元勇者提督   作:無し

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発覚

実験軽巡 夕張

 

「夕張さん、出てください」

 

「……」

 

仮設取調室

 

「単刀直入に聞きます、あなたは私たちに敵対しますか?」

 

「…しない、少なくとも、自由を保障してくれるなら、軍医としての仕事はするわ」

 

「では、その変わり身の速さはなんですか?昨日まで提督の命を握っているなんて言ってましたが」

 

「………その…ブラックボックスが閉じる時に見たの、あの硬く閉ざされた何かを、わからないかもしれないけど、心が満たされた以上に…あれは開けないわ、私には、一生かかっても無理…想い人が死んだような気分ね…だからもう諦めたわ」

 

「そうですか、それは何よりです、まあ、あなたを何も考えず許すことはできませんので、今日は加賀さんと行動を共にしてください」

 

「…もう出してくれるの?」

 

「現状、あなたは私達にとって重要な存在ですから、ただし、余計なことをすればその場で射殺や解体などの許可は出ています、こちらその書類のコピーです」

 

「………はぁ…私自分の提督にこんなにあっさり捨てられるのね」

 

「私から言わせれば、聡明で決断の早い方ですが」

 

「わかったわ、お手伝いさせてもらうわよ、死にたくはないし、どうせ私艤装も持ってないから何もできないわ」

 

「ええ、一応艤装の動作がしなくなる薬も、睡眠中に投与させて頂きました」

 

「…そう、はぁ…実質解体されたのと何も変わらないのね」

 

「あなたが真面目に働けば、その薬はもう投与しません」

 

「別に戦場も、実験艦の誇りも、私は興味がないのよ、ただのハッカーでありたかっただけなのに」

 

「ハッカーですか」

 

「…悪い意味で取らないで、サイバーテロを防ぐための役割よ、横須賀くらいになると毎日侵入があるのよ、本業は軍医というか、医療班の班長だったけどね」

 

「日本で言われるホワイトハッカーですか」

 

「そもそもそれが間違い、悪事を働くやつはクラッカーで、ハッカーとは言わないのよ」

 

「存じ上げています、でもあなたがやったことはそのクラッカーと何も変わりません」

 

「……そうね、まあ、もう今となっては全て遅いわ、よし、いつから復職すれば良いの?ちゃんと仕事はするわ」

 

「ではすぐにでもお願いします、それでは」

 

 

 

 

 

 

「当たりがきついわね」

 

「そりゃそうだよ、自業自得でしょ」

 

「まあね、はー…私も好きに生きたいなぁ…」

 

「あ、そう」

 

「朧、相手しちゃダメだよ、可哀想な人だから」

 

「なによそれ…」

 

「鎧袖一触です」

 

「いや、意味違うでしょ」

 

「ガイシューイッショク?」

 

「鎧の袖が触れただけで倒せると言う意味よ」

 

「うん、使い所おかしかったね」

 

「これは譲れません」

 

「そんなプライド譲ってしまえ」

 

2日ほどだったが、なんだかんだでずっといたせいか、仲良くなってしまった

 

 

 

「ん?何してるんですか」

 

「いや…その、これは…」

 

「あ、明石じゃん、提督の持ってたゲームのさー、格闘ゲーム?2人でできるみたいだから、コントローラーとか作ってもらってたんだよね」

 

「私が監視しました」

 

「私たちもお願いしたので…」

 

「まあ、そう言うことでしたら…て言うかさっきからめちゃくちゃなプレイしてますけど、必殺技の出し方わかります?」

 

「「いや、全く」」

 

「………説明書持ってきます」

 

しばらく病室での格ゲー大会がブームとなった

第一回優勝者は高尾だった

 

「その…昔取った杵柄と言うやつで…」

 

「意外ね」

 

「元内地組は何かありそうですね」

 

「私もバイクが…貸しコンテナまだあるかしら…」

 

「鳥海さんバイク乗りなの!?今度教えてよ!」

 

「…三輪車くらいなら良いわよ」

 

「バカにしないで!レディーはバイクにも乗れるってルパンで習ったわ」

 

「……まあ、手足が届くようになったら考えてあげる」

 

「約束よ!」

 

 

 

 

 

 

工作艦 明石

 

「さて、今日も今日とて、行くかー…」

 

「もう嫌…あれと次戦闘になったら帰れる保証はないのに…」

 

「帰ったらパンパカパーン、よ、頑張りましょう?」

 

「では、皆さんの帰還を信じてお待ちしています、いってらっしゃい」

 

