元勇者提督   作:無し

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被験体

特務部 研究所

駆逐艦 綾波

 

綾波「……成る程、人にしか見えませんけど、これが深海棲艦ですか」

 

目の前に拘束され、横たわった女性を見る

 

綾波(伊号潜水艦、伊168…現在は所属不明の深海棲艦…か)

 

綾波「そんな訳ないでしょう、これはどうみても人間です、私を揶揄うのはやめて貰えませんか?」

 

数見「検査の結果、深海棲艦と判断した」

 

モニターにかつて自分が取ったものと全く同じデータが表示される

 

綾波(何で、私が取ったデータがここに…!)

 

数見「非検体としては十分、早く試してくれ」

 

綾波(…イムヤさんで、実験をしろ…って事は、これは踏み絵…私がこの人を殺す覚悟を見せなければ…後戻りしないと言う誓いをしなければ…私はここで殺される…もし私がやらなくても、イムヤさんは死ぬ…)

 

ため息をつく動作をしながら周りの兵士を眺める

完全武装して私を取り囲む様に…何人も、よくもまあこんな密室に…

 

綾波「わかりましたよ、やりましょう、その代わり今私に銃を向けてる人達…後でその人達も検体に使います」

 

兵士に躊躇いが見られる

 

綾波(…私は、絶対だ…私は、ここで死ぬ訳にはいかない…)

 

綾波「それで?いつ目を覚ますんですか、この人…寝てる相手をいたぶっても微塵も楽しくないんですけど」

 

   

 

 

 

 

 

宿毛湾泊地

重巡洋艦 青葉

 

青葉「曙さん、無事だったんですか…」

 

海斗「…うん、特務部が保護したって連絡が有った、それとイムヤも」

 

曙「イムヤのことは何か言ってたの」

 

海斗「人型の深海棲艦も見つけたのでサンプルとして確保した…って」

 

青葉「……」

 

海斗「イムヤは艦娘として登録されてない、犠牲者ゼロで作戦は成功だ…って」

 

曙「……ふざけてるわね、そんなの通る訳ないでしょ、今から乗り込むわよ」

 

青葉「ダメです」

 

曙「…何、止めるなんて随分偉くなったじゃない」

 

青葉「絶対、ダメです…今行くのは…みんな疲れてるし、向こうも国の軍隊、内戦になったら悪者は私達…第一に私達特務部の居場所も知りませんよ…」

 

曙「ヘルバに探させればいいでしょ!?」

 

海斗「…ヘルバは手を貸せないって」

 

曙「なんでよ!」

 

海斗「リスクとリターンが見合ってないって言ってたよ、残念だけどヘルバは頼れない」

 

曙「…アタシがなんでもやる、だからヘルバを動かしてよ!納得するだけの何かをやってみせるから!」

 

海斗「……」

 

曙「なんとか言いなさいよ!このクソ提督!」

 

曙さんが胸ぐらを掴んで引き寄せる

 

青葉「やめてください…!さっきな話聞いてましたか?私達全員が国を追われるんですよ!」

 

曙「…だから、見殺しにしろって?」

 

青葉「…それは…でも、曙さんが言ってる事はみんなを危険な目に合わせるだけです!」

 

曙「仲間の命がかかってんのに…そんなにあっさり諦めがつく訳ないでしょ…!」

 

青葉「それはそうですけど…」

 

海斗「曙、ダメだ…」

 

曙「アンタも…なんで諦められるのよ!」

 

海斗「諦めたくなんかない!だけど…」

 

曙「アンタのその態度が諦めてるって言うのよ…!」

 

青葉「やめてください!曙さんはみんなを犠牲にしてまでイムヤさんを助けたいんですか!?」

 

曙「そう言う話じゃないでしょうが!」

 

青葉「そうなるから言ってるんです…!特務部は私たちより重要な国の機関、それに敵対してしまえばどうなるか、もう何回も言ってます!」

 

曙「…じゃあ、イムヤは…イムヤはどうなるのよ…」

 

青葉「……」

 

曙「アンタもなんとか言いなさいよ!カイト!」

 

海斗「…イムヤを助けに行く事は…許可できない、僕達には…何もできないんだ…」

 

曙「……アンタ達は正しいんだと思う、だけど…間違ってるわ」

 

海斗「……」

 

目を逸らすことしかできない

 

曙「アタシ、泊地抜けるから」

 

青葉「1人でやるつもりですか…」

 

曙「何、参加するならいくらでも受け付け…かっ…ぁ…ああアァァァァッ!?」

 

体を震わせ、頭を押さえ、倒れ込む

 

海斗「曙!青葉、夕張を!」

 

青葉「は、はい!」

 

曙「あ、頭が…ぁが…」

 

青葉(綾波さんは思考すら筒抜けだって言ってた…反逆の意思がバレて…!)

