元勇者提督 作:無し
深海棲艦基地
駆逐艦 アオボノ
艦載機の攻撃を避ける
アオボノ「面倒ですね…あなたの相手をするつもりは一切ないんですが」
ヲ級「…ア…アァ…ケ…」
艦載機が機銃を撃ちながら突撃してくる
アオボノ「…正気を失ってる…?」
かわした艦載機が壁に衝突し堕ちる
狙いも正確さはまるでない…
ヲ級「…アア…」
アオボノ(…違う、これは…)
アオボノ「臭い芝居はやめてください、正気じゃないフリをしてるだけでしょう…いや、本当に操られてるにしても…そこまで動きが鈍いわけじゃないですよね」
ヲ級「……」
ヲ級の口角がニィッとあがる
目を細め、馬鹿にしたような笑顔でこちらを見る
ヲ級「…シネ」
先程とは違う、仕留めることだけを考えた艦載機の動き
アオボノ(意識を表に出してるのは翔鶴さんではないか…)
アオボノ「もし翔鶴さんが本気で私に立ち向かってたら…近づくのに多少は苦労したかもしれませんね」
短剣を抜き艦載機を斬る
ヲ級「…!」
アオボノ「…何だ、思ったより手入れしてある…」
剣に炎が灯る
アオボノ「目潰しはこんな物ですか」
火球を飛ばし、その裏に隠れ迫る
アオボノ「痛覚、あると良いんですけど」
腹部への飛び膝蹴り
ヲ級「カッ…ーー…!」
アオボノ「あるみたいですね、なら…これも痛いでしょう」
ヲ級の手首を掴み、体を捻り投げ飛ばす
そしてそのまま肩を踏みつけて腕を捻る
アオボノ「…骨抜いても、問題ないか…すいません、脱臼させます」
ヲ級「ギィィッ!!痛イ痛イ痛イ!」
アオボノ「何だ、ちゃんと喋れるならしゃべってくださいよ…死ねと悲鳴しか言えないのかと思いましたよ」
ヲ級を蹴っ飛ばし、距離を取る
ヲ級「…ウアァァッ…何…ナニコレ…痛イ…」
アオボノ「…痛覚はあると、さて…っ…」
頭に違和感
何かがさざめく様な…何かが喋りかける様な…
アオボノ「ぐ…っ…これは…まさか…なんで今になって…!」
何かに命令されている感覚
アオボノ「AIDAが…っ…私に何をさせようと…」
アオボノ(…落ち着け…問題ない、AIDAの声なんか私には届かない…!)
海上
正規空母 瑞鶴
瑞鶴「何これ…頭が、割れるッ…!」
何かの音、声、聞いたことのない音が頭に鳴り響く
吐き気と目眩で立ってることすらままならない
赤城「瑞鶴さん大丈夫ですか?加賀さん、このまま進行することは…」
加賀「そうね、瑞鶴が無理だと言うなら…瑞鶴抜きで戦うことになるわ」
瑞鶴(何の声…知らない音が響く、何かを…)
葛城「瑞鶴さん、戻りましょう…!このままじゃ…」
翔鶴『瑞鶴、私はここに…』
知らない音に混ざる、よく知った声
瑞鶴「…ダメ…まだ、帰れない…私がやらなきゃ…!」
みんなが弓を引き絞る
加賀「敵機、来ましたね」
瑞鶴「加賀さん達は手を出さないで…!」
加賀「…そんなフラフラの状態でやろうと?」
力を振り絞り、骨で立つ
弓をできる限りの力で引き絞る
瑞鶴「攻撃隊、発艦…!!」
なんとか矢を放つ
加賀(…ダメね、艦載機の速度が遅い)
瑞鶴「…航空戦開始っ…!」
赤城「劣勢です、私達も…」
加賀「…瑞鶴がやると言ってるのですから、やらせてみましょう」
瑞鶴(負けない…絶対に負けない…!)
