元勇者提督 作:無し
特務部研究所
駆逐艦 綾波
綾波「……チッ…データを記録、保存…その後海に投棄…」
オフィスに繋がる内線を取る
綾波「綾波です、被験体両方死にました、元々死体ですけどね…どう回収されるか興味があるので海に捨てて観察、記録させます」
受話器を置く
綾波「…はぁ…どうしたものやら」
動かなくなった軽巡級を見る
数分後には運び出され、海に投棄される
となるとこれでお別れだ
綾波「…成果は無し、イライラしますねぇ…」
机を指で叩きながら時間が過ぎるのを待つ
待ち時間はいやに長く感じる
綾波「…あー…はぁ……心臓が気持ち悪い…久々に吐きそうですよ…」
綾波(…えっと…何すればよかったんだっけ…ふらふらする…)
綾波「…っ…」
口を固く結び、声を殺す
その言葉を発することは許されない
綾波「…ああ、来た…さっさと運び出してください、そう、その檻ごと」
兵士達が深海棲艦を運び出すのをじっと眺める
淀みなく、機械的な動きで兵士が研究所を去るのを見届けてから自身も研究所を出る
綾波「…出かけなきゃ」
気がつけば新幹線に乗っていた、何処へとでもなく、ただ揺られていた
綾波「…はて、さて…どうしたものでしょうね」
この新幹線を呉で降りて…四国は迎えば宿毛湾には行ける…
綾波「…敷ちゃんの顔くらい…見にいこうかな」
宿毛湾泊地
駆逐艦 敷波
敷波「ぶえっくしょい!」
曙「豪快にくしゃみするなら抑えなさいよ…」
敷波「ご、ごめん…急に出ちゃった…」
曙「…はぁ…なんでアタシがアンタの面倒なんか…」
敷波「…別に、もう支えなくても歩き回れるし…」
曙「走れない、長くは立てない奴がよく言うわね、どのみちアンタは要介護者なのよ」
敷波「むぅ…」
朧の宣言通り私はここのほとんどのメンバーに仲間として受け入れられた
そのおかげでだいぶ過ごしやすくなったし、軽い冗談くらいなら言える仲にはなった、それについては本当に感謝してるし嬉しい
でも、ここには綾姉ぇが居ない
敷波「……」
曙「何ボーッとしてんのよ」
敷波「いいでしょ、別に…」
曙「いやいや、アンタもっとねぇ…」
アオボノ「
曙「曙っ!?」
敷波「え?…うわっ!?」
アオボノ「…そんなお化け見た時みたいな反応しないでくれる?」
曙「…それならいきなり背後から現れるのやめなさいよ、で?なんの用」
曙は片手を既に剣に伸ばしている
…となると、私も何か武器を…
アオボノ「次の作戦に参加することになっただけよ、そんなに警戒しないでくれる?」
曙「…なら良いけど」
アオボノ「…あと、敷波さん借りて良い?」
敷波「…え?」
敷波「なに?私に用って…」
はっきり言って凄く嫌な感じだし、怖いけど…
アオボノ「単刀直入に、綾波さんはもうダメです」
敷波「…いや、意味わかんないし」
アオボノ「今綾波は特務部で人体実験などを主に行う施設に所属しています、まあ…簡潔言うと前の綾波に戻ってしまいました、間違いようもなく」
敷波「…いやいやいや、綾姉ぇはもうそんなことにはならないし…」
アオボノ「そうなったものはそうなったんです、間違いようもなく」
敷波(…そんな訳…綾姉ぇが…)
敷波「…?…綾姉ぇ?」
アオボノ「…居場所がわかるんですか?」
敷波「いや、何となく…居た気がして…」
駆逐艦 綾波
綾波(…迂闊でした、ね…こんなにあっさりと敷ちゃんに見つかるとは…早めに撤収しないと)
神通「何処に行くつもりですか」
進路を塞ぐように神通さんが飛び出してくる
綾波「…おや、おやおやおや…これはこれは…」
綾波(神通さんに視られていた…となると…)
背後に向かって回し蹴りを放つ
瑞鳳「…なんだ、やる気だしてくれるんだ」
綾波「また死にたくは…ないですからねぇ…アハッ」
神通「私たち2人を相手に生きて帰れる…と?」
綾波「2人?本当に2人ですか?うーん…2人かぁ…」
口角をあげ、笑ってみせる
綾波「簡単に倒せそうですね」
瑞鳳「…やろう」
神通「ええ、そうしましょうか」
綾波「一つ、一つだけ言っておきます、貴方達が私の実力をどれほど勘違いしてたとしても…逃げられる時に逃げないと作戦に影響しますよ?」
瑞鳳にもう一度蹴りを放つ
瑞鳳(重っ…!普通に受けてたら骨が折られる!)
