元勇者提督   作:無し

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出撃準備

宿毛湾泊地

駆逐艦 島風

 

天津風「島風!ねぇ島風!起きてよ!」

 

島風「ぅ…っあ?…な、にこれ…」

 

天津風「島風!よかった…」

 

島風「ぉげっ…うぇっ…気持ち悪い…」

 

意識も記憶も混濁している、何が…

 

天津風「どこが悪いの!?病気!?それとも怪我!?」

 

島風「大丈夫…だ、大丈夫だから…」

 

島風(…そうだ、提督のキャラに良く似たナニカに襲われたんだ…うん、そうだ…あの時エリアからも出れなくて、ログアウトすら…)

 

島風「…あれ、私のM2D(マイクロモノクルディスプレイ)は?」

 

天津風「ご、ごめん…これ…島風がゲームから戻って来なかったし、何かあったのかと思って外した時に…」

 

差し出されたM2Dにはヒビが入っていた

 

島風(…多分、ゲームの中に囚われてた…って事だよね?)

 

島風「大丈夫!ありがとね、天津風」

 

島風(あの助けてくれた人は大丈夫かなぁ…)

 

 

 

 

 

 

研究所

春雨

 

春雨「ぉ…おぇっ…死に、ます…」

 

ヘルバ『随分と、手ひどくやられたわね』

 

春雨「正気じゃないとは…いえ……伝説の、英雄を相手にしたんです…」

 

ヘルバ『こっちから調べたけど…例のカイトが出現した時…カイトはパソコンから離れていたわ』

 

春雨「…は…?」

 

ヘルバ『まるでキャラクターのみが自分の意思で動き、戦っている…』

 

春雨「おぇっ、おえええ…」

 

春雨(か、考えたく無いけど…コレ、やばい…!)

 

ヘルバ『何にしても、無事で良かったわ』

 

春雨「お、おかげさま…おええ…も、もう…こんなに吐くのは私の役割じゃないでしょう…!」

 

ヘルバ『何を言ってるか知らないけど、試作品のVRスキャナは正常に作動した様ね』

 

春雨「はい、私の耳の付け根あたりの皮膚を犠牲にこの高性能メガネくんはちゃんと自動で外れてくれましたよ」

 

ヘルバ『おかげで意識不明は免れた、安い物でしょう?』

 

春雨「ええ、全くもってその通りだと思います…はぁ…でも私のプリチーフェースになんかあったらどう責任とってくれるとですか…」

 

ヘルバ『さあね、死の恐怖さんにでも取ってもらったら?』

 

春雨「ま、それも悪くないんですけどね…さてさて、あの英雄様は…どう対処しましょうか」

 

ヘルバ『相手はできそう?』

 

春雨「無理!本当に無理です!前バージョンのスキル使って物理と魔法で滅茶苦茶に攻めてくるなんてやってられませんよ…」

 

ヘルバ『…カイトを一時的に消す手段…として、サーバーエラーを起こす事が候補に挙げられるわ』

 

春雨「そうしないんですか?」

 

ヘルバ『CC社がサーバーを閉じるようなことになったら…現在のAIDAを取り除けなくなる、碑文使いが活動できるのは碑文使いPCが活動できるThe・Worldだけよ』

 

春雨「…CC社がサーバーエラーを気にするとは思えませんけどね、はい」

 

ヘルバ『リスクではあるわ、CC社の内部に人を送り込む時間が必要よ』

 

春雨「むしろ、ヘルバさんの手先が一番いそうなところですけどね…」

 

ヘルバ『非正規の手段でならすでにいるわ、でも今のCC社のサーバーをどうこうする力はないし、サーバーを閉じるだけじゃなく破棄されたらネットスラムも巻き添えを喰らうでしょうね』

 

春雨「…リスキーですか」

 

ヘルバ『どのみち時間はない、今のThe・Worldは確実に捨てられる、長くは持たないわ』

 

春雨「じゃあそのサーバーを奪っちゃうのは?」

 

ヘルバ『……』

 

春雨(…あら?)

