元勇者提督 作:無し
東京 ベイクトンホテル メインホール
駆逐艦 五月雨
五月雨「…ここって…」
拓海「ベイクトンホテル…忌まわしい記憶の方が思い出されるか」
五月雨「…ええ、まあ…あの、火野提督、ここに何しに…?」
拓海「パーティー…と言うことになっている」
五月雨「ああ…ええと…」
反応に困っていると急に誰かの手で視界が塞がれる
五月雨「ひゃっ!?」
つい反射的にその手を掴み、背負い投げをして、銃を抜いて突きつける
涼風「あだっ!?参った!参ったよ!」
五月雨「…涼風?」
銃口を上げ、顔をじっと眺める
あの時と何ひとつ変わらない、かつての仲間
涼風「そーだって…ったた…」
白露「だからやめとけーって言ったのに」
時雨「自業自得という他ないね」
五月雨「え…?こ、これって…」
睦月「みんな大集合にゃしぃ!」
弥生「…うん、みんな、いる」
夕立「そういうことっぽい!」
ここにいるのはかつての舞鶴の仲間…
つまり、このパーティーは…
五月雨「提督が…?」
火野「招待したのは徳岡純一郎、現在はCC社の開発部長だ」
五月雨「…CC社…って、あの…?」
火野「今のところ…一応はクリーンな企業、の体裁を保っているが」
時雨「…裏側は違うって意味かい」
火野「私の関知するところではない、詳しい事は本人に聞くべきだ…と思うが」
睦月「司令官殿はいつくるのかにゃー」
火野「開始予定の時間にはあと20分ある、ゆっくりと待てばいい」
睦月「五月雨ちゃん、みんなのとこ行こ!」
白露「ほら、早く早く!」
五月雨「…えと…」
火野「私の護衛、という事なら気にしなくていい、もともとそれは方便だ」
五月雨「…ありがとうございます」
火野(…さて、どうなるか)
提督 火野拓海
火野「キミは行かなくて良かったのか」
涼風「まー…ちょっと…ついてきてもらえるとありがてぇんですけど…」
火野「徳岡純一郎と直接の繋がりがあるのは…キミか」
涼風「そういう細けぇ話は…ちょっとあたいにはわかんないですけど…提督が…あー、お呼び…デス」
火野「無理に畏る必要はない、案内してくれ」
客室
徳岡「おー…あー…何て挨拶すりゃいいんだ…?」
火野「畏る必要はないでしょう、我々はお互いにオフ、と言うことになっていますから」
徳岡「…じゃあ、遠慮なく…お前さん、提督辞めろ」
火野「…理由を伺っても」
徳岡「AIDA…気づいてないわけ無いよな?」
火野「確信には至っていませんでした」
徳岡「じゃあ今確信しただろ、艦娘システムは…アイツらを、人間を殺す…」
火野「だから私がこれ以上罪を重ねる前に辞めろ、と…そういう事でしたら、お断りします」
徳岡「理由は」
火野「既に私の指揮下の艦娘達がいます、彼女達は今生きている、死なない為に…彼女達を生かす為に私が要る」
徳岡「こっから先は…逃げ場ねぇぞ」
火野「理解しています」
涼風「な、なあ…提督?」
徳岡「涼風、ちょっと待っててくれ」
涼風「…わかった」
徳岡「心配すんな、お前らは俺が守るから」
涼風「むぐっ…頭わしゃわしゃすんなぁ…」
徳岡「…五月雨達のとこに先に行ってこい、俺も後から行くから」
涼風「うん…」
火野「……彼女とはいつから?」
徳岡「そもそもな話だが…今の俺は前の世界の俺とは随分違う立場にある、CC社を退社してないし…その傍らで孤児院の面倒も見てる」
火野(…成る程、あの涼風は孤児か)