 

 

 

 

青葉「夕張さん!」

 

夕張「むぐっ!?…な、何!?今私達お昼を…」

 

神通「急用みたいですけど…」

 

長門「行った方がいいんじゃないのか?」

 

青葉「急患です!来てください!」

 

夕張「…私のごつ盛り焼きそばぁ…」

 

長門「ラップはしておくから、早く行ってきたほうが…」

 

神通「長門さんは腕も折れてるんですから、私が…」

 

長門「神通は立てないだろう…」

 

夕張「ここで食べないと…」

 

青葉「いいから早く!」

 

 

 

夕張「ど、どう言う状況よこれ…」

 

朝潮「騒ぎを聞きつけてきたら暴れ出したので抑えてるんです!山雲、手を緩めないでください…!」

 

山雲「無理〜、力が強いですー…!」

 

青葉(朝潮型のみなさんが総出で抑えなきゃならないほど…?)

 

海斗「…夕張、鎮静剤みたいなものはないかな」

 

夕張「えぇ…流石に持ってきてませんよ、縛り上げて一度医務室まで運びましょうよ…」

 

青葉「取りに行きましょう…縛る時に振り解かれたら大変ですし…」

 

夕張「もー…ほんと…もー…」

 

青葉「私も行きますから…」

 

夕張さんと一緒に薬を取りに行って帰ってきた僅かな間だった

短い時間しか経ってなかったのに…

 

青葉「…嘘…!」

 

夕張「朝潮ちゃん!返事して、朝潮ちゃん!」

 

鉄の匂いが充満して、血が周囲にもべったりで…

 

朝潮「…すいません…死んではいませんが…喋りたくないです…」

 

背中に大きい斬り傷…曙さんが剣を持ち出したって事…

 

青葉「皆さん、致命傷は受けてない…?」

 

山雲「私は〜…結構…浅いです…」

 

夕張「嘘言わない!酷い出血の仕方してるじゃない…なんでこんな事!」

 

青葉「…司令官は!?」

 

朝潮「……曙さんを…追いました…」

 

青葉「行かなきゃ…!」

 

夕張「無理よ!万が一の時どうするつもり!?」

 

青葉「っ……」

 

夕張「待って、今誰か…そうだ、瑞鶴さん!聞こえる!?もし聞こえたら瑞鳳さんに曙ちゃん追う様に言って!骨くらいなら折っていいから!」

 

青葉「き、聞こえてるんですか…?」

 

夕張「絶対聞こえてる、確か今食堂にいるはずだから…大丈夫、止めてくれる、とにかくみんなを医務室に運ぶのを手伝って!」

 

青葉「っ……はい…」

 

 

 

 

食堂

軽空母 瑞鳳

 

瑞鶴「わかったら行くよ!」

 

川内「私達もか…」

 

瑞鳳「……別に探す必要はないけどね」

 

那珂「うん、嫌な味がする…苦い、錆びた鉄の様な…血の味」

 

瑞鳳(すぐそばに居る…しかもこのメチャクチャに血の匂いを振りまいてる感じ…)

 

瑞鳳「川内、殺す気でいかないと怪我するよ」

 

川内「何、ほんとにどうなってんの…?」

 

瑞鶴「AIDAに決まってるでしょ、でも…AIDAの声が少し弱い様な…」

 

川内「とにかく、一回捕縛しよう」

 

食堂の入り口から血まみれの曙が顔を覗かせる

手に未だ血が滴る剣を持って

 

瑞鳳「…タチ悪いことに完全にやる気なんだけど」

 

川内「ここで使われる前に…」

 

川内が立ち上がり歩きながら近寄る

 

川内「やるけど、いいよね」

 

曙「……」

 

曙が剣を順手にもち、川内に突き刺そうとする

 

川内「折っていいんだっけ」

 

川内が曙の手首と肘を掴み自らの膝を押し当てる

嫌な音に瑞鶴が耳を塞ぐ

 

那珂「えっ、今…すごい音したけど…」

 

川内「右腕とりあえず折ったよ、左も良い?」

 

曙「…ぁ…っ」

 

瑞鳳(1番容赦ないじゃん)

