元勇者提督 作:無し
海上
軽巡洋艦 大淀
大淀「良いですか、次こそは成功させますよ」
浜風「…前回から随分経ちましたね…」
大淀「深海棲艦はかなり交戦的です、一度交戦した場所にはどんどんと新たな深海棲艦が湧いて出る傾向にありますから」
電「作戦は変わらず、近隣の島の調査なのです」
大淀「できれば宿毛湾の攻勢に合わせたかったのですが、仕方ありませんね」
電「またカレーパン食べるのです?」
浜風「あ、頂きます」
大淀「…浜風さん、わかってると思いますが…」
電「大丈夫なのです、命の尊さはよーく仕込んだのです」
浜風「ごひゅっ!?ゴホッゴホッ!も、勿論です!」
大淀(…何かしましたね、むせても食べるのをやめないあたり…断食とかの延長?)
電(何回か死にかければ嫌でも恐怖は自覚するのです)
浜風(パンオイシイ…パンオイシイ…)
アオバ「うっわー…何ですか?この空気」
衣笠「そろそろ一つ目の島に着きますよ」
浜風「え!?もうですか!?」
電「普通に前回より長い時間船に乗ってるのです」
衣笠「ま、資源が取れそうな島なんて…うん、調査でまるまる数日潰れるのかなぁ…」
大淀「鋼材、弾薬等の資源は殆どの大型艦を艦娘の戦力に置き換えたおかげで余裕自体はあるんですけどね」
電「終わりが見えないので補給路は探さないと行けないのです」
無人島 山中
大淀「この島についての記述は一切ないのに明らかに昔人が住んでいた形跡…というか、採掘場跡が有りますね」
電「おかしいのです、戦時中にも、それ以降にもこの島に何かがあったなら必ず誰かが気づくのです、それに、この島も何度か調査隊が訪れています」
浜風「で、でも…むぐ、人の気配はしないというか…もしゃ、この採掘施設もずいぶん古いですけど」
衣笠(まだ食べてる…)
大淀「…前の調査隊が見落とした…とは考えづらいですね、ですが…」
アオバ「やっぱり古い地図から大きく地形が変わってます、島の形自体は変化してませんけど山が削れてたりしてるみたいです」
大淀「ここで誰かが活動していたという報告はありません、そうなると…暗躍してるのは深海棲艦…?」
電「早計かもしれませんけど、そう考えるのが自然なのです…」
衣笠「どうする?一回戻る?」
アオバ「ここまでの安全な航路さえ確保できればいろんなものを持ってこれるんですけど…」
遠くから小さい悲鳴が聞こえる
大淀「…待って、いま悲鳴が…」
電「…悪い方向にばかり予想が当たるのです、深海棲艦が居るのです!」
浜風「こ、ここ陸ですよ!?」
衣笠「そんなの言ってたら私ら艦娘だっての!」
山を駆け降りる
アオバ「調査隊に伝達!敵襲!船に集合!」
電「発砲許可は!?」
大淀「発砲許可します!ただし誤射には気をつけて!」
無線機から悲鳴が木霊する
浜風「ふ、船大丈夫でしょうか!?」
電「…先行するのです!」
大淀「お任せします」
浜風「え、は、一人で!?」
衣笠「右!重巡級!同行戦!もう見つかってる!」
衣笠が砲弾を放つ
大淀「土壌が緩いですね、土砂崩れにでもなったら…」
アオバ「ひぃぃぃ!考えたく無い考えたく無い!田舎に病床に伏してる妹がいるんです!帰らせて!」
衣笠「もう退院してるっての!」
アオバと衣笠の砲撃をくらい敵重巡級が転げ落ちる
浜風「…すご…」
大淀「2人とも普段から騒がしいですからね、あのくらいの方が平静を保って撃てるんでしょう」
衣笠「酷っ」
アオバ「っと!前方段差!」
大淀「左に川があります!川に沿って行きますよ!」
衣笠「了解!…ってか…これ艦娘と言うより…」
浜風「特殊部隊…?」
大淀「無駄口叩いていると舌噛みますよ!」
浜辺
駆逐艦 電
電「船は確保できましたが…狙いは退路でしたか」
軽巡級が2…不利な戦いですが…
電(動きがあまりにも鈍いのです…)
電「撃ちま…」
電(っ…?コレは…何なのです、ビジョンが…)
ツ級「ギ…ジャァ…!」
へ級「ギニャ…ァ"…!」
電「…貴方達…誰、なのです…!?」
ぎこちない動きで深海棲艦が砲を此方に向ける
電「ッ!やるのですね!」
砲を放ち直撃させる
ツ級「ギァッ!…ア"ァ"ッ…」
電(…凄く、苦しんでる…?ここまで苦しんでるような深海棲艦は見た事が…弱ってるのですか…?)