徳岡「俺が気になって人雇って調べたんだけどな、白露型のほぼ全員がまともな環境にいなかった…睦月型もな、艦種によってそうなるのかは知らないが…やっぱり前の世界に存在しない人間を無理やりねじ込んだのは不味かったんだろうな」
火野「確かに、そうかも知れませんね」
徳岡「まー…全員見つけるのにはとんでもなく苦労したが、あくまでも見つけてやれたのは俺の分かる範囲の奴らだけだ、他所様のとこまではわからん」
火野「…そろそろこちらの話も」
徳岡「AIDA…艤装…その辺でいいんだよな」
火野「ええ」
徳岡「ネットワーククライシスの前…それこそThe・WorldってゲームそのものがAIDAに侵食されたあの時…誰かが意図的にAIDAを外部に持ち出した、ネットワークに接続してない外部にな」
火野「それによりAIDAは完全消滅を免れた」
徳岡「その消滅しなかったAIDAだが…これはもう人の手が加わっちまってる、AIDA…AIDAではあるんだろう、だがこれは人間の悪意だ」
火野「ええ、まさかAIDAに手を加えられるとは思いもしませんでしたが…」
徳岡「CC社のデータベースにな、改竄の記録があった…誰の犯行かもわかってる、数見だ、今はそっちに居るんだろ」
火野(特務部…か)
徳岡「だが数見に手は出せない、特務部なんて大層なところに居るからじゃない、あいつはAIDAを好き勝手する力がある…艦娘システムはAIDA感染者を作り出すシステムでもあることはもう調べがついている」
火野「艦娘システムを作った人間は定かではありませんが…」
徳岡「おそらく数見だろうな、あいつの支配下にあるAIDAは凶暴性が増すとか…そういうモンじゃねぇ、現実の脳に寄生して、望めばその一切を支配する…そんな代物なんだよ」
火野「…ここでの会合も全て筒抜けと見ていいでしょう」
徳岡「だろうな」
火野「徳岡さんはこれからどうするつもりですか」
徳岡「俺は…提督になるつもりはないし、常識的に考えて今から急になんて無理だろ?」
火野「…まあ」
徳岡「だが…俺がCC社に残ったのは前の世界でできなかったことをやる為だ、仕事だ何だで家庭を顧みなかったしな、だからせめて成人するまでは近くに居ようって決めてた…それももう果たしたし…CC社で何ができるわけでもない」
火野「となると」
徳岡「ま、こっからは俺も気楽なモンでな、CC社も辞めるし完全なフリーってわけだ」
火野「…ふむ、しかし提督になるつもりはないのなら今日の会は…」
徳岡「…アイツらみんな、一緒のとこに住めるようにしてやりたいな…ってな、親心…みたいなモンだ」
火野「……そろそろ時間では」
徳岡「っと、待たせたら何されるかわからん、行くか」
夕立「がるるー!っぽい!」
白露「ほら!みんな!逃すなー!」
睦月「両足確保ー!」
弥生「……はしゃぎすぎ…だよ」
五月雨「提督、埋もれちゃいましたね」
徳岡「勘弁してくれ、おーい、五月雨!弥生!助けてくれ!」
時雨「あ、五月雨、このゲーム知ってる?」
五月雨「あ、やってますよ、The・World」
時雨「今度一緒にやろうよ」
弥生「…弥生も」
徳岡「無視すんな!ぐぇっ…背中で跳ねてるやつ誰だ!?」
白露「夕立以外にいないよ」
夕立「ぽいぽいぽーい!」
徳岡「や、やめろ、一回ストップ…おっさん腰の骨が…あだだ…」
白露「でも、これで舞鶴が稼働できる!」
夕立「深海棲艦やっつけるっぽい!」
徳岡「…あー、また、お前達…俺は提督には…」
睦月「…違うの?なんで、なんでですかー!?」
徳岡「…今、艦娘になるって事はいろんな危険があるんだ、だからお前達には…」
