠「暇でやる事ない人って恰好の布教対象でしょ?…っていうのは冗談で、その雑誌の編集者さんと知り合いだからさ、何となく買うようにしてたり…あ、後ろの方にある連載小説とか普通に面白いから!」
青葉「は、はぁ…」
アオバ「とりあえずそろそろ帰るね、何かあったら連絡して」
青葉「あ、ありがとう…」
病室に静寂が戻る
青葉(…このタイミングの入院じゃ、作戦には参加できるか…いや、司令官なら大事をとれ…って言いそう……そう言えば司令官についていたAIDAは私たちのものとは別の…)
別々のAIDAなら…危険なAIDAなのなら…
誰かを手にかけるような、そんな危険なものなら…
青葉(疲れ気味に見えたのがAIDAの影響なら…あれ?でも司令官って特におかしくなってるような気はしないし…)
青葉「…よくわかんないな…」
宿毛湾泊地
軽空母 瑞鳳
瑞鳳「居た居た」
川内「あ、瑞鳳じゃん、何?演習前になんの用事?」
神通「多分、私に手を出すな、という事ですよね、瑞鶴さんとの勝負ですから」
瑞鳳「……2割は正解だけど、それよりも…今から少し時間ある?」
川内「…まあ、予定はないよ」
神通「私も何もありません」
瑞鳳「お金は?」
神通「……まあ、それなりには」
川内「何、たかり?」
瑞鳳「いーや、神通さんには私の艦載機をね、全部壊されたから…弁償してもらおうと思って」
神通「あ……いや、なんのことでしょうか」
川内「神通、おとなしく行ってきて弁償」
神通「…はい」
瑞鳳「川内も来て、悪い話じゃないから」
川内「…ま、いいか」
研究所
瑞鳳「…あれ、誰も居ない…」
電気のついていない、真っ暗な、そして誰もいない部屋
機械も一つも稼働していない、まるで破棄されたような…
川内「何?ここ…明らかに今くるような場所じゃ…」
中央のモニターがつき、砂嵐の画面になる
瑞鳳「あ、おーい、聞こえる?」
ヘルバ『…待ちなさい……悪かったわね、少し忙しくって』
川内(…声だけする…誰…?)
神通(敵ではなさそうですね)
瑞鳳「装備が欲しい」
ヘルバ『用意してるわ』
施設の明かりがつき、中央に艦載機の矢束が置かれている
瑞鳳「幾ら?」
ヘルバ『試作品も含めてるから、今回はサービス』
瑞鳳「ラッキー……これは…彩雲と流星改…か、よし!」
ヘルバ『後ろの子達は?』
瑞鳳「そっちも装備を見繕って欲しいんだけど…」
川内「ねぇ、瑞鳳…その艦載機ってさ…」
ヘルバ『私が作ったもの、よ…何か問題がある?』
川内「……瑞鳳に質問してるんだけど、なんでわざわざここで買うの?」
瑞鳳「大本営が危険だ…って判断したから」
神通「危険、ですか…」
瑞鳳「詳細はまだ掴めてない、だけど…この世界って、本当に何か変わったの?私には何も変わってないように思える、だから私は私が信用できると思ったものだけを信じる」
ヘルバ『光栄ね』
瑞鳳「性能は低いけど、ここの装備はちゃんと使い手に応えてくれるよ」
川内「……ま、確かに…無茶はしても意味がない…装備選んでもいい?何があるの?」
ヘルバ『待ちなさい、運ばせるわ』
奥の扉が開き、台車を押す用な音が響いてくる
神通「…貴方は…春雨さん」
川内「え?」
台車に複数の装備を乗せて春雨がやってきた
春雨「装備、と言っても…駆逐と軽巡の物しか無いけど…」
川内「うわ、ほんとに春雨が出てきた」
春雨「……ま、選ぶなら早く」
川内「怒んないでよ、ごめんってば…えっと……この辺かな、主砲と夜偵と…」
神通「私も同じく…艦載機は必要ありませんけど」
春雨「2人用の装備は今からじゃ作るのは間に合わないし、専用の奴は暫くお預けという事で」
川内「何?春雨が作ってるの?」
春雨「そんなわけ無いじゃん…」
神通「…演習弾は?」
春雨「この砲弾使って、こっちの赤色のが非殺傷」
川内「当たったら死ぬんじゃ無いの?」
ヘルバ『大丈夫よ、試しに撃ってみたら?」
春雨「…よし、どっちが的になる?」
春雨が主砲に弾をこめてこちらに向ける
川内「春雨が撃つの!?」
神通「…では、私が」
春雨「それ」
放たれた弾は神通の目の前で弾け、青い火花を散らした
神通「…?……なんとも…あれ…」
神通が膝から崩れ落ちる
川内「神通…大丈夫?」
神通「電気ショック…いや、規管が狂って…立てな…」
ヘルバ『一時的な物だから、安心しなさい』
川内「…成る程ね、演習用どころか…コレ、鎮圧にも使えそうだけど」
ヘルバ『そういう目的でも使えるかもしれないけど、人外に効くのかどうかはわからないわ…それは脳の電気信号や平衡感覚を狂わせる、でも効果は30秒程かしら』
神通「…その様ですね…感覚が戻り始めてます…」
川内「いいじゃん、便利でさ」
ヘルバ『その辺りのものはここで補充できる様にしておくわ、勿論費用は貰うけど、その分確実なものを用意するわ』
川内「えー、お金取るんだ」
ヘルバ『その砲弾一つ作るのにどれほどの…みたいな話をした方がいいかしら?』
川内「嘘嘘、ちゃーんと払うって」
神通「代わりに作って欲しいものが…」