絶対に勝てないと言うことがわかった今は、とりあえずデータ収集のみに全力を尽くしている

全員にビデオカメラを持たせ、交戦記録を残す

ただし出撃するのは紋章砲などの異常が確認されてないメンバーのみ

そして空母が向かうと艦載機を撃ち落としてから向こうから攻めてくるためメンバーには入れない

 

「明石!大変よ!」

 

「うぉっ、ど、どうしました?」

 

「クソ提督の容態が悪化してるの!」

 

「す、すぐ行きます!!」

 

 

 

提督はついさっきまで死んだように眠り続けていた

しかし今は苦しむように身を悶えさせ、顔色も悪く、呻き声を発している

 

「詳しい検査が必要ね、搬入予定の機材はどれくらいで届くの?」

 

「2日ほどかかります」

 

「…本土に行くほかないかしら」

 

「提督!夕張さん、提督の容態は?!」

 

「この通りよ、本土に行って精密検査を受けるほかないわ、だけどいきなり受けられる場所があるかどうか…」

 

「軍の施設はないんですか!?」

 

「…あるけど、ここは重要拠点で、待遇改善された、なんてことがどれだけ浸透してるかしら、本部出かけて擦りむいた艦娘とか、その辺の突き指を優先されていつまでも診察を受けられないかもしれない、検査なんてもっての外よ」

 

「…とりあえず連絡を取ります!」

 

「待って、私が連絡する、その方が話は早いし」

 

 

 

 

 

「とりあえず軍はダメ、本土の病院紹介させたけど…まあ、これも待ちがあるわ」

 

「普通こう言う場合は緊急性のある人間を優先するんじゃないんですか…」

 

「軍のメンツね、御偉方は自分以外は死んでも困らないもの、あなたたちの提督が死んでも美談にするわ、どこかの誰かのために順番を先送りにしてね…」

 

「………」

 

「明石さん!出撃してた艦隊が戻りました!」

 

「今それどころじゃなくて…」

 

「重要なことかもしれません、敵は報告のあったクリスタルに攻撃していました」

 

「クリスタル?…あの中にはクソ提督が…!」

 

「あ、どう言うことそれ」

 

「あれの中にはゲームの体のクソ提督が……ああ!もう!とりあえず出撃するわ!動けるやつは動きなさい!移動中に無線で話すから明石はここで待ってて!」

 

「アオボノ、漣と潮連れてきた」

 

「行くわよ!第七駆逐隊!」

 

「一航戦も出撃します、帰ったばかりで悪いけど阿武隈、高尾も用意して」

 

「わ、私は準備OKです!」

 

「はい!」

 

 

 

 

海上

 

「そう、あんたがゲーム内でみた姿まんまよ」

 

『それがクリスタルの中に…提督が苦しんでるのはそれが原因?』

 

「今まで苦しんでないとこをみると攻撃されてたって方が原因じゃない?とりあえず、退かせられるかしら」

 

『決して無理はしないようにお願いします』

 

「わかってるわ、ただでさえ8人でいつもと違うもの、無理はできない…」

 

「艦載機より報告!敵発見!未だクリスタルを攻撃しているそうです!」

 

「撃ち落とされてないのね!?」

 

「攻撃開始させます!」

 

「無理させないでよ!そろそろ目視できるわ!」

 

 

 

「クリスタル、だいぶん削られてる…!」

 

「まずいかもしれないわね、明石、容体は!?」

 

『変わらずです!』

 

「交戦開始!何としても止めなさい!」

 

「砲撃開始!」

 

「ダメです!全く反応しません!」

 

「ちょっと!気をつけて!クリスタルに当たったら元も子もないわ!」

 

「調整が難しいです…!」

 

「もう一度用意!てー!!」

 

「紋章砲は!?」

 

「全くもって作動の様子なしです!」

 

「ここで打ったらクリスタルごと消し炭よ!バカなこと言う暇があったら…曙!」

 

「うっ…!」

 

赤い十字架で曙が吹き飛ばされる

 

「曙!無理せず退きなさい!」

 

「…これは無理…」

 

十字架が大きく振り上げられる

 

 

『…ア゛ア゛ァ゛ァ゛…』

 

 

空気が凍った

 

敵も動きが止まる

 

全員の視線がクリスタルに集まる

 

そしてソレはクリスタルの上に立っていた

 

「でたなオバケ…!」

 

ゲームのクソ提督にそっくりな姿で

でも生きてない目でこの場を睨みつける

 

『……ア゛ア゛ァ゛……』

 

