元勇者提督 作:無し
蘭嶼
駆逐艦 アオボノ
アオボノ「全て運び出しますよ、このままじゃ予定より遅れます!」
漣「やってることが山賊!」
潮「私達海軍だから海賊かなぁ?」
朧「そういう話じゃなくて」
アオボノ「ただでさえ燃料は枯渇してるんです、全部持ち帰りますよ」
曙「燃料に着火させて爆破した奴がよく言う」
アオボノ「必要経費」
漣「こられらるだめーじ!」
潮「それを言うならコラテラルダメージだよ」
朧「それも民間人の犠牲とかだから使い方としては間違ってるかなぁ…」
アオボノ「つべこべ言わずさっさと積み込んで、帰るわよ」
朧「…本当に今回はこれで終わりなの?」
アオボノ「目標の基地は破壊、深海棲艦は完全に撤退したし、何一つ問題はないわ」
朧「…そうかもしれないけど…」
曙「な〜んか、あっさりし過ぎなのよね、こんなに上手くいっていいの?」
アオボノ「こんなことで時間食ってる時点であっさりじゃないのよ、さっさとしろバカボノ」
曙「…何よ、やろうっての?」
アオボノ「さっさとやれバカ」
曙「せめてボノは入れなさいよこのアホボノ!」
潮「バカは良いんだ…」
漣「さすがツンデレ担当艦」
曙「諦めてんのよ…!」
アオボノ「私はアンタのバカ具合に呆れそうよ」
漣「あ!バカ具合とパラグアイって似てるくない?」
アオボノ「…はぁ…」
艦内
正規空母 瑞鶴
漠然と海を眺める
瑞鶴「変よね、本当にどこにも深海棲艦なんかいない気がする」
加賀「それよりも、今後はちゃんと気をつけなさい…また引き摺り込まれても知らないわよ」
瑞鶴「そん時は、また加賀さんが助けてくれるでしょ?」
加賀「…毎度手が届くとは限らないわ、私は何度も手が届かなかった子達を見て来た」
瑞鶴「…なんか、ごめん…」
加賀「いえ、古い話です、気にする事はないわ…確かに今なら誰かの手を取り逃すこともないのかも知れない…」
瑞鶴「…ちゃんと届くって」
加賀「だと良いけれど」
瑞鶴「…にしても、艤装全滅で動けないのは弱ったなぁ…」
加賀「正直、何が起こったか私もわかってないのだけれど」
瑞鶴「……」
加賀「瑞鶴?」
瑞鶴「いや、なーんか…気の所為かなぁ…」
軽巡洋艦 大井
大井「全部積み込み終わりました、お疲れ様です」
アオボノ「お疲れ様です、船を出す準備は?」
大井「すっかり日が暮れましたが済んでます、いつでも出発できますよ」
アオボノ「では提督達へ報告をお願いします」
大井「……あの」
アオボノ「木曾さんは、死んでも深海棲艦から戻れなかった…と言っていました」
大井「……」
アオボノ「お姉さんも大事そうに抱えておられましたが、もはや誰なのかすら…おそらく粉微塵に吹き飛ばされたのだと」
大井「っ…!」
アオボノ「今はただ、耐えてください、特務部内で深海棲艦を人に戻す実験は続けていますから」
大井「…わかっています、失礼します」
アオボノ(…わかってないな、全くもってわかってない)
大井(…木曾だけが…あんなに辛い思いをする必要なんてどこにもない、私は…あの子を助けてあげないといけないのに…)
北上「大井」
大井(…ここでただ戻ったとして…もし戻す手段が手に入ったとして、次いつ会えるのか…)
北上「おい、大井」
大井(もう、どうすれば…私だけじゃ助けられないのはわかってるのに、姉さん達が苦しんでるのに、木曾が寂しがってるのに、私は何もできない…!)