矢筒から次の矢を抜き取り、引き絞る
瑞鶴「…私に…力を……」
瑞鶴(…音が…頭に…)
加賀「瑞鶴!」
視界が揺れる
体の力が抜け、体が崩れていく、水面に膝が吸い込まれる
瑞鶴(…あれ、艤装をつけたら浮くんじゃ…)
身体中を掴まれ、引き込まれる様な感覚…
瑞鶴(…冷たいな…海って…)
身体が水圧で潰されそうになる
どんどん深く、底へと引き込まれるのに…
瑞鶴(手だけ…あったかい…?)
急に息が苦しくなる
口の中がしょっぱく、むせかえる
瑞鶴「ゴホッ!?ゴホッゴホッ!」
息を吸い込むたびに海水が口の中に入り、呼吸すらままならない
加賀「しっかりしなさい瑞鶴!赤城さん!早く!」
赤城「は、はい!」
加賀「この…!離しなさい!」
何かに全身を掴まれ、引っ張られる感覚、視界の端に白い手が映る
瑞鶴(…海に引き摺り込まれてる!?)
瑞鶴「いやっ!嫌だ!助け…ゴホッ!」
加賀「瑞鶴!もう少し耐えなさい!赤城さんまだですか!」
赤城「加賀さん!当たりますよ!?」
加賀「良いから早く!」
ちゃぽちゃぽと何かが水に落ちた音と同時に身体が強く揺さぶられる
衝撃で自分が弾け飛ぶ様な…
加賀「今!」
海から引き摺り出され、放り投げられる
葛城「瑞鶴先輩!」
瑞鶴「…かつ、らぎ…?」
加賀「全機、発艦します」
ぼんやりと空を眺める
黒い、UFOみたいな艦載機が私達の艦載機をどんどん撃ち落として…
加賀「く…やや、厳しいですか」
空が黒く染まって…雨が降って…
瑞鶴(…何してるんだろ、私…なんで私はここで…ただ横になって…1人だけ…)
瑞鶴「……」
葛城「ちょ、瑞鶴先輩、まだ立っちゃ…」
瑞鶴「翔鶴姉ぇ……やるよ…艦首風上、攻撃隊…発艦、始め」
流れる様な動作で残された全ての艦載機を放つ
加賀「…出て来た」
青い焔を目に灯したヲ級…
ヲ級「……」
瑞鶴「…!」
互いの艦載機がバラバラになり、黒煙を上げながら墜落する
葛城「…よし!全機稼働!」
瑞鶴「葛城、艦載機…全部寄越しなさい」
葛城「えっ!?」
瑞鶴「早く…」
葛城の矢筒から艦載機を抜き取り、引き絞る
ヲ級「……」
瑞鶴「…発艦!」
矢が艦載機へと姿を変える
瑞鶴(…低く…もっと低く!)
加賀「邪魔者も増えて来た様ね、赤城さん、もう一度艦載機を」
赤城「はい、装備換装良し、行きます!」
瑞鶴(…敵の、艦載機の…音…だけじゃない…この音は…知ってる、わかる、AIDA…?)