夕立「そんなの先刻承知っぽい!元々命懸けの戦いは何回もしてきたのに今更何を怖がるのかしら?」
徳岡「お前達は今人間の体なんだぞ!今の環境が辛かったりするかも知れないが、自由に生きるチャンスがあるんだ!」
弥生「それは違う」
五月雨「そうですよ提督、それに私は提督が居なくても…戦います」
徳岡「…五月雨…」
五月雨「私達が戦うことで助かる命があるんです、それに…一緒に戦うなら怖いことなんて何もありません!だってみんなが居れば負ける訳ないから…」
弥生「それに、睦月や白露はもう艦娘として養成されてる…弥生も」
徳岡「…手遅れ、か…」
睦月「手遅れ…?」
徳岡「…艦娘システムはな…艦娘になった奴をAIDAに感染させるんだ、目的はハッキリしてないが…恐らくAIDA感染によるコントロール、あー…つまり…偉い奴がお前達をロボットみたいに扱おうとしてるんだよ…!」
夕立「じゃあ提督さんが偉くなればいいんじゃないのかしら?」
白露「いっちばーん偉くなれば解決すると思う!」
時雨「同意だね」
徳岡「…そう、か…」
火野「答えは決まりましたか」
徳岡「……お前、ある程度想像してただろ…」
火野「養成施設にいる適合者のリスト位は持っていますからね、それに私は自分の指揮下の艦娘を見捨てたくは無い、誰かがAIDAの支配を解けばそれでいい…かもしれない、だからと言ってそれを人任せにできるかは別問題です」
徳岡「…俺ができる事は…今から提督になるってのは難しいしな…」
火野「汚れる覚悟があるのなら…可能でしょう」
徳岡「汚れる覚悟…何でもいい、やれることは何でもやってやる」
火野「では…まず、徳岡純一郎というと、もう1人人間を消す必要がある」
徳岡「おい…それは…」
火野「徳岡さん、あなたには大湊警備府に行ってもらいたい」
徳岡「…それは…」
火野「少なくとも、私に言わせれば大湊の指揮官は大量殺人犯です、消えたところで何一つ問題はない」
徳岡「…やるって言った以上…あー…どうしたモンか…」
宿毛湾泊地
軽巡洋艦 神通
神通「あと2日、ですか」
川内「ま、問題なのはあのキタカミだけじゃ無い?」
那珂「いやー、流石に朧ちゃんのアイドル力は上がりきらなかったよ」
神通「どうでした?」
那珂「センスは良いと思う、でも…一回根本から壊さないと…なんだろ、変なプライドみたいなのが邪魔してて上手くいかないんじゃないかなぁ…」
川内「プライドって言うより、基礎じゃない?……」
那珂「そう!それ!砲撃戦の基礎が邪魔して格闘に組み込めなくなってる、だからねー…」
神通「一度こわ…っ」
アオボノ「私が見ましょうか、朧」
神通「暫くですね」
那珂「何しに来たの?」
アオボノ「作戦に参加しに…ほら、これ命令書」
川内「…成る程、戦果を奪いに来た?」
アオボノ「大物を殺す事だけ任せてくれればそれで良いですよ、提督に迷惑をかけたくありませんから」
神通「…姐さん、那珂ちゃん」
那珂「わかってるって」
アオボノ「…おや、これはこれは」
2人と合わせてその場を飛び退く
爆撃が降り注ぐ
アオボノ「ココ、陸地ですよ?ほら、こんなに地面がボロボロに」
神通(…流石にあの程度は防げる、か…)
瑞鳳「それについては今度謝っとく…けど、今敵だよね?」
アオボノ「所属は同じ海軍ですよ」
瑞鳳「……どうなの、神通さん」
神通「味方の様です、作戦の後押しをしに来てくれたと」
瑞鳳「…なら良いのかな」
川内「ま、敵対するよりはね」
アオボノ「…そう言う事で」