神通(…あの靴のような物…艤装ですか、成る程、ならば警戒すべきは蹴りだけ…)
綾波「瑞鳳さん、もう一度今の蹴りを腕で受けたとして…正確に弓を引けますか?作戦に影響すると思いますねぇ…」
瑞鳳(…確かに、痺れが残る可能性はある、だけどその程度で私の弓は狂わない)
綾波「それに、万が一私が1人を集中して狙えば…腕の一本は確実に潰せること、今お分かりになりましたよねぇ?大規模作戦前にこんなくだらない事する余裕があるなんて…自信ありますねぇ」
神通「……」
綾波「一応言いますけど、私貴方達と敵対した覚え…ありませんよ?過去のしがらみは無視して、仲良くしませんか?」
瑞鳳「…敵対してない?じゃあ何でそんなにべったりと血の匂いがするの」
神通「貴方が今拳銃を隠し持っている理由は?」
綾波「護身用ですよ、この拳銃は…血の匂いは、深海棲艦を解体したから…ですかねぇ…」
瑞鳳「……深海棲艦の血じゃない、人の血の匂い…確かに深海棲艦の香りも強いけど、人の血の匂いが濃く混ざってる」
綾波(…へぇ)
神通「今、笑いましたね…その笑みは何ですか、まさか私を笑ったんですか」
綾波「いや、面白い能力だな…と思いまして…どうです、私と来ませんか?貴方の力が役に立ちますよ」
瑞鳳「死んでもお断り…!」
神通「やはりここで倒してしまうべき…では無いでしょうか」
綾波「ふむ…となれば早く帰りますか…瑞鳳さん貴方にはこれなんか効くんじゃないですか?」
小袋を取り出し地面に叩きつける
粉末が宙に舞うのを見てから鼻を袖を引っ張って覆う
神通「ッ!何を!」
瑞鳳「っ!…くしっ!…っくしゅん!」
綾波「ああ、本当に効くんですね、持ってきて良かった」
神通「…なんともない?瑞鳳さんにだけ効く何か…」
綾波「御心配なく、ただのコショウですから」
神通「こ、コショウ…?」
瑞鳳「はっくしゅ!…ざ、ざいでい…くしっ!」
綾波「これで鼻は潰しましたね、神通さんには目薬でもプレゼントしましょうか?アルコールスプレーですけど」
スプレー缶を振ってみせる
神通「……最初からまともにやるつもりは無いんですね」
綾波「え?貴方達がそれ言うんですか?2対1でやろうとしてまともに相手しろなんて…アハハハハハハ!馬鹿じゃ無いですか?」
別のスプレー缶を取り出してよく振る
綾波「わざわざ宿毛まで来たんです、貴方達がいることも調査済み…ともなれば、対策はするに決まっているでしょう?」
瑞鳳の方にそのスプレーを振る
瑞鳳「ゴホッ!…ガハッ…」
瑞鳳が鼻と喉をおさえてうずくまる
神通「瑞鳳さん!」
綾波「鼻が効きすぎるのも考えものみたいですね、これただの芳香剤なんですけど…まあ何事にも致死量ってありますし、もう少しお見舞いしましょうか」
瑞鳳「ギ、ギブ…っくし!…ゴホッ」
綾波「あとはニンニクチューブも買っておいたんですけど、使う必要がなさそうなのでまたの機会にしましょうか…さて、神通さん、退いてください」
神通「……貴方は…人を殺すことに悦楽を感じる人間に戻ったんですか」
綾波「戻った?…ああ、戻った…成る程、そう言う考え方もありですね、でも所詮、私は最低最悪、悪逆無道のマッドサイエンティストなので!」
神通「……」
綾波「今の笑うところですよ」
神通「そうですか」
綾波「張り合いが無いなぁ…あ、もしかして時間稼いでます?」
神通「…正解です」
敷波「綾姉ぇ!」
綾波「おや、おやおやおや…敷波じゃないですか、しばらく、でしたっけ」
敷波「…綾姉ぇ…?何、これ…ねぇ、綾姉ぇ何したの!?」