敵、スケィスは即座にそれへと狙いを変えて飛びかかった

 

オバケは両手に持った三叉の短刀でスケィスと戦闘を始めた

 

「…チャンスよ!早く曙の救助!撤退するわよ!」

 

 

『ア゛ア゛ア゛ア!!」

 

金属音がしたと思うと、私たちの前にクリスタルが飛んでくる

根本が綺麗に切断されていた

 

「持って帰れって訳!?…やってやろうじゃない!曳航の用意!」

 

「ワイヤーかけたよ!」

 

「どうやって浮いてんの…この重さ…!」

 

「全速撤退!」

 

「ぼのたん!敵追撃してくるよ!」

 

逃げ始めたこちらをスケィスは追い始める

 

「あーもう!オバケでもなんでも良いから助けなさいよ!」

 

その言葉に応えるようにオバケはスケィスを弾き飛ばした

 

「…すっご…」

 

「怪獣大戦…!」

 

「良いから逃げるわよ!」

 

それ以降振り返らなかったが、戦闘の音は映画よりも派手で、岩とか色々なものが飛んできた

 

私たちは追跡を恐れて変な方向に行ったりしながら時間をかけて鎮守府へと帰った

 

 

 

 

「…なんとか、帰ってこれたわね」

 

「…そうだね、ていうか重いんだけど」

 

「…うん、どうやって陸にあげようか…」

 

「……引きずるわよ」

 

 

 

 

「へぇ〜、これがゲームのご主人様?」

 

「確かに面影あるかもね」

 

「何言ってんのよ、これゲームのキャラよ?」

 

「あ、みんなお帰りなさい!交戦の連絡からずっと通信がなくて心配してたの」

 

「明石、クソ提督の容体は?」

 

「交戦の連絡から少しして安定したわ、それが例のクリスタルよね」

 

「……重いから動かすの手伝って、それとみんな集めてくれる?悪いけど敵の狙いはクソ提督、つまりこれみたいよ、いつここが襲われてもおかしくないの、それと曙も怪我をしたから医務室行きね」

 

「そう、わかったわ、とりあえずみんなを集めてくる」

 

「………迷惑かけてんじゃないわよ、このクソ提督」

 

 

 

 

 

 

 

数刻前

呉鎮守府

 

提督 三崎亮

 

「おい、ほんとかそれ」

 

「ああ、意識不明だったものたちが復活した、が、強い感情を暴走させているらしい、艦娘同士で襲い合う自体も確認された」

 

「…まるでAIDAだな」

 

「Aritificially Intelligent Data Anomaly、不自然な知的データ…か、これは現実でおきている、データではないな」

 

「なんでこうなったんだ?」

 

「交戦したスケィスがAIDA寄生体、もしくはそのものの可能性が高い、二次的な災害は今の所はそれまでだ、寄生されたものに襲われても、暴走した事例はまだない」

 

「……そこも気にはなるが…スケィスか…呼び戻さねぇとな」

 

「ゆらぎの件かね」

 

「…俺は碑文の力なしでスケィスと渡り合えた、なら、俺がやるべきだ」

 

「どうやってリアルに出る」

 

「………さあな、俺にもわかんねぇよ」

 

「アウラは、カイトがまだ連れている筈だが」

 

「……どっかに転がってりゃ楽なんだろうがな、と言うか余計なことして世界が割れたりしたらそれこそ本末転倒だ…な」

 

「存外側に居てくれるかもしれんな」

 

「そりゃ勇者の特権だろ?」

 

「君も勇者さ」

 

「…俺はただの野蛮人だよ」

 

「違いない」

 

 

 

 

 

同刻

 

駆逐艦 朝潮

 

私の目の前に、急にソレは現れた

 

「…え…?だ、だれ?」

 

全身がオレンジ色のつぎはぎの衣で、蒼くボサボサした髪を靡かせ、生気の無い目でこちらを覗き、跪いた

 

「……」

 

最初こそ驚いたが、不思議と安心した

私の味方だって思った

 

『…ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛……』

 

何を伝えたいのかが、なぜか伝わってくる

 

「…お願いします、司令官を助けてください」

 

青い炎がソレを包み込み、消える

私の騎士が

 

 

「………あらあらぁ……凄いもの…見ちゃったかしら…」

 

「そういえば同室でしたね、忘れていました」

 

「……私泣いちゃうわよぉ?」

 

「…他言無用でお願いします、私も何もわかってないので」

 

「朝潮ちゃんがそう言うならわかったわぁ…」

 

 

 

『………』

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