元勇者提督   作:無し

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逃亡者

特務部 研究所

イムヤ

 

イムヤ「…ぅ……うぅ…?」

 

頭痛を感じながら目を覚ます

起きあがろうにも体が全く動かない

 

 

綾波「ああ、目が覚めました?貴方のために何時間も座りっぱなしで…ほんとに寝るところでしたよ、ははは」

 

イムヤ「…貴方…綾波…って事はここはやっぱり…」

 

綾波「ええ、特務部にようこそ、イムヤさん」

 

イムヤ「…歓迎って雰囲気じゃないわね…なに、この拘束…味方にする事とは思えないけど…」

 

綾波「いいえ、全くもって適当な対応でしょう、深海棲艦相手には」

 

イムヤ「……」

 

綾波「貴方を人間に戻せるか…それとも完全に殺すだけに終わるか、実に楽しみで有意義な実験です」

 

イムヤ「…本気…?」

 

綾波「私だって命懸けなんですよ?だってほら、私グレーな位置ですから…その辺ハッキリさせたかないと」

 

イムヤ「恩とか…そう言うの感じた事ないの…!?」

 

綾波「吹けば消える灯です、私も貴方も…そんなに軽い命で他人の為に犠牲になる、なんとも馬鹿馬鹿しいじゃありませんか」

 

イムヤ「っ…この裏切り者!!」

 

拘束具を外す為に抵抗する

 

綾波「無駄ですよ、動いたら余計に辛いだけです…まあ私はそっちの方が好みですけどね」

 

イムヤ「来ないで!…あぁもう!なんで外れないの!」

 

綾波「ピンチの時に必ず脱出手段がある…と言うのはゲームとか、紛い物の中だけなんですよ、そうですねぇ…とりあえず薬、飲んで見ます?」

 

イムヤ「嫌…!絶対に呑むもんか!」

 

綾波「と言っても無理矢理飲ませるし、飲まなければ注射するんですけどね」

 

イムヤ(どうすれば…諦めちゃダメ、絶対チャンスが…そうだ、曙さんは…)

 

綾波「ああ、貴方今曙さん探しました?」

 

イムヤ「…だとしたら…何」

 

綾波「今、貴方を連れ帰った事で表彰されてますよ、貴方の存在はもうかなりの方面に知られています、人型の深海棲艦として」

 

イムヤ「え…」

 

イムヤ(じゃあ、もしここから逃げられたとしても…)

 

綾波「何一つ、救いなんてものはないんですよ…それでも生きたいですか?ここで人体実験を受けて億に一つを賭けるのも悪くないと思いますよ?」

 

イムヤ(…そうだ、別に私をいたぶろうって話じゃ…でも、ここでもし人間に戻れたとして…みんなが戦いで苦しむのに…ようやく私がみんなの力になり始めたかもしれないのに…)

 

イムヤ「そんなの…ごめんよ…!」

 

綾波「本当に良いんですか、それで」

 

イムヤ「絶対に…私はこんな所で終わるもんか!」

 

片手の拘束具が音を立ててちぎれる

 

イムヤ「嘘…!やった!壊せる!」

 

綾波「っと…誤算ですね、そこまで馬鹿力とは…よっと」

 

綾波が艤装を装着して近寄ってくる

 

綾波「警備兵、ぼさっとしてないで働きなさい」

 

銃を持った兵士が入ってくる

 

イムヤ(…まだ片手がようやく自由になった段階なのに…ここまで何もできなくされて、その上あの笑顔、本当に腹立つ…)

 

綾波「…まあ、片手が動く程度で武器のない人間相手に警備員が何をさせるのか…と言うのはいささか悩みものですね、とりあえず取り押さえてください、早く…念のため全員で」

 

3人係で再びベッドに磔にされる

 

イムヤ「離して!このっ!離せ!」

 

イムヤ(全然振り解けない…!さっきのはただ拘束具が弱ってただけ…?)