綾波「何って…ダウンしてもらっただけですよ」
敷波「…綾姉ぇ、本当に…戻ったの?あの時の…前の綾姉ぇに…!」
綾波「…あー…何でしょ、めんどくさいなぁ…」
口をモゴモゴと動かし、言葉にならない音を立てる
綾波「…だと、これはタダでは帰れない相手が来てしまった…みたいですね?」
アオボノ「まあ、そういうことです、作戦に支障が出そうなので…貴方を消すこともできる訳ですが」
綾波「お疲れ様です、私は帰ります」
神通「この流れでまだ帰ろうと?」
綾波「…今帰さないと特務部の人間が宿毛湾に流れ込みますよ、倉持海斗、度会一詞、三崎亮、その3人に責任を負わせることなんて容易いんです」
アオボノ「切り札を切ってきましたか、でもどうやって呼ぼうと?」
綾波「ん〜…まああと30分後の電車に乗ることになってるので、それで帰らなければ…部長が勝手に探しにくるでしょうね?」
神通「……」
神通さんが一歩引く
綾波「あ、ご協力どうも、曙さん、おつかれ様です」
アオボノ「…チッ」
敷波「綾姉ぇ!」
敷波に呼び止められる
綾波「…はい、何でしょうか」
敷波「綾姉ぇ、お願いだから…優しい綾姉ぇに戻ってよ、みんなで一緒に居ようよ、特務部なんか行かなくていいよ!」
綾波「…え?ここに居たら人体実験はおろか生物を使った実験も禁止される恐れがあるじゃ無いですか、ほら!大義のための何とやら、私は善行を積んでるんですけど」
敷波「…人体実験…って、前みたいなこと、してるの…?」
綾波「効率的ですからねぇ…深海棲艦から人間に戻った艦娘は…特に良いサンプルです、えーと…ほら、最近送られてきたサンプルは何処かで見たことあるんですよね」
誰かが歯軋りをする音が聞こえる
綾波「まあ殺したら深海棲艦になるだろうから記録のために海に沈めたはずなんですけど…アレどうなったんだろ、記録映像みないと…と言うことで!仕事思い出したので帰りまース!」
敷波「…綾姉ぇ…!」
綾波「…もしかして敷波も来たいんですか?良いですよ?全然構いませんけど」
敷波「…違う、違う…!綾姉ぇは…アタシが止める…」
綾波「止める?人類の科学の歩みを止める?なんて勿体無いこと言うのでしょう、お姉ちゃん怒りますよ?…ってやってる時間も勿体無いって言うのに…それじゃ」
喚く敷波を無視してその場を去る
駆逐艦 敷波
敷波「…こんなの…ないよ…!」
アオボノ「…強くなれば、止められるでしょう…殺すことさえ躊躇わないと言うのなら」
敷波「…わかってる、綾姉ぇは…アタシが殺してでも止める…絶対に」
神通「姉妹を手にかけるつもりですか」
敷波「あんな綾姉ぇ、もう見たくない…絶対にこれ以上悪い事をさせたくない…!」
アオボノ「……」
神通「…やめておいた方がいいと思いますけどね」
翌日
東京 特務部オフィス
駆逐艦 綾波
綾波「どもー、綾波、戻りました」
数見「…何処に行っていた?」
綾波「ログ、追ってないんですか?宿毛湾ですよ、妹の顔見に行ってましたー…あ、まさかダメなんて言いませんよね?」
数見「……それより実験の結果は」
綾波「70%…まあ恐らく、70%って所です、あと少しで完成して、とりあえず試しに使ってみよう…みたいな?」
数見「……」
綾波「深海棲艦を人間に戻す、死者を生き返らせるような事をするんです、本当なら一体一体解剖して全部じっくり研究したいけどできないんですよ」
数見「だから君に指示を出した」
綾波「私は成果をあげますよ、あと少しの辛抱です、待てない男は嫌われますよ?」