元勇者提督 作:無し
「……ほんとに何なのです?これは」
「何と言われても…あなたが私と一緒に前線に置いていかれたってことだと…」
「あのクソクズ司令提督…なのです!」
「電ちゃん…怖い」
「戦時中に怖いも何もないのです、ナスと深海棲艦レベルで嫌いなのです」
「ナスは栄養があるから…」
「ナスは!嫌いなのです!」
間違っても臨時秘書官なんて引き受けてはいけませんでした、うまいこと捨てられたのです…
「私は臨時の軍医としてだけど…電ちゃんは何のために置いていかれたのかしら…」
「何にも言われてないのです、捨てられただけなのです、もし戻ることがあればあの頭にバールのようなものをぶち込むのです」
「あ、あの…」
明石さんなのです
「その、横須賀の提督さん曰く…休暇だと」
「前線でどうやって休むのでしょうか…あ、わかったのです、休暇を取る場所はあの世なのです!」
「違うからそれ!っていうか目が!目が怖い!」
「…ふふふ…電はもう捨てられるのは慣れたのです…」
「あーめんどくさい彼女みたいになってる!」
「電は…電は…」
「ま、まあ、その…は、不自由はさせませんので」
「じゃあ東京の銀座の寿司でももってこいなのです、サビ抜きのコハダなのです」
「無理ですってそんなこと!」
「不自由したのです」
「本当にめんどくさい!」
「……はぁ…疲れたのです」
「落ち着いた?」
「落ち着いても納得はしてないのです」
「その…うん、大変ね貴女も…」
「とりあえず本土に帰ったら1人殺すのです」
「全然落ち着いてない…」
「大丈夫、冷静に事故のように殺すのです…」
「うわぁ…」
「ところで電話借りたいのです」
「はい」
「………もしもし、大将なのです?いつもの配達して欲しいのです、あ、今日は横須賀じゃなくて…はい、そうなのです…は?そこまで手を回してるのですか?……良いからとりあえず持ってこいなのです、私にさっさと寿司を振る舞わないと血の海にするのですよ……チッ…仕方ないので本土に帰ったらサービスしろなのです……そうなのです…………は?…わさびなすは、だい゛っ゛き゛ら゛い゛な゛の゛て゛す゛!!」
「うわぁ…」
「鼓膜破れるかと思った…」
「……ここは、漁はしてるのですか?」
「い、いえ…」
「この前来た時に畑は見たのです、田んぼと漁の用意をするのです、美味しい寿司が食べたいのです…」
「漁ってどうするの…?」
「爆雷を改造して、魚を仕留めるんだけど…」
「え、そんなモノないんだけど…潜水艦なんて今のところ確認されてないし…」
「じゃあ作れなのです、2人とも専門分野だからすぐできるのです」
「「は、はいぃ!!」
工作艦 明石
「こっわ……」
「いつもああなんですか?」
「いや…多分青葉も見たことないよ…あんな電ちゃん」
「…はぁ…夕張さんも大変ですね……」
「私たち2人ともよ、だってできなかったら何されるかわからないし」
「………こんな危険な敵が発見されてるタイミングでそんなこと…」
「そうだよねぇ…」
「まあ、結局目先の恐怖に耐えかねて作るんですけどね…」
「間宮さんってお寿司握れるのかしら」
「とりあえず握ってもらいましょう…あとは田んぼは…」
「高速修復材と建造材ぶち込めば何とかなるわよ…多分」
「ツッコミする気力もないです…こんなのどうやって報告すれば…胃が痛くなってきた…」
「胃薬出してあげるわ…薬品に限りはあるけど」
「ありがとうございます…」
この日私は執務を放棄し、漁業用爆雷投射機を作成
その後艦隊を編成し、漁を始めました
夕張さんは田植えののちに修繕バケツを放り込み、高速建造材で米を育てることに成功
精米などののち、間宮さんの手に渡り、お寿司が作られることになりました
「美味しいのです!最高なのです!」
大変満足いただけました
「…疲れた」
「提督代理、報告です、例の敵ですが、特定の海域をずっと動き回っているらしく、今の所何処かを攻めたりという様子は確認できないそうです」
「それはよかった…けどいつその状況が崩れるかわかりません、警戒を怠らずに…」
「それと、その、これ」
「…え、ここも待遇が改善されるんですか?」
「はい、今後の危険な戦いに差し当たって、本土との連絡船などが…」
「……それで?」
「休暇などの際に本土に遊びに行ってもいい、と…」
「や、やった…!じゃあお給料も?」
「で、出ます…未納分とか含めて」
「こんな状況だけどテンション上がりますね…よし、早速全員に報告を!」
「うーん、手放しで喜んで良いのかしら」
「たまには良いでしょう!!」
「…明石さんの本音は」
「……その、質の良い病院に提督を移そうかと」
「まあ、妥当な考えですね、栄養点滴なども備蓄がつきそうですし」