 

頭がベッドに打ち付けられる

 

イムヤ「ったぁ……え?」

 

綾波の顔が映る

まるでこちらに降ってくる様に…

 

綾波「よいしょっと…」

 

鈍い音が響き、私を抑えていた兵士が倒れる

 

イムヤ「な、何が…あれ、拘束が解けて…」

 

綾波「早く起き上がってくれますか、置いて行きますよ」

 

イムヤ「な、何、どう言う事!?」

 

綾波「…裏切るんですよ、特務部を」

 

兵士を押しのけてベッドを降りる

 

綾波「ここは7階、大体地上28m、まあ窓がないので飛び降りられませんか…増援が来るまであと30秒程…さて、どうしましょうか」

 

イムヤ「ちょっ…ど、どういう…」

 

綾波「貴方は…とりあえず今は自分の判断に後悔しないようにしていれば良いんですよ」

 

綾波が壁のそばに行き、蹴りの構えを取る

 

イムヤ「ま、まさか…」

 

爆発の様な音ともに壁が崩れ落ちる

真っ暗な空間が先に広がっている

 

綾波「ここ、エレベーターホールの真裏なんですよね、ほら、私に捕まってください、ワイヤーで手をズタズタにしたいなら構いませんけど」

 

イムヤ「え、あ…はい」

 

言われるがままに綾波にしがみつく

 

綾波「…重っ…バランス取れますかね…まぁ死なば諸共、後は野となれ山となれ…」

 

イムヤ「は」

 

綾波が壁の穴から飛び降りる

その綾波にしがみついてる私もそのまま自由落下を余儀なくされる

 

綾波「ぐ…!結構キツイ…」

 

イムヤ「な、なんで壁にひっかかって…こ、これ大丈夫なの!?」

 

綾波「黙ってないと怪我しますよ、えーと……これだ、目を閉じて口を開けておいてください」

 

イムヤ「へ?」

 

次は紛れもない爆発音と共にまた壁に大穴を開ける

 

イムヤ「ロッカールーム…?」

 

綾波「…よし、これ着てください」

 

綾波がロッカーの一つからパーカーを取り出して投げつける

 

イムヤ「ね、ねぇ、どうするつもりなの…」

 

綾波「飛びます、ちゃんとフードかぶってください」

 

イムヤ「と、飛ぶ…」

 

綾波「今は5階まで降りました、なのでここから飛び降ります」

 

イムヤ「…飛び降り…えっ自殺…」

 

綾波「深海棲艦の身体なんですから、耐えてください…このロッカールームの外の窓から一気に飛び出します、良いですね、私に続かないと本当に死にますよ」

 

イムヤ「……もうやだぁ…」

 

綾波が扉を蹴り開ける

 

綾波「早く!」

 

窓ガラスが割れる音がする

 

イムヤ「もおおぉぉぉ!助けてだれかぁぁぁ!」

 

叫びながら飛び出す

 

イムヤ(木!?なにこれ…)

 

綾波「捕まって!」

 

先に木に飛び移っていた綾波に片手を掴まれ、顔面から木に衝突する

 

イムヤ「うぐぁ…」

 

綾波「早くおりますよ!」

 

イムヤ「もうやだぁぁ…」

 

綾波「泣いてないで早く!」

 

 

 

イムヤ「…こ、ここ…普通に都会…」

 

綾波「ぼうっとしてる暇はありません、走りますよ!」

 

イムヤ「ど、どこに!?」

 

綾波「こっち!」

 

周りを見れば知ってるチェーン店やコンビニ…ビルも多い…

こんなオフィス街にあんな施設があって、一通りも多くて、馬鹿みたいに注目集めて…その上こんな大騒ぎを…

 

イムヤ(絶対逃げきれないじゃん…!)

 

綾波「市街地なら撃たれにくい、それに…足はあります」

 

路地裏へと駆け込む

 

イムヤ「ば、バイク…え、免許あるの…?」

 

綾波「そんなの取れるわけないです!いいから早く乗って!」

 

イムヤ「…警察にも追われるやつだ…」

 

綾波「そんなの今更ですよ!」

 

バイクに乗り、信号を避けて街を抜け出す

 

 

 

 

イムヤ「…あ、あのさ…そろそろ聞いていい…」

 

綾波「なんで助けたのか…ですか」

 

イムヤ「そう、それ…」

 

綾波「……あなたが生きたいと言ったから、あなたが死にたくないと言ったから、わたしは命をかけたんです」

 

イムヤ「…メリットかけらもない様に感じるけど」

 

綾波「メリットなんか求めてたら絶対にしません…私は…ただあそこにスパイとして潜入してただけですから」

 