へ級「ギジャァァァッ!」
へ級が砲撃を放ってくるものの、何処か的外れな方へと飛ぶ
電(…怒ってる…?わからないのです、とことんわからないのです…深海棲艦は謎が多すぎるのです)
ツ級「グ…ァ"…ァ"ッ…」
へ級「ギシッ…シャア"ッ」
ツ級に覆い被さるようにへ級が近寄る
電「庇ってる…?こんな行動今まで見た事…」
電(いや、この深海棲艦に人としての意識が微かにでも残ってるなら…!)
大淀「電ちゃん!」
浜風「に、二匹も仕留めたんですね…!流石だ…」
へ級「ギニッ…ギャァァァァッ!!」
へ級が大声を上げ暴れる
電(威嚇…やっぱり守ろうとしてる!)
浜風「まだそんなに元気が…!」
浜風が砲を向ける
電「待つのです!撃つのは許可しないのです!」
浜風「え、な、なんで…」
大淀「…成る程、アオバさん!投網みたいなものを探してきてください」
アオバ「えっ、りょ、了解です」
衣笠「捕獲なんてうまくいくのかなぁ…」
電(…確か、生きた戦艦棲姫の腕は消失しなかった…過去に捕獲した例はわずかに存在するけど逃げられた…でも、この深海棲艦ならもしかすると…!)
アオバ「あっりましたー!投網!」
衣笠「でかしたアオバ!せーの!」
深海棲艦に投網をかけ、引っ張る
ヘ級「ギャジャァァ"!」
電「アオバさん一回ストップしてください!」
深海棲艦に近寄る
浜風「ちょっ…き、危険です!」
電「落ち着いてください、先ほどは撃ってごめんなさい」
ヘ級「ギッ…ギニャッ…!」
電「どうか許して欲しいのです、貴方達を今から我々の鎮守府に移送するのです、決して傷つけないと約束するので、大人しくきてくれませんか?」
浜風「…い、電さん…深海棲艦なんかと話して何になるんですか…?」
電「約束するのです、だから…」
ヘ級「ギッ…!」
ヘ級が投網からはみ出した主砲を出鱈目に撃ちまくる
浜風「電さん!離れて!」
電「違うのです、これは…」
ヘ級「ギィ…ギッ」
大淀「持ってる弾薬全てを撃ち尽くしたようですね、抵抗の意思はないと見て良いでしょう」
電「理解してくれてありがとう、なのです…痛いかもしれませんが、船に乗せるためにもう一度引っ張りますね」
浜風(…この人達、正気…?何のためにこんな事…)
海上
電「やっぱり、意識がある個体は居るのです、この人達のためにも…」
大淀「ええ、ですがどうしたものか」
アオバ「司令官、まだ帰って無いみたいです…一応留守電入れますか?」
電「……やめておきましょう、危険なので…」
衣笠「盗聴…うーん…」
電(深海棲艦を可能な限り人道的に…)
大淀「……雨が降って来ましたね、早く船内に」
アオバ「うひゃぁ…スコールみたい…」
衣笠「……本当に強い雨」
電(…雨…嫌な匂い…)
横須賀鎮守府 船着場
アオバ「……誰か居ますよ?司令官が待っててくれた…」
衣笠「にしては小さすぎる…」
真っ黒なレインコートを目深に着込んだ…誰か
電「…アレは…!」
大淀「十中八九…でしょうね、耳が早いと言うか…」
綾波「こんにちは、皆さん…良い天気ですねぇ♪」
電「…大雨なのです」
綾波「鹵獲した深海棲艦を渡して頂きます、拒否した場合は
大淀「…貴方、倉持司令のところから何故…」
綾波「血、ですかね…あそこは清らかすぎる」
電「……」
衣笠(…血…?清らか…?)