「それに何よりこんな最前線に動けない人を置いておくのも…」
「…でも、それをすると、本部に好き放題にやられてしまうのでは?」
「……ここまでのことが全て水の泡に…?」
「正直、この話もそれと考えるべきだと」
「………そうですね、冷静になるべきでした」
「まあ、うまい話には裏がある、というのはよくいう話ですから…」
「…どうしましょうか」
「とりあえず未納の給料をいただいてから考えましょう」
「…鳳翔さんも思ったよりちゃっかりしてますね」
「お銭がないとなにもできませんから」
「ごもっともで…あとは連絡船ですね」
「横須賀を頼りましょう、もう上がらない頭です、どうせ上がらぬのなら、まだ下げてみましょう」
「下げるのは私なんですけどね…わかりました」
『心配はない、手動は私だ、君たちは何も気にせずただ享受すれば良い』
「そ、そうですか…お世話になってます」
『なに、銀座の寿司を経費で落とす厄介者を1人預かってもらうんだ、気にすることはない』
「え゛、そんなことしてたんですか?」
『日頃の仕返しだそうだ、私も忙しいので失礼する』
「あ、はい、ありがとうございました」
「前に進むのです、とは何だったんでしょう…」
「気にしてはいけません…」
「何でこのタイミングなのさ……」
「私たち、動けないんですけど…」
「ええ、なので勿論責任者代理の私達も残りますから…」
「ま、まあ、その…栄養点滴などを仕入れないといけませんし…」
「っていうか…うーん、なんかやっぱ色々緩いよね」
「…そう思いますよね」
「うん、まあ、何も通じなかったししばらくこれで良いんだと思うけど」
「対策についてはもう考えていますが…しばらくは」
「うん、わかってる、向こうが仕掛けてきたら別だけど…それまでは今のままで…」
「せっかくですし経費でもっと医療設備整えちゃいましょう」
「お、朧も調子戻ってきたね」
「ずっとこのままだと暴れたい気持ちが…それに、間宮さんに悪いんですけど、味薄いので」
「わかる!美味しいもの食べたいよねぇ」
「お土産買うように言ってありますし、言わなくてもあの子達なら多分」
「違うんだなぁ…それを軍医殿が許してくれるか何だよ」
「………まあ、後で考えましょう」
駆逐艦 潮
「久々に街だね!」
「私初めてだから置いてかないでね」
「すぐ慣れるわよ」
「にしたって2人とも…制服はやめて欲しかったなぁ…」
「そうだよ、せっかく可愛いのに…あ、漣ちゃん…」
「もちのろんですぜ…潮の姉貴…だけどこの辺は私もあんまり…」
「服屋ならわかるわよ、というか私急な異動続きで私物なんてほとんど持ってけなかったのよ」
「まあ、それもそうだよね、じゃあみんなで服を買おう!」
「…銀行に先に行きたいんだけど」
「そういえば、通帳は持ってる?キャッシュカードは?」
「さっき預かったでしょ、まさか落としてないわよね?潮じゃあるまいし」
「持ってるもん!」
「それより、あれだよ、お金おろしに行こう、多分割と少ないけど」
「まあ、そうよね、そりゃあ…」
「……」
「3人とも演習の度に遊びにいってたものね、そりゃあ残ってないでしょうね」
「曙ちゃんだけいかなかったもんね、朧ちゃんは曙ちゃんと一緒だったし」
「アオボノたーん、お金貸してー!」
「私もないと思うわよ、ていうかあんたなんで今まで行かなかったの?」
「そもそも、給料が出てないのよ」
「「「…あー……」」」
「……うそ、これ」
「給料が出てないのって私たちもだったんだね」
「………月日の感覚失ってたぜ…」
「…これ、多いの?少ないの?3人よりは多いけど」
「サラリーマンの月給3ヶ月分はあるね…」
「まあ、危険手当とか尽くし、妥当じゃないの?」
「っていうか、1ヶ月どころじゃない未納に何で私らは気づかなかったんだ…!ああ!高いランチ美味しい…!」
「うん…間宮のカレーの方が美味しい」
「あんたせっかく外に来て何でカレーなのよ」
「奇を衒った物は食べたくないのよ」
「……まあ、気持ちはわかります」
「???」
「犯人が無自覚なのは面倒よね」
「ウッシー、今度名古屋のスパゲティ食べに行こうぜ!」
「あれあの甘いやつだよね!美味しいんだよ!」
「………ぉぇ…」
「カレーが不味くなる」
「あー!良い服!」
「アオボノちゃんセンスあるよねー」
「たしかに、ズボンの方が良く似合ってると思う」
「そういうあんたはスカートなのね」
「走ったりしないからね、アンタほど」
「…あんたもこういう服着て見たら?」
「じゃあ交換しよう」
「おっ!面白そうですね!四つ子コーデしましょ!」
「わーい!」
「すっかり日が暮れたわね、なかなか楽しめたわ」
「曙ちゃんもこんなに可愛くなっちゃって」
