元勇者提督 作:無し
甲板
正規空母 加賀
加賀「…仕留めた」
戻ってきた矢を矢筒に収める
アオボノ「設備の破壊を確認したそうです…はい、通信を」
加賀「指定された施設は全て破壊したわ、これでいいのよね」
アオボノ「私の想定通りならこれで通信が回復する筈ですよ、それにしてもやけに対空射撃が少ない様ですね」
加賀「…貴方もやっぱり気になるのね、じゃあこの予感はハズレじゃ無いわ、誘い込まれてる」
アオボノ「意見が一致しましたね、ではこれで台湾は完全な敵地です」
加賀「……」
アオボノ「…いけませんね、私は賢すぎる」
加賀「嫌味かしら」
アオボノ「…私には未来は見えませんが…想像はつきます、私たちはもう支配されている」
アオボノが自らの手を銃の形にして自分のこめかみに押し当てる
加賀「支配?」
アオボノ「私達はAIDAに寄生されている、良いですか?」
加賀「何も良く無いのだけれど」
アオボノ「私たちの脳にはAIDAが埋め込まれています、考えてる事、見た事聞いた事…全部筒抜けです」
加賀「AIDAに?」
アオボノ「AIDAを埋め込んだ人に、私の今の上司か更にその上か」
加賀「…なるほどね、それで貴方は宿毛湾を?」
アオボノ「調査の為に、まあ…無駄足だっかも知れません」
加賀「それで?」
アオボノ「…新たな問題点は、見つかりました」
加賀「既に問題だらけなのだけれど」
アオボノ「それよりも問題です、なぜなら私たちの意思すらも上書きする恐れがある、脳を支配されると言うことはそう言う事です、事実、AIDAによる凶暴化以外にも人を操る、その人間の持つポテンシャルを最大限引き出す力などが…」
加賀「…つまり、艦娘システムは脳に作用して人間の限界を引き出す?」
アオボノ「綺麗な点だけ見れば、ですが最大限の力を発揮すればその分肉体への負担もあります、つまりノーリスクではないと言う事です」
加賀「…意志の塗り替え、可能なのだとしたら凶悪ね」
アオボノ「心構え…ですよ、そんなもの」
加賀「…貴方に常識は通用しないことだけはよくわかっているつもりよ」
アオボノ「ええ、私は最強でなくてはいけませんから」
加賀「貴方が力にこだわる理由がわからないのだけれど」
アオボノ「決まっているじゃ無いですか…全て提督のためですよ」
宿毛湾泊地 食堂
重巡洋艦 青葉
青葉「…なんて言うか、お仕事がないと退屈しちゃいますね」
如月「そうですね…」
満潮「…でも、外して欲しいって言ったの私だし…その、うん…」
如月「あ、そうだ、私間宮さんに教わって1人でケーキ焼いたの、チョコケーキ…お嫌いじゃなければ如何?」
青葉「あ、ありがとうございます、いただきます…天津風ちゃんもそんな所に居ないで一緒に…」
天津風「…えと…うん、頂くわ…」
4人(…普段関わりがないせいで空気が重い…)
青葉「あ!そういえば金剛さんから紅茶缶を頂いてるので、良かったら一緒に…」
満潮「紅茶…飲んだ事ない」
天津風「私も無い…」
如月「緑茶と何が違うのかしら…」
青葉(…わ、私もペットボトルの紅茶しか…えと、どうしよう…どうやっていれれば…そうだ、きっと裏面に作り方…!)