肩を突き飛ばされる
北上「無視すんなって…鬱陶しいな…!」
大井「…北上……さん、別に無視してた訳では…」
北上「お前の報告待ちなんだけど、さっさと仕事済ませてくれない?」
大井「……」
北上「なんか言いなよ、アンタのせいであたしまで面倒な作業して…」
大井「…そうですか、積み込みは終わりました、すぐに出発する予定なのでもう休んでくださって結構です」
北上「…何その態度」
大井「……」
北上「…大井、なんで泣いて…」
大井「…何もわからないくせに…」
北上「は?」
大井「話は終わりです、さようなら」
北上「……意味わかんないって…」
甲板
正規空母 加賀
赤城「…東、敵影なし」
加賀「南、敵影ありません」
鳳翔「……南東、敵影…有ります…!」
加賀「赤城さん、報告に」
赤城「わかりました」
鳳翔「…えっ」
加賀「どうしました」
鳳翔「…彩雲が、落とされました…それも、全ての機体が同時に…かなり離れた距離で…!」
加賀(…本命が来た、か…)
加賀「私も報告に行きます、鳳翔さん、全力で敵の足止めを、私の艦載機をお預けします、全てを使い切っても構いません」
鳳翔「わかっています、できる限り近づけない様努力はしますが…ですが…」
加賀「…キタカミさん、今度は本気で私たちを潰しに来ている様ですね」
海斗「撤退の指示が出てる、交戦はせずに全速で逃げるよ」
加賀「そうですか、よかったです」
海斗「でも、そうか…よし、出発を早めないと夕張!放送でみんなに伝えて、加賀も交戦の用意をするように伝えて回ってくれるかな」
加賀「勿論です」
海斗「……どうなる、と思う?」
加賀「…時には犠牲が必要だ、と私は思います」
海斗「そうはさせないよ」
加賀「キタカミさんたちがいつこの船に追いつくかは分かりませんが、できる限りの足止めはします、それでは」
海斗「…頼んだよ」
軽巡洋艦 北上
北上「何、まだ敵がでてくんの…?」
川内「そう、そう言うことだから戦う用意はしておいて、死にたくないならね」
北上「…わかった」
川内「…なんかあった?」
北上「…なんでさ」
川内「いつもなら舌打ちでもしそうな場面で素直に言うこと聞いてくれたから」
北上「みんなあたしをなんだと思って…」
川内「大井?」
北上「いや…それは…」
川内「まだ戦うまでは時間あるだろうし…モヤモヤは解消できると思うけど」
北上「…別に解消する必要なんて」
川内「仲良くしたいんじゃなかったの?」
北上「そんな事言ってないし」
川内「…子供みたいなこと言って拗ねてたら取り返しつかないよ?」
北上「……」
川内「今から忙しくなるし、話聞けなくなるけど、どうする?」
北上「…入って」
川内「お邪魔しますっと」
北上「…まあ、それで無視されてると思ってさ…あたしも悪かったなとは思うけど…そんなに強く押したつもりは…打ちどころ悪かったのかな…」
川内(なんというか、急にナヨナヨしてめんどくさいなぁ…)
川内「大井は姉妹の事を気にしてるだけなんだよ」
北上「…木曾、だっけ」
川内「それだけじゃない、上の姉妹の事も気にしてるはずだし…ボーッとしてたのも、泣いてたのも、そっちが理由だと思うけど」
北上「……」
川内「北上は木曾とか、球磨とか多摩の事気にした事ある?自分じゃないキタカミとかさぁ」
北上「…あるわけないじゃん、居ないやつのことなんて」
川内「…それじゃダメだよ、本当に大井と仲良くなりたいなら絶対に」
北上「居ないやつの事なんて知らないし、大井の気持ちなんてわかる訳…」
川内「わかるでしょ、1人の辛さなら」
北上「……」
川内「伊達にボッチやってないでしょ、ならわかると思うけど」
北上「…ボッチ…」
川内「違った?宿毛湾でも浮いてるように見えたんだけど」
北上「否定は、できないのかな…」
川内「…ま、変わろうとしてるなら良いんだけどさ…大井とどうなりたいの?友達?姉妹?」
北上「…大井の姉妹は別に…」
川内「7駆の連中見なよ、誰かが2人いても姉妹として正常に機能してるんだから何も問題ないの、北上のそれはただ逃げてるだけ」
北上「……」
川内「っと、そろそろ戻らないとやばいかな…とにかく、姉妹になりたいなら…木曾とか、他の姉妹ともそうなら、その覚悟…ちゃんと持ちなよ」
北上「…覚悟…」
海上
キタカミ
キタカミ「…見ぃ〜つけた…」
匂いが、鼻につく
キタカミ「方位フタナナマル…いいねぇ…」
隠し球に、火をつける
キタカミ「…みんな、こっちに…みんなを…!」
甲板
神通
神通「…あれ、は…マズイ…魚雷!行きますよ那珂ちゃん!」
那珂「えっ!?飛び降りるの!?」
神通「早く!」
那珂「もーー!」
神通(この魚雷は…!)