 

川内「両腕折って、武器取られて…さて、もう抵抗できないかな」

 

瑞鳳「とりあえず縛ろうか、川内のマフラーと腰巻き使おう」

 

川内「うぇっ…?」

 

瑞鶴「賛成、ロープも何もないしね」

 

川内「血は落とすの大変なんだけどなぁ…」

 

那珂(そこなんだ…)

 

 

 

 

 

医務室

重巡洋艦 青葉

 

青葉「司令官、ご無事で何よりです…」

 

海斗「ごめん、追いかけてたんだけど一撃貰ってその隙に逃げられて…」

 

川内「おーい、賞金首連れてきたよ」

 

夕張「そこ置いといて、今鎮静剤用意してるから!」

 

瑞鳳「…何が起きてるの?」

 

瑞鶴「だからAIDAが操ってるんだって…でも、どんどん声が小さくなってるような…」

 

海斗「夕張、朝潮達は」

 

夕張「見ての通り、命に別状はないですよ、ただ山雲ちゃんは出血が酷すぎますね」

 

朝潮「司令官、情けない姿をお見せしてしまい申し訳ありません…大潮達は軽症でしたので先に戻らせました」

 

山雲「くらくらします〜」

 

海斗「しばらくゆっくり休んでて」

 

朝潮「…はい」

 

曙「…っ…ったああああっ!」

 

夕張「うわっ!抑えてて!」

 

川内「はいはい」

 

曙「触んな!アンタのせいで死ぬ程痛いのよ!」

 

那珂「…意識戻ってる?」

 

曙「……戻ったって言うか、意識自体はあったのよ…なんで、なんでこんなこと…」

 

朝潮「さっさと話せること全部しゃべってください」

 

曙「待って、本当に痛いのよ…少し緩めて、お願いだから…」

 

夕張「絶対緩めないで、なんならもっと痛めつけても良いくらいだし」

 

海斗「…曙、先に君のわかることを教えて」

 

曙「…意識はあった、だけど…反射とかで勝手に体が動くみたいに…勝手に体が動いてたのよ…目線も何かを勝手に追うし、もう…何してたのかわからないし…」

 

朝潮「そんなことが通ると思いますか」

 

曙「事実なのよ…!」

 

瑞鶴「確かにあの時はAIDAがうるさいくらいだったし、信じて良いと思うんだけど、それよりも…曙、アンタ今体に異変は?」

 

曙「…両腕が死ぬほど痛い、治るのに多分2ヶ月くらいかかるんじゃないのこれ…」

 

瑞鶴「それ以外」

 

曙「……お腹減った」

 

那珂「ふざけてる?」

 

曙「操られ始めた時はすごく頭が痛かったけど、今はそんなことないし…他に思いつくこともないわ」

 

瑞鳳「……とりあえず、寝といたら」

 

夕張「ちょっとチクッとするわよ〜」

 

曙「ちょっ!もう正気なの!わかるでしょ!?」

 

那珂「はい動かないでー、痛くないよー」

 

曙「痛い痛い痛い!アンタ腕持つな!」

 

夕張「…よし、と」

 

曙「何注射したのよ!」

 

夕張「催眠鎮静剤…睡眠薬とかだと思って良いから、はいおやすみ〜」

 

曙「…まっ、ちなさ…」

 

川内「…疲れた」

 

海斗「……」

 

青葉「一体…何がどうなって…」

 

夕張「…あれ、ちょっと待って…私もやばいかも…か、考えられな…わかってるのに考えられなく…」

 

那珂「第二ラウンド!?先に縛り上げるよ!」

 

夕張「お願い…あれ…今私、何…?」

 

川内「…夕張、ちょっとキツく縛るよ」

 

夕張「…えっ…な、なんで縛られてんの!?あれ、これどう言う状況!?」

 

瑞鳳「…ふざけてる?」

 

瑞鶴「いや、ほんとに混乱してるみたいだけど…」

 

夕張「待って待って、何?私何かした!?」

 

朝潮「…本当にわからないんですか?」

 

夕張「いや、わからないも何も…あ、違う……お゙ぇ゙…だ、誰か洗面器か袋…」

 

海斗「もうちょっとだけ耐えて」

 

那珂「…ねぇ、何これ、何が起きてるの?」

 

夕張「おえええ…待って、頭おかしくなる…ヤバいんだけど…」

 

川内「とりあえず一回吐いてスッキリしたほうがいいんじゃない」

 

夕張「…そうしたい…」

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