瑞鶴「…AIDA…って、何…」
知らない単語、いや、知っているのだろうか
瑞鶴「……AIDA…イニス…ああ、そっか…それだけの事なんだ、私が今ここにいるのって…」
最初に放った攻撃隊が矢筒に収まる、爆装を装備し直し、もう一度引き絞る
瑞鶴「…私に…私に、みんなを守る力を貸して…!」
ヲ級
燃える
海に墜落した艦載機から上がる黒煙
いつの間にか私の体にも火がついて…
戦闘機がお互いの戦闘機を撃ち落とす
目の前に落ちた艦載機が水飛沫を上げる
そしてその水飛沫の中から…
ヲ級(攻撃隊…イツノ間ニ…)
目の前で落とされた爆弾を避ける術もなくモロに喰らう
瑞鶴「今!ここで決める!」
ヲ級(…アァ…私ノ艦載機ガ…堕チル…)
加賀「瑞鶴!トドメを!」
瑞鶴「…わかってる…!」
ヲ級(…ソウ、ソレデイイ…終ワラセテ…)
正規空母 加賀
瑞鶴「…敵、旗艦…空母ヲ級…撃破」
加賀「…よくやりました」
瑞鶴「これで…良いんだよね、翔鶴姉ぇ…」
翔鶴「…何が、起きて……私…」
瑞鶴「…おかえり、ずっと待たせてごめんね…」
翔鶴「……そんな、何回死んでも戻れなかったのに…なんで…?」
加賀「瑞鶴の勝ち…の様ね」
瑞鶴「…でも、私ももうダメだなぁ…艤装が使い物にならなくなっちゃった…」
翔鶴「…瑞鶴、何をしたの…?」
瑞鶴「…知ってる事を全部試しただけ、ナイショだよ」
翔鶴「加賀さん、何がどうなって…」
加賀「瑞鶴がナイショだというのだからナイショです」
葛城「…あの、瑞鶴先輩…その人、今深海棲艦から…」
瑞鶴「あ、翔鶴姉ぇをみんなに紹介しないとね」
翔鶴「……私、帰れるの…?」
加賀「当たり前です、嫌だと言っても連れ帰ります」
瑞鶴「加賀さん、泣いてる?」
加賀「…雨が顔に降っただけです」
蘭嶼
軽巡洋艦 川内
瑞鳳「…瑞鶴、そんなのアリなんだ」
神通「視えてしまったものは仕方ありませんが…まさか…」
那珂「…どうなってるんだろう?」
川内「さあね、それよりも…」
深海棲艦を踏み潰す
川内「深海棲艦の始末が先かな…」
瑞鳳「…あ、雨」
那珂「雨足が強いね…風邪引く前に戻りたいな〜」
神通「この先、弾薬庫がありますね…鋼材も貯蓄がある様で」
川内「鋼材も?なんで?」
瑞鳳「…弾薬は確かにわかる、だけど鋼材なんて何に使うのかわからないんだけど…」
那珂「深海棲艦の艤装…とか?」
瑞鳳「…匂いが何か違う、と思うんだけど…」
那珂「…待って、撤退の指示が出たよ」
川内「この悪天候じゃリスクが大きいかな…よし、一時撤退」
艦内
正規空母 瑞鶴
瑞鶴「良かった、ちゃんと帰って来た」
川内「…もしかして瑞鶴が指示出した感じかな」
瑞鶴「そういう事、ちょっと来て」
神通「先に手当をされた方が…酷い怪我を…」
瑞鶴「私は大丈夫だから、碑文使い同士、積もる話もあるじゃない?ねぇ、瑞鳳」
瑞鳳「……はぁ…」
食堂
神通「ここでは人に聞かれるかと」
瑞鶴「むしろその方が都合がいいのよ、みんなに聞いてほしいくらいだから…って言うか、先にヤバいことについて話しておくわ、海上の移動を少人数でしたら海に引き摺り込まれた時対処できないからやめて」
川内「…多分なんかをすっ飛ばしてるよね」
瑞鶴「私は、深海棲艦に海に引き摺り込まれかけたのよ、いきなりね…だから1人で移動してたりしたら引き摺り込まれて窒息死するわよ」
那珂「いきなり割と有効な戦法とって来たね…」
瑞鶴「それもその筈、どうやらここに残ってる深海棲艦…まともに戦えるのが殆ど残ってないみたいなのよ」
川内(…確かに、そこまでの手応えはなかったな…)
瑞鶴「今、戦えたら動ける様な深海棲艦は南東の要塞に集まってる、ここを集中攻撃したら残りの深海棲艦は一網打尽、作戦は完全勝利で終わりってわけ、わかった?」
那珂「…ちなみになんでそれがわかるの?」