「ま!私が案内したんだから当然よね!」
「そう言えば全部アオボノちゃんの紹介とか聞いたよね」
「1人で来てたの?」
「…朧しかいなかった時にね、来てたのよ、よくここに2人で」
「そう、ところでお土産は買わないの?」
「………げ!」
「やばい!忘れてた!」
「た、たいへんだよ、買いに戻らなきゃ!」
「…だと思って用意したものがこちらです」
「………焦らせんな!!」
「忘れてる方が悪い」
「何も言えねぇ…」
「ま、まあ、その…うん」
「…それ、朧が好きなやつね」
「そうなんだ」
「……やっぱり、あんたと私は、似てるわよ」
「え?なんか言った?」
「…何でこの距離で聞こえてないのよ」
「いや、風の音が…」
「私は車の音で…」
「私も」
「…うるっさいわね!さっさと帰るわよ!」
「理不尽なやつ」
離島鎮守府
「大変だね朧」
「…はい、もう、スペースが」
「いやー、確かに入院中は暇だけど…この量の本は…」
「しかもまさか暁ちゃんが買ってくるとは思いませんでした、愛読してる作家さんらしいですけど…」
「んー…?佐熊…変な名前…アンヌーン、か、タイトルも意味わからないね」
「貰い物にズバズバ言いますね…」
「それより、それは?」
「…曙達から」
「お菓子?」
「はい、昔、曙…今はアオボノですけど、曙が連れてってくれたお店で、ドライフルーツのケーキがあったんです、甘酸っぱくて曙みたいだったから、毎回頼んで…」
「何?そういう仲なの?」
「いえ、当たりがきついよって間接的に伝えたくて」
「………そっちかぁ…遠回しにも程があるよ」
「あははは…」
工作艦 明石
「…まあ、忠告は受けてましたから」
「…止めるつもりですか」
「勿論、そのパソコンから離れてもらえますか?夕張さん」
「…あなた方の提督を私の気分一つで殺せるとしても…?」
「……」
「私はこのデータに興味がある、これを自分のものにしたいだけです」
「…それは、提督の大事な私物です、許可をとってからにしてください」
「…死人にどうやって許可を取れと?」
「…………それ以上言うのでしたら、営倉に送らせて頂きます」
「そうすれば誰があの人たちの面倒を見るんですか?」
「代わりを要請しますし、今までも何とかなってましたから」
「……これが大本営からの命令でも?」
「………元々私たちは大本営には付き従ってるつもりはありません、提督と、この国のために戦ってるんです、上を選ぶ権利は私たちにも、あります」
「……勘違いしないでください、大本営に従え、と言うことではないんです、大本営に逆らうんですか?と、聞いてるんですよ」
「逆らいます、それの危険性はもう知っていますから」
「………ダメそうですね、今は諦めましょう」
「永遠にあきらめてください」
「お断りします」
「…あなたを営倉に入れます、事情聴取も明日から始めるので、そのつもりで」
「そんなことが許されると?」
「あなたの提督から、許可は得ています、場合によっては解体も視野に入れています」
「……はぁ…こんなに美しいものを目の前にして、なんでそんな…好きな絵画があったら買う、それだけじゃないですか」
「あなたのやろうとしてることは窃盗、もしくは器物破損です」
「…まあ、そうですね、でも、考えてください、これを使えば世界が取れる」
「それが狙いですか?」
「いいえ、ただこの美しいデータを自分のものにしたい、そして、私がそれよりも素晴らしいものを生み出したいだけです…」
パソコンの画面が突如暗くなる
「…何をしたんですか」
「…え?………なっ…ブラックボックスが閉じてる…!そんな…まだデータを手に入れてないのに…!」
夕張に隠れて見えなかったが、パソコンにUSBが刺さっている
どうやらそれに移すつもりだったらしい
「…緊急連絡、重巡以上の方は工廠に、1人営倉に連行します」
夕張は5分とせず独房に送られた
「……はぁ…」
「どうしたの、夕張はもう何もできないわ」
「…加賀さん…違うんです、私の、提督との繋がりを、断たれた気がして…」
「…そう、まあそんな時もあるわ、飲む?内地のお酒よ」
「密造してない限り全てそうですよ…それよりも…代わりの医者を呼ばないと」
「…多分そうもいかないわ、現状をひた隠しにしてる今、すぐに医者を何度も呼ぶのは悪目立ちする」
「…そうですね」
「それに、ブラックボックスってもののことはわからないけど、もう夕張は触れないんでしょう?それなら利用するのも手よ」
「……わかりました、その方針で行きます」
「無理は禁物よ」
「私は提督とは違いますから」
「そうね、あなたは倒れないように頑張るわね、でも、頑張りすぎるのも、不安を煽るのよ」
「………そうかもしれませんね」