 

ヘルバ『悪くないわね、いい考えだと思うわ』

 

春雨「で、できますかねぇ…」

 

ヘルバ『できるとは思ってないけど、存続させれば…碑文使いは活動できる』

 

春雨「でも、サーバーは破棄されるんじゃ…?」

 

ヘルバ『残すのは碑文使いの方よ、次のバージョンにデータをそのまま移せばいい、そうすれば…いや、それなら私がダミーサーバーを作る方がまだ安全かしら』

 

春雨「…よくわかんないです、はい」

 

 

 

 

 

大湊警備府 営倉

駆逐艦 暁

 

暁「はぁ…仏心を見せたのが間違いだったかしら…」

 

響「……アイツ、最低だ…」

 

暁「響、アイツなんて言わないの…それにしても、不知火さんも強情よねぇ…自分の手でキタカミさんを倒す……って、倒す事だけに集中してたら何の意味もないのに」

 

目を覚ました不知火さんの抵抗で私たちの計画は頓挫

そして脱走を計画してたことがバレて折檻、営倉入り…

 

響「やっぱり次はあんな奴無視して…っ…」

 

暁「大丈夫?まだ痛む?」

 

立ち上がろうとした響が腕を押さえて蹲る

 

響「平気、だよ……多分」

 

暁「…やっぱり折れてるのかも、後で見回りが来た時治療をお願いしてみましょ」

 

響「やめてくれ、次は暁がやられるだけだよ…」

 

暁「大丈夫!お姉ちゃんに任せときなさい!」

 

響「…なんで、こんな時にそう振る舞えるのか…私にはわからないよ…」

 

 

 

 

 

 

 

宿毛湾泊地 会議室

提督 倉持海斗

 

海斗「ええと、じゃあ…」

 

度会「佐世保から10人、宿毛湾から川内型と大井を合わせて24人の戦闘可能な人員…合計34人か」

 

亮「十分…だよな?」

 

海斗「多分ね…でも、乗っていく船がやられたら何人いても関係ない」

 

度会「それについてだが、台湾には現在も少数の軍と軍が管理する艦がかなり残っているそうだ、向こうにつけば補給は約束してくれると」

 

亮「そうなのか?」

 

海斗「一応はそうなってるけど、分散して乗るのは守りきれないから…やらないよ」

 

度会「想定してるのは台湾を一時的な泊地にさせてもらい、長期戦に持ち込む案だが…これは上が反対してる、艦娘システムの適応者や艤装を攫われては敵わんと言い出して聞かない」

 

亮「マジかよ、そんなこと言ってたら…」

 

海斗「わかってる、そこに関しては無視して設備を借りることになると思う」

 

度会「文句は言われるだろうが優先は作戦の成功だ、それに全員連れて帰って来れば文句も言われんだろう、艦娘システムの情報はもう開示していることになってるからな」

 

海斗「なってる…ということは、違うんですか?」

 

度会「なんでも、システムの根幹は明かしていないそうだ、そのせいか海外の情報はあまり入っていないが戦況が著しくないのが現実らしい」

 

亮「それって、艦娘システムを自分たちが使えるようにしてるってことだよな……深海棲艦との戦争が終わったら世界征服でも企んでんのか…?」

 

度会「馬鹿げた話だが、可能性としてはな」

 

海斗「そうなったとしても態々戦争に加担するような子なんて…」

 

海斗(いや、まさか強制的に従わせる手段があるのか…?だから曙と綾波は…)

 

亮「まあ、可能性の話より…か」

 

海斗「うん、あ、それと最近敵空母艦隊の目撃が減ってるから近海は龍驤と鳳翔の2人を主軸にしたメンバーで進みたいんだ、実力は確かだからこの2人ならそこらの空母にも引けは取らないはずだよ」

 

度会「燃料の節約にもなる、賛成だ…それと、瑞鳳についてだが…」

 

海斗「ことが終わるまで佐世保に戻るつもりはない…と」

 

度会「……仕方ないか、アイツは頑固だからな」

 

会議室の戸が叩かれる

 

アオボノ「失礼します、曙です、入室しても良いでしょうか」

 

海斗「…曙、入っても構わないよ」

 

曙が部屋に入り、椅子を指す

 

アオボノ「座っても?」

 

度会「…ああ」

 