瑞鶴「声が聞こえるのよ」
神通「…成る程」
瑞鶴「私の視点ではそこで終わり…さて、問題は本当にそれだけなのか」
神通「私達の視点からも攻撃が必要な箇所を挙げろ、と」
瑞鳳「だったら、この山間に食糧庫がある、それとこっちの方から燃料の匂いがした、奪っても壊してもいいと思う、かなり強い匂いだったし数もあると思うから」
神通「私は弾薬庫を見つけましたね」
那珂「えっ、あー…那珂ちゃんは…那珂ちゃんはねー…那珂ちゃんかわいいっ!」
川内「……私は特に見つけてないよ」
那珂「スルーはやめてよぉ!」
瑞鶴「とりあえず、これを纏めて提出しよ、一回みんな戻って来てるし…」
川内「もうすぐ夜だもんねぇ…夜は嫌だよ、夜はさ…」
瑞鶴「…なんだろ、川内にすごい違和感感じるんだけど…」
神通「そうでしょうか…」
那珂「そんなことないけどねぇ?」
瑞鳳(…他所の川内と演習したらどうなるのかな)
アオボノ「おや、みなさんお集まりで」
瑞鶴「うわ出た」
神通「どうも」
川内「そっちの首尾は?」
アオボノ「北西の方は完全破壊完了しました、一匹も深海棲艦は残ってません…まあ、今は天龍さん達と戻って来たところです、彼方もかなりの数を倒した様で」
瑞鶴「へぇ…攻略、明日には終わるかな…」
アオボノ「…抵抗する戦力が全くと言っていいほどなかったので、終わるでしょうね」
川内「やっぱりおかしいよね」
アオボノ「ここはもう放棄されました、私たちはここを破壊し尽くし、帰るだけです」
翔鶴「あ、曙さ……あ、あれ…」
アオボノ「翔鶴さん、元に戻ったんですか?それは素晴らしい……なんで震えて距離を…?」
翔鶴「こ、これ以上近寄ろうとしたら…右肩とお腹が痛くなって来て…」
アオボノ(ああ…)
神通「胃痛はわかりますが…肩?」
川内「…なんかやったな…」
瑞鶴「え、何やったの…?」
アオボノ「ご心配なく、私は翔鶴さんには手を挙げていませんから」
瑞鳳(翔鶴さんには…ヲ級にはやったと)
那珂(DV彼氏みた〜い)
翔鶴「…瑞鶴、ありがとうね、みなさんも…」
瑞鶴「……当たり前、じゃん?」
川内「私達は何もしてないし…ねぇ」
アオボノ「そうですね、私も何も」
瑞鳳(便乗した…)
翔鶴「私、提督達に挨拶して来ますね、今加賀さんが事情を説明してくださってるので…AIDAについての検査も必要とのことですし」
アオボノ「それがいいでしょう、私も気になりますが、聞けませんし」
瑞鶴「あ、そうだ、今思い出した!」
神通「?」
瑞鶴「なんでみんなからAIDAの音が聞こえるの?深海棲艦はある程度察しつくけどさぁ…」
川内「みんなの艤装にAIDAが仕込まれてるんだよ、感染したらAIDAに操られるかもって」
瑞鶴「んー、じゃあ深海棲艦に寄生された、とかじゃないのか…」
神通「…待ってください、深海棲艦からもAIDAの音が…?」
アオボノ(あの時翔鶴さんを操ってたのはAIDA?いや、AIDAはそんな事のできる生命体とは思えない…)
瑞鶴「そう、深海棲艦からも聞こえる…でも、なんだろう…別人の声っていうか…」
アオボノ「…よく、わからなくなって来ましたね…」
瑞鶴「ほら、いま曙からも…」
アオボノ「っ…何か、言われてますね…澱んだ声の様な音が…」
瑞鶴「…綾波…?」
川内「綾波…って、あの綾波?」
アオボノ「綾波さん…?」
アオボノ(綾波さん、このタイミングで何故……)
アオボノ「だ、ダメ!考えるな!」
瑞鶴「ちょっ、どうしたのよ急に…」
アオボノ「クソッ!クソ!!本当に今の推測通りなら…綾波さんが裏切り者じゃないのなら…!」
川内「何、なんなの?」
アオボノ「私を計算器扱いして…ああぁぁぁぁっ!」
那珂「なんか、凄く機嫌悪いんだけど…」
翔鶴「あ、曙ちゃん、一回落ち着いた方が…」
アオボノ「わかってます…!最悪だ、最悪だ…!」