綾波「今渡すなら、できる限り穏便に事が済むんですけど…まあ、例えばですよ?例えば、もし、万が一にでも…」
綾波が片手を肩の高さまで上げる
銃を持った兵士が綾波の後ろからゾロゾロと現れ、銃を此方に向けて構える
綾波「拒否した場合、どうなるか…とかって説明して欲しいですか?」
電「
綾波「送り込む先はベイクトンホテル、火野提督の所ですよ」
大淀「…チッ」
電(一手どころか…二手三手、それ以上先まで読まれている…)
アオバ(こっちの行動全部筒抜け…って感じですね〜…)
大淀「渡すからには何か提供してくれるんでしょうか」
綾波「教訓ですかね、あー動かないで、此方で連れて行きます、ほら、早く」
兵士たちが投網ごと深海棲艦を箱に入れる
綾波「随分と弱ってますね、コレは好都合、また戦果が上がったら頂きに参ります」
箱を抱えた兵士から順々に撤収して行く
大淀(…敷波さんとはえらい違いだ、私自身はほとんど会った事がないに等しいが…何一つ変わってなんかいない)
電(…前よりも、ずっと酷い…)
綾波「どうしたんですか、眉間に皺寄せて…ほら、笑って笑って、そちらのー…アオバさん?写真でも撮ってあげてくださいよ、大戦果ですよ?ほら、電さんが仕留めたんですよね?はいピース」
電(なんで誰が捕まえたかまで把握してるのです)
衣笠(調査隊に内通者が居た…って事かな、それか浜風ちゃん?)
綾波「それとも眼精疲労とか溜まってます?あ、もしかして仕事中にゲームなんかしてませんよね?ほら、何でしたっけ…有名なやつ」
アオバ「…The・World…」
綾波「ああ!それそれ、本当にやってたりします?良くないなぁ、オフの時だけにして下さいよ?」
衣笠(……何か違和感が…)
火野「来客がある、とは聞いていなかったのだが」
綾波「あら、これは火野提督、鹵獲した深海棲艦を引き取りに来ました」
火野「…成る程、見た所用は済んだ様子だが」
綾波「さっさと帰れ…って感じですね、いやー、パワハラから部下を守る良い上司じゃないですか」
大淀(わかってるならさっさと帰れ…!)
綾波「…ま、火野さん、ゲームは程々に…アレはオモチャじゃありませんよ?器具です」
火野「…器具」
電(器具?ゲームが?)
綾波「まあ…そうですね、火野提督、死なない事を祈ってます、それでは」
大淀「待ちなさい」
綾波「…なんですか?お望み通り帰ろうとしたんですけど」
大淀「次、提督に手を出したら…」
綾波「出したら?出したらどうなるって言うんですか?気になるなー!試してみましょうか!えーい!」
綾波が提督に近づき軽く叩く
火野「っ…」
大淀「全員構え」
その声に倣い砲を向ける
綾波「あらら〜?手を出したら、命が取られる…と?」
電「そう言う事なのです」
綾波「そうですかそうですか…だから何ですか?私には一切興味のない事ですね、私にはまだロールが残ってますから」
大淀(…ロール…役割?)
綾波「そんなに睨まれてたら穴でも空きそうですし…そろそろ失礼しまース、なんとかの御加護があらんことを?」
火野「…随分な…少女だ」
大淀「すいません、提督…良いようにやられてしまいました」
電「申し訳ないのです」
火野「気にすることはない、それよりも…疲れているところに悪いができるだけ早く中央に送る報告書を仕上げてもらいたい」
電(…こっちもこっちで鬼なのです)