海面に着地する
神通「なんとしてもここで止めます!あの魚雷は艦娘の艤装じゃない!」
那珂「暗くて見えないんだけど!?」
神通「三本来てます!とにかく止めないと!」
槍を組み立て、放つ
普段の砲雷撃戦とは比較にならない巨大な水柱が上がる
那珂「嘘…!これ、当たったら一発で…!」
アオボノ『神通さん、何が起きてるんですか』
神通「敵の攻撃です!防ぎきれなければあと30秒で被雷します!」
神通(と言っても、止める手段は今使い切った…魚雷の位置が深すぎて砲撃はあまり意味をなさない…どうする…!)
長門「魚雷の位置を教えてくれ!私が撃つ!」
甲板から長門が叫ぶ
神通「探照灯で照らします!とにかくその位置を撃って!」
長門「照らしてるのはわかるが…どこだ、見えない…!クソッ!当たれ!!」
砲撃を何発も撃ち込むが、命中はしない
神通(お願い…当たって…!)
長門「頼む!当たれ!」
魚雷のすぐそばに着弾し、進路がズレる
神通(逸れた!)
神通「長門さん!次!」
長門「何!?今のは!」
神通「良いから早く!」
長門「…どうにでもなれ!」
神通(…当たって!)
那珂「これ当たってないよね!?」
長門「クソ!何処だ!」
神通「…長門さん!私を狙ってください!」
長門「頼む!」
神通(…狙え、研ぎ澄ませ…!)
こちらに向かって飛んできた砲撃を足刀蹴りで無理矢理水中に叩き込む
神通(重すぎる…!骨が…!)
神通「…当たれぇぇっ!」
那珂「!当たった!」
魚雷の爆発の直前に那珂ちゃんに襟を掴まれ爆発範囲から離脱する
神通「…助かりました、那珂ちゃん、ありがと…」
お礼を言い切る前に先程逸らした魚雷がすぐそばで水柱を上げる
那珂「嘘!?何に当たったの!」
長門「が、うわァァァッ!?」
衝撃で長門さんが落ちてくる
神通「長門さん!大丈夫ですか!」
長門「……ダメだ、動けない…船の中のみんなは…」
アオボノ「無事ですよ」
那珂「えっ、今飛び降りてきた?大丈夫?!」
アオボノ「あなた達もやってのけてる事でしょう…長門さん、良く生きてましたね、急いで戻りましょう、神通さんも立てませんよね、艤装にワイヤーをかけます」
神通「お手柔らかに…」
長門「ぐっ、ああぁぁっ!痛い!待ってくれ!もっと優しく引き上げてくれ!」
神通「自重が痛い…!」
那珂「船に被害は無いの?」
アオボノ「今調査中です、ですが流石という他ありませんね、的確なタイミングで爆発するようにセットされていたおかげで無傷はあり得ないでしょう」
那珂「…そんな…」
神通「っ〜…痛い…」
アオボノ「一度私たちも上がりますよ、おそらく30分以内に追いつかれます」
那珂「うん…でも、このままじゃ夜戦になるね…」
アオボノ「川内さんは?」
那珂「…戦えるけど、動きは落ちるかな…でも、神通姉さんがこれじゃ…」
アオボノ「あなた達川内型がこの船を守る全戦力だと思ってるなら大間違いです、しかし…いや、やるしかないか」
川内「じ、じじじ神通!無事!?生きてる!?」
神通「姉さん痛いです!やめてください!」
川内「神通が死んじゃう!誰か早くきて!」
アオボノ「……川内さんは微塵も使い物になりませんね、なんとか朝まで持たせないと」
那珂「うん…そうだね」
海上
キタカミ
キタカミ「ちぇっ、ハズレかぁ……っと…まさか、1番手に出てくるとは思わなかったなぁ」
焦げ臭い匂い
血の匂い
肌がピリつく…
キタカミ「…思ったより、強かったんだ、知らなかったよ、天龍」
日向「…僭越ながら、全力でお相手させて頂きます」
キタカミ「艤装、ボロボロに見えるけど?本気でやるつもり?」
日向「天龍よりはまだマシな動きができますので…」
キタカミ「手負いのケモノって感じだねぇ…っていうか、日向の艤装なんて…」
日向「私は、過去に一度沈んでいます」
キタカミ「そうだったねぇ」
日向「沈む前は…戦艦でした」
キタカミ「…ああ、そゆことか」
日向「……過去に縋る姿は無様な物ですが…私は、日向としての誇りを捨てていません、日向としてなら誰よりも強い」
キタカミ「あの天龍がそこまで言えるなんてねぇ」
生きている手法が全てこちらを向く
日向「…申し訳ありませんが、死んでいただきます」
斉射
キタカミ(流石に撃ち落としきれないし…狙いもバラしてて…これはキツイな…!)