紅茶の缶をひっくり返す
青葉「…えっと…1997年の発売以来…商品説明ですねこれ…他は…あ、あった、えっと…」
如月(淹れ方知らないのかしら…)
満潮(急須用意してこよう…)
天津風(あの箱を見るのがマナーなのかしら…)
青葉「かたっ…あ、開かない…!」
如月「缶を開けるときはバターナイフを差し込むと良いって聞いたことが…!」
如月ちゃんが渡してくれたバターナイフを差し込み、蓋を開ける
青葉「…よし、開きました」
天津風「…紅茶、どんな味なのかしら…」
如月「苦くて香ばしいけど、クセになる味って聞いたことあるわ…」
満潮「…とりあえず急須は用意したけど」
青葉「一杯3gらしいので3g…あれ、匙も何も入ってない…計りがいりますね」
如月「じゃあ、私が計り持ってきますね」
青葉「お願いします…」
綾波「へぇ…青缶ですか、良いですねぇ」
背後からの声に驚いて振り返る
青葉「綾波さんっ!?」
天津風「誰…?」
満潮「敵…のハズ…」
天津風「敵!?」
綾波「ひどい言われ様ですね、私はただお茶をしにきただけなんですけど」
青葉「…ここは喫茶店じゃありませんよ…」
綾波「ええ、もちろん知ってますよ?まあ、用があるのは満潮さんなんですけどね」
満潮「…私に…」
綾波「貴方、戦いたく無いんでしたよね?戦わなくて良い体にしてあげましょうか」
青葉「何をするつもりですか!」
綾波「うるさいですね、黙っててくださいよ…私も暇じゃ無いんですよ」
青葉(…勝てないのはわかってるけど…やらないと、満潮ちゃんが…でも、今は艤装も無い…)
綾波「動かなければ早い話なんです、少しで済みますから」
満潮「い、いや…来ないで…!」
青葉「綾波さん!やめてください!満潮ちゃんは早く逃げて…!」
綾波さんの前に立ち塞がる
綾波「…本当に貴方も仕方の無い人ですねぇ…青葉さん、どいてください」
青葉「お断りします…!」
綾波「どうしても?早くどいてくれないと逃げられちゃうんですよねぇ…悪い話じゃ無いんですよ」
青葉「絶対に…通しません」
綾波「…青葉さん、貴方に手をあげたくは無いんです、お願いですから言う事を聞いてください」
青葉「…貴方いくら味方のフリをしても…もう私は騙されませんよ」
綾波「フリ…?そっか、フリですか…確かにそうかも知れませんね、でも…それに騙されていた貴方達、滑稽で笑えましたよ」
青葉「やっぱり…貴方はそう言う人なんですね」
綾波「ええ、そう見たいですね…ごめんなさい、悪く思わないでください」
何が起こったかもわからないうちに脳が揺れ、膝をつき、崩れ落ちる
青葉(…あ、これ…ダメだ)
天津風「ひっ…あ、青葉さん…!」
私の意識は呆気なく途切れた
台湾
軽巡洋艦 夕張
夕張「…はぁ…危なかった…何考えてるんですか!?いきなり爆撃するなんて…!」
海斗(…味方の機体に見えたけど…大丈夫なのかなぁ…)
神通「……夕張さん、通信機は?」
夕張「え?繋がるわけ…」
明石『あーもー…何十分こうしてりゃ良いのよほんと…だるいったらありゃしないし…!あー本当に私ものんびりしたい!』
夕張「つ、繋がってる!繋がってる!」
明石『ようやく応答した!?ちょっとゆうば…』
夕張「明石!今すぐ人を呼んで!早く!」
明石『え?あの…』
夕張「さっさとして!」
海斗「よし、応答次第状況を伝えよう」
度会『其方が港を確保するのは可能か?』
海斗「恐らく確保する事自体はできます、でも守り切れるかと言われると難しいと思います」
度会『…恐らく、その小型深海棲艦を操る存在が居る筈だ』
海斗「ええ、相手は統制が取れています、恐らく間違いなく指揮を取る存在が…」
神通「…少し良いですか」
海斗「何?」
神通「瑞鶴さんと瑞鳳さんをこちらに、そうすれば操っている存在を匂いと音で追跡できます」
海斗「…だそうです」
度会『…一刻も早い解決が望まれる以上、そうする他ないか、だが台湾にいなかった場合どうする?台湾の中に居たとしてもかなり離れた位置である可能性も…』
神通「そうなれば艦載機で爆撃します、とにかく手段は選びません」
海斗「……」
神通「構いませんか」
亮『無理なら仕方ねえがな…』
神通「…提督、手段はありますよ、先程の2人に加えて曙さんと姐さんを送ってくださればどんな戦況も覆すことなど容易いです」
亮『じゃあそうすりゃあ…』
海斗「船の守りが手薄になるね」
神通「そうです、船を破壊されてはこれ以上の作戦行動が至難を極めます、せめて積載している資源を移す必要がある」
亮『…どうするよ』
海斗「…たとえリスクが有ったとしても、確実にここで敵を倒す必要がある、もしかしたらここが深海棲艦の基地かも知れないしね」
度会『…防衛の戦力は足りていると思うが』
海斗「戦闘がどれほど長引くか想像がつきません、今は問題なくても一時間後には他所からも深海棲艦が集まってくるかも知れない…なので無理矢理入港しましょう」
神通「無茶です、陸上からの攻撃だけじゃなく先程のヘリも…」
海斗「さっきの爆撃は加賀の艦載機ですよね、あれに対する抵抗は殆どなかったんじゃ無いですか」
度会『…確かに、そう聞いている』
海斗「制空権さえ取れば攻撃が必要なところを絞れる、半数の艦娘で船の周りを固めて強行突破し、安全を確保することができれば…」
度会『…無理を通すしか無いか、よし、それでいこう』
神通「…私たちは」
亮『陸上の戦力を少しでも削いでくれ、ただし無理はするなよ』
神通「わかりました」
海斗「10分後に進行を開始してください」
度会『了解した』
夕張「通信を切ります…よし、提督、やりましょう」
海斗「みんな、できる限り安全にね」
神通「…そうですね」
神通(結局この人には戦争をしていると言う意識が足りていない…か)
海斗「島風、港の確保では君は海に出てもらう、君なら注意を引きつけて安全に離脱することもできる筈だ」
島風「オッケー、わかりました!」
海斗「雪風と夕張は僕と来て、できるだけ安全な位置から援護する」
神通(…自分だけ安全な位置ですか)
龍田(口実ね〜)
海斗「神通さんと龍田さんは前衛をお願いします、具体的な行動はお任せします」
神通「わかりました」
夕張(…さて、大丈夫かなぁ…)
海斗「よし、行こうか」
台湾 漁港
軽巡洋艦 神通
神通「…おかしい、敵がいません」
海斗「どこに潜んでるかわからない、作戦はまだ実行しない…島風もまだ行かなくて良いよ、ここで様子をみよう」
夕張「…あ、居ました、船」
龍田「無事にたどり着けば御の字ねー」
神通「艦載機がこっちにきてますね、赤城さんと鳳翔さんの隊です」
海斗「夕張、無線を貸して」
夕張「はい」
神通(…誘い込まれてる?)