海斗「警戒しなくても大丈夫です、敵ではないので」

 

アオボノ「ええ、私はここにいる誰の敵でもない…と、約束します」

 

亮「…悪いが俺は信用できねえ、お前腹に一物抱えてそうで怖えんだよ」

 

アオボノ「でしたら退席しましょうか」

 

海斗「必要ないよ、それより、どうしたの」

 

アオボノ「南西諸島海域の攻略に私が参加することになりました、こちら命令書です」

 

海斗(…戦力はコレで十分すぎる…か)

 

アオボノ「私なら敵戦艦棲姫、ならびに他の戦力全てを掃討してみせます、提督のお役に立たせてください」

 

海斗「うん、ありがとう助かるよ」

 

アオボノ「朧達に会ってきてもよろしいでしょうか」

 

海斗「うん、問題ないよ、ゆっくり会ってきて」

 

アオボノ「ありがとうございます、それでは失礼します」

 

度会「……大丈夫なのか?」

 

海斗「はい、間違いなく」

 

 

 

 

演習場

駆逐艦 朧

 

朧「はぁ…体力作りばっかりやっても……強くはならないよね」

 

アオボノ「そんな事ない、体力がなければ話にならないから」

 

朧「うわぁっ!?あ、曙!」

 

アオボノ「朧、アンタはもっとストイックかと思ってたけど…強くなるのに近道なんてないのよ」

 

朧「…まあね、わかってるんだけど…ちょっと焦っちゃって」

 

アオボノ「ここに来る前に一通り顔を出してきたけど…やっぱりぬるいわね、ココ」

 

朧「……ぬるい、か」

 

アオボノ「曙と島風抜きなら阿武隈さんと日向さんくらいじゃない?突出してるの…山雲さんも合格点だけど」

 

朧「…人選の理由は?」

 

アオボノ「あの人頭悪いのよ、山隈さんも同じことしてるし」

 

朧「頭悪いって…」

 

アオボノ「ほんとに頭悪いんだって、二種類の艤装が使えるからって人の二倍訓練してるんだから」

 

朧「え…?いや、山雲とかはたまに一緒になるけど、そんな風には……」

 

アオボノ「だとしたらアンタの目は節穴よ、というか同じ時間にしかやってないの?アンタ那珂さんに格闘を教えてもらうのと普段の訓練、片方しかやってないんじゃない?」

 

朧「いや…だって体力が…」

 

アオボノ「…ま、始めたてならそんなもんか、体力ついたら両方やりなさいよ」

 

朧「……曙ってさ」

 

アオボノ「何?」

 

朧「出会ってすぐの頃は…本読むのが趣味で、全然強くなかったよね」

 

アオボノ「だから努力したの、自分の適性を伸ばす事だけを考えてね…勿論作戦立案とかの方がまだ得意だったけど、あそこじゃ非戦闘要員は要らない、戦わないと死ぬだけよ、だから戦ってきた」

 

朧「……自分を殺して…ってこと?」

 

アオボノ「そういうこと、趣味だとかやりたいことだとか…全部馬鹿馬鹿しいのよ、所詮真似事しかできない私はその真似事で誰にも負けない力を手にした」

 

朧「……」

 

アオボノ「綾波がアンタに砲撃と格闘を交えろ…って言ったのは、いい考えだったのかもしれないけど…今のアンタじゃお荷物ね」

 

朧(…どうすればいいんだろう、確かに格闘戦になると体力は必要だけど…)

 

アオボノ「アンタ、どっちがメインなの?格闘?それとも砲戦?」

 

朧「それは…多分砲戦かな」

 

アオボノ「アンタの持ってる連装砲、一回単装砲に変えたら?使うのに両手が必要になるくらいなら片手持ちの単装砲の方が取り回しはいいし、両手の稼働領域は増えるわよ」

 

朧「わかった…」

 

アオボノ「格闘は必要な時だけ組み込めばいい、基本は必要無いモノ…って考えて戦いなさいよ」

 

朧「うん、そうする」

 

アオボノ「格闘メインなら召喚の術式を艤装に刻むのが早いんだけど、砲戦メインならそれでどうにかなるでしょ?」

 