日向「…かわされた…」
キタカミ「本当に強いとは思わなかったよ、何、随分とやるけど…どうしたのさ、本当に」
日向「……天龍として生きていた時…私のせいで嫌なジンクスが生まれてしまったと聞いた時、ショックでした」
キタカミ「…ジンクス?」
日向「練度が90を超えると、沈む」
キタカミ「…へー…あれ天龍から始まったんだ?」
日向「そのようで、私ももう一切の油断なく…戦わせて頂きます」
キタカミ(…大破した戦艦だ、弱い部分なんて露出しまくってんのに…狙えないな…撃ったら相討ちになるイメージしか湧かない…)
日向(…これでいい、このまま…時間を稼ぐ…!)
キタカミ(…となれば…こうするしかない…か)
天龍の背後から木曾が飛び出す
チ級「バァッ!!」
日向「なっ…!」
キタカミ「狡い手で悪いね」
意識が一瞬木曾の方に向いた瞬間に撃ち込む
日向「しまっ…た…!」
慌てて艤装を切り離すものの艤装の爆発に巻き込まれ、天龍が吹き飛ぶ
日向「ゴホッ…こんな…」
チ級「サァテ、タップリ返シヲシテヤラネェトナァ?」
日向「島風さん!」
島風「やあぁぁぁっ!」
キタカミ「はやっ…」
ものすごい勢いで接近してきた島風がそのまま木曾にタックルする
チ級「ッ!?ッデェェェッ!何シヤガル!」
天龍「艤装交換良し…島風さん、微力ながら援護します!」
島風「はい!」
キタカミ「……島風、そんなとこにいないでさ、こっち来なよ」
島風「キタカミさん…今のキタカミさんは間違ってるよ…」
キタカミ「…あー、もういいや、そういうこと言うくらいなら…もういい、沈めるから」
天龍「かつての仲間をですか」
キタカミ「今でも仲間だよ、だから一緒にいたい」
島風「おかしいよ!それならこっちに戻ってくれば良いのに…」
キタカミ「…深海なら、辛い事もないんだ、みんながいる…」
天龍「今が辛くないとでも」
キタカミ「そうだよ?幸せだから、こっに…」
単装砲を島風に向ける
島風「連装砲ちゃん!展開!行くよ!」
3体の連装砲が広がりながら突撃してくる
天龍「キタカミさん、今ならまだ戻れます、きっと…!」
天龍の砲撃を撃ち落とし、もう一度単装砲を向け、引き金に指をかける
島風「全速!」
引き金を引いた
のに、島風に当たらない
キタカミ「…なんで当たんない…いや、加速して…」
島風「砲撃開始!」
取り囲むように配置された連装砲からの砲撃をかわしながら反撃する
島風「いける…!」
キタカミ「っ…?」
キタカミ(今、斬られて…)
キタカミ「か…っ…!」
キタカミ(さっきと反対の方向から…何が…いや、連装砲か…!連装砲を軸に急旋回してるからスピードを殺さずに…)
すれ違いざまに斬撃
浅い傷がどんどん深くなる
キタカミ「…なるほどねぇ…前やってた事のオマージュか」
島風「この速さには、誰もついてこれない!」
キタカミ(だろうねぇ、何キロ出てんのさ…150…200とか、もっと?)
島風「まだいける…!もっと速くなれる…!」
蒼い火花を纏いながら斬りつけてくる
キタカミ「かはっ…あーもう、調子乗ってくれちゃって…」
島風「やあぁぁぁっ!」
キタカミ「……まあ、ついて行く必要なんて微塵もないんだけどね、待てば来るんだし」
天龍「!不味い、島風さん!離脱してください!」
キタカミ「無理無理、こんな速度で移動してたら急には止まんないよ」
単装砲を振る
腕が吹き飛ぶような衝撃…
島風「へぶっ!?」
キタカミ「つーかまえた…っと…そんな直線的な動きで煙に巻からと思ってた?…馬鹿にしてんなよクソガキ」
胸ぐらを掴み、持ち上げて単装砲を突きつける
島風「…っあ…」
天龍「島風さん!今助けます!」
チ級「オイオイオイ!俺ヲ忘レテナイカ!?」
キタカミ「んじゃ、まずは2人かな…」