龍田「敵はどこかしら〜…」
海斗「うん、危険はあるけどイムヤを先行させて欲しい、朝潮達をつければちゃんと守ってくれる筈だよ」
夕張「イムヤさんを?」
海斗「恐らく潜水艦隊が待ち構えてる、来る時に仕留めなかった奴らだ…夕張、聴音機を持ってるなら探れないかな」
夕張「あ、わかりました」
島風「連装砲ちゃん、爆雷用意して!」
夕張「……まだ動きありません」
海斗「必ず居る…筈だ」
神通「…島風さん、爆雷を一つください」
島風「へ?は、はい」
爆雷を一つ、海に放り投げる
夕張「落ちた……動いた!島風ちゃん、包囲サンマルナナ!」
島風「爆雷射出!」
複数の爆雷がボタボタと水に落ちる
夕張「い、居る!それもかなりの数!」
爆発による水飛沫が複数上がり、水面が大きく揺れる
夕張「これは仕留めたでしょ…!」
海斗「油断は禁物だよ、でも後はイムヤ達に任せるしか無いか…」
夕張「ですね、聴音機ではどうにも…」
神通「さて、私達は私たちで仕事を始めましょうか」
龍田「そうね〜」
車の音が近づいてくる
夕張「空襲来ます、衝撃に備えて!」
海斗「赤城達の艦載機じゃ無い!深海棲艦の機体だ…!」
神通「えっ…?」
空を見上げるとまん丸な、艦載機とは到底思えない様な…
龍田「作戦が潰れたから焦ってるのかもね〜」
海斗「神通さん、艦載機の出てくる方角、戻る方角を教えて!」
神通「は、はい」
神通(…南東から現れて交戦…)
夕張「ここは危険です!提督!一度避難を!」
海斗「雪風を先に!」
島風のそばに赤城の艦載機が墜落する
島風「わぁぁっ!」
海斗「大丈夫!?怪我は…無いみたいだね、神通さん、先に逃げるよ!」
神通(撤退する方向は南西…?いや、衝突を避けるために大回りしてるだけ…あの角度…と言うことは…)
神通「わかった…!場所がわかりました!」
海斗「良いから逃げよう!」
夕張「あ、危なかった…」
海斗「みんな、怪我はない?」
龍田「うーん、ちょっとお洋服が焦げちゃったわね〜」
夕張「まあ、衣類は支給されますし…それよりも船は…」
海斗「大丈夫だよ、赤城と法相だけじゃない、航空戦力は十分すぎる、誰が相手でも負けたりしない」
神通「…意見具申します、敵が航空戦に力を割いているうちに私達で敵本隊を叩きましょう」
海斗「ダメだ、危険すぎる」
神通「敵が体制を整える前に仕留めるべきです」
夕張「…その、神通さんが強いのはわかってますけど…私達は足手纏いですし…」
神通「では私と龍田さんで…」
海斗「敵の戦力は不明だ、2人で対処できなかったらどうなるかくらいわかってる筈だよ」
神通「…随分と保守的な」
海斗「安全に遂行できるならその方がいい、そう思っただけだよ」
神通「今なら奇襲できます、そうすれば艦載機の消耗も抑えられる」
夕張「ま、まあまあ!一回落ち着いて、ね?ほら、私達は今は倉持提督の部下なわけですし…」
神通「私の提督は三崎亮、ただ1人です」
海斗「なら三崎さんに確認を取ればいい」
神通(…確かにこの調子で行けば無事に船は港につき、姉さんたちと合流できる、提督もそれからでいいと言う…か)
神通「…結構です、身勝手を言い申し訳ありませんでした」
夕張(ほ…なんとか収まった…)
龍田「確かに、ちょっと無茶な作戦だったかも知れないわね〜」
神通「……」