イムヤ「…なるほどね…だから」

 

綾波「でも、これで…全部パァですね…」

 

綾波がポケットからスマホを取り出して遠くに投げ捨てる

 

イムヤ「え?!なにやってんの!」

 

綾波「居場所はとことん隠さないといけない…私達はこれから誰かに会えば…その人達も不幸にする…」

 

イムヤ「……」

 

綾波「私は何回も、確認しましたよイムヤさん…あなたにはその覚悟があるのかと」

 

イムヤ「あれそう言う意味だったの!?」

 

綾波「…ここで海まで行けば貴方だけでも逃げる事はできます、司令官達なら貴方を守ってくれます…どうしますか」

 

イムヤ「…綾波さんはどうするの」

 

綾波「私は逃げ続けます…私は戻るなんてとても…」

 

イムヤ「ずっと1人で戦ってたんでしょ…!?なんで…」

 

綾波「私が戻れば…司令官達に迷惑をかけます、それに私は正しい意味では仲間ではありません…ただ置いてもらっているだけで、その上綾波の事までお願いしてる…私は…絶対戻れない」

 

イムヤ「……もう…道連れね、公衆電話でも探そ…一応連絡入れておきたいし…」

 

綾波「…後悔しても知りませんよや

 

イムヤ「後悔しない選択肢なんて存在しない、私は私がいいと思った道を行く」

 

綾波「…そうですか」

 

イムヤ「…あ、あった!公衆電話!止めて止めて!」

 

綾波「とりあえず止めますけど…泊地の番号わかるんですか?」

 

イムヤ「う……知らない…」

 

綾波「待ってください、私がかけますから……あ」

 

イムヤ「…もしかしてわからない?」

 

綾波「…10円玉、持ってますか」

 

イムヤ「持ってないけど…え、まさか…財布は…」

 

綾波「…私財布持たないんですよ」

 

イムヤ「お金どうしてたの!?」

 

綾波「電子マネーですね」

 

イムヤ「カード類は!?」

 

綾波「携帯に登録してたり…携帯カバーに…」

 

イムヤ「もおぉぉぉぉ!どうすんのよ!」

 

綾波「…後は野となれ山となれ…ガソリンが尽きるまで遠くに逃げましょう、監視カメラなどのある道は事前に調べてあります」

 

イムヤ(そういえば、脱出手段が用意周到だった気がする…目の前が木になってる窓やこのパーカー、バイク…)

 

イムヤ「まさか、最初から全部決めてたの…?」

 

綾波「私は貴方に薬を打つつもりでした…でも、それはしたくなかった…だから貴方がなんて言うのか、それにかけたんです…貴方がもし拒否して、逃げるのなら…その為に全部用意しました、2時間ほどしか時間はありませんでしたけど…」

 

イムヤ「…その、ありがとう」

 

綾波「私は司令官に救われましたから…」

 

イムヤ「…じゃあ、絶対2人で泊地に帰ろう、司令官の為に」

 

綾波「…今のまま帰る事はできません」

 

イムヤ「先に特務部を潰さなきゃ…かな」

 

再びバイクに乗る

 

綾波「簡単には潰せないでしょうね」

 

イムヤ「ね、ねぇ、街に入るつもり…?どこに…」

 

綾波「横須賀はマークされているでしょうからとりあえず私達は北上します、埼玉から山間を進もうと…」

 

街に入り信号が増える

 

イムヤ「…逃亡犯ってこんな気持ちなのね、通行人全部怖いわ…」

 

綾波「実際逃亡犯ですけどね…」

 

信号で一時停止する

 

イムヤ「あ、テレビ」

 

電気屋のテレビが目に入る

 

テレビ『国の施設から逃げ出した深海棲艦とその深海棲艦の逃走を補助したとしてこの2名を政府は緊急指名手配しました』

 

私と綾波の写真が画面に映る

 

イムヤ「…あは…ははは…嫌な夢…早く目が覚めないかなー…」

 

綾波「……手が早すぎる…次山に入ったらバイクは捨てましょう、目撃情報が入ったら厄介です」

 

イムヤ「バイク無しで逃げられるの!?」

 

綾波「どの道一銭もない、となればガソリン入れられませんから…」

 

イムヤ「お金なしで生活できるの…」

 

綾波「なんとかしますから…」

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