朧「多分ね、よし、頑張るよ!」

 

 

 

 

 

 

研究所

軽巡洋艦 川内

 

川内「へー…コレ、なんか普通と違うの?」

 

ヘルバ『特に違いはないわ、指定されたものを用意しただけだから』

 

川内「短刀一対に魚雷発射管と主砲……うん、確かに」

 

神通「この槍の重さは丁度いいですね、大事に使わせていただきます」

 

ヘルバ『健闘を祈ってるわ』

 

那珂(…流石に魔導書は無理かー…)

 

春雨「あ、こちら那珂さんに」

 

春雨が那珂に馬鹿みたいに分厚い本を差し出す

 

那珂「え!?用意できたの!?」

 

川内(…え?アレって…)

 

那珂「どれどれ〜…って」

 

神通「…六法全書…」

 

那珂「法律の力で魔法は使えないよ!というか関係性が見当たらないよ!?」

 

春雨「ツッコミが甘いですね、芸能界は厳しいですよ?」

 

那珂「那珂ちゃんもう引退したもん!」

 

神通「それに那珂ちゃんはボケですから」

 

那珂「お笑い芸人じゃないよっ!」

 

春雨「はぁ…しょうがないですねー、ほら」

 

那珂「…なにこれ……DVD?」

 

春雨「初代プリキュアです、勉強頑張れ〜って事ですね、はい!」

 

那珂「……那珂ちゃんスマーイル…」

 

春雨「わあ、可愛い笑顔」

 

那珂「春雨ちゃんも一緒に〜、那珂ちゃんスマーイル!」

 

春雨の口に両手を突っ込み、無理矢理頬を引き上げる

 

春雨「いひゃいっ!いひゃいへふっ!ゆびはみきりまふよ!?」

 

神通「…これは、那珂ちゃん笑われてるんでしょうか…」

 

川内「神通…これで笑われた判定は流石に理不尽だよ」

 

春雨「にゃんかいのひの危機にひんしてりゅ〜!!」

 

ヘルバ『そろそろ良いかしら?』

 

那珂「はーい!本命待ってました!何くれるんですか!?」

 

ヘルバ『春雨』

 

春雨「うぃ〜…ほっぺた痛い…ほら、コレで良いでしょ…?」

 

那珂「…また六法全書?」

 

春雨「今度は仕掛け絵本です…ほらこれ」

 

神通「……完全にオモチャですね、紙ですよこれ」

 

川内「いや、多分実弾が…」

 

ヘルバ『出ないわ、それじゃないから…誰か奥の棚の右から二番目にあるものを持ってきて』

 

春雨「あーんネタバラシ早い〜…へぶっ!?」

 

那珂「…みーんな、ニッコニコ…那珂ちゃんスマーイル」

 

春雨「アイドルがしちゃいけない顔でマウントポジション取らないで!あー!腕を膝で踏まないで!痛い!痛いです!川内助けて!」

 

川内「えーと……この棚かな」

 

神通「こっちだと思いますよ」

 

春雨「ノー!ギブ!ギブアップ!顔はやめて顔は!」

 

川内「那珂ー、半殺しで勘弁してあげてね」

 

春雨「ノー!せめて一発で…!」

 

那珂「3/4殺しにしとくね」

 

 

 

 

那珂「…なにそれ」

 

ヘルバ『流石に魔導書は用意できなかったから高射装置等を利用して作った高角砲よ、かなり軽量にしてあるわ』

 

那珂「……あー、隕石みたいに降らせれば良いの?」

 

ヘルバ『装填数は多くはないから気をつけて使いなさい』

 

那珂「やだー!馬鹿みたいに撃ちまくりたい!」

 

神通(その発想が馬鹿みたいなのでやめた方が…)

 

那珂「……他にはない?」

 

ヘルバ『それで売り切れよ』

 

那珂「ぴえんだね、もー……頑張る」

 

川内「よし、頑張ろうか……あ、春雨、掃除頑張ってね」

 

神通「自分の血ですから、ちゃんと自分で責任をとって掃除してくださいね」

 

春雨「血が出た原因は那珂さんですけどね…ぐふっ」

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